建築設備.tech
建築構造

荷重・地震力と耐震設計の基礎|固定荷重から保有水平耐力まで(一級建築士 構造)

結論から言うと、建物の構造設計は、「建物にどのような力(荷重・外力)がはたらくかを整理すること」と「その力に対してどの程度まで安全性を確認するかという検証の考え方」の2つを組み合わせて成り立っています。固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風荷重・地震荷重といった個別の荷重の種類を覚えるだけでなく、それらがなぜ区別されているのか、地震力がどのような考え方で建物に割り当てられるのかという骨格を理解しておくと、一次設計・二次設計や耐震・制震・免震といった発展的なテーマも整理しやすくなります

本記事では、建物にはたらく荷重の種類と考え方、地震力の基本的なイメージ、一次設計(許容応力度設計)と二次設計(保有水平耐力の確認)の位置づけ、耐震・制震・免震の違い、剛性率・偏心率によるバランスの考え方、そして耐震改修の考え方を、一級建築士(学科・構造)の学習向けに整理します。構造計算ルートと建築基準法上の位置づけについては構造関係規定の基礎で扱っていますので、あわせて確認しておくと理解がつながりやすくなります。


図で見る(全体像)

多層の建物の各階にはたらく地震力(Fi)が上階ほど大きくなる傾向と、地震層せん断力(Qi)が下階ほど累積して大きくなること、さらに耐震・制震・免震という3つの方式の考え方の違いを示す模式図

上図は考え方を示す模式図です。実際の数値・寸法・仕様は建物ごとに異なります。


建物にはたらく荷重の種類と考え方

建物の構造設計では、建物にはたらく力を「荷重」として整理し、それぞれの性質に応じて分類したうえで検証を行う、という考え方が基本になります。荷重は大きく、常に建物にかかり続ける荷重と、状況によって変動する荷重に分けて考えると整理しやすくなります。

固定荷重は、柱・梁・床・壁といった構造躯体そのものや、仕上げ材・設備機器など、建物に常時かかり続ける重量による荷重です。建物が存在する限りほぼ変化しない荷重であるため、構造計算の出発点として扱われます。積載荷重は、人・家具・什器・物品など、建物の用途に応じて変動する荷重で、住宅・事務所・店舗・倉庫といった用途ごとに想定される荷重の大きさが異なる、という考え方が基本です。用途によって積載荷重の想定値が変わるのは、実際にその空間に置かれる人や物の量が用途ごとに異なるためと理解しておくとよいでしょう。

積雪荷重は、屋根に積もる雪の重さによる荷重で、地域の積雪の状況(多雪区域かどうかなど)によって考慮の程度が変わります。風荷重は、風が建物の外壁や屋根に及ぼす圧力による荷重で、建物の高さ・形状・立地条件(周辺の地形や建物の密集度など)によって受ける風の影響が変わる、という考え方が基本です。地震荷重(地震力)は、地震動によって建物に生じる慣性力による荷重で、後述するとおり建物の重量や高さ方向の位置によって割り当てられる大きさが変わってきます。地下部分がある建物では、これらに加えて土圧(土が擁壁や地下外壁を押す力)や、地下水位が高い場合の水圧も検討対象になります。

荷重の種類 性質 主な考慮要素
固定荷重 常時かかり続ける荷重 躯体・仕上げ・設備機器などの重量
積載荷重 用途に応じて変動する荷重 建物の用途(住宅・事務所・店舗・倉庫等)
積雪荷重 積雪により生じる荷重 地域の積雪状況(多雪区域かどうか等)
風荷重 風圧により生じる荷重 高さ・形状・立地条件(地形・密集度等)
地震荷重(地震力) 地震動により生じる慣性力 建物重量、高さ方向の位置、地域や地盤の特性
土圧・水圧 地下部分に生じる荷重 土質、地下水位の状況

これらの荷重は、それぞれ単独で検討するのではなく、組み合わせて建物に同時に作用する場合を想定して検証するという考え方が基本です。どの荷重をどのような組み合わせで考慮するかは、建物の規模・構造種別・立地条件によって異なるため、実際の設計にあたっては最新の基準・所轄の考え方を確認するようにしてください。


地震力の考え方|地震層せん断力とAi分布のイメージ

地震力を建物にどう割り当てるかという考え方を理解するうえで、まず押さえておきたいのが**「建物の重量が大きいほど、地震時に生じる力(慣性力)も大きくなる」という基本的な関係**です。地震動によって地面が揺れると、建物はその揺れに追従しようとする一方で、自身の質量による慣性でその場にとどまろうとするため、質量が大きいほど建物内部に生じる力も大きくなる、というイメージで捉えておくとよいでしょう。

この考え方を構造計算に落とし込んだものが、各階に生じる水平方向の力を表す地震層せん断力という概念です。地震層せん断力は、その階が支える建物重量(その階より上部の重量の合計)に、地震動の激しさの基準となる係数や、建物の揺れやすさ(固有周期や振動特性)を反映する係数、そして高さ方向の力の分布を表す係数などを掛け合わせて求める、という考え方が基本になります。この「高さ方向の力の分布を表す係数」は一般にAi分布と呼ばれ、建物の上層階ほど地震力が相対的に大きく割り当てられるという特徴があります。これは、建物が揺れる際に上層階ほど変位や加速度が大きくなりやすいという、建物の振動特性を反映したものと理解しておくとよいでしょう。

地震力に関わる要素 考え方のイメージ
建物重量 重量が大きいほど地震力(慣性力)も大きくなる
地震動の激しさの基準となる係数 想定する地震動のレベルに応じた基準値
建物の揺れやすさを表す係数 固有周期や振動特性に応じて地震力の大きさが調整される
高さ方向の分布(Ai分布) 上層階ほど地震力が相対的に大きくなる傾向

**これらの係数の具体的な数値や算定式の細部は法令・告示で定められており、改正によって見直されることもあるため、本記事では考え方の骨格の整理にとどめます。**実際の構造計算にあたっては、最新の建築基準法令・告示、構造設計者の判断で必ず確認してください。地震力の大きさが決まったあとに、それをどこまで厳しく検証するかという話は、次に説明する一次設計・二次設計の考え方につながります。


一次設計と二次設計|許容応力度設計と保有水平耐力の考え方

耐震設計では、「日常的に発生しうる程度の地震動」と「極めてまれに発生する大地震」という、性質の異なる2つの地震動を想定し、それぞれに対して別の観点で安全性を検証するという考え方が基本になっています。この2段階の検証は、一般に一次設計・二次設計と呼ばれています。

一次設計は、比較的発生頻度の高い、日常的なレベルの地震動を想定し、建物の各部材に生じる応力度が、材料の許容応力度の範囲内に収まっていることを確認する検証です。これは許容応力度設計と呼ばれる考え方に相当し、部材が弾性範囲内で挙動する(変形しても地震後に元の状態に戻る)ことを確認する検証、とイメージしておくとよいでしょう。

二次設計は、極めてまれにしか発生しない大地震クラスの地震動を想定し、建物が最終的に倒壊に至らない程度の耐力を持っているかどうかを確認する検証です。これは保有水平耐力の確認と呼ばれる考え方に相当し、大地震時には部材が弾性範囲を超えて塑性化する(変形が元に戻らなくなる)ことをある程度前提としたうえで、**建物全体としてどこまで粘り強く力を受け止められるか(靭性)**を評価する、という考え方が特徴です。二次設計は、比較的規模の大きい建物や高さのある建物で求められる傾向があり、対象となる規模の考え方は構造関係規定の基礎でも整理しています。

設計段階 想定する地震動 確認する内容 設計思想のイメージ
一次設計 発生頻度の高い、日常的なレベルの地震動 部材の応力度が許容応力度の範囲内か 弾性範囲内での安全性(許容応力度設計)
二次設計 極めてまれに発生する大地震クラスの地震動 建物全体としての保有水平耐力(倒壊防止の余力) 塑性化を許容した粘り強さ(靭性)の評価

一次設計と二次設計は、どちらか一方だけを満たせばよいという関係ではなく、「日常的な地震では損傷を抑え、大地震では倒壊は避ける」という2段階の目標を、それぞれ異なる検証方法で確かめるという位置づけで理解しておくと、暗記に頼らず整理しやすくなります。


耐震・制震・免震の違い

大地震への対策として建物に取り入れられる仕組みは、大きく耐震・制震・免震の3つに整理されます。それぞれ地震力への対応の仕方が異なるため、混同せずに区別しておくことが重要です。

耐震構造は、柱・梁・耐力壁といった建物本体の強度・剛性・靭性を高めることで、地震力そのものに正面から耐える、という最も基本的な考え方です。制震構造は、建物内にダンパー(地震のエネルギーを吸収する装置)などの制震部材を組み込み、地震時に建物に生じる揺れのエネルギーを吸収・減衰させることで、建物本体の負担を軽減する、という考え方です。免震構造は、建物と基礎の間などに免震装置(積層ゴムなど、水平方向に柔らかく変形する装置)を設置し、地震動そのものが建物に伝わりにくくすることで、建物の揺れを根本的に低減する、という考え方です。

対策の種類 基本的な考え方 主な特徴
耐震構造 建物本体の強度・剛性・靭性を高めて地震力に耐える 追加装置を必要としない標準的な考え方
制震構造 ダンパー等で地震エネルギーを吸収・減衰させる 建物本体への負担を軽減、繰り返しの揺れにも効果が期待される
免震構造 免震装置で地震動そのものが建物に伝わりにくくする 建物の揺れを根本的に低減、設置スペース・コストの検討が必要

どの対策を採用するかは、建物の用途・規模・重要度(災害時に機能を維持すべき建物かどうか等)、敷地条件、コストなど、複数の要素を踏まえて判断されるものであり、免震・制震にすれば耐震構造が不要になるという単純な関係ではない点にも注意しておくとよいでしょう。実際、免震構造・制震構造を採用する建物であっても、建物本体には一定の耐震性能が求められます。


剛性率・偏心率とバランスの重要性

建物の耐震性能は、各階・各部位が個別に十分な強度を持っているかだけでなく、建物全体としてのバランスにも大きく左右されます。この「バランス」を評価する代表的な考え方が剛性率偏心率です。

剛性率は、建物の高さ方向(各階)の剛性(変形のしにくさ)のバランスを評価する考え方です。ある階だけ極端に柱・壁が少なく、他の階に比べて剛性が低い(相対的に軟らかい)階があると、地震時にその階に変形が集中し、局所的に大きな被害を受けやすくなります。このような、周囲の階に比べて著しく剛性の低い階は一般に**「弱い階」**と呼ばれ、耐震設計上は特に注意すべき対象として扱われます。偏心率は、建物の平面方向における剛性・重量の中心のずれ(偏り)を評価する考え方です。建物の重心(重さの中心)と剛心(水平力に抵抗する力の中心)の位置が大きくずれていると、地震時に建物がねじれるように変形しやすくなり、外周部の柱や壁に想定以上の力が集中することがあります。

バランスの指標 評価する方向 望ましくない状態のイメージ
剛性率 高さ方向(階ごと)の剛性バランス 特定の階だけ極端に剛性が低い(弱い階が生じる)
偏心率 平面方向の重心・剛心のバランス 重心と剛心のずれが大きく、地震時にねじれ変形が生じやすい

剛性率・偏心率の具体的な基準値・算定方法は法令・告示で定められていますが、本記事では数値の丸暗記よりも「なぜバランスが重要なのか」という考え方を優先して整理しています。実際の設計・検証にあたっては、最新の基準・構造設計者の判断で確認してください。試験対策としても、「局所的に弱い部分・偏った配置があると、そこに力が集中して被害が大きくなりやすい」という力学的なイメージを持っておくと、関連する出題の理解がしやすくなります。


耐震改修の考え方

既存の建物、とくに現行の耐震基準が整備される前に建てられた建物については、現在の耐震性能の考え方に照らして不足がないかを確認し、必要に応じて性能を向上させる耐震改修が行われます。耐震改修の進め方は、大きく**耐震診断(現状の耐震性能を把握する調査・評価)と、その結果を踏まえた耐震改修工事(性能を向上させる工事)**の2段階で考えるとイメージしやすくなります。

耐震改修工事の手法としては、耐力壁やブレース(斜め材)を追加して強度・剛性を高める方法、柱・梁の靭性を高める補強を行う方法、そして建物の外に免震装置や制震装置を新設して地震力そのものへの対応力を高める方法など、複数のアプローチがあります。どの手法を選ぶかは、建物の用途(使用しながら改修できるか)、構造形式、コスト、意匠上の制約などを踏まえて総合的に判断される、という考え方が基本です。

給排水設備など建物内の設備についても、耐震性・事業継続の観点から検討すべき点があり、この点は給排水設備のBCP・耐震で扱っていますので、構造と設備の両面から耐震性を検討する際にあわせて確認しておくとよいでしょう。


実務チェックリスト

  • 建物にはたらく荷重(固定・積載・積雪・風・地震・土圧等)を、性質ごとに区別して整理できているか
  • 地震力が建物重量に応じて大きくなること、上層階ほど地震力が相対的に大きく割り当てられる傾向があることを理解しているか
  • 一次設計(許容応力度設計)と二次設計(保有水平耐力の確認)が、それぞれ何を目的とした検証かを区別できているか
  • 耐震・制震・免震それぞれの基本的な考え方の違いを説明できるか
  • 剛性率(高さ方向のバランス)・偏心率(平面方向のバランス)が、なぜ耐震性能に影響するかを理解しているか
  • 既存建物の耐震改修について、耐震診断と改修工事という2段階の流れを踏まえて検討しているか
  • 荷重・地震力・構造計算に関わる具体的な数値・基準は、最新の法令・告示・構造設計者の判断で確認しているか

よくある質問

地震力は建物のどの部分にどう作用しますか?

地震力は建物全体に一様にかかるのではなく、各階が支える建物重量に応じて割り当てられ、一般に上層階ほど相対的に大きな地震力が生じる、という考え方が基本です。建物の重量・高さ・振動特性によって割り当てられる大きさが変わるため、個々の建物ごとに構造計算で確認する必要があります。

一次設計と二次設計はどちらか一方だけ満たせば十分ですか?

いいえ、どちらか一方だけでは不十分という位置づけです。一次設計は日常的なレベルの地震動に対する損傷の抑制を、二次設計は極めてまれな大地震に対する倒壊の防止を、それぞれ別の観点で確認するものであり、規模・構造種別によっては両方の検証が求められます。

免震構造にすれば耐震性能を考えなくてよいのですか?

そうではありません。免震構造は地震動そのものが建物に伝わりにくくする仕組みですが、建物本体にも一定の耐震性能は求められます。制震構造についても同様で、いずれも建物本体の耐震性能を前提としたうえでの追加的な対策という位置づけで理解しておく必要があります。

剛性率・偏心率はどのように改善しますか?

剛性率であれば、極端に剛性の低い階が生じないよう耐力壁やブレースの配置を各階でバランスよく計画すること、偏心率であれば、平面上の重心と剛心のずれが小さくなるよう耐力壁・柱の配置を検討することが基本的な対応の方向性です。具体的な配置計画は建物ごとの条件によって異なるため、構造設計者による個別の検討が必要です。


まとめ

  • 建物にはたらく荷重は、固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風荷重・地震荷重・土圧などに区分され、それぞれ性質の異なる考え方で検討される
  • 地震力は建物重量が大きいほど大きくなり、Ai分布の考え方により上層階ほど相対的に大きく割り当てられる傾向がある
  • 一次設計(許容応力度設計)は日常的な地震動に対する損傷の抑制、二次設計(保有水平耐力の確認)は大地震に対する倒壊防止を目的とし、両者は役割が異なる
  • 耐震・制震・免震は、それぞれ地震力への対応の仕方が異なり、免震・制震を採用しても建物本体の耐震性能が不要になるわけではない
  • 剛性率(高さ方向)・偏心率(平面方向)のバランスは、局所的な被害の集中やねじれ変形を防ぐうえで重要な指標である
  • 既存建物の耐震改修は、耐震診断で現状を把握したうえで、耐力壁追加・靭性向上・免震/制震装置の新設などの手法から適切な方法を選ぶ、という流れで進められる

荷重・地震力・耐震設計のテーマは個別の用語が多く登場しますが、「建物にどのような力がはたらくか」「その力に対してどこまで検証するか」「建物全体としてバランスが取れているか」という3つの軸で捉えると、一次設計・二次設計や耐震・制震・免震、剛性率・偏心率といった個別のテーマのつながりが見えやすくなります。具体的な数値・算定式は法令・告示で定められ改正されることもあるため、学習・実務の双方で最新の基準を確認する姿勢を忘れないようにしましょう。


あわせて読みたい

参考書籍でさらに学ぶ

※ この欄は書籍のアフィリエイト広告(Amazon・楽天)を含みます。価格・在庫・最新の年度版はリンク先でご確認ください。

  • 一級建築士 学科 構造 テキスト/問題集

    構造力学・各種構造・材料を対策。計算問題は反復が近道です。

→ 建築設備士のおすすめ参考書まとめ

関連記事