ガス設備の計画|都市ガスとLPガス、配管・ガス漏れ警報
ガス設備の計画は、「都市ガスかLPガスか」という供給側の前提を確認することと、**「メーター・ガス栓・警報器という安全のための機器を、ガスの性質に合わせて正しく配置すること」**という2つの軸で組み立てると整理しやすくなります。同じ「ガス設備」という言葉でも、都市ガスとLPガスでは比重も供給方式も異なり、それに応じてガス漏れ警報器の取り付け高さまで変わってきます。実施設計の段階でこの前提を取り違えると、警報器の位置や配管材料の選定をやり直すことになりかねません。
この記事では、都市ガスとLPガスの違いから、ガスメーター・ガス栓・配管材料・ガス漏れ警報器の設置位置、そして業務用厨房における換気連動・ガス遮断、燃焼に必要な給排気までを一続きで解説します。建築設備とは何かという全体像は建築設備とは何か|電気・空調換気・給排水衛生・消防、4分野の全体像で扱っていますので、ガス設備が給排水衛生設備・空調換気設備とどう関わるかを含めて確認したい場合はあわせてご覧ください。
都市ガスとLPガス、何が違うのか
建物のガス設備を計画するとき、最初に確認するのが「都市ガス(13A等)で供給されるエリアか、LPガス(プロパン)で供給される計画か」という前提です。この違いは単なる契約先の違いにとどまらず、比重・発熱量・供給方式のすべてに関わってきます。
| 項目 | 都市ガス | LPガス |
|---|---|---|
| 主成分 | メタンを主成分とする天然ガス | プロパン・ブタン |
| 空気に対する比重 | 空気より軽い(漏れると天井付近に滞留しやすい) | 空気より重い(漏れると床付近に滞留しやすい) |
| 発熱量の傾向 | LPガスに比べて小さい | 都市ガスに比べて大きい |
| 供給方式 | 地中のガス導管を通じて連続供給 | 容器(ボンベ)やバルク貯槽に貯蔵したものを供給 |
| 供給元との関係 | ガス事業者の導管網に接続すれば供給を受けられる | 敷地内に貯蔵設備(容器置き場・バルク貯槽等)を確保する必要がある |
比重の違いが計画上いちばん効いてくるのは、後述するガス漏れ警報器の設置位置です。都市ガスは空気より軽いため漏れると天井付近に上がっていき、LPガスは空気より重いため床付近に滞留します。この性質の違いを理解しておくと、警報器の取り付け高さがなぜ都市ガスとLPガスで逆になるのかが自然に納得できます。
なお、ガス設備は都市ガスであればガス事業法、LPガスであれば液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(液石法)という、それぞれ別の法体系のもとで規制されています。実施設計の段階では、対象建物がどちらの供給を受けるのかをまず確定させ、それぞれの法令・ガス事業者の規定に沿って計画を進めることになります。
ガスの供給方式:導管供給と容器・バルク供給
都市ガスは、道路の下に埋設されたガス導管からガス事業者の圧力調整を経て建物に引き込まれる方式が基本です。建物の規模やガス消費量に応じて、低圧・中圧といった供給圧力の区分がありますが、実際にどの区分で供給を受けられるかはガス事業者との協議・申請によって決まるため、計画の早い段階でガス事業者に確認しておくのが実務上のポイントです。
LPガスは、都市ガスのような導管網が敷地まで来ていない地域や、あえてLPガスを選択する建物で採用されます。供給方式にはいくつかの形があります。
| 供給方式 | 概要 | 主な採用場面 |
|---|---|---|
| 個別供給 | 各住戸・各建物ごとに容器(10kg・20kg・50kg等)を設置して供給する方式 | 戸建て住宅、小規模な店舗など |
| 集団供給 | 複数戸の団地・共同住宅に対し、まとめて設けた貯蔵設備から供給管で各戸に供給する方式 | 中規模の共同住宅・団地 |
| バルク供給 | 敷地内に設置したバルク貯槽に、ローリー車から直接LPガスを充填する方式 | 消費量の多い施設、容器交換の手間を減らしたい施設 |
容器やバルク貯槽をどこに設置するかは、建築計画そのものに関わってきます。容器置き場やバルク貯槽の周囲には、火気からの離隔や換気、車両搬入経路の確保などが求められるため、配置計画の段階から建築側・設備側で調整しておく必要があります。具体的な離隔距離や設置基準は液石法の関係法令・所轄のLPガス販売事業者の基準によって定められているため、計画にあたっては個別に確認してください。
ガスメーター(マイコンメーター)とガス栓
マイコンメーターの役割
現在、都市ガス・LPガスとも、建物に設置されるガスメーターの多くは「マイコンメーター」と呼ばれる、マイクロコンピュータを内蔵した安全機能付きのメーターです。単にガスの使用量を計測するだけでなく、次のような異常を検知すると自動的にガスを遮断する機能を持っています。
| 検知する異常 | 内容 |
|---|---|
| 地震 | 一定以上の揺れを感知すると自動的にガスを遮断する |
| 流量異常 | ガス栓の誤開放やホースの外れなどで急激に流量が増えた場合に遮断する |
| 長時間使用 | 使用量が変動しないままガスが流れ続けた場合に遮断する |
| 供給圧力の異常低下 | 上流側の供給圧力が一定水準を下回った場合に遮断する |
遮断後は、屋外の元栓を閉めてガス漏れがないことを確認したうえで、メーター本体の復帰操作を行うことで再びガスが使えるようになる、という流れが一般的です。マイコンメーターは建物側の設計で仕様を決める機器というより、ガス事業者・LPガス販売事業者が供給側の設備として設置・管理するものですが、設計者としてはメーターの設置スペース(屋外・パイプシャフト等)を計画段階で確保しておく必要があります。
ガス栓の種類
建物内でガス機器に接続する末端のガス栓にも、安全上の工夫が組み込まれたものがあります。代表的なものが「ヒューズガス栓」で、機器につないだホースが外れたり切れたりして一度に大量のガスが流れ出そうとしたときに、内蔵された安全機構が自動的にガスの流れを遮断します。このほか、ホースをワンタッチで着脱できる迅速継手(ガスコンセント)を組み合わせたガス栓も普及しており、接続不良による事故を減らす効果があるとされています。ガス機器を設置する室では、こうした安全機構付きのガス栓を基本とし、機器の種類・接続方法に応じて適切なものを選定します。
ガス配管の材料と施工上の注意点
ガス配管に使う材料は、設置場所の環境(埋設か露出か、屋内か屋外か)によって使い分けられます。代表的な材料を整理すると次のとおりです。
| 配管材料 | 特徴 | 主な使用箇所 |
|---|---|---|
| ガス用ポリエチレン管 | 可とう性があり腐食しない樹脂製の管。露出配管には使えない | 道路のガス本管からガスメーターまでの地中埋設部 |
| 白ガス管(亜鉛メッキ鋼管) | 鋼管の表面を亜鉛メッキで防食した管 | 建物内の露出配管 |
| 配管用フレキ管 | 可とう性のある低圧供給用の配管材料。埋設する場合はさや管で保護する | メーター周りや機器接続部などの取り回しが必要な箇所 |
配管の施工にあたっては、腐食・損傷を防ぐための防食措置、地中埋設部での土被り、建物の貫通部での防火措置など、材料ごとに求められる施工方法が異なります。ガス配管はガス事業者・LPガス販売事業者の工事基準に従って施工されることが前提のため、設計段階ではルート・シャフトスペース・貫通部の位置を確保し、実際の配管仕様や工法についてはガス事業者・専門工事業者との協議に委ねるのが実務上の進め方です。ガス管の管径そのものは、各系統のガス消費量・ガスの発熱量、そしてLPガスの場合は同時使用率や圧力損失も踏まえて算定されるため、機器の負荷が確定してから配管ルートを最終的に固めていくことになります。
ガス漏れ警報器の設置位置:都市ガスは天井付近、LPガスは床付近
ガス漏れ警報器(ガス漏れ火災警報設備)は、使用するガスの種別に応じて有効に検知できる位置に配置することが基本的な考え方です。都市ガスとLPガスでは比重が逆になるため、警報器を取り付ける高さも逆になります。
| ガスの種類 | 漏れたガスの挙動 | 警報器の設置位置の考え方 |
|---|---|---|
| 都市ガス | 空気より軽く天井付近に滞留しやすい | 天井付近(天井面に近い高い位置)に設置する |
| LPガス | 空気より重く床付近に滞留しやすい | 床面に近い低い位置に設置する |
具体的な取り付け高さや、ガス器具からの水平距離の限度は、ガス警報器工業会の設置マニュアルや検知器メーカーの仕様に沿って決められています。実際の設置にあたっては、対象がガスコンロなのか給湯器なのか、部屋の広さや天井高、開口部の位置によっても最適な設置場所が変わってくるため、必ずガス事業者・警報器メーカーの設置基準・所轄消防署の指導に沿って決定してください。
一定規模以上の建物や、地下街・一部の特定防火対象物などでは、消防法令上ガス漏れ火災警報設備の設置が義務づけられる場合があります。義務設置の対象になるかどうかは建物の用途・規模・地下階の有無によって変わるため、計画の早い段階で所轄消防署に確認しておくことが実務上のポイントです。自動火災報知設備も含め、火災感知とガス漏れ検知はどちらも「異常の早期発見」という同じ目的を持つ設備として、あわせて計画されることが一般的です。
業務用厨房のガス設備:換気連動とガス遮断
飲食店・社員食堂・給食室などの業務用厨房は、一般室に比べて多くのガス機器(コンロ、フライヤー、オーブン等)が集中し、しかも常時強い燃焼が行われる場所です。厨房設備全体の計画上のポイントは特殊設備の計画|厨房設備・浴場設備・プールろ過設備の考え方で整理していますが、ガス設備に絞ると次の点が特に重要になります。
- 換気とガス機器の連動: 厨房のレンジフード等の換気扇が停止した状態でガス機器を使い続けると、燃焼で生じる排ガスや熱・油煙が室内に滞留する原因になります。このため、換気設備が正常に作動していることを条件にガス機器の使用を許可する、あるいは換気扇の異常時にガス機器側へ警報を出す、といった連動を計画する場合があります。
- 火災時の緊急ガス遮断: フード内消火装置(グリル・フライヤー周りの局所消火装置)が作動した場合や、自動火災報知設備が厨房の火災を感知した場合に、厨房系統のガス供給を自動的に遮断する緊急ガス遮断弁を設ける計画がよく採用されます。ガスを止めずに消火だけを行っても、消火後に再びガスが供給され続けていれば再着火のリスクが残るため、消火と遮断をセットで考えるのが基本の考え方です。
- 換気扇の強制停止との調整: 消火装置が作動した際は、逆に換気扇を止めて火炎や煙を強制的に押し出さないようにする制御が必要になる場合もあります。ガス遮断・消火・換気の3つがどのタイミングでどう連動するかは、厨房機器メーカー・消火設備業者・空調換気設計者との調整事項であり、設計者が一人で決められるものではありません。
こうした連動の具体的な仕様は、厨房の規模・消防用設備の種類・所轄消防署の指導によって幅があります。実施設計の段階では、厨房機器の配置とガス配管ルートが固まる前に、消火設備・換気設備の設計者を交えて連動の考え方をすり合わせておくと、後工程での手戻りを避けやすくなります。
燃焼に必要な給排気:火を使う室の換気
ガスコンロや湯沸器のような開放式(密閉式ではない)燃焼機器は、燃焼のために室内の空気を使い、燃焼によって生じた排ガスを室外に排出する必要があります。この給排気が不十分だと、酸素不足による不完全燃焼で一酸化炭素中毒を招く危険があるため、建築基準法でも火を使用する室に換気設備を設けることが定められています。
考え方の骨格は次のとおりです。
- 給気口の位置: 燃焼機器の燃焼を妨げないよう、天井近くに偏らない位置(室の低い位置寄り)に給気口を設けることが求められます。給気口の開口面積は、燃焼機器の燃料消費量に応じて必要な大きさが決まります。
- 排気口・排気筒の構造: 排ガスが室内に逆流したり、他の室に漏れたりしない構造とすることが求められます。換気扇で排気する場合と、自然排気で排気筒を用いる場合とで、必要な換気量・開口面積の考え方が異なります。
- 密閉式燃焼機器との違い: 屋外から直接給気し屋外へ直接排気する密閉式(バランス形)の燃焼機器を用いる場合は、室内の空気を燃焼に使わないため、この換気規定の対象から外れる扱いになります。業務用厨房のような大風量を必要とする場所では、密閉式ではなく開放式の機器とレンジフード等の換気設備を組み合わせる計画が一般的です。
具体的な給気口・排気口の必要開口面積や、換気扇を用いる場合の必要換気量は、燃焼機器の種類・燃料消費量ごとに国土交通大臣が定める数値に基づいて算定されます。実際の設計では、選定する機器の仕様を踏まえて建築確認の担当窓口・設計者が個別に確認する必要があります。換気方式全体の基礎については換気の基礎|第1種・第2種・第3種換気の違いと、24時間換気が義務になった理由も参考にしてください。
実務での判断:都市ガスかLPガスか迷う場合
新築計画の初期段階では、敷地が都市ガスの供給エリアに入っているかどうかがまだ確定していないこともあります。この場合、次のような視点で早めに方向性を固めておくと、後の設計変更を減らせます。
- 供給エリアの確認: まずガス事業者に敷地が都市ガスの供給区域かどうかを確認します。供給区域外であれば、LPガスまたは他の熱源(電気等)を検討することになります。
- 容器・貯槽の設置スペース: LPガスを選ぶ場合、容器置き場やバルク貯槽の設置スペースを配置計画に組み込む必要があります。都市ガスであれば導管接続で済むため、この検討が不要になる分、計画の自由度が上がる場合があります。
- 機器の互換性: 都市ガス用の機器とLPガス用の機器はノズルの口径等が異なり、そのまま流用できません。供給方式が計画途中で変わると、機器の再選定が必要になる点にも注意が必要です。
いずれの場合も、ガスの供給方式は建物の熱源計画全体(給湯・空調・厨房)に影響するため、電気設備・空調換気設備との比較検討も含めて、計画の早い段階で方針を固めておくことが実務上重要です。
まとめ
- 都市ガスとLPガスは比重・発熱量・供給方式が異なり、この違いがガス漏れ警報器の設置位置など計画全体に波及する
- 都市ガスは導管供給、LPガスは個別供給・集団供給・バルク供給のいずれかで、LPガスは容器やバルク貯槽の設置スペースを配置計画に組み込む必要がある
- ガスメーター(マイコンメーター)は地震・流量異常・長時間使用・供給圧力低下を検知して自動遮断する安全機能を持つ
- ガス栓はヒューズガス栓など安全機構付きのものを基本とし、配管材料は設置場所(埋設・露出)に応じて選定する
- ガス漏れ警報器は都市ガスなら天井付近、LPガスなら床付近に設置するのが基本で、具体的な位置はメーカー基準・所轄消防署の指導に従う
- 業務用厨房ではガス機器・換気・消火設備の連動(換気連動・緊急ガス遮断)を関係者間で早期にすり合わせる
- 火を使用する室には燃焼用の給排気設備が必要で、開放式機器か密閉式機器かによって扱いが変わる
ガス設備の計画は、電気設備や給排水衛生設備に比べると地味に見えるかもしれませんが、ガス漏れ・不完全燃焼・厨房火災という、いずれも人の命に直結するリスクを扱う分野です。都市ガスかLPガスかという前提を早期に固め、メーター・ガス栓・警報器・換気という安全のための機器をガスの性質に合わせて正しく配置することが、実施設計段階での基本的な役割になります。本記事の内容は執筆時点における一般的な考え方の整理であり、具体的な数値・基準・連動仕様は必ずガス事業者・所轄消防署・設計者に確認のうえ進めてください。
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