LPガス設備の基礎|バルク供給と容器設置の考え方・都市ガスとの違い
LPガス設備の計画は、「都市ガスとは何が違うのかを前提として押さえること」と、「容器配送・集団供給・バルク供給のどれを選ぶか、そして貯蔵設備をどこにどう置くかを決めること」という2つの軸で組み立てると整理しやすくなります。都市ガスの導管が来ていない地域や、あえてLPガスを選ぶ施設では、この供給方式の選定と貯蔵設備の設置計画が、建築計画そのものに直接影響してきます。
都市ガスとLPガスの違いそのものや、ガス漏れ警報器の設置位置の考え方はガス設備の計画|都市ガスとLPガス、配管・ガス漏れ警報で扱っていますので、この記事ではLPガスに絞り、供給方式の使い分け、容器・バルク貯槽の設置計画、そして液化石油ガス法(液石法)の枠組みを中心に整理します。
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早見まとめ
細かい話に入る前に、都市ガスとの違い・供給方式・法令上の区分を1つの表に集約しておきます。具体的な離隔距離や手続の詳細は、必ず液石法関係法令・所轄消防署・LPガス販売事業者に確認してください。
| 項目 | 代表値・考え方 | 備考 |
|---|---|---|
| 都市ガスとの発熱量差 | LPガスは都市ガス(13A)の概ね2倍程度(LPガス約100MJ/m³・都市ガス約45MJ/m³という数値が示されている) | 熱量が高い分、同じ号数の機器でも消費量の考え方が変わる |
| 空気に対する比重 | 都市ガスは空気より軽い(比重約0.66)、LPガスは空気より重い(プロパンで比重約1.5前後) | 漏えい時の滞留方向が逆になり、警報器の設置位置にも直結する |
| 供給方式の使い分け | 個別供給(容器)・集団供給・バルク供給の3方式 | 消費量・施設規模・容器交換の手間で選定する |
| 供給設備と消費設備の区分 | 容器(またはバルク貯槽)からガスメーター出口まで=供給設備/メーター出口から先=消費設備 | 供給設備はLPガス販売事業者が保安管理、消費設備は所有者・使用者側の管理 |
| 容器・バルク貯槽の火気距離 | 置き場所から2m以内にある火気を遮る措置(不燃性隔壁等)が基本原則 | 具体的な離隔距離・障壁仕様・保安距離は液石法関係法令・所轄消防署・LPガス販売事業者との確認が前提 |
| ガス漏れ警報器の設置位置 | 床面に近い低い位置(空気より重いため) | 詳細な設置基準はガス漏れ火災警報設備の基礎を参照 |
都市ガスとの違い:発熱量と比重がすべての起点になる
LPガス(液化石油ガス)は、プロパン・ブタンを主成分とするガスで、容器やバルク貯槽に貯蔵したものを供給するという点で、導管を通じて連続供給される都市ガスとは根本的に性格が異なります。この違いが効いてくる場面は大きく2つです。
1つ目は発熱量です。LPガスは都市ガス(13A)に比べて、同じ体積あたりの発熱量がおおむね2倍程度あるとされています。このため、LPガス用の機器と都市ガス用の機器はノズルの口径・調整器の仕様が異なり、そのまま流用することはできません。供給方式の検討が計画の途中で変わると機器の再選定が必要になる、という点は覚えておく必要があります。
2つ目は比重です。都市ガスは空気より軽く(比重は空気を1としておよそ0.66程度)、漏れると天井付近に滞留しやすい性質を持ちます。一方でLPガスは空気より重く(プロパンで比重はおよそ1.5前後)、漏れると床付近に滞留します。この比重の違いが、後述するガス漏れ警報器の設置位置が都市ガスとLPガスで逆になる理由であり、LPガス設備を計画するうえで最初に押さえておきたい性質です。
LPガスの供給方式:容器・集団供給・バルク供給の使い分け
LPガスの供給方式には、消費量や施設の規模に応じていくつかの形があります。
| 供給方式 | 概要 | 主な採用場面 |
|---|---|---|
| 個別供給(容器配送) | 各戸・各建物ごとに容器(10kg・20kg・50kg等)を設置し、LPガス販売事業者が定期的に容器を交換する方式 | 戸建て住宅、小規模な店舗・施設 |
| 集団供給 | 複数戸の団地・共同住宅に対し、まとめて設けた貯蔵設備から供給管で各戸に供給する方式 | 中規模の共同住宅・団地 |
| バルク供給 | 敷地内に設置したバルク貯槽に、バルクローリー車から直接LPガスを充填する方式 | 消費量の多い施設、容器交換の手間を減らしたい施設 |
個別供給(容器配送)は、LPガス販売事業者が定期的に容器を巡回・交換する方式で、家庭用から小規模施設まで最も広く使われています。容器はガス切れを防ぐため2本1組で設置し、片方が空になったらもう一方に自動で切り替わる自動切替式調整器を組み合わせるのが一般的です。
これに対してバルク供給は、容器の交換作業そのものをなくし、敷地内のバルク貯槽にバルクローリー車から直接LPガスを移送(充填)する方式です。移送にかかる時間は貯槽の容量・充填量・車両の設備によって幅があるため一概には言えませんが、消費量の多い施設ほど容器交換の頻度・搬入の手間を減らせるメリットがあります。バルク供給を選ぶかどうかは、消費量の規模だけでなく、敷地内にバルク貯槽と充填車両の寄り付きスペースを確保できるかという建築計画上の制約にも左右されます。
容器・バルク貯槽の設置計画:火気との離隔と搬入経路
容器やバルク貯槽をどこに設置するかは、建築計画に直接関わってきます。液石法では、容器・バルク貯槽の設置にあたって、置き場所から2メートル以内にある火気を遮る措置(不燃性の隔壁を設ける等)を講じることが基本原則とされています。バルク貯槽については屋外に設置することも原則の一つとされており、加えて周辺の建築物(保安物件)との距離や、貯蔵能力に応じた離隔の考え方も定められています。
計画段階で押さえておきたい観点を整理すると、次のようになります。
- 火気との離隔・障壁: たき火・喫煙所・ボイラーの排気口など、火気となり得るものとの位置関係を早期に確認する。やむを得ず離隔が取れない場合は、不燃性の隔壁の設置で対応できる場合がある。
- 障壁・遮蔽の仕様: 隔壁の材料・厚さ・高さは液石法関係法令・LPガス販売事業者の基準による。意匠上の目隠しフェンスと保安上の隔壁は目的も仕様も異なるため、混同しないよう注意する。
- 搬入・充填車両の寄り付き: 容器交換車両やバルクローリー車が安全に横付けできる経路・スペースを確保する。特にバルク供給では、大型のローリー車が敷地に進入・待機できるかどうかが計画の成立可否を左右する。
- 保安物件との位置関係: 学校・病院等(第一種保安物件)や住居等(第二種保安物件)が近接する敷地では、保安距離の考え方がより厳しくなる場合がある。
これらの具体的な数値・基準は、貯蔵能力・敷地の周辺状況によって変わり、かつバルク貯槽の規模によっては液石法だけでなく高圧ガス保安法側の手続が関係してくる場合もあります。計画の初期段階で、所轄消防署・LPガス販売事業者・設計者の三者で確認しておくことが実務上の前提になります。
法規の枠組み:液石法と、供給設備・消費設備の区分
LPガスは、都市ガスを規制するガス事業法とは別に、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(液石法)という法体系のもとで規制されています。液石法の考え方の骨格は、設備を「供給設備」と「消費設備」に区分し、それぞれの管理責任を分けている点にあります。
| 区分 | 範囲 | 管理責任 |
|---|---|---|
| 供給設備 | 容器(またはバルク貯槽)からガスメーターの出口まで | LPガス販売事業者が保安管理・点検を行う |
| 消費設備 | ガスメーターの出口から、敷地内の配管・室内のガス栓・ガス機器まで | 建物の所有者・使用者側が管理する |
この境界線上にあるのが調整器です。調整器は、容器・バルク貯槽内の高い圧力のLPガスを、燃焼機器で使える圧力まで減圧する機器で、一般家庭向けには単段減圧式のもの、配管が長く圧力損失が大きくなりやすい施設などでは二段減圧式のものが使われます。調整器はLPガス販売事業者側の供給設備に含まれるため、建物の設計者としては、設置スペース(屋外・専用ボックス等)を確保することが主な役割になります。
なお、ガス漏れ警報器(ガス漏れ火災警報設備)についても、消防法令上の設置義務がある建物・用途が限定されています。設置対象や検知器の具体的な設置高さ・水平距離の基準はガス漏れ火災警報設備の基礎|設置対象と検知器の位置で整理していますので、義務設置に該当するかどうかは所轄消防署への確認とあわせてこちらも参照してください。
建物側の設計:配管材料・メーター位置・業務用厨房での注意
建物側の設計では、供給設備の設置スペースを確保することに加えて、次のような点を検討します。
- 配管材料: 建物内の露出配管には亜鉛メッキ鋼管等、埋設部にはガス用ポリエチレン管等、取り回しが必要な箇所には可とう性のあるフレキ管等が使われます。材料の選定・施工基準はLPガス販売事業者の工事基準に従うため、設計段階ではルート・シャフトスペース・貫通部の位置を確保することが中心になります。
- メーター(マイコンメーター)の位置: 地震・流量異常等を検知して自動遮断する機能を持つマイコンメーターの設置スペースを、点検・交換しやすい屋外またはパイプシャフト内に確保します。
- 業務用厨房でLPガスを使う場合: 発熱量が高いためガス機器の総消費量が大きくなりやすく、換気設備との連動・緊急ガス遮断弁の計画がより重要になります。また比重が重いため、床置きの機器周りや低い位置に漏えいガスが滞留しやすいという前提で、警報器の位置や換気の考え方を組み立てる必要があります。厨房換気の必要換気量やフードの型式選定は厨房換気・排気フードの基礎で扱っていますので、あわせて確認してください。
LPガスの強み:災害時における分散型エネルギーとしての特性
LPガスは、各戸・各施設に分散して容器やバルク貯槽を設置する供給形態であるため、地震等で道路・地中埋設物に被害が生じても、都市ガスの導管網のように広範囲が一斉に供給停止になりにくいという特性があるとされています。資源エネルギー庁も、LPガスを電力・都市ガスに依存せず自立して稼働できる分散型エネルギーとして紹介しており、東日本大震災の際には都市ガスや電力よりも早く復旧したという実績が業界団体等から報告されています。
こうした特性は、非常用発電機の燃料計画とも似た考え方につながります。非常用発電機の燃料備蓄・優先給油契約の考え方はBCPと非常用発電機の燃料確保|優先給油契約と備蓄の考え方で整理していますが、LPガスも容器やバルク貯槽という形で敷地内に燃料を保有しておける点で、事業継続計画(BCP)上の熱源としても選択肢になり得ます。ただし、これは供給方式の選定理由の一つになり得るという話であり、実際の防災計画上の位置づけは施設ごとの用途・想定災害・他の熱源との組み合わせを踏まえて個別に検討する必要があります。
実務での判断:都市ガスかLPガス(バルク供給)か迷う場合
新築計画の初期段階で、供給方式がまだ確定していない場合は、次のような視点で早めに方向性を固めておくと後工程での手戻りを減らせます。
- 供給エリアの確認: まず都市ガスの供給区域に入っているかをガス事業者に確認する。区域外であればLPガスまたは他の熱源を検討することになる。
- 消費量とバルク供給の適否: 想定するガス消費量が大きい施設(給食室・大浴場・工場等の熱源等)では、容器交換の頻度・搬入の手間を踏まえてバルク供給の採用を検討する価値がある。
- 貯蔵設備の設置スペースの確保: LPガスを選ぶ場合、容器置き場やバルク貯槽・充填車両の寄り付きスペースを配置計画に組み込む必要がある。都市ガスであれば導管接続で済むため、この検討自体が不要になる。
- 機器の互換性: LPガス用と都市ガス用で機器のノズル口径・調整器の仕様が異なるため、供給方式が計画途中で変わると機器の再選定が必要になる。
いずれの場合も、供給方式の選定は建物の熱源計画全体(給湯・空調・厨房)に影響するため、計画の早い段階で方針を固め、所轄消防署・LPガス販売事業者・設計者の間で認識を合わせておくことが実務上重要です。
まとめ
- LPガスは都市ガスに比べて発熱量が高く(概ね2倍程度)、比重も空気より重いため、漏えい時の挙動が都市ガスと逆になる
- 供給方式には個別供給(容器配送)・集団供給・バルク供給があり、消費量や容器交換の手間を踏まえて選定する
- 容器・バルク貯槽の設置には火気との離隔(基本2m以内の火気遮断措置)・障壁・搬入経路の確保が必要で、具体的な数値は液石法関係法令・所轄消防署・LPガス販売事業者に確認する
- 液石法は設備を「供給設備(容器〜メーター出口・販売事業者管理)」と「消費設備(メーター出口から先・使用者管理)」に区分している
- 調整器は供給設備側に含まれ、住宅用は単段減圧式、配管が長い施設等では二段減圧式が使われる
- ガス漏れ警報器はLPガスの場合、床面に近い位置に設置するのが基本の考え方
- LPガスは分散型の供給形態であるため災害時の復旧が早いとされ、BCP上の熱源選択の一つの根拠になり得る
LPガス設備の計画は、都市ガスとの違いを前提として理解したうえで、供給方式の選定と貯蔵設備の設置計画という2つの判断を早い段階で固めることが基本設計段階での役割になります。本記事の内容は執筆時点における一般的な考え方の整理であり、具体的な離隔距離・保安距離・手続は必ず液石法関係法令・所轄消防署・LPガス販売事業者に確認のうえ進めてください。
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