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静定ラーメン・トラスの解き方|反力・応力図・曲げモーメント図の基礎(一級建築士 構造)

一級建築士(学科・構造)の力学問題は、単純梁・片持ち梁・門型ラーメン・トラスという限られたパターンの組み合わせでほとんどが構成されています。逆に言えば、それぞれのパターンで「反力をどう求めるか」「曲げモーメント図(M図)をどう描くか」という定石を体に入れてしまえば、初見の問題でも手が止まりにくくなります。

本記事では、静定・不静定の判別の考え方反力の求め方(力のつり合い3条件)単純梁から片持ち梁・門型ラーメンへのM図の描き方の定石トラスの解法(節点法・切断法の使い分けとゼロメンバーの見つけ方)、そして試験でよくある間違いを、一級建築士(学科・構造)の学習を意識して整理します。具体的な数値・記号の使い方は教材によって表現が異なることがあるため、この記事では考え方の整理を中心にし、数値の細部は最新の基準・教材で必ず確認してください。

単純梁は中央集中荷重でM図が中央を頂点に下側へ膨らむ三角形になり下端が引張、片持ち梁は固定端でM図が固定端を頂点に上側へ膨らむ三角形になり上端が引張になることを示す模式図。ピン支点・ローラー支点・自由端ではM=0になる

図:単純梁は中央が、片持ち梁は固定端がM最大になり、M図は互いに逆向きに膨らむ


静定・不静定の判別の考え方

構造力学の問題を解き始める前に、まず確認すべきことが「この構造物は静定か、不静定か」という点です。

静定構造物とは、力のつり合い条件(後述する3条件)だけで反力・応力(部材内部に生じる力)がすべて求まる構造物のことです。一方、不静定構造物は、力のつり合い条件だけでは反力・応力が決まらず、部材の変形(たわみなど)まで考慮した追加の条件式が必要になる構造物です。

一級建築士の学科試験で主に出題されるのは静定構造物であり、これは「力のつり合いだけで解ける」という性質そのものが、手計算で解ける範囲の問題として出題しやすいためと考えられます。静定か不静定かを見分ける考え方としては、支点反力の数と未知の応力の数を数え、つり合い条件式の数と一致するかどうかを確認するという方法が基本になります。つり合い条件式の数より未知数が多ければ不静定、一致すれば静定、少なければ不安定(構造として成立しない)という整理です。

状態 未知数とつり合い条件式の関係 解き方
不安定 未知数 < つり合い条件式の数 そもそも構造として成立しない
静定 未知数 = つり合い条件式の数 力のつり合いだけで反力・応力が確定する
不静定 未知数 > つり合い条件式の数 つり合い条件に加えて変形の条件式が必要

試験対策としては、まず単純梁・片持ち梁・静定ラーメン・静定トラスという「静定構造物の基本形」を体で覚えることが優先です。不静定構造物の詳しい解法(たわみ角法・固定モーメント法など)は出題範囲・難易度が上がるため、まずは静定構造物を確実に解けるようにすることが得点への近道になります。


反力の求め方|支点の種類とつり合い3条件

反力とは、構造物が荷重を受けたときに、支点が構造物を支えるために発生させる力のことです。反力を正しく求めることが、その先のM図・応力図を描くための出発点になります。

支点の種類と反力の数

支点にはいくつかの種類があり、それぞれ拘束できる方向(動きを止められる方向)が異なります。拘束できる方向の数だけ、反力の未知数が生じると考えると整理しやすくなります。

支点の種類 拘束する方向 生じる反力
ピン支点(回転支点) 水平方向・鉛直方向 水平反力・鉛直反力の2つ
ローラー支点(移動支点) 面に垂直な1方向のみ その1方向の反力のみ(通常は鉛直反力)
固定支点 水平方向・鉛直方向・回転方向 水平反力・鉛直反力・モーメント反力の3つ

ピン支点は「回転はできるが移動はできない」支点、ローラー支点は「1方向には動けるが、それ以外の移動と回転はできる」支点、固定支点は「移動も回転も一切できない」支点、とイメージすると覚えやすくなります。

力のつり合い3条件

反力を求める際に使う基本の道具が、次の3つのつり合い条件式です。

  1. ΣX = 0(水平方向の力のつり合い):水平方向に働く力の合計はゼロになる
  2. ΣY = 0(鉛直方向の力のつり合い):鉛直方向に働く力の合計はゼロになる
  3. ΣM = 0(モーメントのつり合い):任意の点まわりのモーメント(力×距離で表される回転させようとする作用)の合計はゼロになる

反力を求める定石は、未知の反力が1つだけになるように、モーメントのつり合いをとる点を選ぶことです。たとえば単純梁の一端の支点まわりでモーメントのつり合いをとれば、その支点自身の反力はモーメントの腕(距離)がゼロになるため式から消え、もう一方の支点の反力だけを未知数として解くことができます。ここで1つの反力が求まれば、残りはΣX=0・ΣY=0を使って芋づる式に求められます。

「どの点でモーメントのつり合いをとれば計算が楽になるか」を意識して支点を選ぶ習慣をつけておくと、複雑な荷重条件の問題でも計算のミスや手間を減らしやすくなります。力のつり合いの基礎的な考え方は構造力学の基礎で整理していますので、あわせて確認しておくと理解がつながりやすくなります。


曲げモーメント図の描き方の定石|単純梁と片持ち梁

反力が求まったら、次は部材内部にどのような応力(曲げモーメント・せん断力・軸力)が生じているかを図示する応力図の作成に進みます。特に出題頻度が高いのが**曲げモーメント図(M図)**です。

M図を描くうえでの基本ルール

M図には、暗記ではなく「そういうものだ」と体に入れておくと迷わなくなる、いくつかの共通ルールがあります。

  • M図は、部材が引張側になる側に描くという慣習が広く使われています(下側に引張が生じる単純梁では、M図は下側に膨らむように描かれます)。
  • ピン節点(回転が自由な接合部)では、曲げモーメントはゼロになる。これは、ピン節点がモーメントを伝えられない接合部だからです。
  • 集中荷重が作用する点では、M図は折れ点(角)を持つ。分布荷重(等分布荷重など)が作用する区間では、M図は曲線(放物線状)を描く。
  • せん断力図(Q図)の面積が、その区間でのM図の変化量に対応するという関係があり、Q図の符号が変わる点(ゼロになる点)がM図の最大値・最小値を取る点になりやすい、という関連づけも定石として押さえておくと役立ちます。

単純梁のM図

単純梁(両端がピン支点・ローラー支点で支えられた梁)に集中荷重が1点だけ作用する場合、M図は荷重点を頂点とする三角形になります。荷重点が中央にあれば左右対称の三角形、偏った位置にあれば左右非対称の三角形になります。等分布荷重が全スパンに作用する場合は、M図は中央を頂点とする放物線になり、最大値は中央に生じます。

片持ち梁のM図

片持ち梁(一端が固定支点、他端が自由端の梁)では、固定端側に近づくほど曲げモーメントが大きくなり、自由端でモーメントはゼロになります。自由端に集中荷重が作用する場合、M図は固定端を頂点とする三角形になり、単純梁とは山の向き(引張側)が逆になる点に注意が必要です。単純梁は下側が引張になりやすいのに対し、片持ち梁は荷重の向きにもよりますが、固定端の上側が引張になる典型パターンがよく出題されます。

部材の種類 荷重パターン M図の形状 最大値の位置
単純梁 中央集中荷重 中央を頂点とする三角形 荷重作用点(中央)
単純梁 等分布荷重 中央を頂点とする放物線 スパン中央
片持ち梁 自由端集中荷重 固定端を頂点とする三角形 固定端
片持ち梁 等分布荷重 固定端を頂点とする放物線 固定端

単純梁と片持ち梁の2つのパターンを正確に描き分けられるようになることが、この先の門型ラーメンのM図を理解するための土台になります。


門型ラーメンのM図の考え方|剛節点とピン節点の違い

門型ラーメン(柱2本と梁1本が組み合わさった、門の形をした静定構造物)のM図は、単純梁・片持ち梁のM図の考え方を柱・梁それぞれの部材に当てはめていくことで描くことができます。

門型ラーメンのM図を描くうえで最初に押さえておきたいのが、節点(部材同士の接合部)が剛節点かピン節点かによって、M図のつながり方が変わるという点です。

剛節点は、部材同士が一体として接合され、角度を保ったまま変形する節点です。剛節点では、そこに集まる部材のM図が滑らかに連続し、節点でモーメントがゼロになることはありません。ピン節点は、部材同士が回転自由に接合された節点で、前章で述べたとおり、ピン節点上ではモーメントは必ずゼロになります。

門型ラーメンのM図を描く定石の手順は、おおむね次のような流れになります。

  1. 反力(ΣX=0・ΣY=0・ΣM=0)を求める
  2. 柱・梁それぞれの部材について、部材の端部(節点)に生じるモーメントを、その部材に作用する力(反力や荷重)から個別に計算する
  3. 剛節点であれば、柱と梁のモーメントの値がその節点でつながるように図を描く(符号・引張側の向きに注意)
  4. ピン節点があれば、その点でM図がゼロになることを確認しながら図をつなげる
  5. 各部材の中間に荷重が作用していれば、単純梁や片持ち梁と同じ要領で、その区間のM図の膨らみ(三角形・放物線)を追加する

門型ラーメンで特につまずきやすいのが、柱に生じる曲げモーメントの引張側(M図をどちら向きに描くか)の判断です。水平力(地震力や風荷重を想定した荷重)を受ける門型ラーメンでは、柱の外側と内側のどちらが引張になるかは荷重の向きと支点の条件によって変わるため、「柱頭・柱脚でどちら向きの力が働いているか」を1本ずつ丁寧に確認する姿勢が欠かせません。形だけ覚えようとすると符号を取り違えやすいため、反力の向きから順を追って考える習慣が最も確実です。

門型ラーメンは、地震時の水平力に対する建物の挙動を単純化したモデルとしても扱われるため、耐震設計の基本的な考え方とも関連が深いテーマです。関連する内容は荷重・地震力と耐震設計の基礎で整理していますので、あわせて確認しておくと理解がつながりやすくなります。


トラスの解法|節点法と切断法の使い分け

トラスとは、複数の直線部材をピン接合(両端が回転自由な接合)でつなぎ、三角形を基本単位として組み立てられた構造物です。トラスの各部材には、曲げモーメントやせん断力はほとんど生じず、軸方向力(引張力または圧縮力)のみが生じるという前提で扱われるのが大きな特徴です。この前提があるからこそ、トラスの解法は梁やラーメンとは異なる、独自の手順で進めることができます。

トラスの部材力を求める代表的な方法が、節点法切断法の2つです。それぞれ得意な場面が異なるため、使い分けが重要になります。

節点法

節点法は、トラスの各節点(部材が集まる点)を1つずつ取り出し、その節点に集まる力のつり合い(ΣX=0・ΣY=0)を使って未知の部材力を求めていく方法です。1つの節点ではΣX=0・ΣY=0の2式しか使えないため、未知数が2つ以下になる節点から順番に解いていくのが基本の進め方です。反力に近い節点や部材が少ない節点(トラスの端のほうにある節点)から解き始めると、未知数を2つ以下に絞りやすくなります。

切断法

切断法は、トラスを任意の断面で切断し、切断した部材に生じる力を含めた片側全体のつり合い(ΣX=0・ΣY=0・ΣM=0)から、特定の部材力を直接求める方法です。節点法のように節点を順番にたどる必要がないため、「この1本の部材力だけを知りたい」という場合に効率的です。切断する位置は、求めたい部材を含み、かつ未知数が3つ以下になるように選ぶのが基本です。モーメントのつり合いをとる点を、求めたい部材以外の2部材の交点に選ぶと、その2部材が式から消えて目的の部材力を直接求めやすくなります。

解法 使う考え方 向いている場面
節点法 各節点でのΣX=0・ΣY=0 すべての部材力を順番に求めたいとき
切断法 切断面全体のΣX=0・ΣY=0・ΣM=0 特定の1〜数本の部材力だけを効率よく求めたいとき

試験では「この部材の軸方向力を求めよ」という形で特定部材が指定されることが多いため、まずゼロメンバー(後述)を消去して見通しをよくしたうえで、目的の部材に応じて節点法・切断法のどちらが早いかを判断する、という進め方が実戦的です。


ゼロメンバーの見つけ方

ゼロメンバーとは、荷重条件のもとで軸方向力がゼロになる部材のことです。ゼロメンバーをあらかじめ見つけておくと、節点法・切断法いずれの計算も大幅に簡略化できるため、トラスの問題を解くうえで最初に確認すべきポイントの一つです。

ゼロメンバーになりやすい典型的な節点の条件は、次のように整理できます。

節点の条件 ゼロメンバーになる部材
節点に部材が2本だけ集まり(一直線上にない)、外力(荷重・反力)が作用しない 2本とも両方ゼロ
節点に部材が3本集まり、そのうち2本が一直線上にあり、外力が作用しない 一直線上にない残り1本の部材
節点に部材が2本集まり、外力が部材の軸方向と一致する方向にのみ作用する 軸方向と一致しない側の部材

これらの条件は、その節点における力のつり合い(ΣX=0・ΣY=0)を考えれば自然に導けるものです。たとえば部材が2本しかなく一直線上になければ、外力がゼロの場合、2方向のつり合いを同時に満たすには両方の部材力がゼロになるしかありません。丸暗記せず「なぜゼロになるのか」を一度つり合い式から確認しておくと、複雑な節点でも同じ考え方で応用が利きます。

ゼロメンバーを見つけたら、その部材を消去した(force=0として扱う)うえで隣接する節点のつり合いを再確認すると、別の部材もゼロメンバーであることが芋づる式に見つかる場合があります。この「ゼロメンバー探し」を最初の数分で終えられるかどうかが、その後の計算時間を大きく左右します。


試験でのチェックポイント|よくある間違い

静定ラーメン・トラスの問題では、計算そのものよりも符号の取り違えや前提の見落としでつまずくケースが目立ちます。代表的な間違いのパターンを整理しておきます。

よくある間違い 対策の考え方
モーメントのつり合いをとる点を反力の作用点からずらしてしまい、未知数を1つに絞れない モーメントをとる点は、消したい反力・部材力の作用線上を意識して選ぶ
M図の引張側(凸の向き)を勘違いする 荷重の向きから部材のたわみ方をイメージし、たわむ側の反対側が引張になると確認する
ピン節点でモーメントがゼロにならないM図を描いてしまう ピン節点を見つけたら、まずその点にモーメントゼロの印をつけてから図を描き始める
トラス部材にも曲げモーメントが生じると誤解してしまう トラスはピン接合・軸方向力のみという前提を出発点として常に意識する
ゼロメンバーの条件を「部材が2本なら常にゼロ」のように丸暗記し、外力がある節点でも適用してしまう 外力(荷重・反力)が作用していない節点であることを必ず確認してから適用する
節点法で未知数が3つ以上残る節点から解き始めて計算が進まなくなる 未知数が2つ以下になる節点(端に近い節点)から順に解く

これらはいずれも、公式を間違えているというより**「なぜその手順を踏むのか」という理屈を飛ばして形だけ覚えてしまった**ときに起きやすい間違いです。支点の拘束方向・つり合い3条件・ピン節点の性質・トラスの前提条件という基本に立ち返る習慣さえあれば、初見の図形でも同じ手順で対応できます。


まとめ

  • 静定構造物は力のつり合い条件だけで反力・応力が求まり、一級建築士の学科試験ではこの静定構造物が出題の中心になる
  • 反力は支点の種類(ピン・ローラー・固定)ごとの拘束方向を把握したうえで、ΣX=0・ΣY=0・ΣM=0のつり合い3条件を使って求める
  • M図は部材の引張側に描き、ピン節点でモーメントがゼロになる、集中荷重点で折れ点ができるといった共通ルールがある
  • 門型ラーメンのM図は、剛節点・ピン節点の違いを踏まえ、柱・梁それぞれの部材のモーメントを個別に求めてつなげていく
  • トラスは部材に軸方向力のみが生じるという前提のもと、節点法(各節点のつり合い)と切断法(切断面全体のつり合い)を使い分けて解く
  • ゼロメンバーをあらかじめ見つけておくと計算が大幅に簡略化でき、外力のない節点の部材本数・配置から機械的に判断できる

静定ラーメン・トラスの問題は、パターンが限られている分、一度「なぜその手順で解けるのか」を理屈として理解してしまえば、応用問題への対応力が大きく伸びる分野です。具体的な数値の計算過程や記号の使い方は教材によって多少異なることがあるため、演習を進める際は最新の基準・教材の表記に沿って確認しながら進めてください。


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