給水設備の計画|給水方式の種類・節水・水質保全の考え方
結論から言うと、給水設備の計画では「必要な水量・水圧をどう確保するか」と「その水をどう清潔なまま届けるか」の2つを同時に満たす必要があります。水道直結・受水槽・加圧ポンプなど複数の給水方式があり、建物の規模や用途、停電時の対応、衛生管理のしやすさによって適した方式が変わってきます。
この記事では、給水方式の種類と比較、クロスコネクション・逆流防止の考え方、受水槽の衛生管理、節水の実務、そして図書館のような大規模建築での使用水量の見積り方まで、基本設計段階で押さえておきたいポイントを整理します。建築設備の全体像については建築設備とは何かも参考にしてください。
給水設備に求められる役割と、水量・水圧の考え方
給水設備の役割は、水道本管や井戸などの水源から、建物内の各水栓・器具まで、必要な量の水を、必要な圧力で、衛生的な状態を保ったまま届けることです。この「量」「圧力」「衛生」の3点は、どれか1つを優先すると別の1つが犠牲になりやすい関係にあり、計画段階でバランスを取ることが基本の考え方になります。
水量の面では、建物の用途・在館人数・使用器具の種類から、1日あたりの使用水量や、ピーク時に同時にどれだけの器具が使われるかを見積もり、それに見合った配管サイズやポンプ能力、貯水量を計画します。水圧の面では、各階・各器具で必要な圧力を確保しつつ、高すぎる圧力は水栓や配管の傷みにつながるため、減圧弁などで適正な範囲に調整することも実務上のポイントです。
衛生の面では、水道水を汚染から守ることが最優先事項になります。給水設備の設計・維持管理においては、水量・水圧の確保だけでなく、この衛生面の考え方が常に土台としてセットになっている、という理解が大切です。
給水方式の種類(比較)
建物の給水方式は、大きく分けて「水道本管の圧力をそのまま使う方式」と「一度受水槽に水を受けてからポンプなどで送る方式」に分かれます。それぞれ適した建物の規模や、停電時の挙動、衛生面の特徴が異なります。
| 給水方式 | 仕組みの概要 | 適した規模・建物 | 停電時の給水 | 衛生面の特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 水道直結直圧方式 | 水道本管の圧力をそのまま利用 | 一般住宅・小規模な低層建物 | 断水しない限り給水可能 | 水道水がそのまま届くため水質管理の負担が小さい |
| 水道直結増圧方式 | 本管の圧力を増圧ポンプで補って直結給水 | 中規模の共同住宅・事務所ビルなど | 停電時は増圧ポンプが停止し給水不可 | 受水槽を経由しないため衛生面で有利とされる |
| 受水槽+高置水槽方式 | 受水槽にいったん貯水し、揚水ポンプで屋上等の高置水槽に送り重力で給水 | 高層・大規模建物、断水時の備蓄が重要な建物 | 高置水槽の残量分は停電中も給水可能 | 受水槽・高置水槽の定期清掃・点検が必須 |
| 受水槽+加圧給水ポンプ方式 | 受水槽から加圧ポンプ(圧力タンク方式や自動運転ポンプ)で直接給水 | 高置水槽を設けにくい建物、中〜大規模建物 | 停電時はポンプが停止し給水不可(非常用電源があれば継続可) | 高置水槽が不要な分、貯水槽の管理箇所を減らせる |
このように、水道直結系の方式は衛生管理の手間が少なく水質面で有利とされる一方、本管の圧力や増圧設備の能力に給水量が左右されるため、大規模建物や断水時の備蓄が求められる建物では受水槽方式が選ばれる傾向があります。どの方式が適しているかは、建物規模だけでなく、水道事業者の供給条件や、断水・停電時にどこまで給水を維持したいかという建築主の方針によっても変わるため、計画の早い段階で条件を整理しておくことが大切です。
クロスコネクション防止と逆流防止の考え方
給水設備の衛生管理でもっとも重視されるのが、飲料水とそれ以外の水(井戸水・工業用水・排水など)の配管が誤って接続されてしまう「クロスコネクション」を防ぐことです。クロスコネクションが起きると、水圧の変化などをきっかけに、汚染された水が飲料水系統に逆流し、水質事故につながるおそれがあります。配管の系統は必ず独立させ、誤接続が起きない設計・表示・管理を徹底することが基本の考え方です。
逆流を防ぐ具体的な仕組みとしては、「吐水口空間」と「バキュームブレーカ」の2つがよく使われます。
| 逆流防止の考え方 | 仕組みの概要 | 主な適用場面 |
|---|---|---|
| 吐水口空間 | 給水管の吐水口と、水があふれる高さ(あふれ縁)との間に、一定の空気の隙間を確保する方法 | 洗面台・浴槽・水槽への給水など、吐水口を水面から離せる場所 |
| バキュームブレーカ | 吐水口空間を確保しにくい場合に、逆サイホン作用が起きたときだけ空気を取り込み逆流を断つ器具 | ホース接続水栓、洗浄弁式の便器など吐水口を水中に沈めやすい場所 |
吐水口空間は、給水管の出口と水面の間に物理的な空気の層を作ることで、万が一その先で圧力が下がっても水が給水管側に吸い戻されないようにする、もっとも確実な逆流防止の考え方です。ただし、ホースをつないだまま吐水口を水中に沈めてしまうような使い方では空間を確保できないため、そうした場面ではバキュームブレーカのような機械式の逆流防止器具を併用します。設計段階では吐水口空間を優先し、構造上どうしても難しい箇所にバキュームブレーカを補完的に用いる、という順序で考えるのが実務上のポイントです。
受水槽の衛生管理
受水槽方式を採用する場合、受水槽そのものが水質を左右する重要な設備になるため、日常的な衛生管理が欠かせません。押さえておきたい代表的なポイントは次のとおりです。
- オーバーフロー管: 水位が上がりすぎた際に排水するための管で、虫や害獣の侵入を防ぐ防虫網などを備え、末端は排水系統と直接つながず、間接排水として縁を切る形にするのが基本の考え方です。
- 通気管: 受水槽内の空気を外部と入れ替えるための管で、こちらにも防虫網を設け、槽内が密閉されて負圧・正圧になりすぎないようにします。
- 点検スペース(6面点検): 受水槽は上下左右前後の6つの面すべてを目視・清掃できるよう、周囲・上部・下部に一定の点検スペースを確保する「6面点検」の考え方が広く定着しています。壁や床にぴったり付けて設置すると、内部の点検・清掃ができず、汚れやひび割れの発見が遅れる原因になります。
- 定期清掃・水質検査: 受水槽は法令に基づく定期清掃・水質検査の対象となる場合があり、管理者はその頻度や記録の残し方をあらかじめ計画しておく必要があります。
- マンホールの施錠・防水パッキン: 点検口から異物や雨水が入り込まないよう、施錠管理とパッキンの状態確認も日常点検の項目に含まれます。
これらは新築時の設計だけでなく、その後の維持管理(清掃業者の出入り、点検記録の保存)まで見据えて計画しておく必要があり、設計者と管理者の間で「誰が」「どのくらいの頻度で」点検するのかをあらかじめすり合わせておくことが実務上重要です。
節水の考え方
給水設備の計画では、水量・水圧・衛生面に加えて、近年は節水への配慮も欠かせない要素になっています。代表的な手法を整理すると次のとおりです。
- 節水器具の採用: 少ない水量でも快適に使える節水型の水栓・シャワーヘッド・大便器(節水型ロータンクなど)を採用することで、使用水量そのものを抑える方法です。
- 自動水栓・自閉水栓: センサーで人の動きを検知して自動的に吐水・止水する自動水栓や、レバーを離すと自動的に止まる自閉水栓は、手洗い後の閉め忘れによる水の流しっぱなしを防ぐ効果があります。不特定多数が使う公共施設のトイレなどで広く採用されています。
- 雨水利用・中水利用: 屋根に降った雨水や、一度使用した水を処理した中水(ちゅうすい、上水と下水の中間的な水)を、トイレの洗浄水や散水など、飲用以外の用途に再利用する考え方です。導入には貯水槽や処理設備が別途必要になるため、建物規模やコストとのバランスを見て検討します。
節水は水道料金の削減だけでなく、渇水時の水資源確保や環境負荷の低減にもつながるため、建物の環境性能を評価する仕組みの中でも重視される項目のひとつです。ただし、節水器具や自動水栓は初期コストがかかるため、建物の使われ方(利用者数・使用頻度)を踏まえて費用対効果を検討することが実務上のポイントになります。
図書館など大規模建築での使用水量見積りの考え方
図書館のような大規模建築の給水設備を計画する際は、住宅とは異なる視点で使用水量を見積もる必要があります。基本的な考え方は次の3段階です。
- 建物の用途・利用人数から使用水人員を想定する: 図書館であれば、利用者数・職員数・開館時間などをもとに、1日あたりどれくらいの人が施設内の水回りを使うかを想定します。
- 器具の種類・数から同時使用率を考える: トイレの便器数、給湯室の給水栓、清掃用の水栓など、設置する器具の種類・数を整理し、それらが同時にどの程度使われるか(同時使用率)を見込みます。すべての器具が常に同時に使われるわけではないため、この同時使用率の考え方がピーク時の給水量・配管サイズを左右します。
- ピーク時間帯の集中を考慮する: 図書館では、開館直後や昼休み前後などにトイレや給湯室の利用が集中しやすい時間帯があります。1日の平均使用水量だけでなく、こうした利用の集中を踏まえてポンプ能力や受水槽容量を計画することが実務上のポイントです。
図書館のように滞在時間が長く、利用者層の年齢幅も広い建物では、一般的な事務所ビルの原単位をそのまま当てはめると実態と合わないこともあります。図書館全体のゾーニングや設備計画については、図書館の設備計画とゾーニングでも取り上げているので、あわせて確認してみてください。使用水量の具体的な原単位や計算方法は、建物用途ごとの基準や実績データを参照しながら、設計者・所轄官署と確認して決定するのが確実です。
実務チェックリスト
- 建物の用途・規模・停電時の対応方針から、給水方式(直結直圧・直結増圧・受水槽方式)を比較検討したか
- 水道事業者への供給条件(増圧ポンプの可否、口径など)を事前に確認したか
- 給水系統と、井戸水・雑用水・排水系統が誤って接続されないよう、配管・表示を分離管理する体制を確認したか
- 吐水口空間を確保できない箇所には、バキュームブレーカなどの逆流防止器具を計画したか
- 受水槽の6面点検スペース、オーバーフロー管・通気管の防虫網の仕様を確認したか
- 受水槽の定期清掃・水質検査の頻度と、実施主体(管理者・清掃業者)を整理したか
- 節水器具・自動水栓の採用可否を、建物の利用形態とコストの両面から検討したか
- ピーク時間帯の利用集中を踏まえて、ポンプ能力・受水槽容量を見積もったか
よくある質問
水道直結増圧方式と受水槽方式、どちらが優れていますか
一概にどちらが優れているとは言えず、建物の規模、水道本管の供給能力、停電・断水時にどこまで給水を維持したいかという方針によって適した方式が変わります。中小規模の建物では水質管理のしやすさから直結増圧方式が選ばれることが多く、大規模建物や備蓄が重要な建物では受水槽方式が選ばれる傾向があります。
受水槽の清掃はどのくらいの頻度で行う必要がありますか
受水槽の清掃頻度は、法令や条例、建物の規模・用途によって定められている場合があります。具体的な頻度は所轄の保健所や水道事業者、設計者に確認し、建物ごとの管理計画に反映することをおすすめします。
バキュームブレーカと吐水口空間はどちらを優先すべきですか
設計段階では、まず吐水口空間による物理的な縁切りを優先し、構造上どうしても吐水口を水中に沈めざるを得ない箇所(ホース接続水栓など)に限ってバキュームブレーカを補完的に用いるという考え方が基本です。
雨水利用や中水利用は、どんな建物でも導入すべきですか
雨水・中水利用は環境負荷低減に有効ですが、貯水槽や処理設備の追加コスト、メンテナンスの手間が発生します。建物の規模・用途、水使用量、事業者の方針を踏まえて、費用対効果とあわせて検討するのが実務上の進め方です。
まとめ
- 給水設備は「水量」「水圧」「衛生」の3点をバランスよく満たすことが基本の考え方
- 給水方式には水道直結直圧・直結増圧・受水槽+高置水槽・受水槽+加圧ポンプなどがあり、建物規模や停電時の方針で使い分ける
- クロスコネクション防止のため、吐水口空間やバキュームブレーカによる逆流防止を計画段階から組み込む
- 受水槽は6面点検スペース、オーバーフロー管・通気管の防虫網など、日常の衛生管理を前提とした設計が必要
- 節水器具・自動水栓・雨水/中水利用は、建物の利用形態とコストを踏まえて導入を検討する
- 大規模建築では、利用人員・同時使用率・ピーク時間帯の集中を踏まえて使用水量を見積もる
給水設備は、日常生活や施設運営を支える基本インフラであると同時に、一度水質事故が起きると影響が大きい設備でもあります。方式選定から日常の衛生管理まで一貫した視点で計画し、具体的な基準・数値については所轄官署や設計者に確認しながら進めることが大切です。
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