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基本設計管工事(空調・給排水)

衛生器具設備の基礎|大便器・小便器・水栓の選定と節水の考え方

給排水衛生設備の計画というと、給水管・排水管のサイズや系統図に目が向きがちですが、その配管の末端に実際に水が出入りする「衛生器具」そのものの選定も、同じくらい重要な検討事項です。大便器の給水方式一つを取っても、ロータンク式か洗浄弁式かによって必要な水圧や配管サイズが変わり、選び方を誤ると器具は決まっているのに配管計画が成立しない、という手戻りにつながります。

この記事では、衛生器具設備の全体像から、大便器・小便器・洗面器の種類、逆流防止の考え方、器具側の水の使い方を配管サイズに反映させる「器具給水負荷単位」という考え方、そして節水機器・バリアフリー対応の視点までを、基本設計段階で押さえておきたい内容として整理します。トラップと通気の仕組みは排水トラップと通気の基礎|封水とは何か、封水切れで臭う仕組み、給水方式全体の考え方は給水設備の計画|給水方式の種類・節水・水質保全の考え方であわせて扱っていますので、参照してください。


図で見る(全体像)

大便器の給水方式(ロータンク式・洗浄弁式)の違い、逆流防止の考え方、器具給水負荷単位が配管サイズにつながる流れを示す模式図


早見まとめ

項目考え方の要点
大便器の給水方式ロータンク式(タンクに貯めた水で洗浄)と洗浄弁式(給水管の圧力で直接洗浄)に大別される
洗浄弁式の必要条件ある程度の給水圧力と管径を必要とし、集合住宅や住宅では採用しづらい場合がある
小便器手動式・自動感知式(センサー式)があり、公共施設では感知式が主流になりつつある
逆流防止洗浄弁・水栓の吐水口空間やバキュームブレーカで、汚水の給水管側への逆流を防ぐ
器具給水負荷単位器具ごとの使用実態を数値化し、合算して配管サイズを決めるための考え方
節水機器JIS等の規格に節水性能の区分があるが、基準は改定されることがあるため最新版を確認する

※上表は一般的な考え方の目安です。具体的な機種・性能値は建物用途・給水圧力・メーカー仕様により個別に確認してください。


衛生器具設備とは何か

衛生器具設備とは、大便器・小便器・洗面器・手洗器・浴槽・流し類など、給水・給湯・排水がつながる末端の器具全体を指します。給水設備・排水設備がどれだけ適切に計画されていても、その末端にある器具の選定が用途に合っていなければ、使い勝手や維持管理面で問題が生じます。

衛生器具の選定は、意匠設計側のデザイン検討という側面もありますが、設備設計の立場からは「その器具が必要とする給水圧力・配管サイズ・排水方式が、建物の給排水計画と整合しているか」という視点で確認することが欠かせません。特に大便器の給水方式は、配管計画に直接影響する代表的な論点です。


大便器の給水方式:ロータンク式と洗浄弁式

大便器の洗浄に使う水をどう供給するかは、大きく分けて2つの方式があります。

方式仕組み特徴
ロータンク式(タンク式)便器上部または背面のタンクに水を貯めておき、レバー操作でタンク内の水を一気に流して洗浄する給水管の圧力が低くても使える。連続使用には向かず、タンクへの補給時間が必要
洗浄弁式(フラッシュバルブ式)タンクを介さず、給水管の圧力そのものを使ってバルブを開閉し、直接洗浄するタンクが不要で連続使用に強い。ある程度の給水圧力と、タンク式より太い管径を必要とする

住宅・小規模な集合住宅ではロータンク式が主流ですが、事務所ビル・商業施設・学校など不特定多数が短時間に連続して使用する建物では、連続使用に強い洗浄弁式が選ばれる傾向にあります。ただし洗浄弁式を採用する場合は、必要な給水圧力を確保できるかどうかを、給水設備の計画段階で確認しておく必要があります。マンションの上層階や、増圧ポンプの能力に余裕がない建物では、洗浄弁式の採用に制約が出ることもあるため、器具選定と給水方式の検討は独立させず、あわせて進めるのが実務の基本です。


小便器・洗面器・手洗器の種類

小便器は、洗浄操作の方式によって手動式(レバー・押しボタン)と自動感知式(センサーで人の動きを検知して自動洗浄する方式)に大別されます。不特定多数が使う公共施設・商業施設のトイレでは、衛生面・節水面の観点から感知式が主流になりつつありますが、感知式は電源(乾電池または外部電源)が必要になるため、電気設備側との調整が必要です。

洗面器・手洗器についても、水栓の方式(単水栓・混合水栓・自動水栓)や、器具の据付け方式(壁掛け・カウンター埋め込み等)によって、必要な配管・配線が変わります。特に自動水栓・自動洗浄式の器具を採用する場合は、給排水だけでなく電源の確保が前提になる点を、基本設計の早い段階で建築・電気設計者と共有しておくことが望ましいと筆者は考えています。


逆流防止の考え方

衛生器具まわりで見落とされがちなのが、逆流防止の考え方です。洗浄弁や水栓の吐水口が、汚水や汚染された水の水面に浸かってしまうと、給水管内の圧力変動によって汚水が給水系統側に逆流し、水質汚染を引き起こすおそれがあります。

これを防ぐための基本的な考え方が、吐水口空間の確保(水栓の吐水口を、あふれ縁から一定の空間をあけて設置する)と、バキュームブレーカ(逆流防止装置)の設置です。特に洗浄弁式の大便器・散水栓など、吐水口空間を十分に確保しにくい器具には、バキュームブレーカの設置が求められます。給水設備全体における水質保全の考え方は給水設備の計画|給水方式の種類・節水・水質保全の考え方であわせて整理していますので、参照してください。


器具給水負荷単位という考え方

給水管のサイズを決める際、すべての器具が同時に最大流量で使われることを想定して配管を太くすると、過大な設計になってしまいます。そこで実務では、器具ごとの使用実態(同時使用率や1回あたりの使用水量の傾向)を数値化した「器具給水負荷単位」という考え方を使い、建物内の器具構成から必要な給水管サイズを合理的に決定します。

器具の種類・個数によって負荷単位の合計が変わり、その合計値をもとに給水主管・枝管のサイズを設計するという流れになります。具体的な単位の数値は規格・設計指針によって定められているため、この記事では考え方の骨格を示すにとどめ、実際の配管サイズ算定は空気調和・衛生工学会規格等の最新版を参照して行うことが前提です。


節水機器の考え方

近年の衛生器具は、水資源の有効利用とランニングコストの観点から、節水性能を重視して選定されるのが一般的です。大便器・小便器ともに、メーカー各社が節水型の機種をラインアップしており、JIS等の規格にも節水性能の区分が設けられています。

ただし、節水基準に関する数値は、規格の改定にともなって変わることがあります。設計時点で「節水型だから安心」と決めつけず、選定の都度、最新のJIS規格・メーカーカタログで性能値を確認することが実務上のポイントです。改修工事で既存の非節水型器具を節水型に更新する場合は、給水管サイズが過大になっていないかもあわせて確認しておくと、更新後の使い勝手を損ないません。


バリアフリー対応の視点

不特定多数が利用する建物では、多目的トイレ・バリアフリートイレの計画も衛生器具選定と切り離せない検討事項です。車椅子使用者・高齢者・オストメイト(人工肛門・人工膀胱を造設した人)など、利用者の特性に応じて、便器の高さ・手すりの配置・水栓の操作方式(レバー式・自動式)を検討する必要があります。視覚障害者向けの音声誘導・案内設備については音声誘導・視覚障害者誘導設備の基礎|バリアフリー法と建物側の設備計画であわせて扱っていますので、参照してください。バリアフリー対応の具体的な整備水準は、建物の規模・用途によって関係法令・条例の適用範囲が異なるため、計画の早い段階で所轄行政・建築設計者と確認することが前提になります。


実務での判断・よくある誤解

「洗浄弁式のほうが高機能だから、どの建物にも採用すればよい」というのは誤解です。 洗浄弁式は連続使用への強さでは優れますが、必要な給水圧力・配管サイズという条件が伴います。住宅系の建物で無理に洗浄弁式を採用しようとすると、増圧ポンプの容量が過大になり、結果的にコストと省エネの両面で不利になることがあります。建物用途・利用者数・給水方式全体とのバランスで判断することが実務の基本です。

もう一つの誤解が、「節水型器具にすれば配管サイズも自動的に細くできる」という考え方です。節水型器具は1回あたりの使用水量を抑えるものであり、器具給水負荷単位の算定に影響する場合はありますが、配管サイズは建物全体の器具構成・同時使用率から総合的に決まるため、器具の節水性能だけで単純に判断はできません。


まとめ

  • 衛生器具は給排水計画の末端であり、器具が必要とする給水圧力・配管サイズが建物の給排水計画と整合しているかの確認が欠かせない
  • 大便器の給水方式はロータンク式と洗浄弁式に大別され、洗浄弁式は連続使用に強い一方、給水圧力・配管サイズの条件が伴う
  • 小便器・洗面器の自動感知式・自動水栓は、給排水だけでなく電源の確保が前提になる
  • 逆流防止は吐水口空間の確保とバキュームブレーカの設置が基本的な考え方
  • 器具給水負荷単位は、器具の使用実態を数値化して配管サイズを合理的に決めるための考え方
  • 節水機器・バリアフリー対応は、いずれも規格・法令の改定があり得るため、選定時点で最新の情報を確認することが前提

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