建築設備.tech
実施設計管工事(空調・給排水)

冷凍機の種類|ターボ・吸収式・チリングユニットの使い分け

建物の冷房は、室内の熱を屋外へ汲み出すことで成り立っています。この「熱を汲み出す」役割を担う機器が冷凍機で、大きく分けると、電気で冷媒を圧縮して熱を移動させる蒸気圧縮式と、ガスや蒸気・排熱などの熱エネルギーを使って冷媒を循環させる吸収式の2種類があります。同じ「冷やす」という結果を得るのに、まったく異なる原理を使っているのが冷凍機の面白いところです。

さらに実務では、これらの原理を内蔵し、屋外に置くだけで使える「チリングユニット」と呼ばれるパッケージ型の機器もよく登場します。この記事では、蒸気圧縮式の中でも圧縮機の方式による違い(ターボ・往復動・スクリュー・スクロール)、吸収式の駆動熱源による違い(温水焚き・蒸気焚き・直焚き)、チリングユニットの位置づけ、そしてCOP(成績係数)や冷媒規制との関係までを、建築設備士・空調設備の実務目線で整理します。冷凍機を含む熱源設備全体の計画の考え方は、熱源設備計画の基礎|蓄熱式・省エネ性を踏まえた選び方 もあわせてご覧ください。


冷凍機の2つの原理:蒸気圧縮式と吸収式

冷凍機が「冷やす」仕組みは、いずれも冷媒を蒸発させることで周囲から熱を奪い(気化熱の利用)、その冷媒を別の場所で凝縮させて熱を捨てる、という冷凍サイクルに基づいています。違いは、この冷媒を循環させる動力を何から得るかという点です。

方式 冷媒を動かす動力源 主なエネルギー 代表的な機種
蒸気圧縮式 圧縮機(コンプレッサー) 電気 ターボ冷凍機、往復動・スクリュー・スクロール式冷凍機、パッケージ形空調機
吸収式 吸収液の濃度差を利用した循環 ガス・蒸気・温水・排熱 吸収冷凍機、吸収冷温水機(温水焚き・蒸気焚き・直焚き)

蒸気圧縮式は、圧縮機で冷媒ガスを機械的に圧縮することで、冷媒の圧力(=凝縮温度)を高め、熱を排出できる状態をつくります。動力は基本的に電気で、圧縮機を回すモーターの電力消費がそのまま運転コストに直結します。

一方、吸収式は圧縮機を使いません。冷媒(多くは水)を吸収液(多くは臭化リチウム水溶液)に吸収させたあと、熱を加えて冷媒を分離・再生するという工程を繰り返すことで、冷媒を循環させます。圧縮機に相当する動力は、溶液を送るポンプ程度で済むため、電力消費は小さく抑えられますが、代わりにガス・蒸気・温水・排熱といった熱源が必要になります。

この「動力源の違い」こそが、機器選定の出発点になります。どちらが優れているという単純な話ではなく、その建物・敷地でどのエネルギー(電力かガス・熱か)を主軸に据えるかによって、選ぶべき方式が変わってくるのが実務の考え方です。


蒸気圧縮式冷凍機:圧縮機の方式による違い

蒸気圧縮式冷凍機は、内蔵する圧縮機の方式によって、さらにいくつかの種類に分かれます。圧縮機は大きく「容積式」と「遠心式(速度式)」に大別され、それぞれ得意とする容量帯や特性が異なります。

圧縮機の方式 分類 特徴 主な適用容量帯
ターボ(遠心式) 遠心式 羽根車の回転で冷媒に速度を与え、圧力に変換する。大容量向き、単段では圧縮比を大きく取りにくい 大容量(大規模ビル・工場等)
往復動(レシプロ) 容積式 ピストンの往復運動で圧縮する。構造がシンプルで歴史が長く信頼性が高い一方、振動・騒音が出やすい 小〜中容量
スクリュー 容積式 ねじ状のロータの回転を利用する。耐久性・メンテナンス性に優れ、負荷変動への追従性がよい 中〜大容量
スクロール 容積式 渦巻き状の部材の組み合わせで圧縮する。低振動・低騒音・高効率で、部品点数が少なく軽量 小容量(パッケージ形空調機・小型チラー等)

ターボ冷凍機は、遠心式圧縮機を用いた大容量の冷凍機で、事務所ビルや商業施設、工場などの中央熱源方式でよく採用されます。単段の遠心圧縮機では大きな圧縮比を得にくいため、多段圧縮や複数台の組み合わせで対応することもあります。

往復動式は最も歴史が古く、小〜中規模の冷凍・冷蔵設備や古くからの空調用熱源で広く使われてきました。構造がシンプルな分、振動・騒音対策や、部品点数が多いことによる保守の手間が課題になりやすい方式です。

スクリュー式は、負荷変動が大きい用途や、頻繁な発停が求められる用途で力を発揮しやすく、中〜大容量帯の熱源として空調・冷凍冷蔵の両分野で採用が広がっています。

スクロール式は、低振動・低騒音・高効率という特性から、家庭用ルームエアコンや業務用パッケージ形空調機、小型のチリングユニットなど、比較的小容量の機器で主流になっています。同じ「電気で圧縮する」という原理でも、扱う容量帯や求められる特性によって、適した圧縮機方式が変わってくる点を押さえておく必要があります。


吸収式冷凍機:駆動熱源による違い

吸収式冷凍機(吸収冷凍機・吸収冷温水機)は、冷媒(水)を吸収液(臭化リチウム水溶液が一般的)に吸収させ、熱を加えて再生するというサイクルで冷熱をつくります。この「熱を加えて再生する」工程に何を使うかによって、いくつかの種類に分かれます。

駆動熱源の種類 概要 主な用途・特徴
温水焚き 温水(ボイラー、地域熱供給、太陽熱、排熱など)を熱源とする 排熱利用や地域熱供給との組み合わせに適する
蒸気焚き 工場やプラントで得られる蒸気を熱源とする 蒸気が既に供給されている施設で採用しやすい
直焚き(直だき) バーナーで都市ガス・LPG・重油などを直接燃焼させ、その熱を再生器に供給する 冷房・暖房の両方に対応できる「吸収冷温水機」として広く普及

さらに、再生器を1段(一重効用)とするか、高温再生器・低温再生器の2段構成(二重効用)とするかによっても効率が変わります。二重効用は、高温再生器で発生した冷媒蒸気の熱を低温再生器の加熱にも利用する仕組みで、一重効用よりも熱の再利用が進む分、エネルギー効率が高くなります。

直焚き吸収冷温水機は、1台でガスバーナーの燃焼熱を使って冷房と暖房の両方をまかなえるため、電力契約容量を抑えたい建物や、ガス設備が主体の建物で選ばれることが多い機種です。一方、蒸気焚き・温水焚きは、工場の排熱やプラント蒸気、地域冷暖房の熱媒配管などを活用できる立地・用途で有利になります。

吸収式は圧縮機を持たないため、蒸気圧縮式に比べて振動・騒音が少ないという特徴もあります。ただし、燃焼を伴う直焚き機では、燃焼空気の確保や排気筒(煙突・煙道)の計画、消防・建築関係法令との整合が必要になるため、計画段階から建築側との調整が欠かせません。


COP(成績係数)と方式ごとのエネルギー効率の考え方

冷凍機の効率を表す代表的な指標がCOP(Coefficient Of Performance:成績係数)です。COPは、投入したエネルギーに対して、どれだけの冷却(または加熱)能力を得られたかを示す比率で、数値が大きいほど効率が高いことを意味します。

蒸気圧縮式は、電気で圧縮機を駆動する分、投入エネルギーに対する冷却能力の比率(COP)が比較的高く取りやすい方式です。特にターボ冷凍機は大容量・高効率の熱源として位置づけられることが多く、電力を主エネルギーとする建物での中央熱源に適しています。

吸収式は、熱エネルギーを直接冷熱に変換する過程で一定のロスが生じるため、蒸気圧縮式に比べるとCOPの数値自体は低めになる傾向があります。ただし、これは吸収式が劣っているという意味ではありません。工場排熱やコージェネレーションの排熱、地域熱供給の熱など、他で使い道の少ないエネルギーを有効利用できる場合、建物全体でのエネルギー収支・経済性で見れば吸収式が有利になることもあります。

COPだけで機器の優劣を単純比較するのではなく、「その建物でどのエネルギーが安価・豊富に手に入るか」「排熱の有無」「電力契約とガス契約のバランス」「BCP(業務継続)の観点で電力・ガスのどちらのリスクを避けたいか」といった条件を含めて総合的に判断する必要がある、というのが実務上の考え方です。また、年間を通じた実際の運転効率を評価する際には、定格COPだけでなく、部分負荷時の効率も含めた指標を用いることが一般的です。空調全体の熱負荷の考え方については、空調負荷計算の基礎|負荷の内訳・顕熱と潜熱・機器容量の決め方 で整理しています。


チリングユニット:パッケージ化された熱源

チリングユニット(チラーユニット、単に「チラー」とも呼ばれる)は、圧縮機・凝縮器・蒸発器などの冷凍サイクルの構成要素を1つの筐体にまとめ、冷水(または温水)をつくって送り出すパッケージ型の熱源機器です。ターボ・スクリュー・スクロールなど、蒸気圧縮式のいずれかの圧縮機方式を内蔵しているのが一般的で、原理そのものは前述の蒸気圧縮式冷凍機と同じです。

チリングユニットは、熱の排出方法によって空冷式と水冷式に分かれます。

方式 熱の排出先 特徴
空冷式チリングユニット 屋外空気(ユニット内蔵のファンで熱交換) 冷却塔が不要で設置・維持管理が簡易。屋上や屋外置きに向く
水冷式チリングユニット 冷却水(冷却塔で外気と熱交換) 一般に効率が高いが、冷却塔・冷却水配管が別途必要になる

空冷式は、冷却塔を必要としない分、設置スペースや水処理・レジオネラ属菌対策などの維持管理の手間を減らせるのが利点で、中小規模の建物や増設用の熱源としてよく採用されます。一方、水冷式は冷却塔を介して熱を排出するため、一般的に空冷式より高い効率を得やすい半面、冷却塔本体や冷却水配管、水質管理といった付帯設備・維持管理が別途必要になります。

チリングユニットと、ビル用マルチエアコンなどの「パッケージ形空気調和機」は、どちらも工場で組み立てられたパッケージ型の機器という点では似ていますが、チリングユニットは冷水・温水をつくって配管で各所に送る「熱源機器」であるのに対し、パッケージ形空気調和機は熱源から空調まで一体化された機器である、という位置づけの違いがあります。建物の規模・用途・熱源方式の全体構成の中で、どちらを採用するかを検討することになります。


冷却塔との関係

水冷式の熱源(水冷式ターボ冷凍機、水冷式チリングユニットなど)を採用する場合、冷却塔とセットで計画する必要があります。冷凍機で冷媒が凝縮する際に放出する熱は、冷却水を介して冷却塔へ運ばれ、冷却塔で外気と接触させることで大気中へ捨てられます。

国土交通省の『建築設備設計基準』では、冷却塔の冷却能力は冷熱源機器の冷凍能力に基づいて算定するものとされており、冷凍機と冷却塔は容量の面で一体のものとして計画すべき機器であることが分かります。また、冷却塔については、外気との熱交換に支障のない周囲空間を確保した位置に設置すること、必要に応じて騒音・振動、凍結、レジオネラ属菌の繁殖などを防止する措置を講じることも求められています。冷却塔まわりの水質管理(レジオネラ症対策としての冷却水の水質基準遵守、定期的な清掃・薬品処理など)は、水冷式熱源を選ぶ際に見落とされがちな維持管理コストの一つです。

空冷式のターボ・スクリュー冷凍機やチリングユニットは、この冷却塔が不要になる分、水質管理の負担を減らせる代わりに、一般に水冷式より効率で劣る傾向があります。冷却塔の設置スペース・維持管理体制を確保できるかどうかも、蒸気圧縮式の中で空冷か水冷かを選ぶ際の重要な判断材料になります。


冷媒と規制の動向

冷凍機を選定するうえで避けて通れないのが、冷媒の種類とその規制動向です。かつて広く使われていたCFC(クロロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)は、オゾン層破壊の原因物質として国際的に規制され、現在の新設機器ではほぼ使用されていません。現在主流のHFC(ハイドロフルオロカーボン)系冷媒はオゾン層は破壊しないものの、地球温暖化係数(GWP)が高いものが多く、地球温暖化対策の観点から低GWP冷媒への転換が進められています。

国土交通省の『建築設備設計基準』でも、冷凍機等の冷媒は「安全性が高く、オゾン層破壊係数がゼロで、かつ地球温暖化係数が可能な限り小さいもの」を選定するという方針が示されています。設計段階では、単に能力・効率だけでなく、採用する冷媒の環境性能も選定条件として押さえておく必要があります。

また、一定規模以上の業務用冷凍空調機器を対象に、フロン類の排出を抑制するための法律(フロン排出抑制法)により、機器の管理者に対して日常的な簡易点検(機器の外観確認や異音・異臭の有無などを3か月に1回程度)、および専門知識を持つ者による定期点検が義務づけられています。定期点検が必要となる機器の規模要件は圧縮機の定格出力などにより定められているため、該当するかどうかは最新の法令・ガイドラインで個別に確認することが前提になります。吸収式は冷媒に主として水を使うため、この種の合成冷媒規制の対象からは外れますが、吸収液(臭化リチウム)の取り扱いや、燃焼を伴う直焚き機であれば別途、消防法令上の危険物・燃焼設備としての確認が必要になる点に注意が必要です。


実務での判断:どの方式を選ぶか

冷凍機の方式選定は、単純な効率比較だけで決まるものではなく、次のような複数の観点を組み合わせて判断する事項です。

  • 建物のエネルギー方針: 電力を主軸にするか、ガス・排熱を活用するかによって、蒸気圧縮式か吸収式かの基本方針が変わる
  • BCP(業務継続)の観点: 電力・ガスいずれかの供給停止リスクに備え、複数のエネルギー源を組み合わせた熱源構成にする選択肢もある
  • 設置スペースと維持管理体制: 冷却塔の設置可否、水質管理の体制が整えられるかどうかで、空冷・水冷の選択が変わる
  • 容量帯: 小規模ならスクロール式のパッケージやチリングユニット、中〜大規模ならスクリュー式・ターボ式が候補になりやすい
  • 将来の増改築・用途変更: 台数分割や増設のしやすさも、機種選定・熱源方式の判断材料になる

これらはいずれも建物ごとに条件が異なるため、所轄の関係機関・設計者との協議を前提に、個別の建物条件に即して検討することが基本になります。


よくある誤解

冷凍機の種類について、実務でしばしば見られる誤解を整理しておきます。

「吸収式は効率が悪いから使うべきではない」という誤解 吸収式のCOPは蒸気圧縮式より数値上低くなる傾向がありますが、これは電気を熱に換算した場合の比較にすぎません。工場排熱やコージェネレーションの排熱など、そのままでは捨てられてしまうエネルギーを有効利用できる条件がそろえば、建物全体のエネルギー収支としては吸収式が有利になる場合もあります。

「チリングユニットとターボ冷凍機はまったく別の機器」という誤解 チリングユニットは、ターボ・スクリュー・スクロールなど蒸気圧縮式の圧縮機を内蔵したパッケージ機器の総称であり、原理としてはターボ冷凍機と地続きです。「パッケージ化されているかどうか」「現地で組み立てる大型機か、工場出荷のユニット機か」という違いが主で、冷凍の原理そのものが異なるわけではありません。

「冷媒はどれを選んでも同じ」という誤解 冷媒の種類によって、オゾン層破壊係数・地球温暖化係数・安全性(可燃性・毒性の区分)は大きく異なります。既存機器の冷媒更新や新規選定の際は、最新の規制動向・入手性を踏まえて設計者・専門業者に確認することが欠かせません。


まとめ

  • 冷凍機は、電気で冷媒を圧縮する蒸気圧縮式と、熱エネルギーで駆動する吸収式に大別され、動力源の違いが機器選定の出発点になる
  • 蒸気圧縮式は圧縮機の方式(ターボ=遠心式、往復動・スクリュー・スクロール=容積式)によって適した容量帯・特性が異なる
  • 吸収式は駆動熱源(温水焚き・蒸気焚き・直焚き)と再生段数(一重効用・二重効用)によって種類が分かれ、排熱やガス設備を活用しやすい
  • COPは効率を示す代表的な指標だが、数値の大小だけでなく、建物のエネルギー方針・排熱の有無まで含めて総合的に機種を判断する必要がある
  • チリングユニットは蒸気圧縮式を内蔵したパッケージ型熱源で、空冷式は冷却塔が不要、水冷式は効率面で有利だが冷却塔・水質管理が必要になる
  • 冷媒はオゾン層破壊係数・地球温暖化係数・法令上の点検義務などの観点から選定・管理する必要があり、規制動向を踏まえた確認が欠かせない

冷凍機の種類は、名前だけを見ると専門的で複雑に感じられますが、「何をエネルギー源にして、どうやって冷媒を循環させているか」という原理に立ち返って整理すると、それぞれの特性や使い分けの理由が見えてきます。数値や機種名を丸暗記するのではなく、原理から理解しておくことが、設計判断でも試験対策でも応用の利く近道だと筆者は考えています。実際の機種選定にあたっては、建物のエネルギー事情や敷地条件を踏まえ、設計者・専門業者との協議のもとで判断することが前提です。


あわせて読みたい

参考書籍でさらに学ぶ

※ この欄は書籍のアフィリエイト広告(Amazon・楽天)を含みます。価格・在庫・最新の年度版はリンク先でご確認ください。

  • 建築設備士 必携テキスト

    建築一般知識・建築法規・建築設備の3科目を1冊で。分野全体の土台づくりに。

  • 空調・給排水衛生設備の実務書

    熱源・空調・給排水を体系的に整理した実務書で理解を定着。

→ 建築設備士のおすすめ参考書まとめ

関連記事