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仮想仕事法(単位荷重法)によるたわみ計算|単純梁・トラスの変位を求める考え方(一級建築士 構造)

構造力学の学習を進めていくと、単純梁や片持ち梁のたわみ公式、あるいはトラスの節点変位を求める問題に必ず一度はぶつかります。多くの受験生は「PL³/48EI」のような公式をそのまま暗記して乗り切ろうとしますが、荷重の位置や支点条件が少し変わっただけの初見の問題になると、公式を当てはめられずに手が止まってしまうというのが構造力学のよくあるつまずき方だと筆者は考えています。

この壁を越える鍵になるのが仮想仕事法(単位荷重法)です。仮想仕事法は、公式を丸暗記する代わりに「なぜその変位が求まるのか」という計算過程そのものを追える方法で、一度手順を身につけてしまえば、どんな荷重条件・支点条件の変位計算にも同じ手続きで対応できるようになります。本記事では、仮想仕事の原理の考え方、単純梁のたわみを単位荷重法で求める手順、トラスの節点変位への応用までを、一級建築士(学科・構造)の学習向けに整理します。構造力学の基礎そのものについては構造力学の基礎、たわみ・座屈・不静定構造の全体像についてはたわみ・座屈・不静定構造の基礎、静定ラーメン・トラスの解法については静定ラーメン・トラスの解き方で扱っていますので、あわせて確認しておくと理解がつながりやすくなります。


図で見る(全体像)

仮想仕事法(単位荷重法)による梁のたわみ計算の手順(実荷重によるM図と単位仮想荷重によるm図を用意し、M・m・EIから変位を求める流れ)と、トラスの節点変位を軸力N・nで求める考え方を示す模式図


早見まとめ

項目内容・考え方
仮想仕事の原理力の釣り合い状態にある物体では、外力による仮想仕事と内力による仮想仕事が等しくなるという原理
単位荷重法変位を求めたい点・方向に大きさ1の仮想荷重(単位荷重)を置き、実際の荷重によるM・Nと単位荷重によるm・nの積を部材全体で足し合わせて変位を求める方法
梁のたわみを求める式の考え方実荷重による曲げモーメントM(x)と単位荷重による曲げモーメントm(x)の積を、部材長さにわたりEIで割って足し合わせる
トラスの節点変位を求める式の考え方実荷重による部材軸力Nと単位荷重による部材軸力nの積を、各部材のEAで割って全部材分足し合わせる
単純梁・中央集中荷重Pたわみ最大値 δ=PL³/48EI(スパン中央)
単純梁・等分布荷重wたわみ最大値 δ=5wL⁴/384EI(スパン中央)
片持ち梁・先端集中荷重Pたわみ最大値 δ=PL³/3EI(自由端)
片持ち梁・等分布荷重wたわみ最大値 δ=wL⁴/8EI(自由端)

代表的なたわみ公式は、実は仮想仕事法の計算過程の「結果」にすぎません。この対応関係を意識しておくと、公式を思い出せない場面でも計算過程から答えにたどり着けるようになります。


仮想仕事の原理とは|外力の仕事と内力の仕事が釣り合うという考え方

仮想仕事の原理は、力の釣り合い状態にある構造物に、微小な仮想の変位(実際には生じさせない、考え方の上だけの変位)を与えたとき、外力がした仮想の仕事の総和と、部材内部に生じる仮想の仕事の総和が等しくなるという考え方です。ここでいう「仕事」は力学の力×距離のことで、荷重が作用点でどれだけ動いたか、部材がどれだけ変形したかを表す量として扱われます。

この原理をそのまま覚えようとすると抽象的に感じられますが、構造物の変位を求めるための道具として使うという実務的な目的に絞って理解すると扱いやすくなります。変位を求めたい点に「架空の荷重(単位荷重)」を仮に置き、この単位荷重と実際の荷重の両方を使って計算を進めるのが、次に説明する単位荷重法です。


単位荷重法による梁のたわみ計算の手順

単純梁や片持ち梁のたわみを単位荷重法で求める手順は、次の4段階で整理できます。

手順内容
① 実荷重の曲げモーメント図を求める実際に作用する荷重(P・wなど)に対する曲げモーメントM(x)を、部材の位置xの関数として求める
② 単位荷重を仮に置くたわみを求めたい点・方向に、大きさ1の仮想荷重を作用させる
③ 単位荷重の曲げモーメント図を求める②の単位荷重に対する曲げモーメントm(x)を、同じくxの関数として求める
④ 積分して足し合わせるM(x)・m(x)の積を部材の曲げ剛性EIで割った値を、部材全長にわたって足し合わせる(積分する)と、①で求めたい変位が得られる

たとえば、スパンLの単純梁の中央にP点集中荷重が作用する場合の中央たわみを求めるときは、①で実荷重Pによる曲げモーメント図(中央で最大、両端でゼロの三角形分布)を求め、②でたわみを求めたい中央点に単位荷重1を仮に置き、③でその単位荷重による曲げモーメント図(同じく中央で最大の三角形分布)を求めます。④でこの2つの三角形分布の積をEIで割って梁全長にわたり足し合わせると、よく知られたδ=PL³/48EIという公式に一致する計算結果が得られます。

この手順の利点は、荷重の位置がスパン中央からずれていたり、複数の荷重が同時に作用していたりする初見の問題でも、同じ4段階の手順をそのまま適用できる点にあります。公式を思い出そうとする代わりに、実荷重のM図と単位荷重のm図をそれぞれ描き、その積をEIで割って足し合わせるという作業を淡々と進めれば、公式集にない条件でも変位を求められます。


トラスの節点変位への応用|曲げモーメントから軸力へ

トラス構造は各部材が軸力(引張・圧縮)だけを負担する構造なので、梁のように曲げモーメントM・mを使うのではなく、部材軸力N・nを使って同じ考え方を適用します。実際の荷重による各部材の軸力Nと、変位を求めたい節点・方向に単位荷重1を置いたときの各部材の軸力nを、それぞれ節点法や切断法で求め、各部材のN・nの積をその部材のEA(軸剛性)で割った値を、全部材について足し合わせると、求めたい節点の変位が得られます。

梁の計算が「部材の長さ方向に沿った積分」であったのに対し、トラスの計算は「部材ごとに一定の軸力を持つ短冊を、部材の本数分だけ足し合わせる」という、離散的な足し算になる点が特徴です。部材数が多いトラスでは手計算が煩雑になりますが、考え方そのものは梁の場合と同じ「実荷重の内力×単位荷重の内力を、剛性で割って足し合わせる」という骨格を保っています。静定トラスの反力・軸力の求め方そのものは静定ラーメン・トラスの解き方で整理しているとおりです。


公式暗記との関係・実務での学び方

一級建築士試験の学科試験では、時間の制約から代表的なたわみ公式をそのまま覚えて使う場面が実際には多くなります。その意味では、仮想仕事法を毎回フルで計算する必要はありません。ただし、公式を忘れてしまった場合や、公式集にない荷重条件・支点条件の問題に出会った場合には、仮想仕事法の4段階の手順に戻って自分で導出できるかどうかが得点力の差につながるというのが筆者の考えです。

学習の進め方としては、まず単純梁・片持ち梁の代表的な荷重パターンについて、公式を覚えるだけでなく実際に手を動かしてM図・m図を描き、積分の過程を紙に書いて公式と一致することを確認するというプロセスを一度は経験しておくことをおすすめします。答えの数値だけを追うのではなく、途中の式変形を残しながら解く習慣をつけておくと、初見の応用問題への対応力が大きく変わってきます。


まとめ

  • 仮想仕事の原理は、外力による仮想仕事と内力による仮想仕事が等しくなるという考え方
  • 単位荷重法は、変位を求めたい点に単位荷重1を仮に置き、実荷重の内力と単位荷重の内力の積を剛性で割って足し合わせることで変位を求める方法
  • 梁のたわみは曲げモーメントM・mを使い、部材長さ方向に積分して求める
  • トラスの節点変位は軸力N・nを使い、部材ごとの値を足し合わせて求める(積分ではなく離散的な足し算)
  • 代表的なたわみ公式(PL³/48EI等)は、仮想仕事法の計算過程の結果にすぎず、両者は同じ考え方でつながっている
  • 試験本番では公式を使う場面が多いが、公式を忘れた場合や初見の条件に対応するための保険として、仮想仕事法の手順を一度は自分の手で確認しておくと安心できる

たわみ計算は「公式を当てはめる」科目ではなく、「力の釣り合いから変位を導き出す」科目だと捉え直すと、初見の問題への対応力が大きく変わってきます。公式と計算過程の両方を行き来しながら学習を進めることをおすすめします。


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