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区分所有法をゼロから整理する|専有部分・共用部分・敷地利用権と、決議要件の一覧(令和7年改正対応)

宅建士試験の権利関係14問のうち、区分所有法は毎年ほぼ1問が出題される固定枠の分野です。分譲マンションのように一棟の建物を複数人で区分して所有する場合の権利関係を定める特別法であり、条文数は多いものの、出題されるポイントは「共用部分の変更・管理・規約の設定変更・集会の決議など、それぞれの意思決定にどれだけの賛成が必要か」という決議要件の一覧に集中しています。この記事では、権利関係が苦手な人のための読み方教科書借地借家法の整理記事と同じ「図表で整理する」アプローチで、区分所有法の決議要件を横断的に押さえます。

なお区分所有法は、令和7年(2025年)の法改正により、決議の定足数・多数決の考え方が大きく見直され、令和8年4月1日から施行されています。本記事はこの改正後の条文に基づいて整理しています。


この記事の使い方

パート内容
第1部専有部分・共用部分・敷地利用権の基礎と、分離処分の禁止
第2部共用部分の変更・管理(令和7年改正による決議要件の見直し)
第3部規約・集会(規約の設定変更廃止・招集手続・書面電磁的決議)
第4部義務違反者に対する措置・復旧・建替え決議(決議要件の総まとめ表)
第5部演習問題12問(オリジナル作問)

第1部 専有部分・共用部分・敷地利用権の基礎

1-1 基本用語の整理

用語意味条文
区分所有権一棟の建物に構造上区分され、独立して住居・店舗・事務所・倉庫等の用途に供することができる建物の部分(専有部分)を目的とする所有権1条・2条1項
区分所有者区分所有権を有する者2条2項
専有部分区分所有権の目的たる建物の部分2条3項
共用部分専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物、及び規約により共用部分とされた附属の建物2条4項・4条
敷地利用権専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利(所有権・賃借権等)2条6項

共用部分には、廊下・階段室のように構造上当然に共用部分となるもの(法定共用部分)と、管理人室や集会室のように、本来は専有部分になり得る建物の部分を規約によって共用部分とするもの(規約共用部分)の2種類があります。規約共用部分は、その旨の登記をしなければ第三者に対抗することができません(4条2項)。

1-2 共用部分の共有と持分割合

共用部分は区分所有者全員の共有に属するのが原則で(一部の区分所有者のみの共用に供される「一部共用部分」を除く)、各共有者の持分は、原則としてその有する専有部分の床面積の割合によります(11条・14条1項)。この割合は、規約で別段の定めをすることも認められています(14条4項)。共用部分の持分は専有部分の処分に従うものとされ、専有部分と分離して共用部分の持分だけを処分することは、規約に別段の定めがある場合を除きできません(15条)。

1-3 分離処分の禁止

区分所有者が数人で敷地利用権を有する場合、専有部分と敷地利用権は、原則として分離して処分することができません(22条1項)。マンションの一室だけを売買しても、その専有部分に対応する敷地利用権(土地の共有持分等)が当然に一緒に移転する、という仕組みです。この原則は規約で別段の定めをすることで排除することもできますが、原則と例外の関係(原則は分離処分禁止、規約で別段の定めをすれば分離処分が可能になる)を取り違えないようにしましょう。


第2部 共用部分の変更・管理(令和7年改正の急所)

2-1 保存行為・管理・変更の3区分

共用部分に関する意思決定は、行為の重さに応じて3段階に分かれています。

行為の種類決定方法条文
保存行為(現状維持のための行為)各共有者が単独ですることができる18条1項ただし書
管理(軽微な変更を含む、保存行為を除く日常的な管理)集会の決議(規約に別段の定めがない限り、出席区分所有者及び議決権の各過半数)18条1項本文・39条1項
変更(その形状又は効用の著しい変更を伴うもの=重大な変更)集会の特別決議17条1項

2-2 令和7年改正の最大のポイント:決議要件の「出席者ベース化」

令和7年改正前は、共用部分の重大な変更や規約の設定変更廃止などの特別決議は、集会への出席の有無にかかわらず、区分所有者総数を母数として「区分所有者及び議決権の各4分の3以上」の賛成を必要とする建付けでした。空室化・高齢化が進むマンションでは、総数を母数にすると連絡が取れない区分所有者の分だけ決議が成立しにくくなるという問題が指摘されており、令和7年改正は、共用部分の変更(17条)・規約の設定変更廃止(31条)・使用禁止の請求(58条)・区分所有権の競売の請求(59条)・大規模滅失時の復旧(61条5項)について、まず集会に一定数が出席していることを要件(定足数)とした上で、その出席者を母数として多数決割合を判定する方式に改めました。

具体的には、共用部分の重大な変更(17条1項)の決議は、次の2段階で判断します。

  1. 定足数:区分所有者の過半数(規約でこれを上回る割合に加重可)であって、議決権の過半数(同)を有するものが出席していること
  2. 多数決:出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上(規約で2分の1を超える範囲内で軽減可)の賛成

さらに、共用部分の設置・保存の瑕疵の除去に関する変更や、高齢者・障害者等の移動上の利便性・安全性を向上させるための変更(バリアフリー化)については、多数決の割合が4分の3から3分の2に緩和されています(17条5項)。

2-3 共用部分の変更に伴う専有部分の保存行為等の特則

共用部分の変更の決議をする場合において、規約に特別の定めがあるときは、その変更に伴い必要となる専有部分の保存行為等(専有部分の保存行為又は性質を変えない範囲内の利用・改良行為)についても、あわせて集会の決議で定めることができます(17条3項)。この場合、決議の対象となる専有部分の区分所有者の利用状況や、その区分所有者が既に支払った対価などの事情を考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるようにしなければなりません(17条4項)。老朽化した給排水管の一括更新など、共用部分の工事に伴って専有部分内の配管にも手を入れる必要がある場面を想定した規定です。


第3部 規約・集会

3-1 規約の設定・変更・廃止

規約の設定、変更又は廃止も、共用部分の重大な変更と同様に、令和7年改正で出席者ベースの決議に改められています(31条1項)。

  • 定足数:区分所有者の過半数(規約でこれを上回る割合に加重可)であって、議決権の過半数(同)を有するものが出席していること
  • 多数決:出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上の賛成

共用部分の変更(17条1項)とは異なり、規約の設定変更廃止の4分の3という多数決の割合そのものは、規約によって軽減することはできません(31条1項には17条1項のような軽減の定めがありません)。また、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その区分所有者の承諾を得なければなりません(31条1項後段)。

3-2 集会の招集・議決権

集会は、原則として管理者が少なくとも毎年1回招集しなければならず、招集の通知は、会日より少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項を示して発しなければなりません(この期間は規約で伸縮可)。各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、共用部分の持分割合(14条に定める割合)によります(38条)。議決権は、書面又は代理人によっても行使することができ、規約又は集会の決議により、電磁的方法によって行使することもできます(39条2項・3項)。

3-3 書面又は電磁的方法による決議

区分所有者全員の承諾があるときは、集会を開催せずに、書面又は電磁的方法による決議をすることもできます(45条1項)。また、集会で決議すべきものとされた事項について区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があったときは、書面又は電磁的方法による決議があったものとみなされます(45条2項)。これらの決議は、集会の決議と同一の効力を有します(45条3項)。


第4部 義務違反者に対する措置・復旧・建替え決議

4-1 義務違反者に対する措置

区分所有者が建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、その行為の停止等を請求することができます(57条1項)。この請求について訴訟を提起するには、集会の決議によらなければなりませんが(57条2項)、この決議自体は特別決議ではなく、通常の集会の決議(出席区分所有者及び議決権の各過半数)で足ります。これに対し、障害が著しく専有部分の使用禁止を求める場合(58条)や、区分所有権及び敷地利用権の競売を請求する場合(59条)は、いずれも出席区分所有者及び議決権の各4分の3以上の特別決議が必要です。使用禁止の請求をするには、あらかじめ、当該区分所有者に弁明の機会を与えなければなりません(58条3項)。

4-2 建物の一部滅失時の復旧

建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失した場合(小規模滅失)は、各区分所有者が、滅失した共用部分及び自己の専有部分を単独で復旧することができます(61条1項)。これに対し、建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合(大規模滅失)は、各区分所有者が単独で復旧することはできず、集会において、出席区分所有者及び議決権の各3分の2以上の多数による復旧決議が必要です(61条5項)。

4-3 建替え決議 — 出席者ベース化の「対象外」という急所

ここまで見てきた共用部部分の変更・規約の設定変更廃止・使用禁止請求・競売請求・大規模滅失の復旧は、いずれも令和7年改正で出席者ベースの決議に改められました。しかし、建替え決議(62条)だけは、この出席者ベース化の対象になっていません。建替え決議は、令和7年改正後も、集会への出席の有無にかかわらず、区分所有者総数及び議決権総数を母数として、各5分の4以上の多数による決議が必要とされています(62条1項)。「特別決議はすべて出席者ベースに変わった」と短絡的に覚えていると、建替え決議で読み違えることになります。

ただし、建替え決議には令和7年改正で新しい例外が追加されました。建物が次のいずれかの基準(法務大臣が定める基準)に該当する場合は、5分の4という多数決の割合が4分の3に緩和されます(62条2項)。

  • 地震に対する安全性に係る基準に適合していない(耐震性不足)
  • 火災に対する安全性に係る基準に適合していない
  • 外壁・外装材等が剝離・落下し周辺に危害を生ずるおそれがある
  • 給排水等の配管設備の劣化により著しく衛生上有害となるおそれがある
  • 高齢者・障害者等の移動等円滑化基準に準ずる基準に適合していない(バリアフリー基準不適合)

老朽化・耐震性不足のマンションで建替えを進めやすくするための改正であり、この4分の3への緩和も、17条5項の3分の2緩和と同様、多数決の割合を下げる例外であって、出席者ベースへの変更ではない点に注意してください。

4-4 決議要件の総まとめ表

決議事項定足数(集会への出席要件)多数決の割合条文
保存行為不要(各共有者が単独で可能)18条1項ただし書
共用部分の管理(軽微な変更を含む)規約に別段の定めがない限り特段の定めなし出席区分所有者及び議決権の各過半数18条1項本文・39条1項
共用部分の重大な変更区分所有者及び議決権の各過半数の出席出席区分所有者及び議決権の各4分の3以上(規約で2分の1超まで軽減可)17条1項
共用部分の重大な変更(瑕疵除去・バリアフリー化)同上出席区分所有者及び議決権の各3分の2以上17条5項
規約の設定・変更・廃止区分所有者及び議決権の各過半数の出席(規約で加重可)出席区分所有者及び議決権の各4分の3以上31条1項
使用禁止の請求同上出席区分所有者及び議決権の各4分の3以上58条2項
区分所有権の競売の請求同上出席区分所有者及び議決権の各4分の3以上59条
大規模滅失(建物価格の2分の1超)の復旧同上出席区分所有者及び議決権の各3分の2以上61条5項
建替え決議定めなし(区分所有者総数が母数)区分所有者及び議決権の各5分の4以上(耐震性等不足建物は各4分の3以上)62条1項・2項

第5部 演習問題12問

なお、本問題集は筆者(当サイト)が独自に作成した予想問題であり、実際の試験問題の的中や出題を保証するものではありません。過去問の文言はそのまま用いず、条文を根拠にオリジナルで作問しています。法令は令和8年4月1日現在施行されているもの(令和7年改正後の区分所有法を含む)を基準にしていますが、受験にあたっては最新の法令・公式発表を必ずご確認ください。


問1 専有部分・共用部分・分離処分の禁止

区分所有建物の専有部分・共用部分・敷地利用権に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 管理人室のように、構造上専有部分となり得る建物の部分は、規約によって共用部分とすることはできない。
  2. 規約によって共用部分とされた建物の部分は、その旨の登記をしなくても、第三者に対抗することができる。
  3. 区分所有者が数人で敷地利用権を有する場合、専有部分とそれに対応する敷地利用権は、規約に別段の定めがある場合を除き、分離して処分することができない。
  4. 共用部分の持分は、専有部分の処分にかかわらず、専有部分とは独立して処分の対象となる。

解答・解説

正答は3です。

1は誤りです。管理人室や集会室のように構造上専有部分となり得る建物の部分は、規約によって共用部分とすることができます(4条2項)。

2は誤りです。規約により共用部分とされた建物の部分は、その旨の登記をしなければ第三者に対抗することができません(4条2項後段)。

3が正しい記述です。区分所有者が数人で敷地利用権を有する場合、専有部分とそれに対応する敷地利用権は、規約に別段の定めがある場合を除き、分離して処分することができません(22条1項)。

4は誤りです。共用部分の持分は専有部分の処分に従うものとされ、規約に別段の定めがある場合を除き、専有部分と分離して共用部分の持分だけを処分することはできません(15条)。

分離処分の禁止は「敷地利用権」(22条)と「共用部分の持分」(15条)のいずれについても定められており、いずれも規約で別段の定めをすれば分離処分が可能になるという原則と例外の関係を押さえておきましょう。


問2 共用部分の持分割合

共用部分の共有関係(11条・14条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 各共有者の共用部分の持分は、規約に別段の定めがない限り、区分所有者の頭数に応じて等しく配分される。
  2. 各共有者の共用部分の持分は、規約に別段の定めがない限り、その有する専有部分の床面積の割合による。
  3. 共用部分の持分の割合は、規約によって別段の定めをすることが認められておらず、専有部分の床面積の割合による。
  4. 一部共用部分は、区分所有者全員の共有に属するのが原則であり、これを共用すべき区分所有者の共有とすることは認められていない。

解答・解説

正答は2です。

1は誤りです。共用部分の持分は、原則として頭数ではなく、有する専有部分の床面積の割合によります(14条1項)。

2が正しい記述です。各共有者の共用部分の持分は、規約に別段の定めがない限り、その有する専有部分の床面積の割合によります(14条1項)。

3は誤りです。この床面積割合という原則は、規約で別段の定めをすることが認められています(14条4項)。

4は誤りです。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(一部共用部分)は、それらの区分所有者の共有に属し、区分所有者全員の共有になるわけではありません(11条1項ただし書)。

床面積割合という原則自体は規約で変更できる点、そして一部共用部分は区分所有者全員ではなく該当する区分所有者だけの共有になる点をあわせて押さえておきましょう。


問3 共用部分の重大な変更の決議要件

共用部分の変更(形状又は効用の著しい変更を伴うもの)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 共用部分の重大な変更の決議には、集会への出席の有無にかかわらず、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成があれば足りる。
  2. 共用部分の重大な変更の決議には、区分所有者及び議決権の各過半数を有する者の出席という定足数を満たした上で、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上の賛成が必要である。
  3. 共用部分の重大な変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときであっても、決議の要件を満たしていれば、当該専有部分の所有者の承諾は不要である。
  4. 共用部分の重大な変更の決議に必要な出席者ベースの多数決割合(4分の3)は、いかなる場合にも規約で軽減することができない。

解答・解説

正答は2です。

1は誤りです。令和7年改正により、共用部分の重大な変更の決議は、区分所有者総数を母数とする方式ではなく、まず一定の定足数を満たす出席を要件とした上で、出席者を母数として多数決を判定する方式に改められています(17条1項)。

2が正しい記述です。共用部分の重大な変更の決議には、区分所有者の過半数(規約で加重可)であって議決権の過半数(同)を有する者の出席という定足数を満たした上で、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上の賛成が必要です(17条1項)。

3は誤りです。共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、決議の要件を満たしていても、別途その専有部分の所有者の承諾を得なければなりません(17条2項)。

4は誤りです。出席者ベースの多数決割合(4分の3)は、2分の1を超える範囲内であれば、規約によって軽減することができます(17条1項括弧書)。

令和7年改正の要点は「定足数を新設した上で、母数を総数から出席者に変更した」という2段階の変化にあります。この変化がどの決議事項に及んでいるかを、次の問4以降でも確認していきます。


問4 瑕疵除去・バリアフリー化に関する変更の特則

共用部分の変更のうち、瑕疵の除去やバリアフリー化に関する特則(17条5項)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 共用部分の設置又は保存の瑕疵の除去に必要な変更や、高齢者・障害者等の移動上の利便性・安全性を向上させるための変更については、出席者ベースの多数決割合が4分の3から3分の2に緩和される。
  2. 瑕疵の除去やバリアフリー化に関する変更であっても、定足数(区分所有者及び議決権の各過半数の出席)そのものは要求されない。
  3. 瑕疵の除去やバリアフリー化に関する変更については、多数決割合が緩和される代わりに、区分所有者全員の同意が別途必要とされる。
  4. 瑕疵の除去やバリアフリー化に関する変更に関する特則は、規約の設定・変更・廃止の決議についても同様に適用される。

解答・解説

正答は1です。

1が正しい記述です。共用部分の設置又は保存の瑕疵の除去に関して必要となる変更や、高齢者・障害者等の移動上・施設利用上の利便性及び安全性を向上させるための変更については、出席者ベースの多数決割合が4分の3から3分の2に緩和されます(17条5項)。

2は誤りです。17条5項は多数決の割合(4分の3→3分の2)を緩和する特則であり、17条1項の定足数の要件自体を不要にするものではありません。

3は誤りです。緩和の代わりに区分所有者全員の同意を別途必要とする規定はありません。

4は誤りです。17条5項の緩和は共用部分の変更(17条)に関する特則であり、規約の設定・変更・廃止(31条)には適用されません。

「多数決割合を緩和する特則」は、定足数の要件まで免除するものではないという点、そして17条固有の特則であり31条には及ばない点を押さえておきましょう。


問5 共用部分の管理・保存行為

共用部分の管理及び保存行為(18条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 共用部分の保存行為は、集会の決議によらなければ、各共有者が単独ですることはできない。
  2. 共用部分の管理に関する事項(保存行為及び重大な変更を除く)は、規約に別段の定めがない限り、集会の決議で決する。
  3. 共用部分につき損害保険契約を締結することは、共用部分の管理に関する事項にはあたらない。
  4. 共用部分の管理に関する事項について規約で別段の定めをすることは、認められていない。

解答・解説

正答は2です。

1は誤りです。共用部分の保存行為は、各共有者が単独ですることができます(18条1項ただし書)。集会の決議は不要です。

2が正しい記述です。共用部分の管理に関する事項(重大な変更を除く)は、規約に別段の定めがない限り、集会の決議で決します(18条1項本文)。

3は誤りです。共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなされます(18条6項)。

4は誤りです。共用部分の管理に関する事項について、規約で別段の定めをすることが認められています(18条2項)。

保存行為(単独可)・管理(集会の普通決議)・重大な変更(集会の特別決議)という3段階の区分と、それぞれの決定方法の違いが急所です。


問6 規約の設定・変更・廃止

規約の設定、変更又は廃止(31条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 規約の設定、変更又は廃止は、集会への出席の有無にかかわらず、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成があれば足りる。
  2. 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各過半数を有する者の出席という定足数を満たした上で、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上の賛成によってする。
  3. 規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときであっても、その区分所有者の承諾は不要である。
  4. 規約の設定、変更又は廃止に必要な出席者ベースの多数決割合(4分の3)は、共用部分の変更(17条)と同様に、規約で2分の1を超える範囲内まで軽減することができる。

解答・解説

正答は2です。

1は誤りです。規約の設定・変更・廃止も、令和7年改正により出席者ベースの決議に改められています(31条1項)。

2が正しい記述です。規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者の過半数(規約で加重可)であって議決権の過半数(同)を有する者の出席という定足数を満たした上で、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上の賛成によってします(31条1項)。

3は誤りです。規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その区分所有者の承諾を得なければなりません(31条1項後段)。

4は誤りです。31条1項の4分の3という多数決割合そのものを規約で軽減できる旨の定めはありません。この軽減規定は17条1項に固有のものであり、31条には及びません。

31条の定足数(過半数)は規約で加重できても、多数決割合(4分の3)は17条のように軽減できないという非対称性が、この論点の急所です。


問7 集会の招集・議決権

集会の招集及び議決権(35条・38条・39条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 集会の招集の通知は、会日より少なくとも1週間前に発しなければならず、この期間は規約によっても伸縮することができない。
  2. 各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、共用部分の持分割合による。
  3. 議決権は、書面によって行使することはできるが、代理人によって行使することは認められていない。
  4. 議決権を電磁的方法によって行使することは、規約又は集会の決議がなくても認められる。

解答・解説

正答は2です。

1は誤りです。招集通知の1週間前という期間は、規約によって伸縮することができます(35条1項)。

2が正しい記述です。各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、共用部分の持分割合(14条に定める割合)によります(38条)。

3は誤りです。議決権は、書面だけでなく、代理人によっても行使することができます(39条2項)。

4は誤りです。議決権を電磁的方法によって行使するには、規約又は集会の決議が必要です(39条3項)。常に認められるわけではありません。

議決権の割合は共用部分の持分割合と連動しているという原則と、書面・代理人・電磁的方法という3つの行使方法のうち電磁的方法だけは規約又は決議を要件とする点をあわせて押さえておきましょう。


問8 書面又は電磁的方法による決議

書面又は電磁的方法による決議(45条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 区分所有者全員の承諾があるときは、集会を開催せずに、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。
  2. 書面又は電磁的方法による決議は、集会の決議とは異なる効力を有し、集会の決議に代わるものとして扱われることはない。
  3. 集会で決議すべきものとされた事項について区分所有者の一部の書面による合意があれば、書面による決議があったものとみなされる。
  4. 電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾は、口頭による承諾で足りる。

解答・解説

正答は1です。

1が正しい記述です。区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができます(45条1項)。

2は誤りです。書面又は電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有します(45条3項)。

3は誤りです。区分所有者「全員」の書面又は電磁的方法による合意があったときに、書面又は電磁的方法による決議があったものとみなされます(45条2項)。一部の合意では足りません。

4は誤りです。電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾は、法務省令で定めるところによらなければならず、口頭による承諾で足りるものではありません(45条1項ただし書)。

書面又は電磁的方法による決議は「集会を開かずに済ませる例外的な方法」ですが、区分所有者全員の関与(全員の承諾、又は全員の合意)が要件とされている点が急所です。


問9 使用禁止の請求・競売の請求

義務違反者に対する使用禁止の請求(58条)・競売の請求(59条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 使用禁止の請求の決議には、区分所有者及び議決権の各過半数の賛成があれば足りる。
  2. 使用禁止の請求をするには、あらかじめ、当該区分所有者に弁明する機会を与えなければならない。
  3. 区分所有権の競売の請求についての決議は、集会への出席の有無にかかわらず、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成があれば足りる。
  4. 停止等の請求(57条)についての訴訟提起の決議は、使用禁止の請求や競売の請求と同じく、出席区分所有者及び議決権の各4分の3以上の特別決議によらなければならない。

解答・解説

正答は2です。

1は誤りです。使用禁止の請求の決議には、出席区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要です(58条2項)。過半数では足りません。

2が正しい記述です。使用禁止の請求をするには、あらかじめ、当該区分所有者に弁明する機会を与えなければなりません(58条3項)。

3は誤りです。競売の請求の決議も、令和7年改正により出席者ベースの決議に改められています(59条2項、58条2項の準用)。集会への出席の有無にかかわらないとする点が誤りです。

4は誤りです。停止等の請求(57条)についての訴訟提起の決議は、通常の集会の決議(出席区分所有者及び議決権の各過半数)で足り、使用禁止・競売の請求のような4分の3以上の特別決議は要求されていません。

義務違反者に対する措置は、①停止等の請求(訴訟提起は普通決議)、②使用禁止の請求(特別決議・弁明機会が必要)、③競売の請求(特別決議)という3段階で重さが異なる点を押さえておきましょう。


問10 建物の一部滅失時の復旧

建物の一部が滅失した場合の復旧(61条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を単独で復旧することができる。
  2. 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失したときも、各区分所有者は、集会の決議を経ることなく単独で共用部分を復旧することができる。
  3. 大規模滅失の場合の復旧決議は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要である。
  4. 小規模滅失・大規模滅失のいずれの場合も、復旧に関する規定について規約で別段の定めをすることは認められていない。

解答・解説

正答は1です。

1が正しい記述です。建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失した場合(小規模滅失)、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を復旧することができます(61条1項)。

2は誤りです。建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合(大規模滅失)は、各区分所有者が単独で復旧することはできず、集会の決議による必要があります(61条5項)。

3は誤りです。大規模滅失の場合の復旧決議は、出席区分所有者及び議決権の各3分の2以上の賛成で足ります(61条5項)。4分の3ではありません。

4は誤りです。復旧に関する規定は、規約で別段の定めをすることが認められています(61条4項)。

小規模滅失(2分の1以下)は各人が単独で復旧可能、大規模滅失(2分の1超)は出席者ベースの3分の2以上の決議が必要という区分と、その多数決割合(3分の2)が急所です。


問11 建替え決議①(母数の考え方)

建替え決議(62条)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 建替え決議は、共用部分の変更や規約の設定変更廃止と同様に、令和7年改正により出席者ベースの決議に改められている。
  2. 建替え決議は、令和7年改正後も、集会への出席の有無にかかわらず、区分所有者総数及び議決権総数を母数として、各5分の4以上の多数によることが原則である。
  3. 建替え決議は、区分所有者の過半数の出席という定足数を満たせば、出席した区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成で足りる。
  4. 建替え決議に必要な多数決の割合は、建物の耐震性等の状況にかかわらず5分の4であり、これより緩和される場合はない。

解答・解説

正答は2です。

1は誤りです。建替え決議は、共用部分の変更(17条)や規約の設定変更廃止(31条)とは異なり、令和7年改正でも出席者ベースの決議には改められていません。

2が正しい記述です。建替え決議は、令和7年改正後も、区分所有者総数及び議決権総数を母数として、各5分の4以上の多数によることが原則です(62条1項)。

3は誤りです。建替え決議には、17条や31条のような出席の定足数の定めはなく、総数を母数とする決議です。

4は誤りです。建物が耐震性の不足など一定の基準に該当する場合には、5分の4という多数決の割合が4分の3に緩和されます(62条2項)。次の問12で確認します。

共用部分の変更・規約の設定変更廃止・使用禁止や競売の請求・大規模滅失の復旧が軒並み出席者ベースに改められた一方、建替え決議だけは総数ベースのまま維持されているという非対称性が、この分野で最も見落としやすい急所です。


問12 建替え決議②(耐震性等不足建物の特例)

建替え決議の多数決割合の緩和(62条2項)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 建物が地震に対する安全性に係る基準に適合していない場合、建替え決議の多数決割合は5分の4から3分の2に緩和される。
  2. 建物が耐震性等の一定の基準に該当する場合、建替え決議の多数決割合は5分の4から4分の3に緩和される。
  3. 建替え決議の多数決割合の緩和は、建物の耐震性が不足している場合に限られ、火災に対する安全性の不足や配管設備の劣化を理由とする緩和は認められていない。
  4. 建替え決議の多数決割合が緩和される場合、あわせて定足数(区分所有者の過半数の出席)の要件も新設される。

解答・解説

正答は2です。

1は誤りです。緩和後の多数決割合は3分の2ではなく4分の3です。

2が正しい記述です。建物が、耐震性・耐火性・外壁等の剝離落下・配管設備の劣化・バリアフリー基準不適合という一定の基準(法務大臣が定める基準)のいずれかに該当する場合、建替え決議の多数決割合は5分の4から4分の3に緩和されます(62条2項)。

3は誤りです。緩和事由は耐震性不足に限られず、火災に対する安全性の不足、外壁等の剝離・落下のおそれ、配管設備の著しい劣化、バリアフリー基準への不適合の5つの基準のいずれかに該当すれば緩和の対象となります。

4は誤りです。62条2項は多数決の割合を緩和する規定であり、建替え決議に定足数(出席要件)を新設するものではありません。建替え決議は緩和後も総数ベースの決議のままです。

老朽化・耐震性不足のマンションの建替えを進めやすくするための緩和であり、対象となる基準が耐震性だけでなく5種類に及ぶ点、そして緩和されるのはあくまで多数決の割合(5分の4→4分の3)であって定足数ではない点を押さえておきましょう。


まとめ

  • 専有部分・共用部分・敷地利用権の基本用語と、専有部分と敷地利用権の分離処分の禁止(22条)・共用部分の持分の分離処分の禁止(15条)を押さえる
  • 共用部分は「保存行為(単独可)」「管理(集会の普通決議)」「重大な変更(集会の特別決議)」の3段階で決定方法が異なる
  • 令和7年改正の最大のポイントは、共用部分の変更・規約の設定変更廃止・使用禁止や競売の請求・大規模滅失の復旧について、決議の母数を「区分所有者総数」から「一定の定足数を満たした出席者」に改めたこと
  • 建替え決議(62条)だけは、令和7年改正後も出席者ベースに改められておらず、区分所有者総数を母数とする各5分の4以上(耐震性等不足建物は各4分の3以上)の多数決のまま
  • 瑕疵除去・バリアフリー化に関する共用部分の変更(17条5項)は多数決割合が3分の2に、耐震性等不足建物の建替え決議(62条2項)は4分の3に、それぞれ緩和される

免責事項

  • 本記事の演習問題はすべて筆者が独自に作成した予想問題であり、実際の宅建試験問題の的中や出題を保証するものではありません。
  • 作問にあたっては、過去問の文言をそのまま転載せず、条文を根拠に独自に作問しています。
  • 法令は改正されることがあります。本記事の内容は執筆時点の情報に基づくものであり、最新の法令・制度については法務省・国土交通省や実施団体(一般財団法人 不動産適正取引推進機構)などの一次情報を必ずご自身で確認してください。

この記事とあわせて、権利関係が苦手な人のための読み方教科書借地借家法をゼロから整理する不動産登記法をゼロから整理する|住所等変更登記の義務化(令和8年4月1日施行)に対応宅建 1日20問ドリル|30日で全単元を一巡する予想問題600問(令和8年度対応)もご覧ください。

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