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機械式駐車場の設備計画|換気・消火設備とCO2消火の安全対策

機械式駐車場は、タワー状の昇降路にパレットを循環させる方式や、地下ピットに車両を格納する方式など、装置そのものの構造ばかりが注目されがちですが、実際に建物側で計画しなければならないのは、その装置を安全かつ継続的に稼働させるための周辺設備です。換気・消火・排水・電源という、普段は装置の陰に隠れがちな設備をどう組み立てるかが、機械式駐車場の設備計画の実質的な中身になります。

この記事では、機械式駐車装置に付随する設備インフラに絞って整理します。駐車場の出入口に設置される発券機・ゲート・満空表示灯などの駐車場管制設備は駐車場管制設備の基礎|ゲート・満空表示・精算と安全対策の考え方で、車路の勾配・幅員・駐車マス寸法といった計画は駐車場・車路計画の基礎|勾配・寸法・舗装と設備の取り合いでそれぞれ扱っていますので、あわせて参照してください。


図で見る(全体像)

機械式駐車装置の方式による設備計画への影響、二酸化炭素消火設備の安全対策、換気・排水・電源という周辺インフラを示す模式図


早見まとめ

機械式駐車場の設備計画で押さえておきたい考え方を1枚にまとめます。あくまで一般的な整理であり、装置の機種・規模・所轄消防署の判断によって具体の仕様は変わります。

項目 考え方 代表値・目安
装置方式 垂直循環(タワー式)・多段式・ピット式など、車両の搬送方法で分類する 方式によって必要な昇降路・地下ピットの規模が変わる
消火設備の選定 装置内部は水損・油火災の両面を踏まえて選定する 不活性ガス・泡・粉末等が選択肢(所轄消防署との協議が前提)
二酸化炭素消火設備の安全対策 死亡事故の多発を受けて基準が改正された 閉止弁の設置・標識の掲示・手動起動時の立入管理を徹底
地下・ピットの換気 排気ガス・一酸化炭素濃度を基準値以下に保つ 機械換気が基本。路外駐車場の技術的基準に準拠(要確認)
排水計画 湧水・洗車水・油分を含む排水をピットから排除する 釜場+排水ポンプ、油分を含む場合は阻集器等の検討
電源計画 装置の動力容量と、停電時の出し入れ不能リスクを検討する 非常用発電機の負荷計画、手動降下・手動操作機構の要否を確認
維持管理 専門技術者による定期点検を継続する 機種・使用頻度に応じ概ね1〜3か月に1回が目安(国交省指針)

判断の軸は、機械式駐車装置という「機械そのもの」の話と、それを支える「建築設備の話」を分けて捉えることです。装置本体の安全基準は業界団体の技術基準やメーカー仕様に基づきますが、換気・消火・排水・電源は建築設備として計画する必要があり、この記事はその建築設備側に絞って整理します。


機械式駐車装置の方式と設備計画への影響

機械式駐車装置は、車両の搬送方法によっていくつかの方式に分かれます。設備計画に影響する範囲で大まかに整理すると、次のようになります。

方式 概要 設備計画への影響
垂直循環方式(タワー式) パレットを昇降路内でチェーン等により垂直に循環させ、地上の乗降室で入出庫する 塔状の昇降路が主体。内部換気・電源引き込みが比較的まとまった経路で計画できる
エレベーター方式 エレベーター(昇降機)でパレットを目的階まで運び、横行装置で格納する 昇降機部分と横行部分で駆動系統が分かれ、電源系統も分けて計画されることが多い
多段式・ピット式 地下ピットや半地下部分に複数段のパレットを設け、昇降・横行で車両を格納する 地下ピットの換気・排水(湧水・油分)が計画上の主要な論点になる

いずれの方式も、車両を機械的に搬送・格納する装置本体の安全基準は、業界団体(立体駐車場工業会等)が示す技術基準やメーカーの仕様に基づいて計画されるものであり、この記事では扱いません。建築設備側として計画すべきは、この装置が設置される昇降路・ピット・機械室に対して、換気・消火・排水・電源をどう組み立てるかという部分です。

地下ピット部分を持つ多段式・ピット式は、換気・排水の両面で地上のタワー式より検討事項が増える傾向があります。一方でタワー式・エレベーター式は昇降路が塔状にまとまるため、内部の換気経路や電源引き込みルートを整理しやすいという特徴があります。


消火設備の選定――水損・油火災をどう避けるか

機械式駐車装置が格納する車両は、ガソリン・軽油等の燃料や潤滑油を保有しているため、装置内部の消火設備は油火災を想定した選定が必要になります。加えて、装置内部は電動機・チェーン・センサー類が密集する機械室的な空間でもあるため、放水による水損・感電のリスクも考慮しなければなりません。

「水を使えない・使いたくない場所」の消火設備としては、泡消火設備・不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備といった選択肢があり、それぞれの仕組みと使い分けはガス・泡・粉末消火設備の使い分け|電気室・駐車場・危険物をどう守るかで整理しています。機械式駐車装置の場合、パレット・ピット内という限られた空間の性質上、不活性ガス消火設備(特に二酸化炭素消火設備)が採用される例が少なくありませんが、どの消火設備を選ぶかは装置の規模・構造・所轄消防署との協議によって決まる事項であり、一律に決まっているわけではありません。

装置内部という閉鎖された空間の性質上、消火設備の効果そのものは水を使わない方式のほうが発揮しやすい一方、次の章で扱うとおり、その「閉鎖された空間で消火剤を放出する」という性質自体が、深刻な人身事故につながってきた経緯があります。


二酸化炭素消火設備の安全対策強化――死亡事故を受けた基準改正

機械式駐車場に設置された二酸化炭素消火設備をめぐっては、2020年12月から2021年4月にかけて、点検・工事作業中の誤放出により作業員が死亡する事故が全国で相次いで発生しました。二酸化炭素消火設備は、防護区画の酸素濃度を燃焼が継続できない水準まで下げることで消火する仕組みであり、放出時にその区画に人が取り残されると、酸欠により命に関わる事故につながります。これらの事故の多くは、点検・工事のために防護区画に立ち入っていた作業員が、誤作動または誤操作により放出された二酸化炭素を吸い込んだことが原因とされています。

これを受けて、総務省消防庁は有識者による検討会を設置して再発防止策を検討し、令和4年(2022年)から令和5年(2023年)にかけて、二酸化炭素消火設備に関する消防法令の基準が改正されました。改正の骨子として、次のような対策が求められるようになっています(具体の適用条件・経過措置期限は個別の設備・改修時期によって異なるため、必ず所轄消防署・消防設備士に確認してください)。

対策項目 考え方
閉止弁の設置 点検・工事の際に配管を閉じ、消火剤の誤放出を物理的に防止する弁を、集合管・操作管等に設ける
自動起動の条件見直し 自動式の場合、単一の感知器作動ではなく、二以上の火災信号が確認されて初めて起動する方式に見直す(誤作動・単独誤信号による放出を防ぐ)
音声警報装置 常時人がいない区画等に自動式を設ける場合、放出前の警報を音響ブザーだけでなく音声で知らせる方式にする
標識の設置 貯蔵容器の設置場所・防護区画の出入口等に、二酸化炭素の危険性を示す標識を掲示する
手動起動への切替と立入管理 防護区画に人が立ち入る際は閉止弁を閉止し、手動起動に切り替えた状態を維持する
緊急停止装置 起動後であっても、消火剤の放出を停止できる緊急停止の操作を確保する
点検体制の強化 規模を問わず、消防設備士等による点検を求める運用が強化された

機械式駐車場は、装置のメンテナンスやリニューアル工事のたびに、作業員がピット内・機械室内に立ち入る機会が多い設備です。つまり、二酸化炭素消火設備を採用している機械式駐車場では、日常の駐車利用者だけでなく、保守点検に入る作業員の安全確保こそが安全対策の核心になります。設計段階での閉止弁・標識の計画に加えて、維持管理段階での立入管理の徹底が一体で運用されて初めて、この対策は意味を持ちます。


換気計画――地下・ピットのCO濃度とタワー内部の考え方

機械式駐車場の換気は、車両のエンジン始動・移動時に発生する排気ガス(一酸化炭素・窒素酸化物等)を排出し、作業者・利用者が立ち入る区画の空気質を保つことが目的です。

地下ピット式・多段式のように地下・半地下部分を持つ方式では、開口部だけで必要な換気量を確保しにくいため、機械換気が基本になります。路外駐車場には一酸化炭素濃度を一定の水準以下に保つことを目安とした技術的基準があり、機械換気の能力もこれに整合させて計画する必要があります。具体的な換気回数・濃度基準の数値は、駐車場の用途・規模によって適用が変わるため、所轄部局・設計者との確認を前提としてください。換気方式の基本的な考え方(機械給気・機械排気の組み合わせ)については換気の基礎|第1種・第2種・第3種換気の違いと、24時間換気が義務になった理由で整理していますが、駐車場の換気は住宅の24時間換気とは目的も基準も異なる点に注意が必要です。

タワー式・エレベーター式の昇降路内部は、車両が長時間滞留する空間ではないものの、機械室・ピット最下部など点検作業員が立ち入る区画には、酸欠・ガス滞留のおそれがないよう換気経路を確保しておく必要があります。特に前章で触れた二酸化炭素消火設備を採用している場合、平常時の換気計画と、消火剤放出後に区画内のガスを排出するための換気(あるいは開口部の開放手順)は、別に整理しておくべき事項です。


排水計画――湧水・洗車水・油分をどう抜くか

地下ピット式・多段式の機械式駐車場は、地下部分を持つ他の建築設備と同様、自然流下で排水できない位置にピットが来ることが多く、釜場(ポンプが排水を吸い込みやすいようくぼませた部分)と排水ポンプによる強制排水が基本になります。地下階の排水槽・湧水槽の考え方そのものは湧水槽・排水槽と排水ポンプの基礎|ビルピット対策と維持管理で整理していますので、あわせて参照してください。

機械式駐車場のピット排水で特有なのは、受け入れる排水に油分が混ざりやすい点です。車両からの微量な油漏れ、洗車時の排水、地下外壁からの湧水などが同じピットに集まるため、油分を含む排水をそのまま公共下水道等へ流してよいかどうかは、放流先の基準や自治体の指導によって扱いが変わります。油分を多く含むことが想定される場合は、油水分離槽(オイルセパレーター)等を介して油分を分離してから排水する計画が検討されます。

排水ポンプの選定・自動交互運転・水位検知の考え方は、一般的な排水槽と共通する部分が多いため、規模の大きい機械式駐車場では、湧水槽・排水槽の設計と合わせて計画するのが実務的です。


電源計画――停電時の出し入れ不能リスク

機械式駐車装置は、パレットの昇降・横行を電動機で行う機械であるため、停電時には原則として車両の出し入れができなくなります。これは平面駐車場にはない、機械式駐車場特有のリスクです。

電源計画で検討すべき事項を整理すると、次のようになります。

  • 装置の動力容量(昇降・横行モーターの負荷)を、建物全体の受電容量計画に反映しているか
  • 停電時に、格納中の車両を最低限出せるようにする手動降下・手動操作機構を装置側に備えているか、その操作手順が管理者に周知されているか
  • 非常用発電機を設ける建物の場合、機械式駐車装置をその負荷に含めるかどうか(含めない場合は停電中の運用をどう案内するか)
  • 機械室・ピット内の照明・コンセント(点検作業用)が、装置の稼働状況にかかわらず確保されているか

停電時に車両が長時間出せない状態は、集合住宅であれば入居者の生活に直結するトラブルになりやすく、商業施設であれば来客対応に影響します。非常用発電機の負荷に含めるかどうかは建物の重要度・コストによる判断ですが、少なくとも「停電時は手動でどこまで対応できるか」を装置メーカー・管理者との間で確認しておくことは、基本設計の段階で詰めておきたい事項です。


維持管理――定期点検とリニューアル・撤去の判断

機械式駐車装置は、昇降・横行という機械動作を伴う設備であるため、継続的な保守点検が欠かせません。国土交通省は「機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針」を示しており、所有者・管理者に対して、機種や使用頻度等に応じておおむね1〜3か月に1回を目安に、専門技術者による点検を受けることを求めています。点検周期や項目の詳細は装置の機種・使用状況によって異なるため、保守点検事業者・製造者の資料に基づいて個別に確認する必要があります。

建物側の設備(換気・消火・排水・電源)についても、装置本体の点検とあわせて動作確認を行っておくと、不具合の見落としを防ぎやすくなります。特に二酸化炭素消火設備を採用している場合は、前述の閉止弁・標識・立入管理の運用が実際に守られているかを、定期点検のたびに確認しておくべきポイントです。

築年数の経った機械式駐車装置では、老朽化に伴うリニューアル(装置の更新)や、逆に利用率の低下を理由に装置を撤去して平面駐車場に転換する「平面化」が検討されることもあります。特に共同住宅では、居住者の車離れやカーシェアの普及により機械式駐車場の空き区画が増え、維持費(電気代・保守費用)が見合わなくなるという課題が顕在化しやすい傾向があります。リニューアル時には換気・消火・排水・電源の設備も装置とあわせて更新の要否を検討する必要があり、平面化により装置を撤去する場合も、それまで装置に付随していた消火設備・換気設備・電源設備をそのまま残すか、用途変更後の駐車場に合わせて撤去・更新するかを整理しておく必要があります。


まとめ

  • 機械式駐車装置には垂直循環(タワー式)・エレベーター方式・多段式/ピット式などの方式があり、装置本体の安全基準は業界団体・メーカー仕様に基づく
  • 装置内部の消火設備は水損・油火災の両面から選定され、不活性ガス・泡・粉末等が選択肢になる。詳細な使い分けは別記事を参照
  • 二酸化炭素消火設備は2020〜2021年の死亡事故を受け、令和4〜5年にかけて消防法令の基準が改正された。閉止弁の設置・標識掲示・立入管理の徹底が求められている
  • 地下・ピット部分の換気は機械換気が基本で、一酸化炭素濃度等を基準値以下に保つ計画が必要になる
  • 排水はピット内の湧水・洗車水・油分を対象に、釜場と排水ポンプ、必要に応じて油水分離槽で計画する
  • 停電時は原則として車両の出し入れができなくなるため、手動操作機構・非常用電源の要否を建物の重要度に応じて検討する必要がある
  • 装置は概ね1〜3か月に1回の専門技術者による点検が求められ、リニューアルや平面化の際は付随設備の更新・撤去もあわせて検討する

機械式駐車場の設備計画は、装置本体の性能や台数だけでなく、換気・消火・排水・電源という周辺インフラをどう組み立てるかで安全性・維持管理のしやすさが大きく変わります。特に二酸化炭素消火設備を採用する場合は、設計段階の基準対応にとどまらず、竣工後の維持管理・点検・工事発注のルールとして安全対策が運用され続けることが欠かせません。具体的な仕様・基準の適用は所轄消防署・設計者・装置メーカーとの確認を前提に進めてください。


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