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令和8年 一級建築士 設計製図の課題「ホテル」の読み解き|要求図書・留意事項と設備計画の視点

令和8年7月24日、公益財団法人 建築技術教育普及センター(以下、センター)が令和8年度 一級建築士「設計製図の試験」の課題を「ホテル」と公表しました。学科試験(7月26日実施)を終えたばかりの方にとっては、自己採点の結果が気になりつつも、10月11日の設計製図試験に向けた準備をいつ始めるかを考え始める時期だと思います。

この記事では、センターが公表した課題名・要求図書・留意事項の要点を一次情報として整理したうえで、筆者が建築設備の実務者として日々向き合っている視点から、「ホテル」という課題を設備面でどう読むかを解説します。当サイトはもともと建築設備の解説を専門にしているため、間取りやエスキスの型そのものよりも、留意事項に明記された「空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する」という一文をどう具体化するかに絞って掘り下げます。

本記事は課題の一次情報の整理と設備面の一般的な考え方の紹介にとどまり、具体的なプラン例や合格基準の予想は行いません。設計製図試験全体の対策・エスキスの進め方については、市販の対策本や資格学校の情報も必ずあわせてご確認ください。


令和8年度「設計製図の試験」課題が公表されました(7月24日)

センターは令和8年7月24日付で、「令和8年一級建築士試験『設計製図の試験』の課題を公表しました」として、下記の内容を公式ページで発表しています。

  • 課題名:ホテル
  • 試験実施日:令和8年10月11日(日曜)

センターの発表文には「一級建築士試験は、建築士法第13条及び第15条の2の規定に基づき、国土交通大臣の指定する中央指定試験機関である公益財団法人建築技術教育普及センターが実施しているものです」との記載もあり、課題の公表自体が正式な試験実施プロセスの一部であることが分かります。最新かつ正確な情報は、必ずセンターの公式ページでご確認ください。


課題名「ホテル」の要求図書と留意事項

センターが公表した要求図書は、次のとおりです。

要求図書縮尺
1階平面図・配置図1/200
各階平面図(試験問題中の設計条件等で指定)1/200
断面図1/200
面積表
計画の要点等

このうち「各階平面図については、試験問題中に示す設計条件等において指定する」という一文がある点は、他の課題と読み比べる際にも押さえておきたいポイントです。要求される階数・図面の組み合わせは、当日配布される試験問題本文で確定するため、公表時点では「1/200の各階平面図が求められる」という骨格までしか分かりません。

続いて、「建築物の計画に当たっての留意事項」として、センターは次の6項目を挙げています(原文の要点を箇条書きで整理したものです。正確な文言は必ず公式ページでご確認ください)。

  1. 敷地の周辺環境や既存建築物の現状保存に配慮して計画する
  2. バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮して計画する
  3. 各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする
  4. 建築物全体が構造耐力上安全であるとともに、経済性に配慮して計画する
  5. 構造種別に応じて架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を計画する
  6. 空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する

このほか、「試験問題」及び上記の留意事項を十分に理解したうえで臨むこと、建築基準法等の関係法令や要求図書・要求室等の設計与条件に対して解答内容が不適合・不十分な場合は「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」等と判断される旨、また課題の参考となる施設への見学等を行う場合は施設管理者の指示に従うなど社会通念上良識のある行動を取ってほしい旨が、注意事項として記載されています。

当サイトが特に注目しているのは、6項目目の「空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する」という一文です。設計製図試験は意匠・構造の得点配分が大きい試験ではありますが、留意事項に明記されている以上、設備計画の破綻(著しい不整合や重大な不適合)は評価に影響し得ると読むのが自然です。次の章以降、この一文を設備の実務目線で分解していきます。


図で見る(ホテル課題のゾーニング概念図)

ホテルの断面構成を、低層部の共用・宴会・厨房・レストラン部分、基準階の客室部分、そして屋上・機械諸室に3分割し、それぞれで空調・給湯・電気・昇降機・防災の系統をどう考えるかを示す模式図

上図は考え方を示す模式図であり、実際の課題文の設計条件・要求室とは対応しません。具体的な計画は必ず当日の試験問題本文に基づいて行ってください。


「ホテル」という課題の特徴

一級建築士の設計製図試験は、その年ごとに異なる用途の建築物が課題として指定される試験です。過去の課題名はセンターの「過去の試験問題等」ページで試験問題そのものが公開されており、筆者が実際に確認したところ、平成29年(2017年)の課題は「小規模なリゾートホテル」でした。当時の問題用紙には、山間の旧街道沿いの宿場町に「小規模なリゾートホテル」を計画するという設定で、客室(洋室・和室)、レストラン、大浴場、トレーニングルーム、リネン室などの要求室が示されています。

つまり「ホテル」または宿泊機能を持つ施設が課題になるのは、少なくとも令和8年度が初めてではありません。ただし、平成29年の課題と令和8年度の課題とでは、建物規模・要求室・設計条件が大きく異なる可能性が高く、過去問がそのまま今回の参考になるとは限りません。センターの過去問題ページで公開されている試験問題は、著作権等の理由で一部非公開の年度もあり、また「試験問題等は、個人利用の目的以外に、無断で転載・複製することを禁止」されているため、本記事でも要点の紹介にとどめます。過去問そのものを確認したい方は、センターの公式ページから各年度のPDFをご参照ください。

なお、それより前の年度についても、資格学校や受験対策サイトの一部でホテル・宿泊施設に近い課題(リゾートホテル、シティホテル、ビジネスホテルと複合施設など)が過去に出題されたとする情報が見られますが、これらはセンターの公式アーカイブで筆者が直接確認できた範囲を超えるため、本記事では断定を避けます。


設備屋の視点で読む「ホテル」課題

ここからは、留意事項6項目目「空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する」を、建築設備の実務目線で具体化していきます。あくまで一般的な計画の考え方の紹介であり、今回の課題文の設計条件を先取りするものではありません。ホテルという建物種別そのものの設備計画の全体像は、ホテル・宿泊施設の設備計画で詳しく整理しているので、まずはこちらに目を通しておくと、各論の理解がスムーズになると思います。

客室系統の空調計画

ホテルの設備計画で最初に問われるのが、客室という「個室の集合体」をどう空調するかです。宿泊者ごとに好む室温が違い、24時間いつでも快適さが求められる客室には、ファンコイルユニットによる個別制御と、外調機による外気処理を組み合わせる方式がよく使われます。設計製図試験では、この役割分担を図面上(機械室・PS・DS・EPSの位置)や計画の要点等(文章記述)でどう表現するかがポイントになります。方式の考え方は用途別の空調設備計画、ホテル特有の客室・宴会場・厨房の空調計画はホテル・宿泊施設の設備計画で整理しています。

留意事項にある「省エネルギー、二酸化炭素排出量削減」も、客室空調と直結するテーマです。在室・不在の検知と連動した空調制御や、外調機での熱回収など、省エネの工夫を計画の要点等でどう記述するかは、留意事項2項目目に正面から応える論点になります。

給湯負荷と中央給湯・レジオネラ対策

客室数に比例して膨大な湯量が必要になる点と、使用ピークが読みにくい点は、ホテル特有の給湯計画の難しさです。中央給湯方式で熱源をまとめ、貯湯槽でピークを吸収し、循環配管(返湯管)で常時お湯を循環させる、という基本の型を押さえておくと、断面図・計画の要点等での説明がしやすくなります。中央給湯・循環配管・レジオネラ属菌対策の基礎は中央式給湯・循環配管の基礎、給湯設備そのものの計画の考え方は給湯設備の計画で解説しています。

宴会場・レストラン厨房の換気計画

ホテルには宴会場・レストラン・厨房という、客室とはまったく性格の異なる大空間・火気使用スペースが同居します。厨房は給気より排気を多くして負圧気味にし、臭気・熱気が客席側へ流れ込まないようにする気流計画が基本です。厨房換気・グリスフィルター・給排気バランスの考え方は厨房換気・排気フードの基礎で整理しています。

ランドリー・リネン設備

客室数の多いホテルでは、シーツ・タオル類のリネン管理も設備計画上の論点になります。リネン室の配置、洗濯・乾燥設備の給排水・換気の考え方はランドリー・リネン設備の基礎で解説しています。要求室にリネン室が含まれる場合、客室階への配置と搬送動線の整理が求められる可能性があります。

昇降機計画

留意事項に明記されている「昇降機設備等」も見落とせない項目です。宿泊者用エレベーターと、リネン・配膳・清掃などのサービス用エレベーターを分けて計画するか、共用にするかは、動線計画(留意事項3項目目)とも密接に関わります。方式・台数計画の基礎はエレベーター・エスカレーター設備の基礎で整理しています。

電気設備・非常用電源

24時間運用が続くホテルでは、客室・共用部の受変電設備に加えて、停電時にも避難誘導や最低限の運用を維持するための非常用電源が重要です。電気室・EPSの配置計画の考え方は電気室・EPSの計画で解説しています。

防災センター・避難計画・消防用設備

宿泊者が就寝中に被災する可能性がある建物であることから、ホテルは防災計画・消防用設備の面でも配慮すべき点が多い用途です。一定規模以上の建物では防災センターの設置が求められる場合があり、その考え方は防災センターの基礎、就寝利用が前提となる客室の避難誘導では非常用照明・誘導灯の計画が非常用照明と誘導灯の計画、スプリンクラー設備の基礎はスプリンクラー設備の基礎で整理しています。留意事項1項目目の「敷地の周辺環境や既存建築物の現状保存への配慮」や3項目目の「明快な動線計画」とあわせて、避難安全上のゾーニングを図面でどう表現するかが問われる部分です。

バリアフリー・セキュリティ

留意事項2項目目にある「バリアフリー」「セキュリティ」は、ホテルという不特定多数の宿泊者が出入りする建物の性格上、特に重視される観点です。バリアフリー対応の客室・経路計画、フロント・客室階のセキュリティ(オートロック、監視カメラ等)をどう設備計画に落とし込むかは、意匠計画とあわせて検討することになります。

これらはあくまで一般的な設備計画の考え方の紹介であり、実際の課題文で示される要求室・設計条件によって、優先すべき論点は変わります。当日の試験問題本文を必ず読み込んだうえで、上記の各記事を計画の要点等を書く際の知識の補強に役立てていただければと思います。


学科発表(9月2日予定)までの過ごし方とエスキス練習の始め方

学科試験の合格発表は令和8年9月2日(水)予定で、それまでは自己採点の結果がどうであれ、はっきりした答え合わせができない期間が続きます。この期間の過ごし方について、筆者は次のような一般的な考え方を持っています。

  • エスキス(設計条件を整理して大枠のプランを組み立てる作業)の「型」に慣れておく:具体的な課題のプランを先取りするのではなく、敷地条件の読み取り方、ゾーニングの決め方、動線計画の基本手順といった、どの課題にも共通する進め方を身につけておくと、合格発表後の立ち上がりが早くなります。
  • 製図の基礎練習(線の引き方、文字の書き方、時間配分)を並行して進める:設計製図試験は6時間30分という長丁場です。手を動かす基礎練習は、学科の結果を待つ間でも取り組みやすい準備です。
  • 定番の対策本で課題の傾向を眺めておく:設計製図試験は独学で使える市販の対策本自体が少なく、資格学校の講座に頼る受験生が多い分野です。学科の結果を待ってから動き始めるより、早めに対策本で全体像を掴んでおいた人の方が、合格発表後の準備がスムーズだというのが筆者の実感です。

一級建築士 設計製図(二次)対策の参考書

設計製図試験の課題傾向やエスキスの進め方を体系的にまとめた定番の対策本です。学科試験が終わったあとの製図対策の入口として活用できます。

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設計製図試験の受験要領上の注意点

センターが公表している日程等の資料をもとに、設計製図試験に関するスケジュールを整理すると、次のとおりです。

項目予定日
設計製図の試験の課題公表令和8年7月24日(金)※実施済み
「設計製図の試験」受験票の発行令和8年9月24日(木)頃
設計製図の試験 実施日令和8年10月11日(日)
設計製図の試験 合格者の発表令和8年12月23日(水)(予定)

これらの日程は、学科試験の解答速報まとめ記事でも整理していますので、あわせてご確認ください。受験票の発行時期や当日の持ち物・注意事項など、実際の受験にあたって必要な情報は、必ずセンターから届く受験票および公式発表でご確認ください。 本記事は課題公表の内容を紹介するものであり、受験資格や個別の手続きに関する案内ではありません。


まとめ

  • 令和8年7月24日、センターが令和8年度「設計製図の試験」の課題を「ホテル」と公表した
  • 要求図書は1階平面図・配置図(1/200)、各階平面図(1/200・詳細は試験問題本文で指定)、断面図(1/200)、面積表、計画の要点等
  • 留意事項には「空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する」ことが明記されている
  • 平成29年(2017年)にも「小規模なリゾートホテル」という課題が出題されており、ホテル・宿泊施設は設計製図試験で過去にも扱われたことのある用途である
  • 設備面では、客室空調の個別制御、大量給湯とレジオネラ対策、厨房換気、ランドリー、昇降機計画、非常用電源、防災センターや避難安全計画など、ホテル特有の論点が多い
  • 学科発表(9月2日予定)までの期間は、エスキスの型・製図の基礎練習を進めておくと合格発表後の立ち上がりがスムーズになる

課題名が公表されたとはいえ、具体的な設計条件・要求室が分かるのは試験当日です。本記事はあくまで公表済みの一次情報の整理と、設備分野からの一般的な視点の紹介にとどまります。学科の結果を待つ間も、無理のないペースで準備を進めていただければと思います。


あわせて読みたい

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