建築設備士 2次試験(設計製図)対策|ホテルが出題されたときの計画図・系統図の描き方
建築設備士の2次試験(設計製図の試験)に向けた対策で悩ましいのは、「知識としては知っているのに、いざ図面や記述に落とし込もうとすると手が止まる」という壁だと筆者は感じています。空調方式や給湯方式の考え方を頭では理解していても、それを計画図の中の機械室・PS(配管シャフト)・EPS(電気シャフト)の配置として表現したり、系統図として描いたりする段になると、途端に難しく感じる方は少なくありません。
この記事では、建築設備士2次試験でホテルという用途が出題されたと仮定し、客室系統・宴会場系統・厨房系統をどう区分して考えるか、そしてその区分を計画図・系統図でどう表現するかを、実務目線で整理します。ホテルという建物そのものの設備計画の全体像(客室空調・給湯・給排水・電気防災の考え方)は、姉妹記事のホテル・宿泊施設の設備計画で詳しく解説していますので、まずはそちらで用途の特徴を押さえたうえで、本記事では「その知識を試験の答案としてどう表現するか」という一段実践的な視点に絞って掘り下げます。
なお、本記事は建築設備士2次試験の一般的な出題傾向・設備計画の考え方を筆者の視点で整理したものであり、特定年度の課題文・要求図書・配点・時間割を先取りするものではありません。具体的な試験時間・出題形式・合格基準は年度によって変わり得るため、最新かつ正確な情報は必ず主催団体(公益財団法人 建築技術教育普及センター)の公式発表・受験要領、および資格学校の教材でご確認ください。
図で見る(全体像)
上図は考え方を示す模式図です。実際の課題文の設計条件・要求室・階数構成とは対応しません。
建築設備士2次試験(設計製図)とはどんな試験か
建築設備士は、建築士からの委託を受けて建築設備の設計・工事監理について助言を行う専門家としての国家資格です。試験は学科の試験(1次試験)と設計製図の試験(2次試験)の2段階で構成されており、1次試験に合格した人だけが2次試験に進めるという流れは、他の建築系国家資格と同じ構造です。
2次試験(設計製図の試験)は、ある用途・規模の建築物が与条件として示され、受験者は建築設備に関する計画(諸室の配置・機械室やシャフトの位置づけなど)と、選択した科目(空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備のいずれか)についての製図(系統図等)をまとめて解答するという枠組みで実施されている試験です。選択科目制であるため、受験者は自分の専門分野を1つ選んで深く問われるという点が、建築士の設計製図試験(意匠・構造・設備を横断的に、かつ設備は留意事項の1項目として扱う試験)との大きな違いだと筆者は捉えています。
具体的な出題形式・時間配分・選択科目の詳細な扱いは年度や実施要領によって変わり得るため、本記事では立ち入りません。受験を予定している方は、必ず主催団体の最新の受験要領と、資格学校の講座・対策本を確認したうえで準備を進めてください。
なぜ「ホテル」で対策しておく価値があるのか
建築設備士2次試験では、事務所・病院・学校・ホテルなど、さまざまな用途の建築物が想定されます。そのなかでもホテルは、1棟の中に性格のまったく異なる複数のゾーンが同居するという点で、設備計画の考え方を幅広く問える用途です。
- 客室:個室が大量に並ぶ、個別制御が前提の空間
- 宴会場・レストラン・ロビー:大空間・可変間仕切り・人数変動が大きい空間
- 厨房:火気・水・臭気を扱う特殊環境
- バックヤード・機械室:熱源・受変電・非常用発電などの裏方設備
この4つの性格の異なるゾーンを、限られた機械室面積・シャフト本数でどう成立させるかという整理の力が問われるため、ホテルという用途に一度きちんと向き合っておくと、事務所や病院など他の用途が出題された場合にも応用が利く「ゾーニングの型」が身につくと筆者は考えています。
客室系統の空調計画をどう系統図に表現するか
客室と共用部を「別系統」として切り分ける
客室は、宿泊者ごとに好む温度が違い、24時間いつでも快適さが求められる個室の集合体です。これに対し、宴会場・レストラン・厨房は使用時間帯も負荷の大きさも客室とはまったく異なります。このため、空調計画の第一歩は、客室系統と共用部系統を明確に分けて考えることに尽きると筆者は考えています。
客室の空調は、ファンコイルユニット(客室ごとに個別制御できる小型の室内機)と、外調機(外気を取り入れて温湿度調整・清浄化する外気処理空調機)を組み合わせる方式がよく使われます。客室側が「個別のきめ細かい調整」を担当し、外調機側が「フロアや系統単位でまとめた外気処理」を担当するという役割分担です。この考え方自体は用途別の空調設備計画やホテル・宿泊施設の設備計画で詳しく解説していますので、ここでは「これを計画図・系統図としてどう表現するか」に絞って整理します。
上図は客室階の空調系統の考え方を示す模式図です。実際の配管径・ダクトサイズ・機器容量は建物規模・負荷計算に応じて個別に決定する必要があります。
図面表現で押さえておきたいポイント
| 項目 | 客室系統 | 共用部系統(宴会場・レストラン・厨房) |
|---|---|---|
| 機器 | ファンコイルユニット(客室内)+外調機(機械室) | 空調機(AHU)を部屋・ゾーンごとに個別設置 |
| シャフト | 各階でPS(冷温水配管)・DS(ダクト)を客室列に沿って通す | 大空間直下や厨房脇に別系統のPS/DSを設ける |
| 機械室 | 基準階近傍または屋上に外調機置き場、地下または屋上に熱源機械室 | 宴会場・厨房の近くに専用の空調機置き場を確保 |
| 制御 | 客室ごとの個別リモコン、在室検知との連動 | ゾーンごとの手元操作、負荷変動への追従 |
計画図では、客室系統のPS・DSが基準階を素直に縦に通っているか(途中で他の用途のシャフトと交差・干渉していないか)、共用部の大型空調機の設置スペースが宴会場・厨房の実際の必要面積に対して無理のない大きさになっているかの2点を、まず自分の目で確認する習慣をつけておくと、記述問題(計画の要点等)でも根拠を持って説明しやすくなります。
給排水衛生計画:受水槽・給湯・客室排水系統をどう表現するか
水回りの起点:受水槽・高置水槽・揚水ポンプ
ホテルは客室数に応じて水の使用量そのものが大きく、かつ深夜から早朝までいつ使われてもおかしくない建物です。給水方式としては、受水槽(水道本管から一旦水を受ける槽)に水を貯め、揚水ポンプで高置水槽(建物上部に設けるタンク)へ汲み上げ、そこから重力で各階へ給水する方式や、ポンプ直送方式(増圧ポンプで直接送水する方式)が用いられます。どちらを採用するかは建物規模・階数・停電時の断水リスクへの考え方によって変わるため、計画図では受水槽・高置水槽の設置スペースと、それらをつなぐ立て管の位置が、客室系統のシャフトと無理なく共存できているかを確認しておくことが実務上のポイントです。給水・給排水設備の基礎は給水設備の計画で整理しています。
中央給湯・貯湯槽・循環配管という型
給湯は、客室数に比例して膨大な湯量が必要になり、しかも使用のピークが読みにくいというホテル特有の難しさを持つ系統です。中央給湯方式(建物内の熱源でまとめて湯を沸かす方式)を採用し、貯湯槽でピーク需要を吸収したうえで、循環配管(返湯管)によって常時お湯を循環させ、どの客室でも蛇口を開けた直後から温かい湯が出るようにするのが基本の型です。中央給湯・循環配管そのものの基礎は給湯設備の計画で詳しく解説しています。
上図は中央給湯方式の考え方を示す模式図です。実際の配管径・貯湯容量・循環流量は使用人数・稼働率をもとに個別に算定する必要があります。
給湯計画で製図・記述の両方で問われやすいのが、貯湯槽・配管内での湯の滞留によるレジオネラ属菌の繁殖リスクへの配慮です。具体的な管理温度や点検頻度は関連法令・所轄官署の基準によって定められているため、本記事では数値の断定は避けますが、「湯を滞留させず、一定以上の温度を保つよう循環させる」という考え方そのものは、計画の要点等で必ず触れておきたい論点です。
客室排水系統と厨房のグリストラップ
排水設備は、多数の客室からの排水を各階でまとめ、竪管(建物を縦方向に貫く配管)へ導く計画になるため、竪管の本数・配管勾配を確保できる天井裏・床下スペースを、計画図の早い段階で確保しているかが重要な確認ポイントになります。厨房排水は油分を含むため、グリストラップ(排水中の油脂分を分離・捕集する装置)を経由させてから排水系統に合流させる必要があり、客室系統とは別の排水経路として計画図に描き分けるのが基本です。
| 排水系統 | 主な発生源 | 製図・計画上の留意点 |
|---|---|---|
| 客室系統 | 洗面・浴室・トイレ | 竪管を基準階の客室列に沿って通し、他系統との干渉を避ける |
| 厨房系統 | 調理・洗浄排水 | グリストラップを経由させ、清掃しやすい位置に計画する |
| 宴会場・レストラン系統 | 洗面・水回り | 営業時間帯の使用集中に対応できる系統として客室系統と分離する |
電気設備計画:受変電・非常電源・客室セキュリティをどう表現するか
24時間運用が続くホテルの電気設備計画では、平常時の受変電計画と非常時の電源確保の両方を、系統図・計画図の両面で示せるようにしておくことが重要です。
- 受変電設備:客室・共用部・厨房・機械室の負荷を積み上げ、必要な受電容量を決め、キュービクル(受変電設備一式を収めた箱形の設備)の設置スペースを計画します。基礎的な考え方は受変電設備の基礎で整理しています。
- 非常用電源:停電時にも非常照明・防災設備・エレベーターの一部・フロント業務を維持するための自家発電設備や、UPS(無停電電源装置)による短時間のバックアップが必要です。非常用電源の基礎は消防用設備の非常電源の基礎、UPSの考え方はUPS(無停電電源装置)の基礎で解説しています。
- 客室のセキュリティ・カードキー連動:客室の電気錠(カードキーで解錠する仕組み)は、在室検知と連動させて空調・照明を制御する省エネの工夫にもつながります。電気錠・入退室管理設備の基礎は電気錠・入退室管理設備の基礎で整理しています。
電気設備を選択科目とする場合、幹線ルート・EPS(電気シャフト)の配置が、各階の客室列・共用部の負荷分布に対して無理のないものになっているかを、平面計画(客室系統・共用部系統のゾーニング)と整合させて描けるかどうかが、答案の説得力を左右するポイントになると筆者は考えています。
宴会場・多目的ホールの空調ゾーニング:可動間仕切りへの対応
宴会場・多目的ホールは、婚礼や宴会で満席になる時間帯と、未使用でほとんど負荷がない時間帯の差が非常に大きい部屋です。加えて、可動間仕切りで部屋を分割利用する運用が前提になっていることが多く、分割後もそれぞれの室で個別に温度調整できる系統分けが求められます。
上図は宴会場を可動間仕切りで分割利用する場合の空調系統の考え方を示す模式図です。実際の分割パターン・系統数は建物ごとの運用計画によって異なります。
計画図でこの論点を表現する際は、可動間仕切りの位置と、空調の吹出・還気の系統区分が一致しているかを必ず確認してください。間仕切りの位置と空調系統がずれていると、分割後の一方の部屋だけ空調が効きすぎる、あるいは効かないといった不整合が生じ、計画そのものの説得力を欠くことになります。
省エネ・BCPの観点:記述問題で問われやすいポイント
近年の設計製図系試験では、省エネルギー・BCP(事業継続計画:災害時にも重要な機能を維持・早期復旧させるための計画)への配慮が留意事項として明記される傾向が強まっています。ホテルという用途であれば、次のような論点を計画の要点等(記述)で説明できるように準備しておくと安心です。
- 客室の在室・不在検知と連動した空調・照明制御による省エネ
- 熱源・外調機での排熱回収、給湯とのエネルギー融通
- 非常用電源の運転時間、受水槽・高置水槽の確保水量に余裕を持たせるBCP対応
- 停電・断水時にも最低限の客室機能(照明・水回り)を維持する考え方
これらはいずれもZEB設備の省エネ基礎や給排水設備のBCP・耐震で扱っている考え方の応用であり、単独の知識としてではなく、ホテルという用途の特性(24時間運用・多数の客室・宿泊者の安全確保)と結びつけて説明できるかどうかが、記述の評価を分けるポイントだと筆者は考えています。
建築設備士2次試験(設計製図)対策チェックリスト
- 客室系統と共用部(宴会場・レストラン・厨房)系統を、平面計画の段階で明確に分けて考えられているか
- 客室の空調をファンコイル(個別制御)+外調機(外気処理)の役割分担で計画図に表現できているか
- PS・DS・EPSが基準階を無理なく縦に通り、他系統との干渉がない配置になっているか
- 受水槽・高置水槽・揚水ポンプの設置スペースと、給水立て管の位置を確保しているか
- 給湯計画は中央給湯・貯湯槽・循環配管という型で表現し、レジオネラ属菌対策の考え方にも触れているか
- 客室排水系統の竪管、厨房のグリストラップを、それぞれ描き分けているか
- 受変電容量・非常用電源・幹線ルートが、負荷分布と整合した計画になっているか
- 宴会場の可動間仕切りと空調系統の区分が一致しているか
- 省エネ・BCPの観点を、ホテルという用途の特性と結びつけて記述できる準備があるか
- 図面と記述(計画の要点等)の内容に矛盾がないか、最後に通して見直したか
よくある質問
建築設備士2次試験の対策は、一級建築士の設計製図試験対策と同じ進め方でよいですか?
用途の読み解き方や図面表現の基本(ゾーニング・動線・系統図の描き方)には共通する部分もありますが、建築設備士2次試験は選択科目制で、自分の専門分野についてより深い技術的な内容が問われる点が異なります。設備分野の深さを重視した対策が必要になると筆者は考えています。
ホテル以外の用途が出題された場合でも、この記事の考え方は使えますか?
客室系統と共用部系統を分けて考える、といった「性格の異なるゾーンをどう区分し、機械室・シャフトの配置に落とし込むか」という整理の型は、事務所・病院・学校など他の用途にも応用できる考え方です。ただし各用途特有の論点(病院の動線分離、学校の長期休暇対応など)は別途押さえる必要があります。
系統図はどこまで細かく描けばよいのでしょうか?
具体的な作図の精度・範囲は年度の試験問題・受験要領によって指定されるため、本記事では踏み込みません。まずは「どの機器とどの機器が、どの配管・ダクト・電線でつながっているか」という接続関係を、迷わず描けるようになることを目標に練習しておくとよいと筆者は考えています。
貯湯槽の容量やレジオネラ対策の管理温度は、具体的に何度・何リットルと覚えればよいですか?
具体的な数値基準は関連法令・ガイドラインで定められていますが、建物規模や使用パターンによって必要な容量は変わるため、本記事では断定を避けています。実際の設計・受験対策にあたっては、最新の法令・ガイドラインおよび資格学校の教材で正確な数値を確認してください。
まとめ
- 建築設備士2次試験(設計製図)は選択科目制で、自分の専門分野についてより深い技術内容が問われる試験
- ホテルは客室系統・宴会場系統・厨房系統など性格の異なるゾーンが同居し、ゾーニングの型を身につける練習に適した用途
- 客室空調はファンコイル(個別制御)+外調機(外気処理)を計画図・系統図でどう表現するかがポイント
- 給排水衛生は受水槽・高置水槽、中央給湯・貯湯槽・循環配管、客室排水系統とグリストラップを描き分ける
- 電気設備は受変電・非常用電源・客室セキュリティを負荷分布と整合させて計画する
- 宴会場は可動間仕切りと空調系統の区分を一致させることが評価の分かれ目になりやすい
- 省エネ・BCPの観点は、ホテルという用途の特性と結びつけて記述できるよう準備しておく
具体的な出題形式・配点・時間割は年度によって変わり得るため、本記事はあくまで設備計画の考え方を整理したものとして活用し、最新の受験要領・資格学校の教材とあわせて対策を進めていただければと思います。
あわせて読みたい
- #建築設備士
- #2次試験
- #設計製図
- #ホテル設備
参考書籍でさらに学ぶ
※ この欄は書籍のアフィリエイト広告(Amazon・楽天)を含みます。価格・在庫・最新の年度版はリンク先でご確認ください。
建築設備士 必携テキスト
建築一般知識・建築法規・建築設備の3科目を1冊で。分野全体の土台づくりに。
空調・給排水衛生設備の実務書
熱源・空調・給排水を体系的に整理した実務書で理解を定着。
関連記事
共同住宅(マンション)の設備計画の基礎|給水方式の選び方とPS・専有部/共用部の区分
共同住宅(マンション)の設備計画は、住戸ごとの給水・給湯・排水を、パイプスペース(PS)という限られた縦の空間にどう集約するかが出発点になります。給水方式の選び方、専有部と共用部の設備の区分、住戸メーターの考え方を整理します。
地中熱利用システムの基礎|地中熱ヒートポンプの仕組みとクローズドループ・オープンループの違い
地中の温度が年間を通じてほぼ一定であることを利用する地中熱ヒートポンプの仕組みと、クローズドループ・オープンループという2つの方式の違い、他の熱源方式との位置づけ、導入時に確認しておきたい留意点を整理します。
衛生器具設備の基礎|大便器・小便器・水栓の選定と節水の考え方
大便器・小便器・洗面器といった衛生器具は、給水方式や洗浄方式の違いによって必要な水圧・配管サイズ・使い勝手が変わります。器具の選定が配管計画や節水性能とどうつながるかを、基本設計段階の考え方として整理します。