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雷保護設備の基礎|外部雷保護と内部雷保護、SPDの考え方

結論から言うと、雷保護設備は「建物を雷から守る」だけの設備ではありません。**直撃雷を安全に大地へ逃がす「外部雷保護」**と、**雷が引き起こす過電圧から電子機器を守る「内部雷保護」**という、役割の異なる2つの仕組みを組み合わせて初めて機能するものです。避雷針を立てれば終わり、という単純な話ではない点が実務上のポイントです。

この記事では、雷の被害がなぜ起きるのかという基本から、外部雷保護システムの構成(受雷部・引下げ導線・接地)、保護範囲の考え方、そして近年ますます重要性が増している内部雷保護(等電位ボンディングとSPD)まで、順を追って整理します。受変電設備の基礎については受変電設備の基礎(単線結線図)、雷保護を含む電気設備の全体像は電気設備の図面の読み方も参考にしてください。


雷の被害には2種類ある|直撃雷と誘導雷

雷による被害を考えるとき、まず区別しておきたいのが「直撃雷」と「誘導雷(雷サージ)」という2つの被害形態です。この違いを理解しないと、外部雷保護と内部雷保護がなぜ両方必要なのかが見えてきません。

直撃雷は、雷雲と大地の間で発生する放電が建物や樹木、人体などに直接落ちる現象です。数万アンペアともいわれる大電流が一瞬にして流れ込むため、直撃を受けた箇所は高熱と衝撃で破壊されたり、火災の原因になったりします。建物の最上部や突出物に落ちやすいのは、雷が最も近い、あるいは電気的に到達しやすい経路を選ぶ性質があるためです。

**誘導雷(雷サージ)**は、直撃雷そのものではなく、雷放電によって発生する強力な電磁界の変化が原因で起こる被害です。雷が建物の近くや引込線・配電線の近くに落ちた場合、その電磁界の変化によって電線やケーブルに異常な高電圧(サージ電圧)が誘起されます。このサージが電源ラインや通信ラインを伝わって建物内に侵入し、パソコンやサーバー、通信機器、制御盤などの電子機器を破損させます。

直撃雷は「建物そのものを守る」問題であり、誘導雷は「建物の中の機器を守る」問題です。この2つは発生メカニズムも被害の出方も異なるため、対策も分けて考える必要があります。外部雷保護は前者を、内部雷保護は後者を主に受け持つ、という整理がこの記事全体の軸になります。


建築基準法と避雷設備|高さのある建築物に求められる考え方

建築基準法では、一定の高さを超える建築物に対して、雷から建物を保護するための設備(避雷設備)の設置が求められています。おおむね高さ20mを超える建築物が対象とされており、高い建物ほど雷を受けやすく、被害が発生した際の影響も大きくなるという考え方が背景にあります。

ここで重要なのは、「高さ20mを超えたら避雷設備を付ければ形式的に終わり」ということではなく、建物の形状・周辺環境・用途に応じて、実際に有効な保護が得られる設計になっているかが問われる、という視点です。同じ高さの建物でも、屋上に突出物が多い建物や、周囲に高い建物がなく雷を受けやすい立地の建物では、保護範囲の考え方をより慎重に検討する必要があります。

具体的な法令上の数値や適用条件、除外規定などは改正や運用の解釈によって変わり得る部分があるため、実際の設計では所轄官庁や特定行政庁への確認、および建築基準法・関連する日本産業規格(JIS)に基づいた検討が前提になります。この記事では考え方の骨格を扱い、条文の細部には立ち入りません。


外部雷保護システムの構成|受雷部・引下げ導線・接地

外部雷保護システムは、直撃雷のエネルギーを受け止め、安全に大地へ流し込むための仕組みです。大きく分けると「受雷部」「引下げ導線」「接地システム」の3つの要素で構成されています。

構成要素 役割 代表的な形式
受雷部 雷撃を受け止める 突針(避雷針)、棟上導体、メッシュ導体
引下げ導線 受雷部で受けた電流を接地極まで導く 複数経路を確保し電流を分散させる
接地システム 雷電流を大地に放流する 接地極(板状・棒状・環状など)

受雷部は、建物の屋上やパラペットなど雷を受けやすい位置に設ける部分です。突針(先端が尖った金属棒)だけでなく、屋上の周囲を導体で囲む棟上導体や、屋根面全体を網目状の導体で覆うメッシュ導体といった形式もあり、建物の形状や規模に応じて使い分けられます。

引下げ導線は、受雷部が受けた雷電流を接地システムまで導く配線です。1本に集中させると電流や電磁界の影響が偏るため、複数のルートに分散させて経路ごとの負担を軽減する考え方が基本になります。建物の外壁や鉄骨を利用する場合もありますが、既存の金属部分を導線として使えるかどうかは連続性や接続方法を含めた確認が必要です。

接地システムは、引下げ導線を通じて集まった雷電流を最終的に大地へ逃がす部分です。ここが不十分だと、いくら受雷部と引下げ導線が適切でも、電流の逃げ場がなく建物内に影響が及びやすくなります。接地についての基本的な考え方は次の章でも触れます。


保護範囲の考え方|保護角法・回転球体法・メッシュ法

受雷部をどこにどれだけ設ければ、建物全体を有効に保護できるのか。この「保護範囲」を検討する代表的な考え方として、保護角法・回転球体法・メッシュ法の3つがあります。

検討方法 考え方の概要 向いている建物の傾向
保護角法 受雷部の先端から一定の角度で広がる円錐状の範囲を保護範囲とみなす 単純な形状の低・中層建物
回転球体法 一定の半径の仮想球体を建物表面に転がし、球体が接触しない範囲を保護範囲とする 高層・複雑な形状の建物
メッシュ法 屋根面を網目状の導体で覆い、網目の間隔を基準に保護範囲を確保する 屋上面積が広い建物・平屋根

保護角法は最も単純な考え方で、突針の高さと角度から保護できる範囲を求めます。ただし建物が高くなるほど、実際の雷撃の挙動と保護角法の想定にずれが生じやすくなるため、高層建築物では回転球体法が用いられる傾向があります。

回転球体法は、雷の放電が「最も近い突出部に向かって進む」という性質をより実態に近い形でモデル化したもので、建物の凹凸や突出物が多い場合でも、球体が建物のどこに接触し得るかを確認することで保護範囲を検討できます。

メッシュ法は、平坦な屋根が広がる建物や工場などで、受雷部を格子状に配置して面全体をカバーする考え方です。いずれの方法も、建物の重要度や収容される設備の種類に応じて保護のレベル(保護等級)を設定したうえで選択・組み合わせるのが実務上の基本になります。どの方法を採用するかは、建物の形状・高さ・重要度を踏まえて設計者が判断する部分であり、詳細な等級区分や適用条件は専門家への確認が前提です。


内部雷保護|等電位ボンディングとSPDで誘導雷から機器を守る

外部雷保護が直撃雷への対策であるのに対し、内部雷保護は誘導雷(雷サージ)から建物内の電気・電子機器を守るための対策です。この分野は、建物の情報化・電子化が進むほど重要性が増しています。

内部雷保護の柱になるのが「等電位ボンディング」と「SPD(サージ防護デバイス)」の2つです。

等電位ボンディングとは、建物内の金属部分(配管、鉄骨、ケーブルラックなど)や各種設備の接地を相互に接続し、電位差が生じにくい状態を作る考え方です。雷電流が流れた瞬間、建物内の各部分に電位差(電圧の差)が生じると、その差を埋めようとして思わぬ経路に電流が流れ込み、機器の損傷や火花放電による事故につながることがあります。あらかじめ主要な金属部分を接続しておくことで、この電位差の発生を抑えるのが等電位ボンディングの狙いです。

SPDは、電源ラインや通信ラインに侵入してきたサージ電圧を検知し、その電圧を一定レベル以下に抑え込む機器です。分電盤や機器の手前に設置し、平常時は電気の流れを妨げず、サージが発生した瞬間だけ動作して過電圧を逃がす、という働き方をします。SPDには保護対象や設置位置に応じていくつかの種類があり、建物の引込部分に設置するものから、末端の機器の直前に設置するものまで段階的に組み合わせる「協調(協調設計)」という考え方が実務上のポイントになります。

対策 主な目的 代表的な設置箇所
等電位ボンディング 建物内の電位差の発生を抑える 主接地端子、配管・鉄骨・ケーブルラックの接続部
SPD(サージ防護デバイス) サージ電圧を一定レベル以下に抑える 引込盤、分電盤、重要機器の電源・通信ライン手前

外部雷保護だけを整備して内部雷保護を軽視すると、直撃雷そのものは防げても、近隣への落雷による誘導雷で建物内の機器が次々に故障する、という事態が起こり得ます。両方をセットで検討することが、雷保護設備の実務上の基本になります。


図書館・情報設備の多い建物で内部雷保護が重要な理由

内部雷保護の重要性は、建物の用途によって重みが変わります。とりわけ図書館のように、蔵書管理システム、館内ネットワーク、監視カメラ、館内放送、電子機器を用いた閲覧端末などが集積する建物では、内部雷保護の設計が運用継続に直結します。

書架や閲覧スペースといった建築的な計画に比べると目立ちにくい部分ですが、雷サージによって蔵書検索システムやネットワーク機器が一斉に停止すれば、開館そのものに支障が出かねません。停電を伴わない被害でも、システムのダウンや機器の故障によって長期間の業務停止につながる点が、一般的な建物以上に内部雷保護を重視すべき理由です。図書館の設備計画全体の考え方については、別記事でゾーニングの視点からも整理していますので、あわせて参照してください。

情報設備が集中する建物では、電源系統だけでなくLAN配線などの通信系統にもサージが侵入し得るため、電源用SPDと通信用SPDの両方を、機器の重要度に応じて配置することが実務上のポイントになります。


接地(アース)との関係

雷保護設備を考えるうえで、接地(アース)は外部雷保護・内部雷保護の両方に共通する土台です。外部雷保護では、引下げ導線を通じて集まった雷電流を大地に逃がす出口として接地システムが機能します。内部雷保護でも、等電位ボンディングやSPDが効果を発揮するには、建物内の各接地が適切に接続され、かつ大地に対して十分に低い抵抗値を保っていることが前提になります。

避雷設備用の接地と、電力設備・通信設備など他の目的の接地を別々に設けると、かえって接地間に電位差が生じ、内部雷保護の考え方と矛盾する結果を招くことがあります。このため、実務では建物全体の接地を一体的に計画し、必要に応じて共用化・相互接続する考え方が基本とされています。接地の抵抗値や施工方法の具体的な基準は、対象設備や規模によって異なるため、実際の設計・施工にあたっては電気設備の専門家への確認が欠かせません。


実務チェックリスト

  • 建物の高さ・形状から避雷設備の設置要否を確認したか
  • 受雷部(突針・棟上導体・メッシュ)の形式を建物形状に応じて選定したか
  • 保護範囲の検討方法(保護角法・回転球体法・メッシュ法)を建物の規模・高さに合わせて選んだか
  • 引下げ導線の経路を複数確保し、電流の集中を避けているか
  • 接地システムが外部雷保護・内部雷保護の双方の要求を満たす形で計画されているか
  • 等電位ボンディングの対象範囲(配管・鉄骨・ケーブルラックなど)を洗い出したか
  • SPDを引込部・分電盤・重要機器の各段階で協調させて配置しているか
  • 電源系統だけでなく通信・LAN系統のサージ対策も検討したか
  • 情報設備が集中する諸室(サーバー室、システム室、図書館の検索端末周りなど)を優先的に確認したか
  • 接地抵抗値や施工内容について、専門家・所轄官庁への確認を経ているか

よくある質問

避雷針があれば建物内の機器は守れますか

避雷針(受雷部)を中心とする外部雷保護システムは、あくまで直撃雷を安全に大地へ逃がすための仕組みです。近隣への落雷による誘導雷(雷サージ)は防げないため、建物内の電子機器を守るには等電位ボンディングやSPDによる内部雷保護をあわせて計画する必要があります。

高さ20m以下の建物には内部雷保護は不要ですか

建築基準法上の避雷設備の設置義務は主に建物の高さを基準に判断されますが、内部雷保護の必要性は高さだけで決まるものではありません。低い建物であっても、周辺への落雷による誘導雷は電源線や通信線を通じて侵入し得るため、収容する電子機器の重要度に応じてSPDの設置を検討する価値があります。

保護角法・回転球体法・メッシュ法はどう使い分けますか

建物の高さや形状、重要度に応じて選択するのが基本の考え方です。単純な形状で高さが低い建物では保護角法が扱いやすく、高層や複雑な形状の建物では回転球体法、屋上面積が広い平屋根の建物ではメッシュ法が向いている傾向があります。実際の適用にあたっては、複数の方法を組み合わせて検討することもあります。

SPDは一度設置すれば永続的に機能しますか

SPDはサージを吸収するたびに内部の部品が劣化する消耗品的な側面があります。動作表示や劣化表示の機能を備えた製品も多く、定期的な点検・保守計画に組み込み、劣化が確認された場合は交換することが実務上のポイントです。


まとめ

  • 雷の被害には直撃雷と誘導雷(雷サージ)の2種類があり、対策の考え方が異なる
  • 建築基準法では高さのある建築物に避雷設備の設置が求められており、形式的な設置ではなく建物形状に応じた有効性の検討が重要
  • 外部雷保護システムは受雷部・引下げ導線・接地システムで構成され、直撃雷を安全に大地へ逃がす役割を持つ
  • 保護範囲の検討には保護角法・回転球体法・メッシュ法があり、建物の高さ・形状に応じて使い分ける
  • 内部雷保護(等電位ボンディング・SPD)は誘導雷から建物内の電子機器を守るための対策で、情報設備が集中する建物ほど重要性が高い
  • 接地は外部雷保護・内部雷保護の共通の土台であり、建物全体で一体的に計画することが実務上のポイント

雷保護設備は、避雷針という目に見える部分だけで語られがちですが、実際には受雷部・引下げ導線・接地という外部雷保護と、等電位ボンディング・SPDという内部雷保護を組み合わせて初めて機能する設備です。建物の用途や収容する設備の重要度を踏まえ、両者をセットで検討する視点を持つことが、実務上の基本になります。


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