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基本設計管工事(空調・給排水)

特殊設備の計画|厨房設備・浴場設備・プールろ過設備の考え方

結論から言うと、厨房設備・浴場(温浴)設備・プールろ過設備は、建物内の一般的な給排水衛生設備や空調換気設備の延長線上では計画しきれない「特殊設備」であり、それぞれ専用の負荷条件・衛生管理基準・専門メーカーとの調整を踏まえて個別に検討する必要がある設備です。給水・給湯・排水・換気のどれもが関わってきますが、一般室と同じ考え方をそのまま当てはめると、能力不足や衛生上のトラブルにつながりやすい領域でもあります。

この記事では、厨房設備・浴場設備・プールろ過設備という3つの代表的な特殊設備を取り上げ、それぞれで何を検討すべきかを整理したうえで、共通して意識しておきたい計画上の勘所を解説します。給水設備の基本的な考え方は給水設備の計画、給湯設備の基本は給湯設備の計画で扱っていますので、あわせてご覧いただくと理解が深まります。


「特殊設備」とは何か

建築設備の実務では、一般的な事務室・住戸・教室などに共通して設置される給水・給湯・排水・空調・換気・電気設備を「一般設備」と呼ぶことが多く、それに対して厨房・浴場・プール・病院の医療ガス設備・工場の生産設備など、用途や使われ方が特殊で、専用の基準や専門メーカーの知見が必要になる設備群を「特殊設備」と呼ぶことがあります。呼び方自体は現場や資料によって幅がありますが、実務上重要なのは名称そのものよりも、「一般の設計フローの延長では計画しきれない」という位置づけを最初に認識しておくことです。

特殊設備には、次のような共通した特徴が見られます。

  • 給湯・給水・排水・換気などの負荷が特定の室に極端に集中する
  • 使い方を誤ると衛生上・安全上のリスクが大きい(食中毒、レジオネラ症、感染症など)
  • 一般の設計者だけでなく、専門メーカーや専門工事業者の関与が前提になっている
  • 保健所など所轄官署への確認や届出が必要になる場合が多い

この記事で扱う厨房設備・浴場設備・プールろ過設備は、いずれもこの特徴に当てはまる代表例です。以下、それぞれの計画上のポイントを見ていきます。


厨房設備の計画

飲食店・社員食堂・学校給食室・病院厨房などに設置される厨房設備は、狭い室に多様な負荷が集中する典型的な特殊設備です。

厨房設備を計画するうえで押さえておきたい要素は、次のとおりです。

検討項目 内容 実務上のポイント
給湯 洗浄・調理に大量の湯を使用 一般居室に比べて桁違いの給湯量となるため、専用の給湯設備を計画するのが基本。ピーク使用時間帯(仕込み・洗浄時)を踏まえた能力設定が必要
給排水 洗浄水・食材からの排水量が多い 床面全体からの排水を想定した床排水・グレーチング等の計画と、油分を含む排水への対応が必要
油分対策 調理油を含む排水の処理 グリース阻集器(グリストラップ、排水中の油分・生ごみを分離してから公共下水へ流すための装置)の設置がほぼ必須。定期清掃を前提とした位置・維持管理計画が重要
換気 熱・水蒸気・油煙・臭気の排出 空調というより換気設備としての性格が強く、大風量の給気・排気設備が主体になる
給排気バランス 厨房内の圧力管理 排気が強すぎると厨房が過度な負圧になり扉が重くなる、給気が強すぎると油煙が客席側に流出するなど、給気・排気の風量バランスの調整が実務上の重要ポイント
防火 火気設備と煙・熱気流への対応 排気ダクトが防火区画を貫通する箇所には防火ダンパ(火災時にダクト内を自動で閉鎖し、延焼を防ぐための装置)の設置が必要になる場合が多い

厨房は火気を扱う室でもあるため、換気設備の計画にあたっては煙感知・熱感知との連携や、排気ダクト内に付着した油分による延焼リスクも考慮する必要があります。用途別の空調計画における厨房の位置づけは用途別の空調設備計画でも整理していますので、レストラン客席との関係を含めて確認しておくと計画の全体像がつかみやすくなります。


浴場(温浴)設備の計画

温浴施設・スーパー銭湯・ホテルの大浴場・福祉施設の浴室などに設置される浴場設備は、給湯量の大きさに加えて、循環ろ過と衛生管理の両立が求められる設備です。

浴場設備の計画で検討すべき主な要素を整理すると、次のようになります。

検討項目 内容 実務上のポイント
給湯 浴槽への湯の供給 浴槽容量に対して十分な給湯能力を確保するとともに、追い焚き(循環しながら再加熱する仕組み)を組み合わせるかどうかを計画段階で決める
循環ろ過 浴槽水を循環させ、ろ過機を通して不純物を除去 利用者数に対して必要な循環流量・ろ過能力を確保し、循環配管の系統を計画する
消毒・水質管理 レジオネラ属菌などの繁殖防止 浴槽水中の残留塩素濃度を適切な範囲に保つ管理と、日常的な水質検査の実施体制が前提となる
温度管理 菌の繁殖しやすい温度帯を避ける ろ過機や配管内に湯が滞留しやすい温度帯があると菌が繁殖しやすくなるため、循環系統の設計・清掃のしやすさが重要
清掃・維持管理 浴槽・配管・ろ過機の定期清掃 循環系統の末端(配管の行き止まり部分など)は湯が滞留しやすくバイオフィルム(配管内壁に付着する菌の膜)が発生しやすいため、清掃しやすい配管ルートを計画段階から意識する
排水 浴槽水・洗い場排水の処理 排水量が多く、温度の高い排水が下水設備に与える影響も踏まえた計画が必要

浴場設備で特に注意したいのが、レジオネラ症対策です。レジオネラ属菌は循環式浴槽の湯の中で増殖しやすいことが知られており、消毒(塩素等)の管理・湯温の管理・配管内の滞留水を作らない清掃計画の3点を軸に、日常的な維持管理体制まで含めて設計段階から検討しておくことが実務上のポイントです。具体的な塩素濃度の管理値や検査頻度は施設の種類・所轄によって定められているため、実際の設計・運用にあたっては必ず所轄官署・専門メーカーに確認してください。


プールろ過設備の計画

学校・スポーツ施設・ホテルなどに設置されるプールも、循環ろ過と水質管理の両立が求められる特殊設備の代表例です。浴場設備と共通する部分も多いですが、プール特有の検討項目もあります。

検討項目 内容 実務上のポイント
循環ろ過 プール水を循環させ、ろ過機(砂ろ過機・カートリッジろ過機など)を通して不純物を除去 プール容積・利用人数に応じた循環流量とろ過能力を設定し、循環にかかる時間(全水量が一巡する時間)の目安を確認する
消毒 塩素等によるプール水の消毒 遊離残留塩素濃度を適切な範囲に保つ自動注入・管理設備を組み合わせるのが一般的
オーバーフロー プール縁からあふれた水の回収 プールサイドの縁溝(オーバーフロー溝)であふれた水を回収し、ろ過設備に戻す系統を計画する。表面の汚れ・体脂・日焼け止め成分などは水面付近に集まりやすいため、オーバーフロー回収は水質維持の観点でも重要
補給水 蒸発・ろ過の逆洗などで失われる水の補充 補給水量を見込んだ給水計画と、逆洗排水(ろ過材を洗浄する際に出る排水)の処理計画が必要
排水 逆洗排水・清掃排水の処理 一時的に大量の排水が出るため、排水設備の受け入れ能力を確認しておく
水質管理 pH・残留塩素濃度などの管理 利用者の安全に直結するため、日常的な水質検査体制を前提に設備を計画する

プールろ過設備は、循環ろ過の能力設定だけでなく、オーバーフローの回収・補給水・逆洗排水という水の出入りを一連の系統として捉えることが計画のポイントです。給排水設備全体の基本的な考え方は給水設備の計画とも共通する部分が多いため、あわせて確認しておくと理解が深まります。


3つの特殊設備に共通する計画上の勘所

厨房設備・浴場設備・プールろ過設備は扱う内容こそ異なりますが、計画の進め方には共通する勘所があります。

  • 大きな負荷が局所に集中する: いずれも建物全体の中でごく一部の室・エリアに給湯・給排水・換気などの負荷が集中するため、一般室と同じ単位面積あたりの想定では能力不足になりやすい
  • 衛生管理が設計と一体になっている: グリース阻集器の清掃、浴場のレジオネラ対策、プールの水質管理は、いずれも「設備を設置して終わり」ではなく、日常的な維持管理体制とセットで初めて機能する
  • 専門メーカーとの取り合いが前提: 厨房機器メーカー、浴場・温浴設備メーカー、プールろ過設備メーカーなど、専門性の高いメーカーの提案・仕様に基づいて計画が進むことが多く、建築設備側は取り合い(給排水・給湯・電気・換気などの接続点)を正確に整理する役割が大きい
  • 所轄官署への確認が必要になりやすい: 保健所など所轄官署への届出・確認が必要になる場合が多く、一般設備よりも手続き面の検討が前倒しで必要になる

これらの共通点を踏まえると、特殊設備の計画では「専門メーカーに任せきりにする」のでも「一般設備と同じ感覚で計画する」のでもなく、建築設備側が専門メーカーと建物側(建築・電気・一般の給排水衛生設備)の間に立って取り合いを整理する役割を担うことが実務上重要になります。


実務チェックリスト

  • 厨房・浴場・プールなど特殊設備を設置する室を、計画の早い段階でリストアップしたか
  • それぞれの室について、専門メーカーの選定・関与のタイミングを整理したか
  • 厨房のグリース阻集器の設置位置と、清掃のしやすさ(搬出経路を含む)を確認したか
  • 厨房の給気・排気の風量バランスと、隣接室への臭気・熱の影響を確認したか
  • 浴場・プールの循環ろ過能力と、利用人数・容積に見合った設定になっているか
  • 浴場・プールの消毒・水質管理体制(日常検査・清掃計画)を維持管理者と共有したか
  • プールのオーバーフロー回収・補給水・逆洗排水の系統を一連の水の流れとして整理したか
  • 所轄官署への届出・確認が必要な項目を洗い出し、スケジュールに組み込んだか

よくある質問

特殊設備は誰が設計するのですか

建物全体の設計者(建築設備の設計者を含む)が基本計画・取り合いの整理を担い、厨房機器・浴場設備・プールろ過設備といった専門性の高い部分は、専門メーカーや専門工事業者の提案・仕様に基づいて計画を進めるのが一般的です。建築設備側は、給排水・給湯・電気・換気などの接続点を整理する役割を担います。

グリース阻集器はどのような施設でも必要ですか

厨房排水に油分が含まれる施設では設置するのが基本ですが、必要な形式・容量・設置基準は施設の規模や所轄によって異なります。実際の設計にあたっては、所轄官署や専門メーカーに確認しながら進めることをおすすめします。

レジオネラ対策はどこまで設備で対応できますか

消毒濃度を保ちやすい循環系統の設計や、湯が滞留しにくい配管ルートの計画など、設備側でできる対策は多くあります。ただし、日常的な水質検査・清掃といった維持管理が伴って初めて効果を発揮するため、設備計画の段階から維持管理者と役割分担を共有しておくことが実務上のポイントです。

プールの循環ろ過能力はどう決めればよいですか

プールの容積や利用人数、求められる水質基準などをもとに、専門メーカーとともに必要な循環流量・ろ過能力を検討するのが基本の進め方です。全水量が一巡するまでの目安時間なども踏まえて計画しますが、具体的な数値基準は施設の種類によって異なるため、所轄官署・専門メーカーへの確認が欠かせません。


まとめ

  • 厨房・浴場・プールろ過設備は、一般の給排水衛生設備・空調換気設備とは別枠で個別検討が必要な「特殊設備」である
  • 厨房設備は大量の給湯・給排水、グリース阻集器による油分対策、大量換気と給排気バランス、防火ダンパなどの検討が中心になる
  • 浴場設備は給湯・循環ろ過・追い焚きに加え、レジオネラ対策を軸とした衛生管理(温度・消毒・清掃)が重要になる
  • プールろ過設備は循環ろ過・消毒・水質管理に加え、オーバーフロー・補給水・逆洗排水という水の出入りを一連の系統として捉える必要がある
  • 3つに共通するのは、負荷の局所集中・衛生管理の重要性・専門メーカーとの取り合いという性格であり、建築設備側には両者をつなぐ整理役としての役割が求められる

特殊設備は、専門メーカーの知見に頼る部分が大きい一方で、建物全体との取り合いを整理する役割は建築設備の設計者に求められます。本記事で紹介した内容は一般的な整理であり、実際の設計・維持管理にあたっては、必ず専門メーカー・所轄官署・設計者に確認しながら進めてください。


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