令和8年度 一級建築士 学科『計画』実例問題の直前予想|既存ストック活用・ウォーカブル・木造大規模
この記事は、筆者個人の予想です。 令和8年度の学科試験は明日7月26日に実施されますが、本記事で取り上げる建物・テーマが実際に出題される保証は一切ありません。あくまで令和7年までの出題傾向を分析したうえでの学習の優先順位付けの参考としてご利用ください。実例問題は計画科目20問のうち1問程度の配点であり、後述するように時間配分としても深追いは禁物です。
一級建築士の学科「計画」では、都市計画・建築史の分野で「実在する建築物・都市空間の名称と、その用途や計画上の特徴の組み合わせが正しいか」を問う実例問題が、例年1問前後出題されます。本記事は、この実例問題について令和7年の出題内容から令和8年の傾向を予想し、押さえておきたい建物・都市空間の事実関係を整理したものです。
予想の根拠
令和7年は西洋建築史、令和8年は現代日本の実例に回る可能性
令和7年の学科I(計画)No.3では、パルテノン神殿(アテネ)を中心とした西洋建築史の実例問題が出題されました。ドリス式円柱やクリアストーリー(高窓)といった様式的特徴が問われる内容で、正答率は40%程度だったとされています。
計画科目の実例問題は、西洋建築史・日本建築史・近現代の都市建築実例のあいだで出題対象が年ごとに入れ替わる傾向があり、直近が西洋建築史であったことから、令和8年は現代日本の建築・都市の実例に振れる可能性を筆者は予想しています。
「既存建築物の活用・資源循環」は初出題の翌年に実例として定着しやすい
令和7年度の学科I(計画)No.5では、「既存建築物の活用や資源循環」というテーマが初めて出題されました。省エネ法改正や地球温暖化対策の流れを受けたもので、「木質系材料」「エンボディドカーボン」などとあわせて、近年の社会情勢を反映した新出テーマの一つです。
一級建築士試験では、法改正や新テーマが制度・数値の問題として初出題された翌年以降に、そのテーマを体現する具体的な建築実例が実例問題として定着出題される、という傾向が近年繰り返し見られます。この定石に沿えば、「既存ストックの活用・コンバージョン(用途転用)」を体現する建築実例が、令和8年の実例問題の本命候補になると筆者は考えています。
以上2つの根拠から、本記事では実例候補を「本命:既存ストック活用・コンバージョン」「対抗:ウォーカブル・都市再生」「穴:木造中大規模建築」の3系統に整理しました。いずれも令和8年度 学科試験 直前対策まとめで紹介している直前期の優先分野の一部にあたります。
本命:既存ストック活用・コンバージョン事例
学校建築や倉庫・工場といった既存建築物を、美術館やアートセンターなど別用途に転用(コンバージョン)した事例です。用途の「転用前→転用後」の対応関係と、保存・改修の考え方が問われやすいポイントです。
| 建物名 | 特徴 |
|---|---|
| 京都国際マンガミュージアム | 昭和初期(本館1929年・北棟1937年竣工、京都市営繕課設計)の旧京都市立龍池小学校校舎を改修し、2006年開館。京都市と京都精華大学の共同事業で、小学校校舎という近代建築を博物館用途にコンバージョンした代表例。 |
| アーツ千代田3331 | 2004年に閉校した旧千代田区立練成中学校の校舎を改修し、2010年にアートセンターとして開館。2023年3月末で千代田区との運営契約が満了し、いったん閉館(施設自体は「ちよだアートスクエア」として恒常的な文化施設への改修が予定されている)。転用事例としての歴史的価値は残るが、現況(2023年閉館)を混同しないよう注意したい。 |
| 犬島精錬所美術館(岡山県) | 明治期の銅精錬所の遺構を保存・再生し、三分一博志の設計で2008年開館。太陽光・地中熱など自然エネルギーを活用した環境配慮型の建築で、ベネッセアートサイト直島の一施設。産業遺産の保存活用とアートの融合事例。 |
| 横浜赤レンガ倉庫 | 明治末〜大正初期(2号倉庫1911年、1号倉庫1913年竣工)に建設された保税倉庫。1989年に倉庫としての役目を終えたのち、改修を経て2002年に文化・商業施設として再生。屋根瓦の全面葺き替えなど保存復原と現代機能の両立が特徴。 |
| 東京駅丸の内駅舎 | 辰野金吾設計・1914年竣工。戦災で焼失した南北のドーム屋根が戦後は八角屋根で再建されていたが、2012年に創建時の姿へ復原(JR東日本建築設計事務所が中心となり、地下に免震構造を新設)。「転用」ではなく「保存・復原」の代表事例として、コンバージョン系の事例と対比で押さえておきたい。 |
| 洋光台団地(横浜市・UR) | UR都市機構の「団地の未来プロジェクト」の一つ。隈研吾・佐藤可士和が監修し、2020年秋に集会所「OPEN RING」や広場・住棟ファサードを一体的にリニューアル。既存の高度経済成長期の団地ストックを、改修によって現代の暮らしに合わせて再生した事例。 |
| ひばりが丘団地(東京都東久留米市・UR) | 1959年に日本住宅公団(UR前身)が造成した大規模団地。建替え・ストック再生実証実験を経て、2014年に大和ハウス工業やUR都市機構等による地域運営組織「まちにわひばりが丘」を設立。団地再生を、建物の改修だけでなくエリアマネジメント(住民主体の地域運営)まで含めて実施した事例。 |
対抗:ウォーカブル・都市再生事例
「歩いて暮らせるまちづくり(ウォーカブルシティ)」「公民連携(PPP)によるエリア再生」も、近年の都市計画分野で繰り返し話題になっているテーマです。実例問題の対抗候補として押さえておきたい事例です。
| 建物・都市空間名 | 特徴 |
|---|---|
| 宇都宮LRT「ライトライン」 | 2023年8月26日開業。宇都宮駅東口〜芳賀・高根沢工業団地間の全線新設LRT。国内で路面電車が完全新規開業したのは1948年以来75年ぶりで、全国初の「全線新設」LRT路線という点が特徴。 |
| 富山ライトレール/富山市 | 2006年開業のLRTを軸に、富山市が「公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」を推進。日本のコンパクトシティ政策の先導的モデル事業として、都市計画分野で繰り返し取り上げられる事例。 |
| 南池袋公園(豊島区) | 2016年4月に全面リニューアルオープン。芝生広場とカフェレストランを一体的に配置し、公園を「まちのリビング」として活用する公民連携型の都市空間再生の代表例。 |
| 富山グランドプラザ | 2007年9月オープン。設計は日本設計。既存の街路をガラス屋根で覆った全天候型の広場で、北陸の多雨多雪の気候でも中心市街地のにぎわいを維持できるよう計画された。 |
| オガールプラザ(岩手県紫波町) | 2012年6月オープン。紫波町の公民連携(PPP)による駅前町有地の整備事業「オガールプロジェクト」の中核施設で、県産材を活用した木造。補助金に依存しない事業スキームで全国的に注目された事例。 |
| アオーレ長岡(新潟県長岡市) | 2012年竣工。設計は隈研吾建築都市設計事務所。市役所本庁舎・議場と、5,000人収容のアリーナ、屋根付き広場「ナカドマ」を一体化した複合施設で、市役所機能と市民交流空間を融合させた事例。 |
穴:木造中大規模建築
脱炭素・木材利用の流れを受けて、木造による中大規模建築の実例も出題可能性がある分野です。純木造か木質ハイブリッドかの違いを整理しておきましょう。
| 建物名 | 特徴 |
|---|---|
| 国立競技場 | 2019年11月竣工。大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所の共同設計体(JV)による設計。47都道府県の木材を、日本列島における各県の地理的位置に対応させて屋根の軒に配置した、木と鉄骨のハイブリッド構造。 |
| 有明体操競技場 | 2019年竣工。基本設計は日建設計、施工は清水建設。北海道・長野県産のカラマツ集成材で約90mスパンの張弦梁を実現した木造大空間の屋根が特徴で、東京2020大会の施設のなかで木材使用量が最も多いとされる。鉄骨造との複合構造。 |
| Port Plus(大林組横浜研修所) | 2022年3月竣工。地上11階建て・高さ約44mで、地上部の柱・梁・床・壁まですべて木造とした日本初の高層純木造耐火建築物。大林組自社の研修施設で、木造ハイブリッドの他事例と異なり「純木造」である点が識別ポイント。 |
実例問題への対策の型
実例問題は、まったく知らない建物名がいきなり出るケースは少なく、「建物名×用途×計画上の特徴」の組み合わせをすり替えて誤りの選択肢を作るのが定番のパターンです。たとえば次のようなすり替え方が典型です。
- 転用前の用途を取り違える(例:小学校を中学校と入れ替える)
- 設計者名を別の建築家の名前に差し替える
- 竣工・開業年を数年ずらす
- 「純木造」と「木造・鉄骨のハイブリッド」を混同させる
対策としては、建物名を単体で覚えるのではなく、上の表のように「建物名|特徴1〜2行」の対応表として頭に入れておくと、選択肢のどこがすり替えられているかに気づきやすくなります。
ただし、実例問題は計画科目20問のうち1問程度の配点にとどまります。本命・対抗・穴のすべてを完璧に覚えようとするよりも、法規・構造など配点の大きい科目の見直しを優先し、実例問題は「見たことがある建物名の組み合わせ違和感に気づける」程度の仕上げに留めるのが、残り時間を踏まえた現実的な配分だと筆者は考えています。時間の使い方に迷ったら、令和8年度 学科試験 直前対策まとめで5科目全体の優先順位も確認しておいてください。
計画科目をまとめて演習しておきたい場合は、計画の完全模試(20問)もあわせてご利用ください。
まとめ
繰り返しになりますが、本記事の内容はあくまで筆者個人による出題傾向の分析と予想であり、令和8年度の学科試験で実際にこれらの建物・都市空間が出題されることを保証するものではありません。実例問題は配点が小さいテーマでもあるため、本記事の表を最後の確認として軽く目を通す程度にとどめ、法規・構造など配点の大きい科目の見直しに時間を割くことをおすすめします。
前日・当日の持ち物や時間割の最終確認は、前日・当日チェックリストにまとめてあります。明日の本試験に向けて、これまで積み上げてきた実力を出し切れるよう、体調を最優先に整えてください。
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