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基本設計管工事(空調・給排水)

熱源設備計画の基礎|中央熱源と個別分散、蓄熱式空調システムの考え方

結論から言うと、熱源設備の計画とは「建物のどこで、何を使って、どう冷水・温水・冷媒をつくるか」を決める作業です。中央熱源方式にするか個別分散方式(ビルマルチエアコンなど)にするかで、初期費用・ランニングコスト・更新性・機械室スペースの考え方が大きく変わってきます。

さらに近年は、電力の使い方そのものを設計に組み込む蓄熱式空調システムの考え方も重要になっています。夜間電力を使って氷や水に「冷熱」を貯めておき、昼間はそれを取り崩して使うという発想です。空調負荷計算の基礎(空調負荷計算と機器能力)で求めた熱負荷を、どの熱源方式でどう賄うかという次のステップが、本記事のテーマです。本記事では、中央熱源と個別分散のメリット・デメリット比較、蓄熱式空調システムの仕組み、主な熱源機器の特徴、省エネ手法を整理します。


熱源設備の役割とは

空調設備は、大きく分けると「熱をつくる装置(熱源設備)」と「熱を運んで室内に渡す装置(空調機・末端機器)」の2つで成り立っています。熱源設備は、この前段の「熱をつくる」部分を担う設備です。

具体的には、次のようなものをつくり出して、配管やダクトを通じて空調機側に送り出します。

  • 冷水:夏期の冷房用。熱源機(冷凍機・チラーなど)でつくった冷たい水を、ポンプで空調機やファンコイルユニットに送る。
  • 温水:冬期の暖房用。ボイラやヒートポンプでつくった温水を同様に送る。
  • 冷媒:個別分散方式(ビルマルチエアコンなど)の場合は、水ではなく冷媒ガスそのものを室外機から室内機へ配管で直接送る。

つまり熱源設備は、空調システム全体における「熱のエンジン」にあたる部分です。この選定を誤ると、後から容量不足や更新性の悪さといった形で長期的に響いてくるため、基本設計の早い段階で建物用途・規模・運用時間帯に合わせて方式を決めておくことが実務上のポイントです。


中央熱源方式と個別分散方式の比較

熱源方式は大きく「中央熱源方式」と「個別分散方式」の2つに分かれます。中央熱源方式は、建物内の1〜数か所の機械室にまとめて熱源機を設置し、そこから建物全体に冷水・温水を配管で送る方式です。個別分散方式は、フロアや室ごとに小型の熱源機(室外機)を分散配置し、冷媒配管で各室内機に直接つなぐ方式で、代表例がビルマルチエアコン(ビルマル)です。

比較項目 中央熱源方式 個別分散方式(ビルマル等)
初期費用 大型機器・配管が多く高額になりやすい 機器分散のため比較的抑えやすい
運転効率 台数制御で高負荷時の効率が良い 低負荷時でも個別最適運転がしやすい
メンテナンス 集約されており点検しやすい 台数が多く管理の手間が増える
更新性 更新時は大規模工事・仮設熱源が必要になりがち 系統ごとに順次更新しやすい
機械室スペース まとまった機械室面積が必要 屋上・バルコニー等に分散設置
部分運転への対応 台数制御次第で対応可能だが設計が必要 フロア・テナントごとの個別運転がしやすい
電力契約 大容量の電灯・動力契約になりやすい 系統ごとに分割しやすい
向いている建物 大規模・24時間連続運転の施設 テナントビル・用途混在の建物

中央熱源方式は、病院や大規模商業施設のように「常に一定の熱需要がある」建物で効率を発揮しやすい方式です。一方、個別分散方式は、テナントごとに使用時間帯や設定温度が異なるオフィスビルなどで、部分負荷への対応力の高さが強みになります。どちらが優れているというより、建物の使われ方(運用時間帯・負荷パターン・テナント構成)に合わせて選ぶのが基本の考え方です。


蓄熱式空調システムの仕組み

蓄熱式空調システムは、夜間の安い電力を使って熱源機を運転し、冷熱・温熱を蓄熱槽に貯めておき、昼間の空調負荷が高い時間帯にその蓄えを取り崩して使う方式です。代表的な方式として、水蓄熱と氷蓄熱の2種類があります。

項目 水蓄熱 氷蓄熱
蓄熱媒体 水(顕熱を利用) 氷(潜熱を利用)
蓄熱槽の大きさ 比較的大きい 水蓄熱より小型化しやすい
熱源機の運転温度 通常の冷水温度と近い 氷点下まで下げる必要があり効率はやや下がる
熱源機容量 中程度の縮小効果 より大きな縮小効果が期待できる
主な採用例 大規模建物・地域冷暖房 中小規模ビル・スペース制約のある建物

水蓄熱は水の温度差(顕熱)をそのまま利用するため仕組みがシンプルですが、蓄えられる熱量に対して槽の容積が大きくなりがちです。氷蓄熱は、水が氷になるときの潜熱(状態変化に伴う熱量)を利用するため、同じ蓄熱量でも槽を小型化しやすいのが特徴です。ただし氷をつくるために熱源機を氷点下近くまで運転する必要があり、通常運転時より効率がやや落ちる点は考慮が必要です。

蓄熱式空調システムを導入する主な狙いは、次の3つに整理できます。

  • 夜間電力の活用によるランニングコスト低減:料金単価が安い時間帯に熱源機を集中運転する。
  • 負荷平準化:昼間のピーク時間帯に熱源機をフル稼働させず、蓄熱槽からの供給で賄うことで、電力デマンド(最大需要電力)を抑える。
  • 熱源機容量の縮小:ピーク負荷をそのまま賄う容量ではなく、蓄熱分を差し引いた容量で熱源機を選定できるため、設置スペースや初期費用の抑制につながる。

なお、蓄熱槽と熱源機・空調機側の配管系統をどうつなぐかによって、密閉回路方式と開放回路方式に分かれます。密閉回路は蓄熱槽内の水を配管系統と一体的に循環させる方式で、配管内が外気に触れないため水質管理がしやすい一方、槽の構造上、密閉性の確保に注意が必要です。開放回路は蓄熱槽が大気に開放された状態で、槽と熱源機・空調機側の間で熱交換器を介して熱をやり取りする方式です。開放回路では、槽の水位変動や配管の腐食対策、水質管理(藻の発生防止など)に気を配る必要があります。どちらの方式を選ぶかは、蓄熱槽の形式・建物の設備更新計画・維持管理体制を踏まえて判断するのが実務上のポイントです。


主な熱源機器の特徴

熱源設備でよく使われる機器には、それぞれ得意分野があります。設計段階では、建物の熱源(電気・ガス)事情や設置スペースを踏まえて組み合わせを検討します。

機器 主な熱源 特徴
吸収冷温水機 ガス・排熱・蒸気 1台で冷水・温水の両方をつくれる。電力契約を抑えやすいが設置スペースは大きめ
空冷チラー 電力 屋外に室外機を設置でき、水冷式より設置の自由度が高い
水冷チラー 電力(冷却塔併用) 空冷式より効率が良いが、冷却塔の設置・水質管理が必要
ヒートポンプ(空気熱源) 電力 1台で冷暖房に対応でき、近年は高効率機の普及が進んでいる
ボイラ ガス・油 温水・蒸気の供給に特化。給湯用途と兼用されることも多い

吸収冷温水機は、ガスや排熱を使って冷水と温水の両方をつくれるため、電力契約容量を抑えたい建物で採用されることがあります。一方、チラーやヒートポンプは電力を使う分、設置がシンプルで台数制御や部分負荷運転との相性が良い傾向があります。ボイラは温水・蒸気の供給に特化した機器で、給湯設備と組み合わせて使われるケースも見られます。実際の機種選定では、建物のエネルギーインフラ(電力容量・ガス供給状況)や、更新のしやすさも合わせて検討することが実務上のポイントです。


熱源設備の省エネ手法

熱源設備は空調全体のエネルギー消費の中でも大きな割合を占めるため、省エネの余地が大きい部分でもあります。主な手法を整理します。

  • 高効率機器の採用:同じ能力でも消費電力の少ない機種を選ぶことで、運転コストを長期的に抑えられる。
  • 台数制御:複数台の熱源機を負荷に応じて必要な台数だけ稼働させ、部分負荷時の効率低下を防ぐ。
  • フリークーリング:外気温が十分低い時期に、熱源機を運転せず外気や冷却塔の水を直接利用して冷却する仕組み。中間期・冬期の冷房負荷に対して効果を発揮する。
  • 排熱回収:熱源機や発電設備から出る排熱を給湯や暖房に再利用し、エネルギーの無駄を減らす。
  • 大温度差送水:冷水・温水の送り側と戻り側の温度差を大きく設計することで、同じ熱量を運ぶための水量を減らし、搬送動力(ポンプの消費電力)を抑える。

これらの手法は単独でも効果がありますが、建物の負荷特性や運用時間帯と組み合わせて初めて本領を発揮します。例えば台数制御は、部分負荷が多い建物ほど効果が大きく、フリークーリングは年間を通じて外気温が低い時期が長い地域ほど有利になります。設計段階で「この建物はどのパターンが向いているか」を見極めることが、省エネ効果を最大化する近道です。


熱源機器選定で考えること

熱源機器の選定は、単純にカタログスペックだけで決められるものではありません。実務では次のような観点を総合的に見て判断します。

  • 負荷特性:24時間連続運転か、日中のみの運転か。負荷変動が大きいか小さいか。
  • 燃料・電力事情:建物にガス供給があるか、電力の契約容量に余裕があるか。
  • 設置スペース:機械室・屋上・冷却塔スペースをどれだけ確保できるか。
  • 更新性:将来の機器更新時に、搬入経路や仮設熱源の確保がしやすいか。
  • メンテナンス体制:管理者が常駐するか、外部委託を前提とするかによって、機器の複雑さの許容度が変わる。

これらは建物ごとに優先順位が異なるため、「この方式が絶対に正解」という単純な答えはありません。設計者・建物管理者・所轄官署との協議を重ねながら、建物のライフサイクル全体を見据えて選定していくことが基本の考え方です。


実務チェックリスト

  • 建物の熱負荷パターン(24時間連続か、日中のみか)を整理したか
  • 中央熱源方式・個別分散方式のどちらが建物の運用に合うか比較検討したか
  • 蓄熱式空調システムを採用する場合、水蓄熱・氷蓄熱のどちらが建物規模・スペースに合うか検討したか
  • 蓄熱槽の密閉回路・開放回路の選定理由を整理したか
  • 熱源機器の燃料・電力インフラ(ガス供給・電力契約容量)を確認したか
  • 台数制御・フリークーリング・排熱回収など省エネ手法の適用可否を検討したか
  • 将来の機器更新時の搬入経路・仮設熱源の確保を想定したか
  • 冷却塔を使う場合の水質管理・レジオネラ対策を検討したか
  • 具体的な機器容量・法令基準は所轄官署・設計者に確認したか

よくある質問

中央熱源方式と個別分散方式、どちらがコストを抑えられますか?

一概にはいえません。初期費用は個別分散方式の方が抑えやすい傾向がありますが、24時間連続運転が多い建物では中央熱源方式の運転効率が有利に働くこともあります。建物の運用パターンごとにライフサイクルコストで比較することが実務上のポイントです。

蓄熱式空調システムはどんな建物に向いていますか?

夜間の電力単価が下がる契約を利用できる建物や、昼間のピーク電力(デマンド)を抑えたい建物に向いています。また、熱源機容量を抑えてスペースを節約したい中小規模ビルでも、氷蓄熱を中心に採用例が見られます。

熱源機器は何年ごとに更新するのが目安ですか?

機器の種類や使用状況によって差があるため、一律の年数を断定することはできません。メーカーの推奨する耐用年数や点検結果を踏まえ、更新時期を設計者・保守業者と相談しながら計画するのが基本の考え方です。

吸収冷温水機とヒートポンプ、どちらを選ぶべきですか?

建物のエネルギーインフラ次第です。ガス供給が安定していて電力契約容量を抑えたい建物では吸収冷温水機が検討されることが多く、電力主体でシンプルな運用を志向する建物ではヒートポンプが選ばれる傾向があります。


まとめ

  • 熱源設備は、冷水・温水・冷媒をつくって空調機に送る「熱のエンジン」にあたる部分
  • 中央熱源方式は集約管理・高負荷時効率、個別分散方式は部分負荷対応・更新のしやすさに強み
  • 蓄熱式空調システムは、夜間電力の活用・負荷平準化・熱源機容量の縮小を狙う仕組み
  • 水蓄熱は仕組みがシンプル、氷蓄熱は槽を小型化しやすいという違いがある
  • 台数制御・フリークーリング・排熱回収・大温度差送水など、省エネ手法は建物特性との組み合わせが重要
  • 機器選定は負荷特性・燃料電力事情・設置スペース・更新性を総合的に踏まえて判断する

熱源設備の計画は、建物が完成した後の数十年にわたる運転コストと更新のしやすさを左右する、基本設計における重要な意思決定のひとつです。方式ごとのメリット・デメリットを比較しながら、建物の使われ方に合った選択をしていくことが求められます。実際の機器容量や設計基準については、所轄官署・設計者に確認しながら進めてください。


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