建築設備.tech
基本設計管工事(空調・給排水)

冷却塔(クーリングタワー)の計画|開放式・密閉式の使い分けとレジオネラ対策

水冷式の熱源機器を計画すると、必ずセットで登場するのが冷却塔(クーリングタワー)です。冷凍機が冷房のために汲み出した熱は、最終的にどこかへ捨てなければならず、その「大気への捨て場所」を担うのが冷却塔になります。地味な脇役に見える設備ですが、方式選定を誤ると効率が出ない、設置位置を誤ると近隣とのトラブルになる、水質管理を怠るとレジオネラ症のリスクが生じるなど、計画段階で押さえるべき論点は意外に多い設備です。

この記事では、冷却塔の役割を冷凍機・冷却水系統との関係から確認したうえで、開放式と密閉式の違い、向流形と直交流形の違い、設置位置を考えるうえでのショートサーキット・白煙・騒音・離隔の考え方、そしてレジオネラ症対策としての水質管理・清掃点検、冬期運転や凍結対策・補給水とブロー(濃縮管理)までを整理します。冷凍機の種類そのものについては冷凍機の種類|ターボ・吸収式・チリングユニットの使い分け、熱源設備全体の計画は熱源設備計画の基礎もあわせてご覧ください。


早見まとめ

冷却塔の計画で押さえておきたい要点を、方式・設置位置・水質管理・冬期対応の4つの観点で1枚にまとめます。数値は実務での目安であり、最終的な適用条件は所轄行政・設計者との確認が前提です。

観点 区分 要点
冷却水系統の方式 開放式 冷却水が外気・充てん材と直接接触し、蒸発潜熱で冷却する。構造が単純でコンパクト・安価だが、水質が悪化しやすくレジオネラ属菌対策の比重が大きい
冷却水系統の方式 密閉式 冷却水は配管(コイル)内を循環し外気に触れない。散水された別系統の水がコイル表面で蒸発して冷やす。水質は保たれやすいが、設備が大型化しやすく設置スペース・コストがかさむ
気流と水の関係 向流形(カウンターフロー) 落下する水に対し、下から上へ空気を通す(対向流)。一般に伝熱効率が高いとされる代表的な形式
気流と水の関係 直交流形(クロスフロー) 落下する水に対し、横方向から空気を通す(直交)。水の飛散損失が少なく、点検口を確保しやすくメンテナンス性に優れる
設置位置の留意点 ショートサーキット 冷却塔の排気(高温多湿の空気)が、自機や周囲の外気取入口・他の冷却塔の吸込み口へ再循環してしまう現象。風向・建物形状・隣棟間隔を踏まえた配置検討が必要
設置位置の留意点 白煙 冬期の低温・高湿の条件下で、排気に含まれる水蒸気が白く見える現象。近隣・景観への配慮や、白煙低減型冷却塔の採用を検討
設置位置の留意点 騒音・振動 送風機・散水音が主な発生源。敷地境界での規制値、防振架台・防音対策の要否を確認
水質管理・点検(目安) 汚れの点検 使用開始時、および使用期間中は概ね1か月以内ごとに1回、汚れ・閉塞の状況を点検(建築物衛生法の維持管理基準の考え方)
水質管理・点検(目安) 清掃 概ね1年以内ごとに1回の清掃が基準とされるが、レジオネラ症防止指針では毎月1回程度の物理的洗浄が望ましいとされる
水質管理・点検(目安) レジオネラ属菌の目安 管理目標はおおむね10CFU/100mL未満、100CFU/100mL以上検出時は直ちに清掃・消毒等の対策を行うという考え方が示されている
冬期運転・補給水 凍結対策 停止時の配管内水抜き、循環継続運転、補給水配管の保温などを検討
冬期運転・補給水 濃縮管理(ブロー) 蒸発により濃縮が進むため、濃縮倍数を管理し、ブロー(排水)と補給水のバランスをとる

冷却塔の役割:冷凍機と冷却水系統の関係

冷房時、冷凍機は室内側から奪った熱に加えて、圧縮機を動かす動力分の熱(蒸気圧縮式の場合)や、駆動熱源分の熱(吸収式の場合)を上乗せした量の熱を、最終的に凝縮器で冷媒から冷却水へ移します。この冷却水が受け取った熱を、大気中へ最終的に捨てる役割を担うのが冷却塔です。

冷凍機(凝縮器)→ 冷却水配管 → 冷却塔 → 大気、という経路を、冷却水ポンプで循環させながら熱を運ぶ一連の系統を冷却水系統と呼びます。冷却塔では、この温まった冷却水と外気を接触させ、水の一部を蒸発させることで気化熱を奪い、冷却水を冷やして再び冷凍機へ戻します。空冷式の熱源(空冷式チリングユニットなど)はこの冷却水系統そのものを持たず、機器内蔵のファンで直接外気と熱交換するため冷却塔が不要になりますが、水冷式の熱源を選ぶ場合には、冷却塔は冷凍機と切り離せない一体の設備として計画する必要があります。冷却塔の冷却能力は、組み合わせる冷凍機の冷凍能力に基づいて算定するのが基本的な考え方で、両者は容量面でも整合を取って選定します。


開放式と密閉式の使い分け

冷却塔は、冷却水を外気に直接触れさせるかどうかで、開放式と密閉式の2つに大別されます。

方式 仕組み メリット 留意点
開放式 冷却水を充てん材上に散水し、外気と直接接触させて蒸発潜熱で冷やす 構造がシンプルで本体がコンパクト・軽量、導入コストを抑えやすい 冷却水が外気(ちり・ほこり・藻類・微生物など)に直接触れるため水質が悪化しやすく、レジオネラ属菌対策の比重が大きい
密閉式 冷却水は配管(コイル)内を密閉循環させ、コイル表面に外部から散水した別系統の水を蒸発させて間接的に冷やす 冷却水系統そのものは外気に触れないため水質を保ちやすく、スケール障害や配管の腐食・詰まりを抑えやすい 熱交換の段階が1つ増える分、装置が大型化しやすく設置スペース・コストが増える。散水側の水は外気に触れるため、こちらの水質管理は別途必要

開放式は、冷却水そのものが直接外気にさらされる分、初期コスト・設置スペースの面で有利ですが、その代わりに水質管理の手間とレジオネラ属菌対策の比重が大きくなります。密閉式は、冷凍機側の冷却水系統をきれいに保ちたい場合(配管の長寿命化を重視する場合など)に選ばれますが、散水側の水も外気に触れる以上、水質管理そのものが不要になるわけではない点に注意が必要です。どちらを選ぶかは、初期コスト・設置スペース・水質管理体制・機器の更新性といった条件を総合して判断する事項であり、所轄の維持管理者や設計者との協議を前提に決めることになります。


向流形と直交流形

開放式冷却塔は、内部で水と空気をどう接触させるかによって、向流形(カウンターフロー)と直交流形(クロスフロー)に分かれます。

形式 水と空気の流れ 特徴
向流形(カウンターフロー) 上から落下する水に対し、下から上へ空気を通す(対向流) 一般に伝熱効率が高いとされる代表的な形式で、比較的コンパクトにまとめやすい
直交流形(クロスフロー) 上から落下する水に対し、横方向から空気を通す(直交流) 水の飛散損失が少なく、内部の点検口を確保しやすいためメンテナンス性に優れる

どちらの形式にも一長一短があり、必要な冷却能力・設置スペースの形状(高さを取りやすいか、平面を取りやすいか)、日常点検のしやすさなどを踏まえて選定します。メーカーごとに得意とする容量帯や機種構成も異なるため、実際の選定にあたってはカタログ・性能資料を確認しながら進めるのが実務での進め方です。


設置位置の考え方

冷却塔は屋外に設置する機器であるため、設置位置の検討が計画の質を大きく左右します。主な論点は次の4つです。

ショートサーキット

冷却塔の排気は高温多湿の空気であり、この排気が自機や周囲の外気取入口、あるいは他の冷却塔の吸込み口へそのまま再循環してしまう現象をショートサーキットと呼びます。ショートサーキットが起きると、冷却塔は本来より高い温度・湿度の空気を吸い込んで熱交換することになり、冷却性能が計画値まで出なくなってしまいます。風向・卓越風、建物の形状や隣棟との位置関係を踏まえ、吸込み口と吐出し口の位置関係、複数台設置する場合の機種間の離隔を検討することが必要です。

白煙

冬期など気温が低く湿度が高い条件では、冷却塔から出る飽和空気が外気で急冷されて微小な水滴となり、白い煙のように見える「白煙」が発生することがあります。白煙自体は水蒸気であり有害なものではありませんが、近隣からは煙・排ガスと誤認されやすく、景観や視界への配慮が求められる立地(歩道・駐車場・隣地窓に近い場所など)では、白煙低減型冷却塔の採用や、冷却水の一部をバイパスさせて排気の湿り具合を調整する制御方式などを検討する余地があります。

騒音・振動

冷却塔の音の発生源は、主に送風機の運転音と、散水が充てん材やパンに落ちる音です。屋上や隣地境界に近い位置に設置する場合は、敷地境界での騒音の許容値、周辺の用途地域や条例による規制を踏まえ、必要に応じて低騒音形の機種や防音・防振対策を検討します。防振・防音の考え方の基礎は設備機器の防振・騒音対策の基礎で整理していますので、あわせて参照してください。

外気取入口・隣地との離隔と建築基準法上の規制

冷却塔から出るエアロゾルには、水質管理が不十分な場合レジオネラ属菌が含まれる可能性があるため、建物の外気取入口や隣地境界との離隔を確保することは、単に熱交換効率だけでなく衛生上の観点からも重要です。また、建築基準法施行令には、地階を除く階数が11以上の建築物の屋上に冷却塔設備を設ける場合の防火上の構造基準があり、充てん材やケーシングの材料、隣接する冷却塔・建築物の開口部との離隔距離、機器容量の上限などが告示で定められています。独立して地上や屋上に設置する冷却塔についても、その高さ・構造によっては工作物として確認申請の対象になる場合があります。具体の適用条件・数値は建物の規模や最新の法令によって変わるため、計画段階で所轄行政・設計者に確認することが前提になります。


レジオネラ症対策:水質管理と清掃点検

冷却塔は、冷却水が滞留・蒸発を繰り返す環境であるため、管理を怠るとレジオネラ属菌が増殖しやすい設備の代表例とされています。レジオネラ属菌を含む冷却水がエアロゾルとして周辺に飛散し、それを人が吸入することでレジオネラ症(肺炎型)を発症するリスクがあるため、建築物の維持管理者には継続的な水質管理が求められます。

建築物衛生法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)の対象となる特定建築物では、冷却塔・冷却水について、使用開始時、および使用期間中は概ね1か月以内ごとに1回、汚れ・閉塞の状況を点検し、必要に応じて清掃を行うこと、また、冷却塔の清掃は概ね1年以内ごとに1回行うことが維持管理基準として定められています。これに加えて、厚生労働省の「レジオネラ症防止指針」では、冷却塔・冷却水は毎月1回程度の物理的洗浄を行うことが望ましいとされており、法定の年1回清掃はあくまで最低限の基準で、実務上はより高い頻度での洗浄・点検が推奨されていることになります。

水質検査の面では、レジオネラ属菌数の管理目標値をおおむね10CFU/100mL未満とし、100CFU/100mL以上が検出された場合には直ちに清掃・消毒等の対策を講じ、対策後にあらためて検出限界以下であることを確認するという考え方が示されています。特に、病院・高齢者施設に近い、あるいは人の往来が多い場所に近接するなど「要注意対象」とされる冷却塔では、より頻繁な洗浄と定期的な検査体制を組むことが求められます。

日常の水質管理では、自動ブロー装置・薬液注入装置によって濃縮管理と殺菌剤の投入を自動化する構成が一般的ですが、これらの自動制御に任せきりにせず、点検時に実際の汚れ・スライム(ぬめり)の付着状況を目視確認することが実務上重要です。密閉式冷却塔は、冷凍機側の冷却水が外気に触れない点で開放式よりリスクは下がりますが、散水側の水は外気に触れているため、こちらについても同様の水質管理・点検が必要になる点は変わりません。


冬期運転・凍結対策と補給水・濃縮管理(ブロー)

冷却塔は屋外に設置される水を扱う機器であるため、冬期の運転計画では凍結対策が欠かせません。暖房期でも熱源として冷凍機を稼働させる建物(年間を通じて冷房負荷がある事務所・データセンター系の建物など)では冷却塔の継続運転を前提に凍結対策を検討し、冬期に完全停止する冷却塔では、停止期間中の配管内の水抜き、密閉式冷却塔ではコイル内の水抜きや不凍液の使用、補給水配管の保温などを組み合わせて計画します。低温時に部分的に運転を継続する場合は、ヒーターによる凍結防止や、循環水量を絞った運転で凍結を避ける制御も検討対象になります。

冷却水は、冷却塔内で蒸発を繰り返すたびに、水に含まれるミネラル分などが徐々に濃縮されていきます。この濃縮が進みすぎると、スケール(水あか)の付着による伝熱効率の低下や配管の閉塞、腐食、そしてレジオネラ属菌をはじめとする微生物の増殖リスクの上昇につながります。そこで、蒸発によって失われた水を補う「補給水」と、濃縮した循環水の一部を意図的に排出する「ブロー(ブローダウン)」を組み合わせ、循環水の濃縮の度合い(濃縮倍数)を一定の範囲に管理することが必要です。濃縮倍数を高く取りすぎると節水にはなりますが水質悪化のリスクが増し、低く取りすぎるとブロー水量・補給水量が増えてランニングコストがかさむため、建物の水質条件・薬品処理方式を踏まえたバランスの取り方が実務上の判断になります。給水設備側での水質衛生管理の考え方は給水設備の計画にも通じる部分がありますので、あわせて参照してください。


実務での判断

冷却塔の計画は、単体の性能表だけで決まるものではなく、次のような複数の観点を組み合わせて検討する事項です。

  • 熱源方式との整合: 水冷式を採用するかどうかで冷却塔の要否そのものが決まるため、熱源計画の初期段階から冷却塔の設置可否・設置位置を検討しておく
  • 開放式・密閉式の選択: 初期コスト・設置スペースを優先するか、水質保持・維持管理のしやすさを優先するかで判断する
  • 設置位置の周辺条件: 隣地・外気取入口との位置関係、卓越風向、近隣への騒音・白煙の影響を、設計の早い段階で確認する
  • 維持管理体制: 建築物衛生法の対象になるかどうか、レジオネラ症防止指針に沿った点検・清掃の頻度を維持管理者側で実施できる体制があるか
  • 冬期の運転方針: 通年運転か季節停止かによって、凍結対策の内容・コストが変わる

これらはいずれも建物用途・立地・維持管理体制によって最適解が異なるため、所轄行政・設計者・維持管理者との協議を前提に、個別の条件に即して検討することが基本になります。


よくある誤解

「密閉式にすればレジオネラ症対策は不要になる」という誤解 密閉式は冷凍機側の冷却水系統が外気に触れないため水質は保たれやすいものの、散水側の水は開放式と同様に外気に触れています。密閉式であっても、散水系統の点検・清掃・水質管理は必要です。

「白煙は排気ガスや故障のサインである」という誤解 白煙の正体は、冷却塔から出る飽和した水蒸気が外気で冷やされてできた水滴であり、燃焼を伴う排気ガスではありません。ただし近隣からは誤解されやすいため、立地によっては白煙低減対策を検討する価値があります。

「年1回清掃すれば法令上も衛生上も十分」という誤解 建築物衛生法の維持管理基準は年1回以内ごとの清掃を求めていますが、これはあくまで法令上の最低限であり、厚生労働省のレジオネラ症防止指針では毎月1回程度の物理的洗浄が望ましいとされています。法定基準と望ましい管理水準は必ずしも一致しない点に注意が必要です。


まとめ

  • 冷却塔は、水冷式の冷凍機が凝縮器で冷却水に移した熱を、外気との接触・蒸発によって大気へ最終的に捨てる設備であり、水冷式熱源とは容量面で一体に計画する
  • 開放式は安価・コンパクトだが水質悪化・レジオネラ対策の比重が大きく、密閉式は水質を保ちやすい反面、設備が大型化しコストが増える
  • 向流形は伝熱効率、直交流形は飛散損失の少なさ・点検性に強みがあり、設置スペースの形状や求める性能で使い分ける
  • 設置位置の検討では、ショートサーキット・白煙・騒音・隣地や外気取入口との離隔、建築基準法上の規制を早い段階で確認する必要がある
  • レジオネラ症対策としては、建築物衛生法の維持管理基準(点検は概ね1か月以内ごと、清掃は概ね1年以内ごと)に加え、厚生労働省のレジオネラ症防止指針が示す毎月1回程度の物理的洗浄という、より高い管理水準を意識する
  • 冬期は凍結対策、通年では補給水とブローによる濃縮管理を組み合わせ、水質と設備寿命の両方を維持する

冷却塔は、冷凍機のように性能や方式そのものが注目されることは少ない設備ですが、設置位置と水質管理を誤ると、近隣トラブルや衛生上のリスクに直結する設備でもあります。方式選定だけでなく、設置後の維持管理体制まで含めて計画段階から検討しておくことが、実務でも試験対策でも欠かせない視点だと筆者は考えています。実際の計画・維持管理にあたっては、所轄行政・設計者・維持管理者との協議のもとで判断することが前提です。


あわせて読みたい

参考書籍でさらに学ぶ

※ この欄は書籍のアフィリエイト広告(Amazon・楽天)を含みます。価格・在庫・最新の年度版はリンク先でご確認ください。

  • 建築設備士 必携テキスト

    建築一般知識・建築法規・建築設備の3科目を1冊で。分野全体の土台づくりに。

  • 空調・給排水衛生設備の実務書

    熱源・空調・給排水を体系的に整理した実務書で理解を定着。

→ 建築設備士のおすすめ参考書まとめ

関連記事