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建築構造

【令和8年度】一級建築士 学科「構造」予想問題 第4集|荷重・耐震設計・免震制振20問

当サイトではこれまで、構造科目の予想問題として第1集(幅広い分野を横断する15問)、第2集(力学の計算問題に絞った20問)、第3集(RC造・S造・木造という各種構造の文章題20問)を掲載してきましたが、この第4集では荷重・外力の算定と耐震設計、免震・制振構造という、いわば「建築物に何が作用し、それにどう抵抗するか」をテーマにした20問を用意しました。固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風圧力・地震力といった外力の算定方法から、層間変形角・剛性率・偏心率・保有水平耐力・耐震診断という耐震設計の指標群、さらに免震・制振構造の仕組みまでを一続きの流れとして整理しています。

荷重・耐震設計の分野は、力学の計算問題のように公式を覚えていれば機械的に解けるわけではなく、また各種構造の文章題のように配筋・接合の理屈だけを問われるわけでもない、係数の意味・大小関係の方向性・算定式の分母分子を正確に押さえているかが問われる独特の分野だと筆者は感じています。「AがBのときCが大きくなる」という関係を、うっかり逆に覚えてしまっていないかを確認する意味でも、直前期に横断的に解き直しておく価値が大きい分野です。今回は文章題を中心にしつつ、荷重や地震力の算定を実際に手を動かして確認できるよう、簡単な数値計算問題も3問含めました。

なお、本問題集は筆者(当サイト)が独自に作成した予想問題であり、実際の試験問題の的中や出題を保証するものではありません。数値・基準は執筆時点の情報を確認のうえ作成していますが、受験にあたっては最新の法令・公式発表を必ずご確認ください。


出題傾向と予想の考え方

荷重・外力の分野は、各荷重の算定式そのものよりも、「何によって係数が大きくなり、何によって小さくなるか」という方向性を問う出題が多い印象です。耐震設計の分野は、層間変形角・剛性率・偏心率・保有水平耐力という似た指標群を、算定式の分母分子や基準値まで含めて正確に区別できているかが問われます。以下の表は、今回の20問がどの分野に対応しているかを整理したものです。

分野 頻出度 対応する問題番号 関連記事
固定荷重・積載荷重 ★★☆ 問1・問2 荷重・地震力と耐震設計の基礎
積雪荷重 ★★☆ 問3・問4 風荷重・積雪荷重の基礎
風圧力 ★★☆ 問5・問6 風荷重・積雪荷重の基礎
地震力の算定 ★★★ 問7〜問9 荷重・地震力と耐震設計の基礎
耐震設計(層間変形角・保有水平耐力・剛性率・偏心率) ★★★ 問10〜問14 構造計画の基礎 / 荷重・地震力と耐震設計の基礎
耐震診断・耐震改修 ★★☆ 問15・問16 構造計画の基礎
免震・制振構造 ★★★ 問17〜問20 免震・制振構造と建物の振動の基礎

荷重・外力は基礎的な理解を問う出題が中心ですが、地震力の算定と耐震設計の指標群は、令和8年度も出題数が多く配点の厚い分野になると筆者は予想しています。免震・制振構造は、近年の中大規模建築物での採用増加を背景に、両者の考え方の違いを問う応用的な出題が増えている印象です。


予想問題20問

問1(固定荷重・積載荷重の基本原則)

固定荷重・積載荷重に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 固定荷重は、建築物の構造躯体や仕上げ材等、常時建築物に作用する自重による荷重であり、実況によって計算することを原則とし、実況によらない場合は建築基準法施行令に定める数値による。
  2. 積載荷重は、人間・家具・物品等による荷重であり、実況に応じて計算するが、実況による数値が建築基準法施行令に定める数値を下回る場合には、原則として施行令の数値を用いなければならない。
  3. 同一の室であっても、積載荷重は「床用」「大梁・柱・基礎用」「地震力を計算する場合」の3つの用途で異なる数値が定められており、一般に床用の数値が最も大きく、地震力用の数値が最も小さい傾向にある。
  4. 積載荷重は、床用・大梁柱用・地震力用のいずれで比較しても、室の用途間の大小関係(どの用途がより大きな値になるか)は常に同じ順序になる。

解答・解説

正答: 4

選択肢4が不適当です。建築基準法施行令85条の積載荷重の表では、例えば教室は床用2,300N/m²・大梁柱用2,100N/m²・地震力用1,100N/m²、事務室は床用2,900N/m²・大梁柱用1,800N/m²・地震力用800N/m²と定められています。床用の数値だけを比べると事務室(2,900)が教室(2,300)を上回りますが、大梁柱用の数値では教室(2,100)が事務室(1,800)を上回っており、用途間の大小関係が用途区分(床用・骨組み用・地震力用)によって逆転することがあります。「常に同じ順序になる」という記述は誤りです。

  • 選択肢1は、固定荷重の算定原則(実況による計算、実況によらない場合の施行令数値)であり正しい記述です。
  • 選択肢2は、積載荷重の算定原則(実況によるが施行令数値を下回ってはならない)であり正しい記述です。
  • 選択肢3は、床用・骨組み用・地震力用の一般的な大小関係(床用が最大、地震力用が最小)であり正しい記述です。

積載荷重は、同じ室の中での「床用>骨組み用>地震力用」という関係は崩れませんが、異なる室どうしを比較するときの順序は用途区分ごとに変わり得るという点が見落としやすいポイントです。令和8年度も、具体的な室の種類を変えた形で出題される可能性があると筆者は考えています。詳しくは荷重・地震力と耐震設計の基礎を参照してください。


問2(積載荷重の用途別の考え方)

積載荷重の用途別の扱いに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 自動車車庫及び自動車通路の積載荷重は、住宅の居室や事務室に比べて大きな数値が定められている。
  2. 廊下、玄関又は階段の積載荷重は、教室・百貨店の売場・劇場等の客席や集会室に連絡するものについては、いずれも固定席でない客席・集会室に関する数値(教室や事務室より大きい数値)を用いることとされている。
  3. 百貨店又は店舗の売場の積載荷重は、住宅の居室に比べて大きな数値が定められており、不特定多数の人や物品の集中が想定される用途ほど積載荷重は大きくなる傾向がある。
  4. 積載荷重は建築物の実況に応じて計算するものとされているが、実務上、実況調査を行わずに建築基準法施行令に定める数値をそのまま用いることは一切認められていない。

解答・解説

正答: 4

選択肢4が不適当です。積載荷重は実況に応じて計算することが原則ですが、実務上は建築基準法施行令に定める数値をそのまま用いて設計することが広く行われており、これは施行令の数値自体が実況を踏まえて統計的に定められた基準値であるためです。「実況調査を行わずに施行令の数値をそのまま用いることは一切認められていない」という記述は、実務の扱いと合致せず誤りです。

  • 選択肢1は、自動車車庫・自動車通路の積載荷重が大きく設定されていることであり正しい記述です。
  • 選択肢2は、廊下・玄関・階段の積載荷重の扱い(教室・売場・劇場等に連絡するものはいずれも集会室相当の高い数値を用いる)であり正しい記述です。
  • 選択肢3は、百貨店・店舗の売場の積載荷重が住宅の居室より大きいという傾向であり正しい記述です。

積載荷重は「実況に応じて計算する」という原則と、「実務では施行令の数値をそのまま使うことが一般的である」という運用の両方を正しく理解しておくことが、この分野の理解を深めるポイントだと筆者は考えています。


問3(積雪荷重の計算)

ある屋根における積雪荷重を算定する。垂直積雪量を50cm、積雪の単位荷重を20N/(m²・cm)、屋根形状係数を0.8とするとき、この屋根に生じる積雪荷重として、正しいものはどれか。

  1. 800N/m²
  2. 1,000N/m²
  3. 1,250N/m²
  4. 640N/m²

解答・解説

正答: 1

積雪荷重は「垂直積雪量×積雪の単位荷重×屋根形状係数」で求められます。

  • S = 50cm × 20N/(m²・cm) × 0.8 = 1,000 × 0.8 = 800N/m²

よって選択肢1が正しい値です。

  • 選択肢2(1,000N/m²)は、屋根形状係数を乗じるのを忘れ、垂直積雪量×単位荷重(50×20=1,000)をそのまま答えとした値です。
  • 選択肢3(1,250N/m²)は、屋根形状係数を乗じるのではなく除してしまった値(1,000÷0.8=1,250)です。
  • 選択肢4(640N/m²)は、屋根形状係数を誤って2回乗じてしまった値(1,000×0.8×0.8=640)です。

積雪荷重の計算は、屋根形状係数を「乗じる」操作を正確に行えるかがポイントです。屋根形状係数は勾配が急になるほど小さくなる(雪が滑り落ちやすいため積雪荷重が軽減される)係数であることも、あわせて確認しておいてください。詳しくは風荷重・積雪荷重の基礎を参照してください。


問4(多雪区域における荷重の組み合わせ)

多雪区域における荷重の組み合わせに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 多雪区域においては、地震力の算定に用いる建築物の重量として、固定荷重・積載荷重の和に、積雪荷重の0.35倍(0.35S)を加算することとされている。
  2. 多雪区域における0.35Sの加算は、地震時や暴風時に必ず満載の積雪があるとは限らないものの、一定程度の積雪が生じている可能性を考慮した割合的な取り扱いである。
  3. 多雪区域以外の一般区域では、地震力の算定にあたって積雪荷重を考慮する必要は原則としてない。
  4. 多雪区域における積雪荷重への0.35倍という係数は、地震力算定用の重量への加算だけでなく、積雪荷重そのもの(垂直積雪量×単位荷重×屋根形状係数)の算定においても一律に乗じて低減する係数である。

解答・解説

正答: 4

選択肢4が不適当です。0.35という係数は、多雪区域において地震力を算定する際の建築物の重量に、積雪荷重をどの程度上乗せするかを定めた割合であり、積雪荷重そのもの(垂直積雪量×単位荷重×屋根形状係数で求める本来の積雪荷重S)の算定には用いません。積雪荷重自体の算定と、地震力算定用の重量に積雪荷重の一部を加算する操作とは、別の場面で使われる別の話であり、これらを混同した記述は誤りです。

  • 選択肢1は、多雪区域における地震力算定用重量への0.35S加算であり正しい記述です。
  • 選択肢2は、0.35という係数の趣旨(満載の積雪を常に想定するのではなく、一定程度の積雪を割合的に考慮する)であり正しい記述です。
  • 選択肢3は、一般区域では地震力算定に積雪荷重を考慮しないという原則であり正しい記述です。

多雪区域特有の荷重の組み合わせは、積雪荷重そのものの算定式と、地震力算定用重量への加算という2つの場面を混同しないことが重要な論点です。令和8年度も、この2つの場面の違いを問う出題が予想されます。


問5(風圧力:速度圧の計算)

ある建築物における速度圧を算定する。速度圧qは q=0.6EV0²(E:屋根の高さ及び周辺状況に応じた係数、V0:基準風速)の式で求めるものとし、E=1.25、V0=40m/sとするとき、速度圧qとして、正しいものはどれか。

  1. 1,200N/m²
  2. 2,000N/m²
  3. 1,500N/m²
  4. 960N/m²

解答・解説

正答: 1

速度圧はq=0.6EV0²の式で求めます。

  • q = 0.6 × 1.25 × 40² = 0.6 × 1.25 × 1,600 = 0.75 × 1,600 = 1,200N/m²

よって選択肢1が正しい値です。

  • 選択肢2(2,000N/m²)は、係数0.6を乗じるのを忘れ、E×V0²(1.25×1,600=2,000)をそのまま答えとした値です。
  • 選択肢3(1,500N/m²)は、Eを1乗ではなく2乗(E²=1.5625)として計算した値(0.6×1.5625×1,600=1,500)です。
  • 選択肢4(960N/m²)は、Eを乗じるのを忘れ、E=1.0として計算した値(0.6×1×1,600=960)です。

速度圧の式は、係数Eと基準風速V0の2乗という2つの要素を正確に式に当てはめられるかが問われます。V0は地方ごとに30〜46m/sの範囲で異なる値が定められている点もあわせて確認しておいてください。


問6(風圧力:地表面粗度区分・ガスト影響係数)

風圧力の算定に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 環境係数Eは、平均風速の高さ方向の分布を表す係数Erの2乗に、ガスト影響係数Gfを乗じて求められる(E=Er²×Gf)。
  2. 地表面粗度区分は、建築物周辺の地表面の状況(障害物の多さ等)に応じて区分されるもので、区分の数は市街地か郊外かの2段階のみである。
  3. ガスト影響係数Gfは、風の時間的な変動による瞬間的な風応答と平均的な風応答の比を表す係数であり、地表面粗度区分や建築物の高さにかかわらず一律の値が用いられる。
  4. 速度圧の算定に用いる基準風速V0は、全国一律の値が定められており、地方による違いは考慮されない。

解答・解説

正答: 1

選択肢1が正しい記述です。環境係数Eは、平均風速の高さ方向の分布を表す係数Er(地表面粗度区分と高さに応じて定まる)の2乗に、ガスト影響係数Gfを乗じて求められます(E=Er²×Gf)。

  • 選択肢2は誤りです。地表面粗度区分は、地表面の障害物の状況等に応じて4段階(Ⅰ〜Ⅳ)に区分されており、2段階ではありません。
  • 選択肢3は誤りです。ガスト影響係数Gfは、地表面粗度区分及び建築物の高さに応じて定まる値であり、一律の値ではありません。
  • 選択肢4は誤りです。基準風速V0は、その地方における台風の記録に基づく風の性状に応じて、30メートル毎秒から46メートル毎秒までの範囲内で地方ごとに定められています。

風圧力の算定要素(E、Gf、地表面粗度区分、V0)は、それぞれが何に応じて変化する係数なのかを正確に区別しておくことが問われる論点です。風荷重・積雪荷重の基礎もあわせて確認してください。


問7(地震層せん断力の計算)

ある階における地震層せん断力Qiを算定する。地震層せん断力係数Ci=Z・Rt・Ai・Co(Z=1.0、Rt=1.0、Ai=1.5、Co=0.2)とし、当該階が支える建築物の重量Wi=4,000kNとするとき、地震層せん断力Qiとして、正しいものはどれか。

  1. 1,200kN
  2. 800kN
  3. 6,000kN
  4. 400kN

解答・解説

正答: 1

地震層せん断力係数Ci=Z・Rt・Ai・Coを求め、Qi=Ci×Wiで地震層せん断力を計算します。

  • Ci = 1.0 × 1.0 × 1.5 × 0.2 = 0.3
  • Qi = Ci × Wi = 0.3 × 4,000 = 1,200kN

よって選択肢1が正しい値です。

  • 選択肢2(800kN)は、Aiを乗じるのを忘れ、Ci=Z・Rt・Co(1.0×1.0×0.2=0.2)として計算した値(0.2×4,000=800)です。
  • 選択肢3(6,000kN)は、標準せん断力係数Coを1.0と誤って用い、Ci=Z・Rt・Ai(1.0×1.0×1.5=1.5)として計算した値(1.5×4,000=6,000)です。
  • 選択肢4(400kN)は、Aiの値を1.5ではなく0.5と読み違えて計算した値(Ci=1.0×1.0×0.5×0.2=0.1、0.1×4,000=400)です。

地震層せん断力係数Ciの4つの要素(Z・Rt・Ai・Co)は、いずれか1つでも掛け忘れる、あるいは値を読み違えると答えが大きくずれるため、順を追って一つずつ数値を当てはめる習慣をつけておくことをおすすめします。


問8(設計用一次固有周期・振動特性係数)

設計用一次固有周期及び振動特性係数Rtに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 設計用一次固有周期Tは、建築物の高さや、鉄骨造・木造部分の高さの割合等から算定される、地震力算定上の仮想的な固有周期である。
  2. 振動特性係数Rtは、設計用一次固有周期Tが、地盤の種類ごとに定まる周期Tc以下である範囲では1.0となり、Tcを超えると建築物の周期が長くなるほどRtは小さくなる。
  3. 地盤の種別は硬い地盤から軟らかい地盤の順に第一種・第二種・第三種に区分され、Tcの値は第一種地盤で最も小さく、第三種地盤で最も大きい。
  4. 同じ設計用一次固有周期Tを持つ建築物であっても、軟弱な地盤(第三種地盤)に建つ場合の方が、硬い地盤(第一種地盤)に建つ場合よりも、振動特性係数Rtは小さくなる傾向がある。

解答・解説

正答: 4

選択肢4が不適当です。TがTcを超える範囲では、地盤が軟弱になるほど(第一種→第二種→第三種と進むほど)Tcの値も大きくなるため、同じTであれば軟弱な地盤(第三種地盤)に建つ建築物の方が、硬い地盤(第一種地盤)に建つ建築物よりも振動特性係数Rtは大きくなる傾向があります。「軟弱な地盤の方がRtは小さくなる」という記述は、関係の向きが逆で誤りです。

  • 選択肢1は、設計用一次固有周期Tの算定要素(建築物の高さ、鉄骨造・木造部分の割合)であり正しい記述です。
  • 選択肢2は、振動特性係数RtとTc(地盤ごとに定まる周期)の関係であり正しい記述です。
  • 選択肢3は、地盤種別とTcの大小関係(第一種で最小、第三種で最大)であり正しい記述です。

軟弱な地盤ほど長周期の地震動が卓越しやすく、長周期の建築物にとって不利になりやすいという理屈を押さえておくと、Rtと地盤種別の関係を逆に覚えるミスを防ぎやすくなります。


問9(地震層せん断力分布係数Ai)

地震層せん断力分布係数Aiに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 地震層せん断力分布係数Aiは、建築物の上層になるほど大きな値となる傾向があり、これは上層ほど地震時の応答加速度が相対的に大きくなりやすいことなどを反映した係数である。
  2. Aiの値は、各階が支える重量の大小のみによって決まり、建築物の高さ方向の重量分布とは無関係に一律の値が用いられる。
  3. Aiは最上階で最も小さい値となり、最下階に向かうにつれて大きくなる。
  4. 各階の地震層せん断力Qiは、当該階のAiの値のみから求められ、その階が支える重量Wiは関係しない。

解答・解説

正答: 1

選択肢1が正しい記述です。Aiは、建築物の上層になるほど地震時の応答加速度が相対的に大きくなりやすいことなどを反映して、一般に上層になるほど大きな値となる分布係数です。

  • 選択肢2は誤りです。Aiは、建築物全体の重量に対する当該階以上の重量の割合や、設計用一次固有周期Tなどから算定される係数であり、重量分布と無関係というわけではありません。
  • 選択肢3は誤りです。Aiは上層になるほど大きくなる傾向があり、最上階で最小・最下階で最大になるという記述は関係が逆です。
  • 選択肢4は誤りです。地震層せん断力はQi=Ci×Wiで求められ、当該階が支える重量Wiも必要な要素です。

Aiの分布を頭の中でグラフとしてイメージできているかが、この論点を正確に理解するうえで重要です。上層ほど大きくなるという傾向を、なぜそうなるのかという理屈とあわせて押さえておいてください。荷重・地震力と耐震設計の基礎もあわせてご確認ください。


問10(耐震設計:層間変形角)

層間変形角に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 層間変形角は、各階の層間変位(相対水平変位)を、その階の高さで除して求める数値である。
  2. 層間変形角の確認は一次設計(許容応力度計算)の段階で行われ、原則として1/200以内に収まっていることを確認する。
  3. 帳壁その他の建築物の部分に著しい損傷が生ずるおそれのないことが確認された場合には、層間変形角の基準を1/120まで緩和することができる。
  4. 層間変形角の基準(1/200以内など)を満たしていれば、それとは別に剛性率・偏心率の確認を行う必要はない。

解答・解説

正答: 4

選択肢4が不適当です。層間変形角、剛性率、偏心率は、いずれも一次設計の段階で確認する指標ですが、それぞれ異なる観点(変形量そのものの大きさ、各階の剛性のばらつき、平面的な重心・剛心のずれ)を確認するものであり、いずれか1つの基準を満たしていても他の基準の確認を省略できるわけではありません。「層間変形角の基準を満たしていれば剛性率・偏心率の確認は不要」という記述は誤りです。

  • 選択肢1は、層間変形角の算定式(層間変位÷階高)であり正しい記述です。
  • 選択肢2は、層間変形角の確認段階(一次設計)と基準値(1/200以内)であり正しい記述です。
  • 選択肢3は、層間変形角の基準を1/120まで緩和できる条件(損傷防止上支障がないことの確認)であり正しい記述です。

層間変形角・剛性率・偏心率はいずれも一次設計で確認する指標群ですが、それぞれ独立した別の確認事項であるという点が問われやすいポイントです。令和8年度も、これらの指標を混同させる出題が予想されます。


問11(耐震設計:必要保有水平耐力)

必要保有水平耐力に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 必要保有水平耐力Qunは、標準せん断力係数Coを1.0以上として求めた地震層せん断力Qudに、構造特性係数Ds及び形状特性係数Fesを乗じて算定される。
  2. 構造特性係数Dsは、建築物の設計用一次固有周期によって定まる係数であり、部材の靭性の高さとは無関係である。
  3. 形状特性係数Fesは、剛性率による割増し係数Fsのみで構成され、偏心率に関する割増し係数(Fe)は考慮しない。
  4. 必要保有水平耐力の算定においては、地震力によるものだけでなく、暴風時の必要耐力も必ず同一の式(Ds・Fes・Qud)で算定しなければならない。

解答・解説

正答: 1

選択肢1が正しい記述です。必要保有水平耐力Qunは、二次設計用の地震層せん断力Qud(標準せん断力係数Coを1.0以上として算定)に、構造特性係数Ds及び形状特性係数Fesを乗じて求められます(Qun=Ds・Fes・Qud)。

  • 選択肢2は誤りです。構造特性係数Dsは、建築物の振動吸収性能(部材の靭性の高さ、粘り強さ)によって定まる係数であり、設計用一次固有周期によって定まる係数(振動特性係数Rt)とは別のものです。
  • 選択肢3は誤りです。形状特性係数Fesは、剛性率による割増し係数Fsと、偏心率による割増し係数Feの積(Fes=Fs×Fe)で構成されます。
  • 選択肢4は誤りです。保有水平耐力計算(Ds・Fes・Qudによる必要保有水平耐力の算定)は地震力に対する検討であり、暴風時の必要耐力を同一の式で算定することが必須というわけではありません。

必要保有水平耐力の算定式に登場する係数(Ds、Fes、Co)は、それぞれ何を表す係数なのかを正確に区別できているかが問われます。特にDsとRtの混同、FesとFsの混同は起こりやすいため、令和8年度に向けて整理しておいてください。


問12(耐震設計:保有水平耐力計算の適用範囲)

保有水平耐力計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 保有水平耐力計算(いわゆるルート3)は、高さが31mを超え60m以下の建築物に適用される計算ルートの一つである。
  2. 高さが60mを超える超高層建築物は、保有水平耐力計算に代えて、時刻歴応答解析等による大臣認定を受けることが原則として必要とされる。
  3. 保有水平耐力計算では、各階においてQu≧Qun(保有水平耐力が必要保有水平耐力以上であること)を確認する。
  4. ルート3(保有水平耐力計算)は、ルート1・ルート2で必要とされる保有水平耐力の確認そのものを省略できる、最も簡易な検討で足りる計算ルートである。

解答・解説

正答: 4

選択肢4が不適当です。ルート3はまさに保有水平耐力計算そのものを行う計算ルートであり、ルート1・ルート2よりも詳細な検討を要する計算ルートです。ルート1・ルート2は、一定の仕様規定を満たすことなどを条件に、保有水平耐力計算を行わずに設計できる簡易なルートとして位置づけられており、「ルート3が保有水平耐力の確認を省略できる簡易なルート」という記述は関係が逆になっており誤りです。

  • 選択肢1は、ルート3の適用範囲(高さ31m超60m以下)であり正しい記述です。
  • 選択肢2は、高さ60m超の建築物に対する時刻歴応答解析等の必要性であり正しい記述です。
  • 選択肢3は、保有水平耐力計算の基本的な確認事項(Qu≧Qun)であり正しい記述です。

計算ルート(ルート1・ルート2・ルート3)は、数字が大きくなるほど詳細な検討を要する、という関係を正しく理解しておくことが、この分野の基本になります。


問13(耐震設計:剛性率)

剛性率に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 剛性率Rsは、各階の層間変形角の逆数rsを、全階のrsの相加平均r̄sで除して求める(Rs=rs/r̄s)。
  2. 剛性率が0.6を下回る階がある場合、その階の必要保有水平耐力を割り増すための係数Fsを乗じる必要があり、Fsの最大値は1.5と定められている。
  3. 剛性率は各階の耐力(強さ)のばらつきを表す指標であり、層間変形角とは無関係に算定される。
  4. 剛性率が低い階(例えばピロティ階)では、耐力壁の増設等によって当該階の層間変形角を大きくすることが、剛性率の改善につながる。

解答・解説

正答: 1

選択肢1が正しい記述です。剛性率Rsは、各階の層間変形角の逆数rs(層の剛性の目安)を、全階のrsの相加平均r̄sで除して求めます。

  • 選択肢2は誤りです。剛性率が0.6を下回る階の割増し係数Fsは、Fs=1.5/(Rs+0.75)の式で求められ、Rsが0に近づくほど大きくなり最大2.0に近づく値とされており、1.5ではありません。
  • 選択肢3は誤りです。剛性率は各階の層間変形角の逆数から算定される指標であり、層間変形角と無関係というわけではありません。
  • 選択肢4は誤りです。耐力壁の増設等により当該階の剛性を高めると、層間変形角は「小さく」なり、rs(層間変形角の逆数)が大きくなることで剛性率は改善します。「層間変形角を大きくすることが改善につながる」という記述は関係が逆です。

剛性率は「層間変形角の逆数」という定義から出発して、割増し係数Fsの最大値や、改善策の方向性まで一貫して理解しておくことが、令和8年度の応用的な出題に対応する近道になると筆者は考えています。


問14(耐震設計:偏心率)

偏心率に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 偏心率Reは、各階の偏心距離(重心と剛心の水平距離)を、その階の弾力半径で除して求める。
  2. 偏心率が0.15を超える階では、必要保有水平耐力の割増し係数Feを乗じる必要がある。
  3. 耐力壁の配置を建築物の外周部に均等に近づけるほど、一般に剛心と重心の位置が近づき、偏心率は小さくなる傾向がある。
  4. 偏心率の確認は剛性率の確認を代替するものであり、剛性率が基準値を満たしていれば偏心率の確認は不要である。

解答・解説

正答: 4

選択肢4が不適当です。偏心率(平面的な重心・剛心のずれによるねじれやすさの指標)と剛性率(各階の剛性のばらつきの指標)は、それぞれ独立した別の観点から確認する指標であり、形状特性係数Fesも剛性率による割増し係数Fsと偏心率による割増し係数Feの積で構成されます。一方の確認が他方の確認を代替できるものではなく、「剛性率を満たしていれば偏心率の確認は不要」という記述は誤りです。

  • 選択肢1は、偏心率の算定式(偏心距離÷弾力半径)であり正しい記述です。
  • 選択肢2は、偏心率が0.15を超える場合の割増し係数Feの必要性であり正しい記述です。
  • 選択肢3は、耐力壁を外周部に均等配置するほど偏心率が小さくなる傾向であり正しい記述です。

剛性率と偏心率は、どちらも耐震設計上の「形状特性」を確認する指標という共通点がありますが、確認している内容(鉛直方向の剛性のばらつきか、平面的なねじれやすさか)は全く別のものです。この違いを混同しないよう、令和8年度に向けて整理しておいてください。


問15(耐震診断:Is値)

耐震診断のIs値(構造耐震指標)に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. Is値は、建築物の強度・靭性を表すEo(保有性能基本指標)に、建築物の形状の悪さを表すSD(形状指標)と、経年劣化を表すT(経年指標)を乗じて算定される(Is=Eo×SD×T)。
  2. Is値が0.6以上であれば、大地震(震度6強〜7程度)の地震動に対して倒壊・崩壊の危険性が低いと判断される目安とされている。
  3. Is値が0.3未満の建築物は、倒壊・崩壊の危険性が低いと判断され、特段の耐震改修は不要とされている。
  4. 経年指標Tは、建築物の劣化状況(ひび割れ・老朽化等)を評価するもので、劣化が進んでいるほどTの値は小さくなる傾向がある。

解答・解説

正答: 3

選択肢3が不適当です。Is値が0.3未満の建築物は、地震の震動及び衝撃に対して倒壊・崩壊の危険性が「高い」と判断される区分であり、「危険性が低いと判断され、特段の耐震改修は不要」という記述は判定の方向が逆で誤りです。一般的な目安として、Is≧0.6は危険性が低い、0.3≦Is<0.6は危険性がある、Is<0.3は危険性が高いという3区分で評価されます。

  • 選択肢1は、Is値の算定式(Eo×SD×T)であり正しい記述です。
  • 選択肢2は、Is値0.6以上の場合の判断目安であり正しい記述です。
  • 選択肢4は、経年指標Tと建築物の劣化状況の関係であり正しい記述です。

Is値は、耐震改修の要否を判断する代表的な指標であり、0.6・0.3という2つの基準値と、それぞれの区分での判断(危険性が低い・ある・高い)を正確に対応づけて覚えておくことが重要です。


問16(耐震改修工法の比較)

既存建築物の耐震改修工法に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 耐震壁の増設や柱への鉄骨ブレースの増設は、建築物の耐力・剛性を高めることで耐震性能を向上させる、代表的な耐震改修工法である。
  2. 制振部材(ダンパー)を既存建築物に追加する改修は、建築物の耐力そのものを大きく高めるのではなく、地震時のエネルギー吸収能力を高めて応答(変形)を低減させることを狙った改修工法である。
  3. 免震化改修(既存建築物の基礎部分等に免震層を新設する改修)は、上部構造の耐力を大きく高めることなく、建築物に入力される地震力そのものを低減させることを狙った改修工法である。
  4. 耐震壁の増設による改修は、必ず建築物の重量を増加させ、かつ耐力壁の配置バランスを悪化させるため、剛性率・偏心率の観点からは行うべきではない改修工法とされている。

解答・解説

正答: 4

選択肢4が不適当です。耐震壁の増設は建築物の重量を多少増加させる面はあるものの、増設する位置・数量を適切に計画すれば、むしろ剛性率・偏心率の改善(各階の剛性バランスや平面的な重心・剛心のずれの是正)に資することも多く、実際に広く採用されている改修工法です。「必ず配置バランスを悪化させ、行うべきではない」という断定的な記述は誤りです。

  • 選択肢1は、耐震壁増設・鉄骨ブレース増設という耐力・剛性向上型の改修工法であり正しい記述です。
  • 選択肢2は、制振部材追加という応答低減型の改修工法であり正しい記述です。
  • 選択肢3は、免震化改修という地震力の入力低減型の改修工法であり正しい記述です。

耐震改修工法は「耐力・剛性を高める」「応答を低減する」「入力を低減する」という3つの異なるアプローチに整理して理解しておくと、問20で扱う耐震・制振・免震の基本戦略の違いとも一貫して覚えやすくなります。


問17(免震構造の免震材料)

免震構造に用いられる免震材料に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 積層ゴムアイソレータは、鋼板とゴムを交互に積層した部材で、鉛直方向の荷重を支持しつつ、水平方向には柔らかく変形することで建築物の固有周期を長周期化させる。
  2. 鉛プラグ入り積層ゴム(LRB)は、天然ゴム系積層ゴムの中心部に鉛プラグを挿入した免震材料で、積層ゴム部がばね機能を、鉛プラグ部が減衰機能を発揮する。
  3. すべり支承は、特別な表面処理を施した鋼板等の上を免震部材がすべることで水平力を低減する免震材料であり、転がり支承はボールベアリング等を介して免震部材が転がることで水平力を低減する免震材料である。
  4. 免震材料は鉛直荷重を支持する機能を持たず、鉛直荷重は免震層とは別に設けた鉄骨柱等ですべて支持する必要がある。

解答・解説

正答: 4

選択肢4が不適当です。積層ゴムアイソレータをはじめとする免震材料の多くは、鉛直荷重を支持する機能と、水平方向の変形性能(固有周期の長周期化)をあわせ持つように設計されており、免震層で建築物の鉛直荷重を支持することが基本的な使われ方です。「免震材料は鉛直荷重を支持する機能を持たない」という記述は誤りです。

  • 選択肢1は、積層ゴムアイソレータの構造と機能であり正しい記述です。
  • 選択肢2は、鉛プラグ入り積層ゴムの構成と機能分担(ばね機能・減衰機能)であり正しい記述です。
  • 選択肢3は、すべり支承・転がり支承それぞれの水平力低減の仕組みであり正しい記述です。

免震材料は、鉛直荷重の支持と水平方向の柔らかさという、一見相反する2つの性能を1つの部材で両立させている点が最大の特徴です。この二重の役割を押さえておくことが、免震構造の理解の出発点になります。


問18(免震構造の減衰材料)

免震構造に用いられる減衰材料に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. オイルダンパーは、オイルの流動抵抗によってエネルギーを吸収する減衰装置で、変形速度に応じた抵抗力を発揮する速度依存型の減衰材料である。
  2. 鋼材ダンパーは、鋼材の塑性変形(履歴減衰)を利用してエネルギーを吸収する減衰装置で、変形の大きさに応じた抵抗力を発揮する変位依存型の減衰材料である。
  3. 高減衰ゴム系積層ゴムは、積層ゴム自体に高い減衰性能を持たせた免震材料であり、鉛直支持機能と水平方向の減衰機能をあわせて1つの部材で発揮する。
  4. 免震層に用いる減衰材料は、地震動の周期特性にかかわらず常に一定の減衰効果を発揮するため、建築物の固有周期や対象とする地震動の特性を考慮せずに選定してよい。

解答・解説

正答: 4

選択肢4が不適当です。免震構造は建築物の固有周期を長周期化させることで地震動の影響を低減させる仕組みであるため、免震層に用いる減衰材料の選定にあたっても、建築物の固有周期や対象とする地震動の特性(短周期が卓越する直下型地震か、長周期地震動が卓越する地盤・地震動か等)を踏まえた検討が必要です。「地震動の周期特性にかかわらず考慮せずに選定してよい」という記述は誤りです。

  • 選択肢1は、オイルダンパーの減衰機構(速度依存型)であり正しい記述です。
  • 選択肢2は、鋼材ダンパーの減衰機構(変位依存型・履歴減衰)であり正しい記述です。
  • 選択肢3は、高減衰ゴム系積層ゴムの構成(鉛直支持機能と減衰機能の両立)であり正しい記述です。

減衰材料は「速度に応じて効くタイプ」と「変形量に応じて効くタイプ」に大別できるという視点は、免震構造だけでなく制振構造のダンパーを理解するうえでも役立つ基本的な分類です。


問19(制振構造:パッシブ・アクティブ・セミアクティブ)

制振構造の制御方式に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. パッシブ制振は、外部からのエネルギー供給を必要とせず、ダンパー等の制振部材が振動エネルギーを吸収することで建築物の応答を低減する方式である。
  2. アクティブ制振は、振動をセンサー等で感知し、外部からのエネルギー供給を伴うアクチュエータによって能動的に制御力を加える方式であり、パッシブ制振よりも大きなエネルギー供給を必要とする。
  3. セミアクティブ制振は、少量の外部エネルギーでダンパーの特性(減衰係数等)を制御する方式で、パッシブ制振とアクティブ制振の中間的な位置づけとされている。
  4. TMD(チューンド・マス・ダンパー)は、建築物内部の各階の層間変位を利用してエネルギーを吸収する層間型ダンパーの一種であり、屋上等に付加質量(重り)を設置する形式は用いられない。

解答・解説

正答: 4

選択肢4が不適当です。TMD(チューンド・マス・ダンパー)は、建築物の屋上等に付加質量(重り)を設置し、建築物本体の揺れと逆位相で重りを振動させることでエネルギーを吸収する制振装置であり、主に風による建築物の揺れの低減に用いられます。「屋上等に付加質量を設置する形式は用いられない」という記述は、TMDの基本的な仕組みそのものを否定しており誤りです。

  • 選択肢1は、パッシブ制振の定義(外部エネルギー不要、部材による吸収)であり正しい記述です。
  • 選択肢2は、アクティブ制振の定義(外部エネルギー供給を伴う能動的な制御)であり正しい記述です。
  • 選択肢3は、セミアクティブ制振の位置づけ(少量のエネルギーによる特性制御、パッシブとアクティブの中間)であり正しい記述です。

パッシブ・アクティブ・セミアクティブという3つの制御方式は、外部からのエネルギー供給の有無・大小という軸で整理すると区別しやすくなります。TMDは、この3方式の分類とは別に、「重りを使う」という仕組みそのものを問う出題も多いため、あわせて確認しておいてください。


問20(耐震・制振・免震の3戦略の比較)

耐震構造・制振構造・免震構造という3つの基本戦略に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 耐震構造は建築物自体の強度・剛性を高めることで地震力に抵抗する考え方であり、制振構造は振動エネルギーを吸収して応答を低減する考え方、免震構造は建築物への地震力の入力自体を低減する考え方である、というように、3つの基本戦略にはそれぞれ異なる狙いがある。
  2. 耐震構造・制振構造・免震構造は、地震対策として互いに排他的な選択肢であり、1つの建築物に複数の考え方を組み合わせて採用することはできない。
  3. 免震装置の採用自体が建築物の重量を軽量化する効果を持つため、免震構造を採用した建築物は、同規模の耐震構造の建築物に比べて自重が軽くなる。
  4. 制振構造の主な狙いは地震力の建築物への入力そのものを低減させることであり、免震構造の主な狙いは振動エネルギーを吸収して応答を低減させることである。

解答・解説

正答: 1

選択肢1が正しい記述です。耐震構造は建築物自体の強度・剛性で地震力に抵抗し、制振構造はダンパー等で振動エネルギーを吸収して応答(変形・加速度)を低減し、免震構造は建築物の固有周期を長周期化させることで地震力そのものの入力を低減する、というように、3つの基本戦略は地震に対する狙い(何をどう変えるか)がそれぞれ異なります。

  • 選択肢2は誤りです。耐震要素に制振部材を組み合わせた建築物や、免震構造に制振ダンパーを併用した建築物など、複数の考え方を組み合わせて採用することは一般的に行われています。
  • 選択肢3は誤りです。免震装置の採用は建築物の固有周期を長周期化させる効果を持つものであり、それ自体が建築物の自重を軽量化する効果を持つわけではありません。
  • 選択肢4は誤りです。制振構造の主な狙いは振動エネルギーの吸収による応答低減、免震構造の主な狙いは地震力の入力そのものの低減であり、記述はこの2つの狙いが入れ替わっています。

耐震・制振・免震という3つの基本戦略の狙いの違いは、令和8年度の学科試験でも繰り返し問われる可能性が高い、構造科目の総まとめ的な論点だと筆者は考えています。この記事で扱った20問とあわせて、それぞれの狙いの違いを言葉で説明できる状態にしておくことをおすすめします。


直前チェックリスト

20問で扱った内容を中心に、直前期に暗記・確認しておきたい項目を整理しました。

  • 積載荷重は「床用>骨組み用>地震力用」の順に小さくなるが、室の用途間の大小関係は用途区分によって逆転することがあること
  • 廊下・玄関・階段の積載荷重は、教室・売場・劇場等に連絡するものはいずれも集会室相当の高い数値(3,500/3,200/2,100N/m²)を用いること
  • 積雪荷重=垂直積雪量×積雪の単位荷重×屋根形状係数という計算式を、実際の数値で計算できるか
  • 多雪区域の地震力算定では、積雪荷重の0.35倍(0.35S)を重量に加算すること(積雪荷重そのものの算定とは別の話)
  • 速度圧q=0.6EV0²の計算式と、係数E(Er²×Gf)・基準風速V0(地方ごとに異なる)の意味
  • 地表面粗度区分は4段階、ガスト影響係数Gfは粗度区分・高さに応じて変わること
  • 地震層せん断力係数Ci=Z・Rt・Ai・Coの4要素と、Qi=Ci×Wiの計算ができるか
  • 振動特性係数Rtは、Tが地盤ごとのTc以下ではRt=1.0、Tcを超えると軟弱地盤ほどRtが大きくなる傾向
  • 地震層せん断力分布係数Aiは上層ほど大きくなること
  • 層間変形角(層間変位÷階高、原則1/200、条件付きで1/120まで緩和)、剛性率(層間変形角の逆数の平均比、0.6未満でFs最大2.0)、偏心率(偏心距離÷弾力半径、0.15超でFe)は、それぞれ独立した別の確認事項であること
  • 必要保有水平耐力Qun=Ds・Fes・Qud、Fes=Fs×Feという算定式の構成
  • 保有水平耐力計算(ルート3)は高さ31m超60m以下に適用され、ルート1・ルート2より詳細な検討を要すること
  • 耐震診断のIs値=Eo×SD×T、0.6以上で危険性が低い、0.3未満で危険性が高いという判定区分
  • 耐震改修は「耐力・剛性を高める」「エネルギーを吸収する」「入力を低減する」という3方向に整理できること
  • 免震材料(積層ゴム系・すべり系・転がり系)は鉛直荷重の支持機能もあわせ持つこと
  • 減衰材料は速度依存型(オイルダンパー等)と変位依存型(鋼材ダンパー等)に大別できること
  • パッシブ・アクティブ・セミアクティブ制振の違い(外部エネルギー供給の有無・大小)とTMDの仕組み
  • 耐震・制振・免震の3つの基本戦略の狙いの違い(強度で抵抗/エネルギー吸収/入力低減)

まとめ

荷重・耐震設計・免震制振の分野は、力学の計算問題や各種構造の文章題と違い、似た名前の指標・係数が数多く登場し、それぞれの算定式や基準値、大小関係の方向性を混同しやすいという特徴があります。試験本番では、正答を選ぶだけでなく、なぜ他の選択肢が誤りなのか(どの関係が逆になっているのか、どの係数と混同しているのか)まで確認する解き方を徹底することが、初見の問題文への対応力を高める近道になると筆者は考えています。今回の20問で自信が持てなかった分野があれば、当日までに単元記事に戻って算定式・基準値を整理し直しておいてください。


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