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基本設計管工事(空調・給排水)

空調機械室・PS(パイプスペース)の計画の基礎|配置・保守スペース・搬入経路の考え方

熱源機器やポンプ類を収める機械室、そして各階へ配管を届けるPS(パイプスペース)の計画は、熱源方式そのものの選定と同じくらい、竣工後の使い勝手を左右する検討事項です。配置がまずければ点検動線が悪くなり、広さや搬入経路が足りなければ将来の機器更新が難しくなり、PSの位置が各階でずれれば配管ルートが遠回りになってコストが膨らみます。しかもこれらの多くは建築計画がある程度固まった後では手戻りが大きく、基本設計の早い段階で設備設計者と建築設計者が一緒に検討しておく必要がある項目です。

この記事では、機械室の配置を決める際の考え方、保守点検スペースと搬入経路の確保、換気による発熱処理、そして各階を垂直に貫くPSの計画までを、基本設計段階で押さえておきたい視点として整理します。熱源方式そのものの選び方は熱源設備計画の基礎|中央熱源と個別分散、蓄熱式空調システムの考え方、電気設備側の同種の検討である電気室・EPSの計画は電気室・EPSの計画|位置・広さの目安・搬入経路・浸水対策の考え方であわせて参照してください。


図で見る(全体像)

機械室は熱源機器の保守スペースと搬入経路・換気で計画し、PSは各階同一位置に配置して防火区画の貫通処理をあわせて行うことを示す模式図


早見まとめ

項目考え方・目安
配置熱源負荷の中心に近い場所を基本としつつ、地下設置は浸水リスクを踏まえて可否を検討する
広さ機器本体の寸法に、保守点検スペース・将来の増設スペース・搬入ルートを積み上げて決める
換気機器の放熱量、燃焼機器であれば燃焼空気量・排ガス発生量に基づいて換気量を計画する
搬入経路熱源機器等の重量物が入る開口・通路・床の耐荷重と、将来の更新時にも使える経路かを確認する
PSの配置各階で同一位置に配置し、貫通部は防火区画の措置を行い、将来の増設余地を持たせる
防振・遮音ポンプ・冷凍機等の振動源には防振対策を、居室との配置関係も含めて検討する

※上表は国土交通省「建築設備設計基準」に示された考え方を踏まえた要点整理です。具体的な広さ・換気量・PS断面は建物の規模・用途・機器仕様により個別に確認してください。


機械室・PSとは何か

機械室は、ボイラー・冷凍機・冷却塔・ポンプといった熱源機器や、給排水設備のポンプ類をまとめて設置する室です。建物に熱と水を供給する「心臓部」にあたり、ここでの配置・広さの判断が、建物全体の熱源方式・省エネ性能にも影響してきます。

PS(パイプスペース)は、機械室から各階へ配管を通すための、建物を垂直に貫く配管用のスペースです。電気設備でいうEPS(電気シャフト)にあたる存在で、配管が通る「血管」の通り道にあたります。機械室とPSは別々の検討事項に見えますが、機械室で作られた熱源・水を各階に届けるという一連の流れのなかで、セットで計画する必要がある単元です。


機械室配置と広さの基本的な考え方

機械室をどこに置くかを検討する際の基本的な考え方は、電気設備の受変電設備と同様に、熱源負荷の中心にできるだけ近い場所を選ぶというものです。機械室から各階へ配管を届けるルートが長くなるほど、ポンプの揚程やPS断面の圧迫、配管コストの増大といった問題につながりやすくなります。

実際の建物では地下階や屋上に機械室を設ける計画が多く見られます。地下は大型機器を収める床面積・階高を確保しやすく、屋上は外気に開放されているため冷却塔の設置や自然換気に有利という事情があります。ただし、地下に機械室を設ける場合は、電気室と同様に浸水リスクへの配慮が欠かせません。想定される浸水深に対して床レベルを上げる、出入口・換気口に止水板や防水性能を持つ扉を設けるといった対策の要否を、敷地のハザードマップ・浸水想定区域図を確認したうえで検討することが望ましいと筆者は考えています。

国土交通省の建築設備設計基準でも、機器の配置は「メンテナンスに必要な保守スペース、将来用の増設スペース及び更新時における機器の搬出入ルートを確保する」という考え方が、電気室・発電機室・通信機器室などの各室に共通する原則として示されており、熱源機器についても「保守点検スペースを合理的に確保して配置する」ことが求められています。具体的な広さの数値は機器の仕様・台数・搬入方法によって個別に変わるため一律には語れませんが、機器周囲にフィルタ交換・分解点検が行える作業スペースを確保できているか、将来より大型・高効率な機器に更新する可能性を見込んでいるかは、基本設計の早い段階で確認しておきたい視点です。機械室は電気室と同様、後から拡張しにくい部類の空間だと筆者は考えています。


換気計画:発熱・燃焼空気の処理

機械室内の換気量は、建築設備設計基準において「機器からの放熱量、燃焼空気量、排気ガスの発生量等に基づき算定する」という考え方が示されています。熱源機器は稼働中に相応の熱を発生させるため、この熱を排出できなければ室温が上昇し、機器の性能低下や周辺機器への悪影響につながります。

また、ボイラーのように燃焼装置を備える熱源機器を設置する室では、燃焼に必要な空気を確保するとともに、燃焼にともなう熱・排ガスを適切に排出するための換気設備等を設けることが原則です。冷却塔を機械室・屋上に設置する場合は、外気との熱交換に支障のない周囲空間を確保し、必要に応じて騒音・振動・凍結・レジオネラ属菌の繁殖等を防止する措置もあわせて検討する必要があります。


搬入経路・将来更新への備え

熱源機器・ポンプ類は大型・重量物になることが多く、搬入経路の確保は機械室計画のなかでも特に手戻りが大きい項目です。検討すべき視点を整理すると、次のようになります。

検討項目主なポイント
搬入口の位置・寸法屋外から機械室まで、機器が通過できる開口幅・高さを確保できているか
搬入経路の耐荷重通路床・スロープ・エレベーターなどが重量物の搬入に耐えられるか
揚重計画クレーンや台車が使えるスペース、作業時の安全対策が確保できているか
将来の更新竣工後に機器を入れ替える際、竣工時と同じ経路で搬出入できるか

搬入経路は竣工時の一度きりの検討で終わらせず、「将来この経路をもう一度使えるか」という視点を持っておくことが実務上重要です。


PS(パイプスペース)の計画

PSは、機械室から各階へ配管を通すための垂直シャフトです。計画するうえでの基本的な考え方は、電気設備のEPSと共通する部分が多くあります。

  • 各階で同一位置に配置する:階によってPSの位置がずれると、上下階をつなぐ配管を横引きせざるを得ず、施工性・保守性の両面で不利になる
  • 将来の増設余地を持たせる:竣工時点の系統だけでなく、将来のテナント入替えや設備更新による配管の増設を見込んだ余裕を確保する
  • 防火区画の貫通処理を徹底する:PSは各階の床・壁を貫通する経路であるため、貫通部には防火区画を成立させるための耐火措置が必要になる。防火区画の考え方全般は防火区画と設備の取り合い|区画貫通処理・ファイヤーダンパーの基礎もあわせて参照してほしい
  • 点検口を各階に確保する:竣工後もバルブ操作・漏水確認・増設ができるよう、点検口の位置・大きさを確保する

PSに必要な断面積は、建物の規模・用途・配管系統の本数によって大きく変わるため一律の数値では語れませんが、想定される配管本数と保温被覆を含めた占有幅から必要断面を積み上げ、将来増設分の余裕を上乗せして検討するという考え方は共通しています。


防振・騒音、耐震支持との関係

機械室に設置される冷凍機・ポンプ・冷却塔は、稼働中に振動・騒音を発生させます。居室に機械室が隣接・近接する配置になる場合は、防振ゴムや防振架台による振動源対策、壁・床の遮音性能の確保といった配慮が必要です。防振・騒音対策の詳細な考え方は設備機器の防振・騒音対策の基礎|防振ゴム・消音器と伝搬経路の考え方で整理していますので、あわせて参照してください。

また、機械室内の機器・配管は、地震時にも転倒・脱落しないよう耐震支持を計画する必要があります。防振支持と耐震支持は目的が異なるため、防振架台を採用した機器には、地震時のずれを抑える耐震ストッパを別途組み合わせるのが基本的な考え方です。耐震クラスの区分・支持間隔の考え方は設備機器・配管の耐震支持の基礎|耐震クラスS・A・Bと設計用水平震度の考え方で扱っています。


実務での判断:優先順位の付け方

機械室・PSの計画では、配置・広さ・換気・搬入経路・防振・耐震・防火区画といった検討項目が同時並行で出てきます。すべてを完璧に満たす配置は現実には見つからないことが多く、実務ではどの条件を優先するかの判断が必要になります。

一般的な優先順位の考え方としては、まず「安全上譲れない条件」(浸水リスクの高い場所を避ける、防火区画を成立させる、耐震支持を確保する)を先に固定し、そのうえで「使い勝手・コストに関わる条件」(熱源負荷中心との近さ、搬入経路の合理性、将来の増設余地)を調整していく、という順番が実務的です。


まとめ

  • 機械室は熱源機器・ポンプ類の設置場所、PSは各階へ配管を届ける垂直シャフトで、セットで計画する単元
  • 機械室の配置は熱源負荷の中心に近い場所が基本だが、地下設置には浸水リスクへの配慮が必要
  • 機械室の広さは機器寸法に保守点検スペース・将来の増設スペース・搬入ルートを積み上げて決める
  • 換気量は機器の放熱量・燃焼空気量・排ガス発生量に基づいて算定するのが基本の考え方
  • PSは各階で同一位置に配置し、防火区画の貫通処理と将来の増設余地を確保することが基本
  • 防振・耐震・搬入経路など複数の検討項目を、安全上譲れない条件から優先して固定していくのが実務的な進め方

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