債権総論をゼロから整理する|債務不履行・弁済・相殺と、保証・連帯債務の急所
宅建士試験の権利関係14問のうち、民法10問の中でも、債務不履行・弁済・相殺・保証・連帯債務という債権総論の分野は、毎年繰り返し出題される定番分野です。売買・賃貸借といった契約各論の土台になる部分でもあり、ここを整理しておくと他の単元の理解も進みます。この記事では、権利関係が苦手な人のための読み方教科書や区分所有法の整理記事と同じ「図表で整理する」アプローチで、債権総論のうち出題頻度の高い5つのテーマを整理します。
この記事の使い方
| パート | 内容 |
|---|---|
| 第1部 | 債務不履行(履行遅滞・履行不能・損害賠償の要件と範囲・金銭債務の特則・解除) |
| 第2部 | 弁済(第三者弁済・代物弁済・弁済の場所や証書・弁済による代位) |
| 第3部 | 相殺(要件・方法と効力・相殺が制限される場合) |
| 第4部 | 保証・連帯債務(付従性・催告検索の抗弁・連帯保証との違い・個人根保証の極度額・経営者保証以外の公正証書要件・連帯債務の効力) |
| 第5部 | 演習問題12問(オリジナル作問) |
第1部 債務不履行
1-1 履行遅滞・履行不能
| 場面 | 履行遅滞の責任を負う時点 | 条文 |
|---|---|---|
| 確定期限がある債務 | その期限が到来した時 | 412条1項 |
| 不確定期限がある債務 | 期限到来後に履行の請求を受けた時、又は期限到来を知った時のいずれか早い時 | 412条2項 |
| 期限の定めのない債務 | 履行の請求を受けた時 | 412条3項 |
不確定期限のある債務は、期限が到来しただけでは遅滞の責任を負わず、「請求を受けた」か「到来を知った」のいずれか早い時から遅滞になるという点が、期限の種類ごとの起算点を取り違えさせる出題で狙われやすいところです。
なお、債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者はその履行を請求することができません(412条の2第1項)。この場合、債権者は履行の請求ではなく、次に見る損害賠償の請求(415条)へと進むことになります。
1-2 債務不履行による損害賠償(415条)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき、又は債務の履行が不能であるときは、債権者はこれによって生じた損害の賠償を請求することができます。ただし、その不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではありません(415条1項)。この「帰責事由がなければ免責される」という構造を、帰責事由の有無を問わず常に賠償請求ができるかのように書き換えるのが典型的な誤りの作り方です。
また、次のいずれかにあたるときは、債権者は、債務の履行に代わる損害賠償(填補賠償)を請求することができます(415条2項)。
- 債務の履行が不能であるとき
- 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
- 契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき
3号は「現に解除したこと」までは要件とせず、解除権が発生していれば足りる点に注意してください。
1-3 損害賠償の範囲(416条)
損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることを目的とします(416条1項)。特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者はその賠償を請求することができます(416条2項)。「特別損害は一切賠償の対象にならない」という説明は誤りで、予見可能性という要件を満たせば特別損害も賠償の対象に含まれます。
1-4 金銭債務の特則・賠償額の予定
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 損害賠償額の基準 | 債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率による(約定利率が法定利率を超えるときは約定利率による) | 419条1項 |
| 損害の証明 | 債権者は損害の証明をすることを要しない | 419条2項 |
| 不可抗力の抗弁 | 債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができない | 419条3項 |
| 賠償額の予定 | 当事者は債務の不履行について損害賠償の額を予定することができ、この予定は履行の請求又は解除権の行使を妨げない | 420条1項・2項 |
金銭債務は、実損害の証明が不要である代わりに、不可抗力の抗弁も許されないという、通常の債務不履行とは異なる特則が置かれている点が急所です。
1-5 契約の解除
債務者が履行しない場合、相手方が相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、契約を解除することができます(541条本文、催告解除)。ただし、その期間を経過した時における不履行が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除できません(541条ただし書)。
これに対し、債務の全部の履行が不能であるときや、債務者が履行を拒絶する意思を明確に表示したときなどは、催告をすることなく直ちに解除することができます(542条1項、無催告解除)。
第2部 弁済
2-1 第三者弁済(474条)
債務の弁済は、第三者もすることができるのが原則です(474条1項)。もっとも、弁済をするについて正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができません(474条2項本文)。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りではありません(474条2項ただし書)。
さらに、正当な利益を有しない第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることもできませんが、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りではありません(474条3項)。これらの規定は、債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止・制限する意思表示をしたときは適用されません(474条4項)。
「正当な利益を有する第三者」(例えば物上保証人や後順位抵当権者など)による弁済には、こうした債務者・債権者の意思による制限は及ばず、原則として有効にすることができます。
2-2 代物弁済(482条)
弁済をすることができる者(弁済者)が、債権者との間で、債務者が負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、弁済者が当該他の給付をしたときに、その給付は弁済と同一の効力を有します(482条)。合意をしただけでは足りず、実際に給付をした時点で初めて弁済と同一の効力が生ずる点に注意してください。
2-3 弁済の場所・受取証書・債権証書
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 弁済の場所 | 別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生時にその物が存在した場所、その他の弁済は債権者の現在の住所において行う | 484条1項 |
| 受取証書の交付請求 | 弁済をする者は、弁済と引換えに受取証書の交付を請求することができる | 486条1項 |
| 債権証書の返還請求 | 全部の弁済をしたときは、債権に関する証書の返還を請求することができる | 487条 |
弁済の場所は「債務者の住所」ではなく「債権者の現在の住所」が原則である点が、主語(当事者)のすり替えとして狙われやすいポイントです。
2-4 弁済による代位
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位します(499条)。ただし、弁済をするについて正当な利益を有しない者が債権者に代位するには、債権譲渡の対抗要件に関する467条の規定に従った手続を経る必要があります(500条)。これに対し、正当な利益を有する者(保証人・物上保証人・連帯債務者など)が代位する場合には、この467条の手続は不要です。
債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて債権者とともにその権利を行使することができます(502条1項)。この場合であっても、債権者は単独でその権利を行使することができ(502条2項)、債権者が行使する権利は代位者が行使する権利に優先します(502条3項)。「代位者が単独で行使できる」のではなく、単独行使ができるのは債権者の側である点に注意してください。
第3部 相殺
3-1 相殺の要件(505条)
二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができます(505条1項本文)。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りではありません(505条1項ただし書)。
当事者が相殺を禁止・制限する意思表示をした場合、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができます(505条2項)。
3-2 相殺の方法・効力(506条)
相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってします。この意思表示には、条件又は期限を付することができません(506条1項)。相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生じます(506条2項)。合意によってのみすることができるものではなく、また効力は将来に向かってではなく遡及的に生ずる点が急所です。
3-3 相殺が制限される場合
| 場面 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 時効消滅債権を自働債権とする相殺 | 時効によって消滅した債権も、その消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、相殺をすることができる | 508条 |
| 悪意による不法行為に基づく損害賠償債務 | 原則として相殺をもって債権者に対抗することができない(その債権者が債権を他人から譲り受けたときを除く) | 509条1号 |
| 人の生命・身体の侵害による損害賠償債務 | 悪意による不法行為に基づくものでない場合であっても、相殺をもって債権者に対抗することができない | 509条2号 |
509条は、悪意の不法行為(1号)だけでなく、人の生命・身体の侵害による損害賠償債務(2号)についても、不法行為に基づくか債務不履行に基づくかを問わず相殺を禁止しています。「悪意による不法行為に基づくものに限られる」と範囲を狭めて覚えると、2号を見落とすことになります。
第4部 保証・連帯債務
4-1 保証の性質(446条・448条)
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負います(446条1項)。保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じません(446条2項)。保証契約の内容を記録した電磁的記録によってされたときは、書面によってされたものとみなされます(446条3項)。
保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、主たる債務の限度に減縮されます(448条1項)。また、主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されません(448条2項)。この付従性(主たる債務に従う性質)が保証の基本です。
4-2 催告の抗弁・検索の抗弁と連帯保証(452条〜454条)
| 権利 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 催告の抗弁 | 債権者が保証人に履行を請求したとき、保証人はまず主たる債務者に催告をすべき旨を請求できる(主たる債務者が破産手続開始決定を受けたとき・行方不明のときを除く) | 452条 |
| 検索の抗弁 | 催告後であっても、保証人が主たる債務者に弁済の資力があり、かつ執行が容易であることを証明したときは、債権者はまず主たる債務者の財産に執行しなければならない | 453条 |
| 連帯保証 | 保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、催告の抗弁・検索の抗弁のいずれも有しない | 454条 |
普通保証には催告の抗弁・検索の抗弁がありますが、連帯保証にはこの両方がありません。実務上多く用いられる連帯保証のほうが、保証人の保護が薄いという構造を押さえておきましょう。
4-3 保証人への情報提供義務(458条の2・458条の3)
| 場面 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 主たる債務の履行状況 | 委託を受けた保証人の請求があったときは、債権者は遅滞なく、主たる債務の元本・利息・違約金等の不履行の有無や残額等の情報を提供しなければならない | 458条の2 |
| 期限の利益の喪失 | 主たる債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は、その喪失を知った時から2か月以内に保証人にその旨を通知しなければならない。通知を怠ると、喪失時から通知までに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなくても生ずべきものを除く)に係る保証債務の履行を請求できない | 458条の3 |
458条の3の通知義務は、保証人が法人である場合には適用されません(458条の3第3項)。個人保証人を念頭に置いた保護規定であることを押さえておきましょう。
4-4 個人根保証契約の極度額(465条の2)
一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする根保証契約のうち、保証人が法人でないもの(個人根保証契約)は、主たる債務の元本や利息・違約金等について、極度額を限度として履行する責任を負います(465条の2第1項)。個人根保証契約は、この極度額を定めなければ、その効力を生じません(465条の2第2項)。この極度額の規定は、個人根保証契約に固有のものであり、保証人が法人である根保証契約には適用されません。
4-5 事業性融資の保証と公正証書(465条の6・465条の9)
事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約(又は主たる債務の範囲に事業のための貸金等債務を含む根保証契約)は、その締結に先立ち、締結の日前1か月以内に作成された公正証書で、保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じません(465条の6第1項)。個人が安易に高額の保証人になることを防ぐための規定です。
ただし、主たる債務者が法人である場合のその取締役等や、主たる債務者の総株主の議決権の過半数を有する者、主たる債務者と共同して事業を行う者・主たる債務者の事業に現に従事している配偶者など、経営に実質的に関与する者については、この公正証書の作成は不要です(465条の9)。経営者本人や、経営者に準ずる立場の者には、この保護規定が及ばないという整理が急所です。
4-6 連帯債務の効力(436条・438条〜442条)
数人が連帯して債務を負担するとき、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができます(436条)。
連帯債務者の一人について生じた事由は、更改(438条)・相殺(439条)・混同(440条)を除き、原則として他の連帯債務者に効力を及ぼしません(441条本文、相対的効力の原則)。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、その意思に従います(441条ただし書)。
| 事由 | 他の連帯債務者への効力 | 条文 |
|---|---|---|
| 更改(連帯債務者の一人と債権者間) | 全ての連帯債務者の利益のために債権消滅(絶対効) | 438条 |
| 相殺(連帯債務者の一人が反対債権を有する場合) | 相殺を援用すれば全ての連帯債務者の利益のために債権消滅(絶対効) | 439条1項 |
| 混同(連帯債務者の一人と債権者間) | 弁済をしたものとみなす(絶対効) | 440条 |
| 履行の請求・免除・時効の完成など | 原則として他の連帯債務者に効力を生じない(相対効) | 441条 |
連帯債務者の一人が反対債権を有しながら相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は債権者に対して履行を拒むことができます(439条2項)。負担部分を超えて全額の履行を拒めるわけではありません。
連帯債務者の一人が弁済等によって共同の免責を得たときは、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分に応じた求償権を有します(442条1項)。
第5部 演習問題12問
なお、本問題集は筆者(当サイト)が独自に作成した予想問題であり、実際の試験問題の的中や出題を保証するものではありません。過去問の文言はそのまま用いず、条文を根拠にオリジナルで作問しています。法令は令和8年4月1日現在施行されているものを基準にしていますが、受験にあたっては最新の法令・公式発表を必ずご確認ください。
問1 履行遅滞・履行不能
債務の履行遅滞・履行不能(412条・412条の2)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 確定期限のある債務は、その期限が到来した時から、履行遅滞の責任を負う。
- 不確定期限のある債務は、その期限が到来した時点で、当然に履行遅滞の責任を負う。
- 期限の定めのない債務は、債務が成立した時から履行遅滞の責任を負う。
- 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときも、債権者はなお履行の請求をすることができる。
解答・解説
正答は1です。
1が正しい記述です。確定期限のある債務は、その期限が到来した時から、履行遅滞の責任を負います(412条1項)。
2は誤りです。不確定期限のある債務は、期限が到来しただけでは足りず、期限到来後に履行の請求を受けた時、又は期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から、履行遅滞の責任を負います(412条2項)。
3は誤りです。期限の定めのない債務は、履行の請求を受けた時から履行遅滞の責任を負います(412条3項)。債務の成立時点からではありません。
4は誤りです。債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者はその履行を請求することができません(412条の2第1項)。
確定期限・不確定期限・期限の定めなしの3パターンで、履行遅滞の起算点が異なる点が急所です。
問2 債務不履行による損害賠償
債務不履行による損害賠償(415条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、その不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであっても、債権者は損害賠償を請求することができる。
- 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は履行が不能であるときは、その不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものである場合を除き、債権者は損害賠償を請求することができる。
- 債権者が債務の履行に代わる損害賠償の請求をするためには、契約を現実に解除していることが要件となる。
- 損害賠償の範囲は、通常生ずべき損害に限られ、特別の事情によって生じた損害は、当事者がその事情を予見すべきであった場合であっても、賠償の対象に含まれない。
解答・解説
正答は2です。
1は誤りです。不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、債権者は損害賠償を請求することができません(415条1項ただし書)。
2が正しい記述です。債務者が債務の本旨に従った履行をしないとき又は履行が不能であるときは、帰責事由がない場合を除き、債権者は損害賠償を請求することができます(415条1項)。
3は誤りです。履行の請求に代わる損害賠償(填補賠償)は、契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したときに請求することができ、現実に解除していることまでは要件とされていません(415条2項3号)。
4は誤りです。特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、賠償の対象に含まれます(416条2項)。
「帰責事由がなければ免責される」という415条1項ただし書の構造と、「特別損害も予見可能性があれば賠償対象になる」という416条2項の構造をあわせて押さえておきましょう。
問3 金銭債務の特則・賠償額の予定
金銭債務の特則(419条)及び賠償額の予定(420条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 金銭債務の不履行による損害賠償の額は、原則として、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定められる。
- 金銭債務の不履行による損害賠償については、債権者は損害の発生を証明しなければならない。
- 金銭債務の不履行については、債務者は不可抗力を理由に損害賠償責任を免れることができる。
- 賠償額の予定をすることは、債務者による履行の請求又は解除権の行使を妨げる。
解答・解説
正答は1です。
1が正しい記述です。金銭債務の不履行による損害賠償の額は、原則として、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定められます(419条1項)。
2は誤りです。金銭債務の不履行による損害賠償については、債権者は損害の証明をすることを要しません(419条2項)。
3は誤りです。金銭債務の不履行については、債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができません(419条3項)。
4は誤りです。賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げません(420条2項)。
金銭債務は「損害の証明が不要」「不可抗力の抗弁が許されない」という2点で、通常の債務不履行より債務者に厳しい特則が置かれている点が急所です。
問4 第三者弁済
第三者弁済(474条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 弁済をするについて正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反する場合であっても、そのことを債権者が知らなかったときは、有効に弁済をすることができる。
- 債務の弁済をすることができるのは債務者本人に限られ、第三者が弁済をすることは認められていない。
- 弁済をするについて正当な利益を有する第三者による弁済についても、債務者の意思に反するときは、その効力を否定される。
- 弁済をするについて正当な利益を有しない第三者は、債権者の意思に反する場合であっても、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をし、そのことを債権者が知っていたときは、有効に弁済をすることができない。
解答・解説
正答は1です。
1が正しい記述です。正当な利益を有しない第三者は、原則として債務者の意思に反して弁済をすることができませんが、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、有効に弁済をすることができます(474条2項ただし書)。
2は誤りです。債務の弁済は、第三者もすることができるのが原則です(474条1項)。
3は誤りです。474条2項本文が「正当な利益を有しない」第三者について債務者の意思に反する弁済を制限しているのに対し、正当な利益を有する第三者による弁済は、債務者の意思に反する場合であってもその効力を否定されません。
4は誤りです。正当な利益を有しない第三者による弁済は、債権者の意思に反してすることができないのが原則ですが、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、有効に弁済をすることができます(474条3項ただし書)。
「正当な利益を有する第三者」と「正当な利益を有しない第三者」とで、債務者・債権者の意思による制限の及び方が異なる点が急所です。
問5 代物弁済・弁済の場所・受取証書
代物弁済(482条)、弁済の場所(484条)、受取証書の交付請求(486条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 代物弁済は、弁済者が債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をした時に、弁済と同一の効力を有する。
- 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡し以外の弁済は、債務者の現在の住所においてしなければならない。
- 弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することはできない。
- 代物弁済の合意をした時点で、現実に給付をしていなくても、弁済と同一の効力が生ずる。
解答・解説
正答は1です。
1が正しい記述です。代物弁済は、弁済者が債権者との間で他の給付をすることにより債務を消滅させる契約をした場合において、実際にその給付をした時に、弁済と同一の効力を有します(482条)。
2は誤りです。特定物の引渡し以外の弁済は、別段の意思表示がないときは、債務者の住所ではなく債権者の現在の住所においてしなければなりません(484条1項)。
3は誤りです。弁済をする者は、弁済と引換えに受取証書の交付を請求することができます(486条1項)。
4は誤りです。代物弁済は、合意をしただけでは足りず、実際に他の給付をした時に弁済と同一の効力を生じます(482条)。
弁済の場所が「債務者の住所」ではなく「債権者の現在の住所」であるという主語のすり替えと、代物弁済は合意だけでなく現実の給付が必要という点が急所です。
問6 弁済による代位
弁済による代位(499条・500条・502条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。
- 弁済をするについて正当な利益を有しない者が債権者に代位するには、467条の規定による対抗要件を備える必要はない。
- 弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合には、467条の対抗要件を備える必要がある。
- 債権の一部について代位弁済があった場合、代位者は、債権者の同意を得ることなく、単独でその権利を行使することができる。
解答・解説
正答は1です。
1が正しい記述です。債務者のために弁済をした者は、債権者に代位します(499条)。
2は誤りです。弁済をするについて正当な利益を有しない者が債権者に代位するには、467条の規定に従った対抗要件を備える必要があります(500条)。
3は誤りです。正当な利益を有する者が代位する場合には、467条の対抗要件は不要です(500条括弧書)。2と3は要件の要否が逆になっています。
4は誤りです。債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて債権者とともにその権利を行使することができます(502条1項)。同意を得ることなく単独で行使できるのは、代位者ではなく債権者の側です(502条2項)。
正当な利益の有無によって467条の対抗要件の要否が逆になる点、そして一部代位弁済の場合に単独行使できるのは債権者であって代位者ではない点が急所です。
問7 相殺の要件・方法
相殺の要件(505条)及び方法・効力(506条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。
- 相殺は、当事者双方の合意がなければすることができず、一方からの意思表示によってすることはできない。
- 相殺の意思表示には、条件又は期限を付することができる。
- 相殺の効力は、相殺の意思表示をした時から将来に向かって生ずる。
解答・解説
正答は1です。
1が正しい記述です。二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができます(505条1項本文)。
2は誤りです。相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってすることができ、双方の合意は不要です(506条1項)。
3は誤りです。相殺の意思表示には、条件又は期限を付することができません(506条1項後段)。
4は誤りです。相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生じます(506条2項)。将来に向かってではありません。
相殺は一方からの意思表示のみでできる単独行為であること、そしてその効力は相殺適状時にさかのぼる点が急所です。
問8 相殺が制限される場合
相殺の禁止・制限(505条2項・508条・509条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
- 時効によって消滅した債権は、その消滅前に相殺に適するようになっていた場合であっても、これを自働債権として相殺をすることはできない。
- 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務については、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができるのが原則である。
- 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務は、悪意による不法行為に基づくものでない場合には、相殺禁止の対象とならない。
解答・解説
正答は1です。
1が正しい記述です。当事者が相殺を禁止・制限する意思表示をした場合、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができます(505条2項)。
2は誤りです。時効によって消滅した債権も、その消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、相殺をすることができます(508条)。
3は誤りです。悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務の債務者は、原則として相殺をもって債権者に対抗することができません(509条1号)。
4は誤りです。人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務は、悪意による不法行為に基づくものでない場合であっても、相殺をもって債権者に対抗することができません(509条2号)。
509条の相殺禁止は、悪意の不法行為(1号)だけでなく、人の生命・身体の侵害による損害賠償債務全般(2号)にも及ぶ点が急所です。
問9 保証の性質・付従性
保証の性質(446条)及び付従性(448条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
- 保証契約は、口頭の合意でその効力を生じ、書面によることは要件とされていない。
- 保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときであっても、これを主たる債務の限度に減縮することはできない。
- 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重される。
解答・解説
正答は1です。
1が正しい記述です。保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負います(446条1項)。
2は誤りです。保証契約は、書面でしなければその効力を生じません(446条2項)。
3は誤りです。保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、主たる債務の限度に減縮されます(448条1項)。
4は誤りです。主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されません(448条2項)。
保証契約は書面(電磁的記録を含む)によらなければ効力を生じないこと、保証人の負担は主たる債務の限度に減縮され、契約後の加重にも影響を受けないことが急所です。
問10 催告の抗弁・検索の抗弁と連帯保証
催告の抗弁・検索の抗弁(452条・453条)及び連帯保証(454条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。
- 保証人は、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたときであっても、催告の抗弁を行使することができる。
- 検索の抗弁を行使するためには、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があることを証明すれば足り、執行の容易性まで証明する必要はない。
- 保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担する連帯保証の場合であっても、保証人は催告の抗弁及び検索の抗弁を行使することができる。
解答・解説
正答は1です。
1が正しい記述です。債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができます(452条本文)。
2は誤りです。主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、催告の抗弁を行使することができません(452条ただし書)。
3は誤りです。検索の抗弁を行使するためには、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ執行が容易であることの両方を証明する必要があります(453条)。
4は誤りです。保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、催告の抗弁・検索の抗弁のいずれも有しません(454条)。
普通保証には催告の抗弁・検索の抗弁がありますが、連帯保証にはこの両方がないという違いが急所です。
問11 保証人への情報提供義務・個人根保証
主たる債務の履行状況に関する情報提供義務(458条の2)、期限の利益喪失時の通知義務(458条の3)、個人根保証契約の極度額(465条の2)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 個人根保証契約は、極度額を定めなければ、その効力を生じない。
- 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合、保証人の請求があっても、債権者は主たる債務の履行状況に関する情報を提供する義務を負わない。
- 主たる債務者が期限の利益を喪失した場合、債権者は、その喪失を知った時から2か月以内に保証人にその旨を通知しなくても、通知前に生じた遅延損害金について保証債務の履行を請求することができる。
- 個人根保証契約における極度額の定めについての規定は、保証人が法人である根保証契約にも同様に適用される。
解答・解説
正答は1です。
1が正しい記述です。個人根保証契約は、極度額を定めなければ、その効力を生じません(465条の2第2項)。
2は誤りです。保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合、保証人の請求があったときは、債権者は遅滞なく主たる債務の履行状況に関する情報を提供しなければなりません(458条の2)。
3は誤りです。債権者は、主たる債務者の期限の利益喪失を知った時から2か月以内に保証人にその旨を通知しなければならず、これを怠ったときは、期限の利益喪失時から通知までに生じた遅延損害金に係る保証債務の履行を請求することができません(458条の3第2項)。
4は誤りです。個人根保証契約は保証人が法人でないものをいい(465条の2第1項)、極度額の規定は保証人が法人である根保証契約には適用されません。
情報提供義務・通知義務・極度額の規定は、いずれも個人(法人でない)保証人の保護を目的とする規定である点が横断的な急所です。
問12 経営者保証の公正証書要件・連帯債務
事業性融資の保証における公正証書の作成(465条の6・465条の9)及び連帯債務(439条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 事業のために負担する貸金等債務を主たる債務とする保証契約は、原則として、その締結に先立ち、締結の日前1か月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じないが、主たる債務者が法人である場合のその取締役等については、この規定は適用されない。
- 公正証書による保証意思確認の規定は、主たる債務者の事業に一時的に関与したことがあるにすぎない者が保証人になろうとする場合であっても、適用が除外される。
- 事業性融資の保証契約における公正証書は、保証契約の締結後1か月以内に作成することとされている。
- 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用しないときは、他の連帯債務者は、自己の負担部分を含め、債務の全額について履行を拒むことができる。
解答・解説
正答は1です。
1が正しい記述です。事業のために負担する貸金等債務を主たる債務とする保証契約は、原則として、その締結に先立ち、締結の日前1か月以内に作成された公正証書で、保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じません(465条の6第1項)。ただし、主たる債務者が法人である場合のその取締役等については、この公正証書の作成は不要です(465条の9第1号)。
2は誤りです。465条の9第3号の適用除外は、主たる債務者の事業に「現に従事している」配偶者など、経営に実質的に関与する者を対象としており、事業に一時的に関与したことがあるにすぎない者は、この適用除外の対象に含まれません。
3は誤りです。公正証書は、保証契約の締結に先立ち、締結の日前1か月以内に作成されていなければならず、締結後に作成するのでは要件を満たしません(465条の6第1項)。
4は誤りです。連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有し、その連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は債権者に対して履行を拒むことができます(439条2項)。負担部分を超えて全額の履行を拒めるわけではありません。
経営者保証の公正証書要件は、契約締結に「先立って」作成する必要があるという時系列の要件と、適用除外の対象が経営に実質的に関与する者に限られるという範囲の要件をあわせて押さえておきましょう。
まとめ
- 履行遅滞の起算点は、確定期限・不確定期限・期限の定めなしの3パターンで異なる(412条)
- 債務不履行による損害賠償は帰責事由がなければ免責され(415条1項ただし書)、損害賠償の範囲は通常損害に予見可能な特別損害を加えたもの(416条)
- 金銭債務は損害の証明が不要で不可抗力の抗弁も許されないという特則がある(419条)
- 第三者弁済・弁済による代位は、「正当な利益」の有無によって要件が変わる(474条・500条)
- 相殺は一方からの意思表示による単独行為で、効力は相殺適状時にさかのぼる(506条)。悪意の不法行為・生命身体侵害の損害賠償債務は受働債権とする相殺が禁止される(509条)
- 保証は書面必須・付従性があり、連帯保証には催告の抗弁・検索の抗弁がない(446条・448条・454条)
- 個人根保証には極度額、事業性融資の保証には公正証書という個人保証人保護の規定があるが、経営者本人等には適用されない(465条の2・465条の6・465条の9)
- 連帯債務は更改・相殺・混同が絶対効、それ以外は原則として相対効(438条〜441条)
免責事項
- 本記事の演習問題はすべて筆者が独自に作成した予想問題であり、実際の宅建試験問題の的中や出題を保証するものではありません。
- 作問にあたっては、過去問の文言をそのまま転載せず、条文を根拠に独自に作問しています。
- 法令は改正されることがあります。本記事の内容は執筆時点の情報に基づくものであり、最新の法令・制度については法務省・国土交通省や実施団体(一般財団法人 不動産適正取引推進機構)などの一次情報を必ずご自身で確認してください。
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