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建築構造

風荷重・積雪荷重の基礎|速度圧・風力係数と荷重の組合せの考え方(一級建築士 構造)

建物の構造設計では、固定荷重・積載荷重・地震荷重の基礎に加えて、風荷重積雪荷重という、自然現象に由来する変動荷重を検討する必要があります。この2つは「地域や立地条件によって考慮の程度が大きく変わる」という共通点を持ちながら、力のかかり方や建物への影響の出方はまったく異なります。風荷重は建物の形状や高さによって圧力の向き・大きさが変わる荷重、積雪荷重は屋根の上に静かに積もり続ける重量としての荷重、という違いを押さえておくと、それぞれの考え方が整理しやすくなります。

本記事では、風荷重の基本的な考え方(速度圧と風力係数)、積雪荷重の基本的な考え方(垂直積雪量と屋根形状係数)、そして荷重の組合せという実務・試験の両方で問われやすいテーマを、一級建築士(学科・構造)の学習向けに整理します。固定荷重・積載荷重・地震荷重については荷重・地震力と耐震設計の基礎で扱っていますので、本記事とあわせて確認すると荷重全体の骨格がつながりやすくなります。

風荷重(速度圧×風力係数・正圧と負圧の分布)と積雪荷重(垂直積雪量×単位荷重×屋根形状係数・急勾配と緩勾配の比較)の考え方を示す模式図

図:風荷重は風上面の正圧と屋根・風下面の負圧(吹き上げ)で捉え、積雪荷重は屋根勾配が急なほど屋根形状係数が小さくなる


風荷重の考え方|速度圧と風力係数

風荷重は、風が建物の外壁や屋根に及ぼす圧力による荷重です。この風圧力は、一般に「速度圧(q)」と「風力係数(Cf)」という2つの要素の積として求める、という考え方が構造計算の基本になります。速度圧は「風がどれだけ強く吹くかを表す圧力の大きさ」、風力係数は「その風圧力が建物の形状によってどのように増幅・低減されるかを表す係数」と大まかにイメージしておくと理解しやすくなります。

速度圧は、風の基準となる速さ(基準風速)に、建物の高さや周辺の地形・障害物の状況を反映する係数などを組み合わせて求める、という考え方が基本です。建物の高さが高くなるほど速度圧は大きくなる傾向があります。これは、地表面付近では建物や樹木などの障害物によって風が受ける抵抗(摩擦)が大きく風速が抑えられる一方、上空に行くほどその抵抗が弱まり風速が増していく、という自然現象を反映したものと理解しておくとよいでしょう。この「地表面付近でどれだけ風が抑えられやすいか」という土地の粗さの度合いは、一般に地表面粗度区分と呼ばれる考え方で表され、市街地のように建物が密集している地域と、海岸や平坦な農地のように障害物が少ない地域とでは、同じ基準風速であっても速度圧の大きさが変わってくる、という位置づけになっています。

風力係数は、建物の形状(切妻・寄棟・陸屋根といった屋根形状、建物の高さと奥行きの比率など)や、風を受ける面が建物のどの部位か(外壁面か屋根面か、風上側か風下側か)によって異なる値が設定される、という考え方が基本です。ここで押さえておきたいのが、風圧力には「正圧」と「負圧」の両方があるという点です。風上側の壁面のように風が直接押し付ける面には建物を押す向きの正圧が生じる一方、屋根面や風下側の壁面では、風が通り過ぎる際に生じる負圧(建物から引き離す向きの吸い上げる力)が生じることがあります。とくに屋根の吹き上げと呼ばれるこの負圧の考え方は、屋根葺き材が飛散する被害の一因ともなるため、構造設計・防災の両面で重要視される要素です。

風荷重の要素 考え方のイメージ
速度圧(q) 風の強さを表す圧力。建物の高さが高いほど、地表面粗度が小さい(障害物が少ない)地域ほど大きくなる傾向
風力係数(Cf) 建物の形状・部位によって風圧力が増幅・低減される割合を表す係数
正圧 風上側の壁面などで、風が建物を押す向きに生じる圧力
負圧 屋根面・風下側などで、風が建物から引き離す向きに生じる圧力(屋根の吹き上げ等)

また、風荷重の検討には、建物全体の構造骨組(柱・梁・耐力壁など)を対象とする検討と、外装材(屋根葺き材・外壁パネルなど、局所的に強い風圧を受ける部材)を対象とする検討の、2つの視点があるという考え方も押さえておきたいポイントです。外装材は建物全体としては小さな部材であっても、局所的には平均的な風圧よりも大きな圧力(ピーク風力係数などで評価される局所的な圧力)を受けることがあり、構造骨組と同じ考え方をそのまま当てはめると不足が生じる場合があります。そのため、構造骨組用と外装材用とで、風荷重の算定に用いる係数の考え方が区別されている、という点は理解しておくとよいでしょう。速度圧・風力係数の具体的な数値・算定式は建築基準法令・告示で定められており、地域や建物条件によって細部が異なるため、実際の設計にあたっては最新の基準・構造設計者の判断で確認してください。


積雪荷重の考え方|垂直積雪量と屋根形状係数

積雪荷重は、屋根に積もった雪の重さによる荷重です。風荷重が「動的な圧力」であるのに対し、積雪荷重は「静的に積み重なる重量」という性質を持つ点が対照的です。積雪荷重の大きさは、一般に「垂直積雪量」に「積雪の単位荷重(雪の密度に相当する重さの目安)」と「屋根形状係数」を掛け合わせて求める、という考え方が構造計算の基本になります。

垂直積雪量は、その地域でどれだけの深さの雪が積もると想定するかを表す値で、地域の気象条件(過去の積雪の記録など)に応じて定められる、という考え方が基本です。積雪の単位荷重は、同じ深さの雪であってもその密度(水分を含んで重い雪か、軽く乾いた雪か)によって重さが異なることを反映する考え方で、地域によって想定される値が異なります。屋根形状係数は、屋根の勾配(傾き)によって積雪荷重が変わるという考え方を反映したもので、勾配が急な屋根ほど雪が滑り落ちやすく、屋根に留まる雪の量が減るため、屋根形状係数は小さくなる傾向があります。逆に、勾配がほとんどない陸屋根のような形状では、雪が滑り落ちにくいため屋根形状係数は大きくなる、というイメージで捉えておくとよいでしょう。

積雪荷重の要素 考え方のイメージ
垂直積雪量 地域の気象条件に応じて想定される積雪の深さ
積雪の単位荷重 雪の密度(水分量)に応じた単位体積あたりの重さの目安
屋根形状係数 屋根勾配が急なほど雪が滑り落ちやすく小さくなる傾向

積雪荷重を検討するうえでもう一つ重要なのが、多雪区域という考え方です。積雪の深い地域では、積雪荷重が建物にとって長期間にわたり継続的にかかり続ける荷重として扱われる場合があり、多雪区域に指定された地域では、通常の(積雪の少ない)地域とは異なる荷重の考え方・組合せが求められる、という位置づけになっています。多雪区域かどうかによって、後述する荷重の組合せの考え方(とくに地震荷重との組合せ)が変わってくる点は、試験対策としても押さえておきたいポイントです。

また、積雪荷重には雪下ろしによる低減という考え方もあります。これは、実際に雪下ろしの慣習がある地域・建物では、一定の条件のもとで積雪荷重を低減して設計してよいとする考え方で、雪下ろしを前提とした荷重の軽減という実務上の工夫と理解しておくとよいでしょう。ただし、この低減はあくまで一定の条件のもとで認められるものであり、無条件に適用できるわけではない、という点には注意が必要です。垂直積雪量・単位荷重・屋根形状係数・多雪区域の指定や雪下ろし低減の具体的な数値・適用条件は、地域の特定行政庁の規則や告示で定められているため、実際の設計にあたっては必ず最新の基準を確認してください。


荷重の組合せの考え方|長期・短期とG+P+W、G+P+Sの組み方

個々の荷重(固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風荷重・地震荷重)は、実際の建物には単独ではなく複数が同時に作用するという前提で検討する必要があります。この「どの荷重をどう組み合わせて検証するか」という考え方の骨格が、荷重の組合せです。

荷重の組合せを理解するうえでまず押さえておきたいのが、長期荷重短期荷重という区分です。長期荷重は、固定荷重や積載荷重のように、建物に常時(長期間)かかり続けることを前提とした荷重の組合せです。短期荷重は、積雪荷重・風荷重・地震荷重のように、一時的・突発的に生じることを前提とした荷重を、長期荷重に加えて組み合わせる考え方です。この区分は、部材の許容応力度が長期か短期かで異なる値(一般に短期のほうが大きな値)が設定されていることとも対応しており、「どれだけの期間その力を受け続けるか」によって、部材に許容される応力度の水準そのものが変わる、という考え方の背景を理解しておくと暗記に頼らず整理できます。

荷重の組合せは、記号を用いて簡潔に表されることが多く、たとえば固定荷重をG、積載荷重をP、積雪荷重をS、風荷重をW、地震荷重をKと置いたとき、「G+P」が長期荷重の基本形、「G+P+S」「G+P+W」「G+P+K」がそれぞれ積雪・風・地震を組み合わせた短期荷重の基本形、という考え方でイメージしておくとよいでしょう。さらに、多雪区域では、積雪荷重と地震荷重・風荷重を同時に考慮する組合せ(たとえば「G+P+0.35S+K」のように、積雪荷重を一定の割合に低減したうえで地震荷重と組み合わせる考え方)が別途設定されている、という点も特徴的です。これは、多雪区域では冬季に積雪が長期間存在する状態が現実的にあり得るため、その状態で地震や強風が生じる可能性を考慮する必要がある、という背景に基づく考え方です。

荷重の組合せ(考え方のイメージ) 想定する状況
G+P(長期) 常時作用する固定荷重・積載荷重
G+P+S(短期) 積雪時
G+P+W(短期) 暴風時
G+P+K(短期) 地震時
G+P+0.35S+K 等(多雪区域の短期) 多雪区域における積雪時の地震(積雪を一定割合に低減して地震と組み合わせる考え方)

具体的な低減係数・組合せの式は建築基準法令・告示で定められており、地域区分(多雪区域かどうか)によっても内容が異なるため、本記事では組合せの骨格のみを整理しています。実際の構造計算にあたっては、最新の法令・告示・構造設計者の判断で必ず確認してください。


風と地震はどちらが支配的か|建物の重さ・高さによる違い

一級建築士の学科試験でも実務でも問われやすいのが、「結局、風荷重と地震荷重のどちらが建物にとって厳しい(支配的な)荷重になるのか」という視点です。この問いに対しては、「建物の重さ」と「建物の高さ・見付面積(風を受ける面の広さ)」のバランスによって、支配的な荷重が変わるという考え方で理解しておくとよいでしょう。

地震荷重は前回整理したとおり、建物の重量に応じて大きくなる、という考え方が基本です。一方、風荷重は建物の重量とは直接関係なく、風を受ける面の広さ(見付面積)や建物の高さに応じて大きくなる、という考え方が基本です。この違いから、鉄筋コンクリート造のように建物自体が重い構造では地震荷重が支配的になりやすく、鉄骨造の高層建物や、屋根面積が大きく建物重量が比較的軽い建物では風荷重が支配的になりやすい、という傾向が一般的な理解として整理されています。また、建物の高さが高くなるほど、速度圧が増して風荷重が大きくなる一方、超高層建物では固有周期が長くなることで地震力の算定に用いる係数も変わってくるため、「高さが高いほど単純にどちらか一方が有利・不利になる」とは言い切れない点にも注意が必要です。

建物の特徴 相対的に支配的になりやすい荷重の傾向
鉄筋コンクリート造など、建物自体が重い構造 地震荷重が支配的になりやすい傾向
鉄骨造の高層建物、軽量で見付面積の大きい建物 風荷重が支配的になりやすい傾向
多雪区域の建物 積雪荷重(およびそれと地震・風の組合せ)が加わり検討が複雑になる

どちらの荷重が支配的になるかは、建物ごとの重量・形状・立地条件・地域区分によって個別に構造計算で確認する必要があり、一律に決まるものではない、という位置づけを押さえておくと、丸暗記ではなく力学的なイメージとして理解しやすくなります。


試験での押さえどころ

風荷重・積雪荷重は、地震荷重に比べて出題頻度がやや低く感じられることもありますが、「なぜその要素が荷重の大きさに影響するのか」という力学的な理屈を理解しておけば、細かい数値を覚えていなくても選択肢の妥当性を判断しやすくなるテーマです。以下の視点を押さえておくと効率よく整理できます。

  • 風荷重は「速度圧×風力係数」という構造で求められ、速度圧は建物の高さ・地表面粗度、**風力係数は建物の形状・部位(正圧か負圧か)**によって変わるという役割分担を区別する
  • 屋根の吹き上げ(負圧)は屋根葺き材の飛散被害にもつながる重要な視点であり、外装材と構造骨組とで検討の考え方が異なることを理解しておく
  • 積雪荷重は「垂直積雪量×単位荷重×屋根形状係数」という構造で求められ、屋根勾配が急なほど屋根形状係数が小さくなるという関係を押さえる
  • 多雪区域では積雪荷重の扱いが変わり、地震荷重と積雪荷重を組み合わせた検討が求められる点を区別する
  • 荷重の組合せは、長期(G+P)と短期(G+P+S、G+P+W、G+P+K等)という区分を軸に、どの荷重がどの状況で組み合わされるかを整理する
  • 風と地震のどちらが支配的かは、建物の重量・高さ・見付面積のバランスで変わり、一律には決まらないという考え方を理解しておく

まとめ

  • 風荷重は速度圧(風の強さ、高さや地表面粗度で変化)と風力係数(建物の形状・部位で変化)の積として求める、という考え方が基本
  • 風圧力には正圧と負圧があり、屋根の吹き上げのような負圧は外装材の被害にもつながるため、構造骨組と外装材とで検討の考え方が区別される
  • 積雪荷重は垂直積雪量・単位荷重・屋根形状係数の積として求める、という考え方が基本で、屋根勾配が急なほど荷重は小さくなる傾向がある
  • 多雪区域では積雪荷重の扱いが変わり、地震荷重や風荷重との組合せの考え方も通常の地域と異なる
  • 荷重の組合せは長期(G+P)と短期(G+P+S、G+P+W、G+P+K等)の区分が基本で、多雪区域ではさらに積雪と地震を組み合わせた検討が加わる
  • 風と地震のどちらが支配的かは建物の重量・高さ・見付面積のバランスで変わり、一律に決まるものではない

風荷重・積雪荷重は、固定荷重・積載荷重・地震荷重と並ぶ主要な荷重の一角でありながら、地域性・建物形状による違いが大きいテーマです。「速度圧×風力係数」「垂直積雪量×単位荷重×屋根形状係数」という荷重算定の骨格と、「長期・短期」「多雪区域かどうか」という荷重の組合せの視点の2つを軸に整理しておくと、個別の数値を丸暗記するよりも応用の効く理解につながります。具体的な数値・算定式・地域区分は法令・告示で定められ改正されることもあるため、学習・実務の双方で最新の基準を確認する姿勢を忘れないようにしましょう。


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