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基本設計管工事(空調・給排水)

ランドリー・リネン設備の基礎|病院・ホテル・コインランドリーの給排水と換気

ランドリー・リネン設備は、建物用途によって求められる規模も条件もまったく違う設備です。同じ「洗濯機と乾燥機を並べる」だけの計画に見えても、病院の院内ランドリーには感染対策の動線が求められ、ホテルには客室数に比例した処理量が求められ、コインランドリーには不特定多数が無人で機器を使い続けるという前提での火災対策や電気容量の検討が求められます。

この記事では、建物用途別のランドリー設備の位置づけを整理したうえで、洗濯機・乾燥機という機器そのものの条件、給排水・換気・電源といった設備計画の各論、そして乾燥機まわりの火災リスクや病院の感染対策動線といった枠組みまで、基本設計段階で押さえておきたい考え方をまとめます。蒸気を熱源に使う場合の考え方はボイラー・蒸気設備の基礎、給湯を建物内でまとめて供給する仕組みは中央給湯・循環方式の基礎で扱っていますので、あわせてご覧ください。


図で見る(全体像)

病院・ホテル・共同住宅・コインランドリーで変わるランドリー設備の位置づけと、給排水・換気の流れ、防火・感染対策の要点を示す模式図

早見まとめ

ランドリー設備の計画で最初に押さえておきたい要点を、建物用途別の位置づけと、機器・設備条件の2つの表に整理しました。具体的な数値は建物規模・機種・所轄官署の基準によって変わるため、あくまで検討の出発点としての目安です。

建物用途 代表的な運用方式 設備計画上の主な論点
病院・福祉施設 院内ランドリー、または外部の専門業者への委託 感染性リネンの区分・動線、熱水消毒の可否
ホテル・宿泊施設 自家洗濯(リネン室)、または外部委託との併用 客室数に比例した処理量、リネン室の動線と換気
共同住宅・寮 各戸内の洗濯機置き場、または共用洗濯室 同時使用率、排水立て管の容量、乾燥機の排気経路
コインランドリー(テナント) セルフサービス型の業務用洗濯機・乾燥機 ガス・電気の供給容量、排気ダクト、無人運転時の火災対策
項目 目安・考え方 実務上の留意点
給水 業務用洗濯機は瞬時流量が家庭用より大きい 複数台同時使用時の圧力低下・水量不足に注意
給湯 温水洗濯コースを使う機種があり、給湯温度は機種ごとに異なる 中央給湯・ボイラーからの供給可否を機種選定と合わせて確認
乾燥・排気 ガス式・電気式とも排気はダクトで屋外へ導く リントフィルターの点検・清掃がしやすい配置にする
排水 糸くず(リント)を含むため排水口・トラップの詰まりに注意 ストレーナー(目の細かい網状のこし器)の設置と清掃計画
電源 業務用洗濯機・乾燥機は動力(三相)を使う機種が主流 コインランドリーは契約電力・幹線容量の見直しが必要になることがある
防火 乾燥機はリント堆積による火災リスクが指摘されている 定期清掃を前提にした点検動線、所轄消防署への確認

建物用途で変わるランドリー設備の位置づけ

ランドリー設備を計画するうえでまず整理しておきたいのは、その建物にとって洗濯・乾燥が「本業の一部」なのか「附帯サービス」なのかという位置づけです。この位置づけによって、求められる処理能力も、感染対策・動線への配慮の度合いも大きく変わります。

病院・福祉施設では、患者の寝具・衣類・タオル類(リネン)を扱う洗濯業務が、感染対策と直結する重要な機能です。院内に洗濯設備を持つ「院内ランドリー」の場合と、リネン類を外部の専門業者に委託する場合とがありますが、どちらの方式でも、汚れたリネンと清潔なリネンを混在させない動線設計が欠かせません。

ホテル・宿泊施設では、客室数に比例して大量のシーツ・タオル類を処理する必要があり、自家洗濯(館内にリネン室を設ける方式)と外部委託を組み合わせる例が多く見られます。自家洗濯を選ぶ場合は、ホテルの設備計画で触れた客室部分・共用部分の区分と同様に、リネン室を客室動線から離れたバックヤードに集約するのが基本の考え方です。

共同住宅・寮では、各戸内に洗濯機置き場を設ける方式と、共用の洗濯室を設ける方式があります。共用洗濯室の場合、利用時間帯が朝夕に集中しやすく、給排水・電源の同時使用率をどう見込むかが計画上のポイントになります。

コインランドリー(商業施設・住宅系建物のテナントとして入る場合を含む)は、不特定多数の利用者がセルフサービスで、しかも無人の時間帯を含めて機器を稼働させ続けるという点で、他の用途と大きく性格が異なります。この「無人運転が前提」という特徴が、後述する防火計画や電気容量の検討で特に重視される理由です。


洗濯機・乾燥機・プレスという機器条件

ランドリー設備の中心となるのは、業務用洗濯機・乾燥機・(必要に応じて)プレス機・アイロン機です。それぞれの機器が設備側に求める条件を整理しておきます。

業務用洗濯機は、家庭用機に比べて処理量あたりの給水・給湯量が大きく、洗い・すすぎの工程で瞬時流量が変動します。給湯を利用する機種では、洗濯槽への湯の供給温度・供給量を確保できるかどうかが選定と設備計画の両面から検討すべき点です。蒸気を熱源として直接洗濯機に供給する大型の業務用機種もあり、この場合はボイラー設備との連携が前提になります。

乾燥機はガス式と電気式に大別され、いずれも湿った空気を屋外へ排出するための排気ダクトを必要とします。乾燥機の運転で発生する糸くず(リント)は、フィルターで捕集する構造になっていますが、このフィルターの清掃を怠ると、送風抵抗の増大による効率低下だけでなく、後述する火災リスクの要因にもなります。設備計画の段階から、フィルターや排気ダクト内部を定期的に点検・清掃できる位置・構造にしておくことが重要です。

プレス機・アイロン機を設置する場合は、蒸気またはガス・電気を熱源とし、作業時の熱気・蒸気を排出する換気計画もあわせて必要になります。ホテルや病院の大規模なリネン処理では、洗濯・乾燥・プレスの各工程を一連の作業動線として配置し、それぞれの排熱・排気を個別に計画するのが基本です。


給排水計画:給水・給湯とリント対策

給排水計画の出発点は、業務用機器がまとまって稼働したときの同時使用率をどう見込むかです。共同住宅の共用洗濯室やコインランドリーのように複数台の機器が並ぶ施設では、全台が同時に給水・給湯を必要とするタイミングを想定しつつ、実際の稼働パターン(利用時間帯の分散度合い)を踏まえて配管径・受水槽容量を検討します。給水圧力が不足すると洗濯機の給水時間が延び、機器の運転効率にも影響するため、末端での圧力確保を確認しておくことが実務上のポイントです。

給湯を利用する機種では、温水洗濯コースの供給温度を確保できるかどうかを、建物全体の給湯計画と合わせて検討します。病院のリネン処理で熱水による消毒工程を行う場合、高温の湯を扱うことになるため、一般の給湯設備とは別系統で計画するか、専用の加熱設備を設けるかを整理しておく必要があります。具体的な消毒温度・時間の基準は、院内感染対策部門や関連ガイドラインを踏まえて所轄の担当者・専門家と確認するのが前提です。

排水計画では、糸くず(リント)による詰まりの防止が最大の留意点です。洗濯・すすぎの排水には糸くずや繊維くずが多く含まれるため、排水口にストレーナー(目の細かい網状のこし器)を設け、定期的に清掃できる位置に配置します。処理量が大きい施設では、排水を一時的に受ける排水槽を設け、そこで固形分を沈殿・除去してから下水道や浄化槽へ送る計画とすることもあります。また、業務用洗剤や漂白剤・消毒用薬剤を使用する場合、排水の水質(pHや薬剤濃度)が下水道や浄化槽の基準に適合するかどうかも、施設規模によっては確認しておくべき事項です。


換気・熱計画:乾燥機の排気とガス機器の給気バランス

乾燥機は運転中に大量の湿った空気を発生させるため、この排気を確実に屋外へ排出する計画が欠かせません。特にガス式乾燥機は、燃焼のために室内空気を大量に取り込む「開放式のガス機器」として扱われ、排気だけでなく燃焼用の給気をあわせて確保する必要があります。給気が不足すると不完全燃焼のリスクが生じるため、住宅用の換気開口や浴室換気扇だけでは給気量が足りない場合があり、専用の給気経路を設ける計画が求められます。換気方式の基本的な考え方は換気の基礎(第1種・第2種・第3種)で整理していますので、あわせてご覧ください。

複数台の乾燥機を並べるコインランドリーやホテルのリネン室では、排気ダクトを機器ごとに独立させるか集合させるかで、ダクト内の圧力損失や排気風量のバランスが変わります。排気が不足すると室内に湿気や熱気がこもり、結露やカビの発生につながるため、給気と排気のバランスを取ることが室内環境の快適性にも直結します。

また、洗濯・乾燥の作業が続く室内は、熱源機器からの排熱や蒸気で温湿度が上がりやすい環境です。作業者の労働環境としても、リネン室・コインランドリーの機械室周りには適切な換気・除湿計画を組み込んでおく必要があります。


電源計画:動力容量とコインランドリーの電気容量

業務用の洗濯機・乾燥機(電気式)は、家庭用機と異なり動力(三相電源)を使用する機種が主流です。これらの機器をまとめて設置する場合、建物の受変電設備・幹線から必要な動力容量を確保できるかどうかを、機器選定の初期段階から確認しておく必要があります。

特にコインランドリーは、電気式の大型乾燥機を複数台まとめて設置する場合、既存の契約電力・幹線容量では不足することがあり、増設や契約の見直しが必要になるケースも見られます。テナントとして入居する場合は、建物側の受電容量に余裕があるかどうかを事業計画の初期段階で確認しておくことが、後工程での手戻りを防ぐポイントです。


防火・法規の枠組みと病院の感染対策動線

乾燥機まわりで実務上よく指摘されるのが、リント(糸くず)の堆積による火災リスクです。乾燥機のフィルターや排気ダクト内部に糸くずが蓄積すると、熱源からの熱がこもりやすくなり、発火の原因になり得ることが各種の注意喚起で示されています。この対策は、機器側のフィルター清掃という運用面の対策が中心になりますが、設備計画の側でも、フィルター・ダクトを点検・清掃しやすい位置に配置し、清掃頻度を前提とした維持管理計画をあらかじめ用意しておくことが有効です。

コインランドリーの用途や、消防法令上の扱い(防火対象物としての区分、消火設備の要否など)は、店舗規模や無人時間帯の有無によって所轄消防署の判断が関わる部分が大きいため、本記事では踏み込んだ断定はせず、計画の初期段階で所轄消防署への確認を前提とするという考え方にとどめます。同様に、洗濯物の種類(可燃物としての扱いなど)による建築基準法上の用途区分についても、個別の建物条件に応じた確認が必要な領域です。

病院・福祉施設のリネン動線では、清潔リネンと使用後・感染性リネンを混在させないことが感染対策の基本原則です。使用後のリネンは、攪拌(かくはん)を最小限に抑えて回収・搬送し、清潔リネンとは別の経路・別の保管場所を確保します。感染性のリネンについては、院内で熱水消毒を行ってから外部委託する運用や、専用の区分搬送を行う運用など、建物の運用方針によって扱いが変わるため、具体的な消毒条件・搬送ルールは院内感染対策部門と設計者が事前にすり合わせておくべき事項です。


実務での判断:どこまでを設備計画に織り込むか

ランドリー設備の計画で判断に迷いやすいのが、「機器の仕様に任せる部分」と「建物側の設備で用意しておくべき部分」の線引きです。給水・給湯・排水・換気・電源といったインフラ側の条件は建物側で確保する必要がありますが、フィルター清掃の頻度や消毒工程の具体的な温度・時間といった運用面のルールは、機器メーカーの仕様や院内・施設の運用方針に委ねられる部分です。設備計画の段階では、こうした運用面のルールが実行できるだけの「点検・清掃のしやすさ」を物理的に確保しておくことが、実務上もっとも効果の大きい備えになります。


まとめ

  • ランドリー設備は建物用途によって位置づけが異なり、病院は感染対策動線、ホテルは処理量、コインランドリーは無人運転を前提とした対策が中心になる
  • 業務用洗濯機・乾燥機は給水・給湯の瞬時流量が大きく、複数台同時使用時の圧力低下・水量不足に注意する
  • 排水計画では糸くず(リント)による詰まり対策として、ストレーナーの設置と清掃しやすい配置が重要
  • ガス式乾燥機は開放式のガス機器として扱われ、排気だけでなく専用の給気経路の確保が必要
  • 乾燥機はリント堆積による火災リスクが指摘されており、点検・清掃しやすい配置と維持管理計画が実務上の対策になる
  • コインランドリーの消防上の扱いや建築基準法上の用途区分は、個別条件による判断が大きいため所轄消防署・設計者への確認が前提
  • 病院のリネン動線は清潔・不潔(感染性)を区分し、攪拌を抑えた搬送と混在させない運用が感染対策の基本原則

ランドリー・リネン設備は、地味に見えて建物の運用そのものを支える裏方の設備です。用途ごとに求められる処理量・動線・法規上の扱いが異なるため、基本設計の早い段階で「この建物にとってランドリーは本業か附帯サービスか」を明確にし、そこから給排水・換気・電源・防火の各条件を積み上げていく進め方が実務上の近道になります。


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