建築設備.tech
基本設計管工事(空調・給排水)

厨房換気・排気フードの基礎|必要換気量・グリスフィルタ・給気バランス

厨房の換気は、一般室の換気に比べて考えるべき要素が多い分野です。ガスコンロやフライヤーが生む熱と水蒸気、調理油に由来する油煙、そして燃焼そのものに必要な酸素の供給という、性質の異なる3つの排出・供給対象を、排気フードと換気扇、そして給気設備という限られた装置で同時に処理する必要があるためです。

この記事では、厨房換気が担う役割の整理から始め、建築基準法上の位置づけ、排気フードの型式(I型・II型)とグリスフィルタ、必要換気量の算定方法、給排気バランス、ダクト・ファンまわりの留意点、グリス除去装置と防火、臭気対策までを一続きで解説します。厨房設備全体の計画上の位置づけは特殊設備の計画|厨房設備・浴場設備・プールろ過設備の考え方で、換気方式全般の基礎は換気の基礎|第1種・第2種・第3種換気の違いと、24時間換気が義務になった理由で扱っていますので、あわせてご覧いただくと理解がつながりやすくなります。


早見まとめ

項目 内容・式 代表値・目安
必要換気量の基本式(施行令20条の3系) V=N×K×Q(V:必要換気量、N:換気設備の形式に応じた係数、K:理論廃ガス量、Q:燃料消費量または発熱量) 排気筒等(フードなし)V=40KQ/I型フードV=30KQ/II型フードV=20KQ
理論廃ガス量K 燃料の単位燃焼量あたりの理論上の廃ガス発生量 都市ガス・LPガスは概ね0.93m³/(kW・h)、灯油は概ね12.1m³/kg(要各設計資料での確認)
フード面風速法(実務上の目安) フード開口面積×面風速で必要風量を確認 面風速の目安は概ね0.3〜0.4m/s程度とされることが多い(法定値ではなく実務上の目安)
I型フード レンジ等と同じ幅・奥行きの単純な形状 熱源からフード下端までの高さの目安は1m以下
II型フード 不燃材料製で水平方向に張り出しを持つ形状 水平投影は熱源からフード下端までの高さの概ね1/2以上張り出すことが目安
グリスフィルタの油脂捕集性能 消防庁の基準(平成8年消防予第162号)に基づく 油脂・塵埃の75%以上除去が基準。捕集板式(グリスエクストラクター)は90%以上除去
防火ダンパーの温度ヒューズ 火災時に自動閉鎖するための作動温度 一般換気用は概ね72℃、厨房等の火気使用室は概ね120℃

※上表は一般的な考え方の目安であり、実際の数値・適用は建物用途・所轄消防署・設計図書の基準に従って個別に確認してください。


厨房換気が担う3つの役割

厨房の換気設備は、一般室の換気とは異なり、性質の異なる3つの排出・供給対象を同時に扱う必要があります。

  • 燃焼用の空気の供給: ガスコンロなど開放式の燃焼機器は、燃焼のために室内の空気(酸素)を使用します。給気が不足すると不完全燃焼を招き、一酸化炭素中毒の危険につながります。
  • 熱と水蒸気の排出: 加熱調理や洗浄によって発生する熱・水蒸気を排出し、厨房内の温熱環境を保ちます。
  • 油煙の排出: 揚げ物・炒め物などの調理で発生する油分を含んだ煙を、周囲や他室に拡散させることなく屋外へ排出します。

この3つを実現する中心的な装置が、コンロ等の上部に設置する排気フードです。フードで捕集した熱・水蒸気・油煙を、グリスフィルタで油分を除去したうえでダクトを通して屋外に排出し、それに見合う量の空気を給気設備で補うという一連の流れが、厨房換気の基本構造になります。


法的な位置づけ:建築基準法28条3項と施行令20条の3

厨房のように火を使用する室の換気は、建築基準法上も特別な位置づけがされています。

建築基準法第28条第3項では、かまど・コンロなど火を使用する設備・器具を設けた室には、政令で定める技術的基準に従って換気設備を設けなければならないと定められています。ただし、この規定にはいくつかの適用除外があり、たとえば住宅の調理室で発熱量が一定以下かつ有効な開口部を確保している場合や、発熱量がごく小さい設備のみを設けた室(調理室を除く)などは、対象から外れる扱いになります。業務用厨房は、この適用除外の条件に当てはまらないケースが大半のため、原則として法令上の換気設備が必要になると理解しておくのが実務上の前提です。

換気設備の技術的基準は、建築基準法施行令第20条の3(火を使用する室に設けなければならない換気設備等)で定められています。ここで基準となる考え方が「理論廃ガス量」です。これは、燃料が完全に燃焼したときに理論上発生する廃ガスの量を燃料の種類ごとに定めた数値で、この理論廃ガス量に燃料消費量(または発熱量)を掛け合わせ、さらに排気フードの有無・型式に応じた係数を掛けることで、必要換気量を算定するという考え方です。

具体的な係数・数値の詳細は次の「必要換気量の算定方法」で扱いますが、ここで押さえておきたいのは、厨房の必要換気量は「なんとなく大風量にする」ものではなく、燃料消費量と排気フードの形式から一定のルールに沿って算定されるという点です。実際の算定・確認申請への適用にあたっては、必ず設計図書の基準・建築確認の担当窓口に照らして進める必要があります。


排気フードの型式:I型・II型とグリスフィルタ

業務用厨房で使われる排気フードは、その形状によっていくつかの型式に整理されています。実務でよく使われる代表的な区分がI型フードとII型フードです。

型式 形状の考え方 必要換気量の目安式
排気フードなし(排気筒・自然排気等) フードを設けず排気筒等で排出する構造 V=40KQ
I型フード レンジ等の加熱機器とほぼ同じ幅・奥行きを持つ単純な形状のフード V=30KQ
II型フード 不燃材料でつくられ、熱源からフード下端までの高さに対して水平方向に一定以上張り出しを持つ形状のフード V=20KQ

I型フードは、加熱機器の直上をそのまま覆う程度のシンプルな形状で、フードの下端までの高さは熱源から概ね1m以下に収めるのが実務上の目安とされています。II型フードは、I型よりも捕集効率を高めるために、フードの水平方向の張り出しを熱源からフード下端までの高さの概ね半分以上確保した形状で、不燃材料でつくることが前提になります。同じ燃料消費量でも、II型フードの方が必要換気量の係数が小さく済むのは、フードの形状によって熱・油煙の捕集効率が高いためです。

排気フードには、油分を除去するためのグリスフィルタが組み込まれるのが基本です。グリスフィルタは、排気中に含まれる油脂・塵埃をフード内部で捕集し、排気ダクトの内部に油分が蓄積するのを防ぐ役割を持っています。消防庁が定める基準(平成8年8月15日消防予第162号「グリス除去装置の構造等の基準について」)では、グリスフィルタを用いるグリス除去装置は油脂・塵埃を75%以上除去する性能を持つことが求められており、捕集板方式(グリスエクストラクター)を用いる場合はさらに高い90%以上の除去性能が求められています。この性能差は、後述する自動消火装置・防火ダンパーとあわせて、厨房火災の主要な原因であるダクト内油脂の蓄積対策として位置づけられています。


必要換気量の算定方法:NKQ法とフード面風速法

厨房の必要換気量を求める方法には、建築基準法施行令20条の3に基づく算定と、実務でよく用いられるフード面風速による確認の、大きく2つの考え方があります。

一つは、前述したV=N×K×Q(NKQ法)による算定です。Kは燃料の理論廃ガス量で、都市ガス・LPガスは概ね0.93m³/(kW・h)、灯油は概ね12.1m³/kgという値が用いられます(数値は建設省告示等で定められており、実際の設計では最新の告示・設計資料の値を必ず確認してください)。Qは燃料消費量または発熱量、Nは排気フードの有無・型式に応じた係数(40・30・20など)です。この方法は法令上の基準そのものであり、確認申請上の必要換気量として位置づけられます。

もう一つが、フード面風速による確認です。これは、排気フードの開口面積に一定の風速を掛け合わせて必要風量を求める考え方で、実務上の目安として面風速を概ね0.3〜0.4m/s程度に設定することが多いとされています。この方法は法令そのものではなく、実際に油煙・熱を確実に捕集できるだけの風量を確保できているかを確認する、実務上の検証手段という位置づけです。

実務では、NKQ法で算定した法令上の必要換気量と、フード面風速から求めた風量を比較し、大きい方の値を採用して排気ファンの能力を決めるという進め方がよく行われます。法令上の必要換気量を満たしていても、フードの開口面積に対して実際の風量が小さすぎれば、油煙や熱がフードからあふれ出して室内に拡散してしまうためです。どちらの数値も画一的な正解があるわけではなく、厨房機器の配置・フード形状・要求される捕集性能によって最終的な設計値は変わるため、具体的な数値の採否は設計者・厨房機器メーカーとの協議に委ねる部分が大きいという理解が実務では重要です。


給排気バランス:負圧管理と給気不足の障害

排気フードで大量の空気を排出する厨房では、それに見合うだけの給気を確保できているかどうかが、換気設備全体の成否を左右します。

排気量に対して給気量が不足すると、厨房内は周囲より気圧の低い「負圧」の状態になります。負圧そのものは、厨房の臭気や煙を隣接室・客席側に流出させにくくする効果がある一方で、行き過ぎると次のような障害を引き起こします。

  • 燃焼不良: 給気不足で室内の酸素が不足すると、ガスコンロ等が不完全燃焼を起こしやすくなり、一酸化炭素発生のリスクが高まる
  • 扉の開閉障害: 負圧が強すぎると扉が重くなる、あるいは勢いよく閉まるといった不具合が生じる
  • 隙間風・臭気の流入: 建具の隙間や配管の貫通部から周囲の空気が引き込まれ、思わぬ経路からの臭気・粉じんの流入につながることがある
  • 給気口周りの不快感: 給気口の位置・風速の設定によっては、調理スタッフに直接冷たい(あるいは暑い)外気が当たり、作業環境を悪化させることがある

このため、厨房換気の計画では排気風量だけでなく、それに見合う給気風量を確保し、給気口の位置・風速をあわせて検討することが実務上の重要なポイントになります。給気・排気のどちらか一方だけを強化しても、もう一方とのバランスが崩れていれば正常な換気は成立しません。実際の給排気バランスの調整は、試運転調整の段階で風量測定を行いながら微調整していくのが一般的な進め方です。


ダクト・ファンの留意点:油対策・防火ダンパー・清掃口

厨房の排気ダクト・ファンは、一般空調のダクトに比べて油分・高温という厳しい条件にさらされるため、いくつか固有の配慮が必要です。

  • 油対策: グリスフィルタで一次的に油分を除去しても、微量の油分がダクト内部に付着・蓄積することは避けられません。ダクト自体を清掃しやすいルート・形状で計画し、定期清掃を前提とした維持管理体制を確保しておくことが重要です。
  • 防火ダンパー: 厨房の排気ダクトが防火区画を貫通する箇所には、防火ダンパー(火災時に温度ヒューズが溶断して自動的にダクトを閉鎖する装置)の設置が必要になる場合が多くあります。一般の換気用途で使われる温度ヒューズの作動温度が概ね72℃であるのに対し、厨房の排気のように平常時から高温の排気が流れる系統では、誤作動を防ぐためにより高い温度(概ね120℃)のヒューズが使われるのが一般的です。この温度差は、通常の運転温度で誤って閉鎖してしまわないようにするための実務上の配慮です。
  • 清掃口(クリーンアウト): 排気ダクトの内部を定期的に清掃できるよう、要所に点検・清掃用の開口(クリーンアウト)を設けておくことが求められます。清掃口の位置・間隔は、ダクトの経路長さや曲がりの位置を踏まえて計画段階から確保しておく必要があります。

これらの配慮は、いずれも「厨房火災の多くは排気ダクト内に蓄積した油脂への引火が原因である」という前提に基づいています。設計段階で清掃のしやすさを織り込んでおくかどうかが、竣工後の維持管理のしやすさ、ひいては火災リスクの低減に直結する部分です。


グリス除去装置と防火、そして臭気対策

グリスフィルタ・グリスエクストラクターといったグリス除去装置は、油分の捕集による防火対策であると同時に、フード内消火装置(自動消火装置)と組み合わせて運用されることが一般的です。フード内消火装置は、フード内部やダクト入口付近で万一の着火を検知した際に、薬剤等で初期消火を行う装置で、グリス除去装置による油分蓄積の抑制と、消火装置による初期対応の両方を組み合わせることで、厨房火災の拡大を防ぐという考え方に立っています。前述の防火ダンパーとあわせて、これらは「油分を減らす」「初期消火する」「延焼を止める」という3段階の対策として整理できます。

維持管理の面では、天蓋(フード本体)・グリスフィルタ・防火ダンパーは比較的短い周期(概ね2週間に1回程度が目安とされることが多い)で、排気ダクト本体はより長い周期(概ね3か月に1回程度が目安とされることが多い)で清掃することが一般的とされています。具体的な清掃頻度・点検基準は、建物の用途・厨房の使用状況・所轄消防署の指導によって異なるため、実際の運用にあたっては個別に確認が必要です。

臭気対策としては、グリスフィルタで一次的に油分を除去したうえで、必要に応じて活性炭フィルタ等の脱臭装置を組み合わせる方法があります。あわせて重要なのが排気口の設置位置です。排気口は、給気口や窓など外気を取り入れる開口部から十分な離隔を確保し、排出した臭気・油煙を再び自ら吸い込んでしまう「排気の回り込み」を避ける位置に計画する必要があります。近隣への配慮としては、隣地境界や近隣の窓・ベランダから離れた位置に排気口を設ける、あるいは屋上機械室やルーフトップに集約して排気を高い位置から放出するといった配慮が実務上よく行われます。具体的な離隔距離や近隣対応の要否は、建物の立地・周辺環境・所轄行政の指導によって幅があるため、計画の早い段階で確認しておくことが望まれます。


まとめ

  • 厨房換気は、燃焼用の空気の供給・熱と水蒸気の排出・油煙の排出という3つの役割を、排気フードとグリスフィルタ、給気設備で同時に成立させる分野である
  • 法的には建築基準法28条3項・施行令20条の3に基づき、理論廃ガス量と燃料消費量、排気フードの型式から必要換気量が算定される
  • 排気フードにはI型・II型があり、フードの形状によって必要換気量の係数(NKQ法のN)が変わる
  • 必要換気量は法令上のNKQ法に加え、フード面風速による実務上の確認とあわせて、大きい方の値を採用するのが一般的な進め方
  • 給排気バランスが崩れると、燃焼不良・扉の開閉障害・臭気の逆流といった障害につながるため、給気の確保が排気と同じくらい重要
  • グリスフィルタ・防火ダンパー・清掃口・自動消火装置は、いずれも「厨房火災の主因は排気ダクト内の油脂蓄積である」という前提に基づく一連の防火対策として計画する

厨房換気は、数値の算定方法自体は明確に定められている一方で、フードの形状・給排気バランス・維持管理体制まで含めて初めて機能する分野です。本記事で紹介した内容は一般的な考え方の整理であり、実際の設計・確認申請・維持管理にあたっては、必ず所轄消防署・建築確認の担当窓口・厨房機器メーカーに確認しながら進めてください。


あわせて読みたい

参考書籍でさらに学ぶ

※ この欄は書籍のアフィリエイト広告(Amazon・楽天)を含みます。価格・在庫・最新の年度版はリンク先でご確認ください。

  • 建築設備士 必携テキスト

    建築一般知識・建築法規・建築設備の3科目を1冊で。分野全体の土台づくりに。

  • 空調・給排水衛生設備の実務書

    熱源・空調・給排水を体系的に整理した実務書で理解を定着。

→ 建築設備士のおすすめ参考書まとめ

関連記事