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実施設計管工事(空調・給排水)

設備機器・配管の耐震支持の基礎|耐震クラスS・A・Bと設計用水平震度の考え方

設備機器や配管の耐震設計は、突き詰めると「その機器・配管に、地震のときどれくらいの力が働くと想定するか」と「その力に耐えられるよう、どう固定するか」という2つの判断の積み重ねでできています。前者を決めるのが耐震クラスと設計用水平震度、後者を担うのがアンカーボルトや配管の支持金物、防振支持機器の耐震ストッパといった具体的な部材です。

この記事では、財団法人日本建築センターの「建築設備耐震設計・施工指針」の枠組みをベースに、耐震クラスS・A・Bの考え方と設計用水平震度の基本、機器・配管・ダクト・電気配線それぞれの耐震支持、エキスパンションジョイント部や貫通部の変位吸収、天井吊り機器の扱い、施工・検査で確認すべき点までを実務目線で整理します。受水槽の転倒防止や緊急遮断弁といった防災・BCPの視点は給排水設備のBCPと耐震対応で扱っているため、本記事では「支持・固定をどう設計するか」に絞って書いています。

なお、本記事で紹介する震度や倍率の値は、指針の版や個別プロジェクトの条件によって変わり得る目安です。実際の設計・施工にあたっては、必ず最新版の指針・関連法令、所轄行政庁、設計者・構造設計者に確認してください。


早見まとめ

耐震クラスS・A・Bの考え方

耐震クラス 位置づけ(考え方) 代表的な対象のイメージ
S 重要度の高い施設における重要機器(地震後も機能継続が強く求められる組み合わせ) 防災拠点・避難所となる施設の防災用電源や重要な熱源・搬送設備など
A 重要度の高い施設の一般機器、または一般的な施設の重要機器 特定施設の一般的な機器/一般建物の受変電設備・熱源機器など重要度の高い機器
B 一般的な施設における一般的な機器 一般の建物における通常の機器
  • 耐震クラスは「建物・施設の重要度」と「機器そのものの重要度」を掛け合わせて考える区分で、どちらか一方だけでは決まりません。
  • 防振装置(防振ゴム・防振架台)を介して支持する機器は、固定した機器より地震時の挙動が複雑になるため、原則として耐震クラスAまたはSを適用する考え方が指針に示されています。
  • 実際のクラス判定は建築主・設計者・所轄行政庁との協議事項であり、一律の基準ではありません。

局部震度法による設計用標準震度の目安

設置階の区分 クラスS クラスA クラスB
上層階・屋上・塔屋 2.0 1.5 1.0
中間階 1.5 1.0 0.6
地階・1階 1.0 0.6 0.4
  • 設計用水平震度KH(機器の重心に働く水平方向の慣性力を求める係数)は、この設計用標準震度KSに地域係数Zを乗じて求めるのが基本の考え方です(KH=Z×KS)。
  • 上層階ほど値が大きいのは、建物の揺れが上層階に向かうほど増幅されやすいためです。
  • 水槽類は地階・1階に設置する場合、機器一般とは異なる値が適用されることがあります。数値は指針の版で変わり得るため、実設計では最新版を確認してください。

耐震クラスS・A・Bという物差し

設備機器の耐震設計でまず決めなければならないのは、「その機器にどれだけの地震力を想定するか」という物差しです。この物差しの役割を果たすのが耐震クラスS・A・Bで、建物・施設としての重要度と、機器そのものの重要度という2つの軸を組み合わせて判断します。

たとえば同じ受変電設備でも、災害時に地域の拠点となる施設に設置される場合と、一般的な事務所ビルに設置される場合とでは、地震後に求められる機能継続のレベルが異なります。前者では停電が周辺地域の対応能力にまで影響しかねないため、後者よりも高いクラスを適用して固定を強化する、という考え方になります。逆に言えば、耐震クラスは機器の物理的な性能ではなく「その機器が止まったときの影響の大きさ」を反映した設計上の区分であるという点が、実務でつまずきやすいポイントです。

もうひとつ実務で見落とされがちなのが、防振装置(防振ゴム・防振架台)を介して機器を支持している場合の扱いです。防振支持された機器は、固定支持の機器に比べて地震時の揺れ方が複雑になりやすいため、固定の重要度だけで単純にクラスBとするのではなく、原則として一段階上のクラス(AまたはS)を適用する考え方が示されています。空調機やポンプなど防振架台に載った機器を扱う際は、この点をあらかじめ設計条件に織り込んでおく必要があります。


設計用水平震度:なぜ上層階ほど厳しくなるのか

耐震クラスが決まると、次に必要になるのが「その機器に実際どれだけの地震力が働くと見込むか」という計算です。ここで使われる代表的な考え方が局部震度法で、設備機器を変形しない剛体とみなし、設置階の床応答加速度に機器の重量を掛けて、重心位置に働く慣性力として地震力を求めます。

この計算の基準になるのが設計用標準震度KSで、早見まとめの表のとおり、耐震クラスと設置階の組み合わせによって0.4~2.0の範囲で定められています。上層階・屋上・塔屋で値が大きくなるのは、地盤から建物に入った地震動が、上層階に向かうにつれて建物の揺れとして増幅されやすいためです。屋上に設置される機器や、塔屋内の設備が地震被害を受けやすいと言われるのは、この増幅の影響を受けやすい位置にあることが一因になっています。

実際の設計用水平震度KHは、このKSに地域係数Z(通常は1として扱われることが多い)を乗じて求めます。地震力そのものは、このKHに機器の重量を掛けた値として算定され、この地震力に耐えられるようアンカーボルトや基礎、支持金物のサイズ・形状を決めていく、という流れになります。動的解析を行っている建物では、各階の床応答加速度から求めた予備設計用水平震度を、段階的な値に換算して用いる方法も併用されます。


機器の固定:アンカーボルトの検討と防振支持の耐震ストッパ

アンカーボルトの検討

固定支持の機器で最も基本的な耐震要素がアンカーボルトです。アンカーボルトには主に2つの力がかかると考えます。

  • 引抜き力:転倒しようとする機器を、基礎やスラブから引き抜こうとする力
  • せん断力:機器が水平方向にずれようとする力に対して、これを止める力

この2方向の力に対して、ボルトの本数・径・埋込み長さが十分かを検討するのがアンカーボルトの基本設計です。実務上の代表的な留意点としては、ボルトを基礎の端に寄せすぎないための辺あき寸法の確保、あと施工アンカーの許容引抜き荷重には床上面・床下面・壁面で違いがあること、同一箇所では原則として同じ種類・径のボルトを使い、1本あたりの負担が均等になるようにすることなどが挙げられます。また、アンカーボルトの打込み間隔は、ボルト径に対して十分な倍率を確保し、埋込み長さに対しても余裕を持たせる必要があるとされています。具体的な許容荷重や寸法条件は指針・製造者資料で規定されているため、機器の重量・重心位置・アンカー種別に応じて個別に確認することが前提になります。

防振支持機器の耐震ストッパ

空調機・ポンプ・冷却塔などを防振ゴムや防振架台で支持している場合、防振ゴムそのものは地震時の大きな水平力を受け止める設計にはなっていません。そこで設けるのが耐震ストッパで、平常時は機器の微振動を妨げず、地震のような大きな変位が生じたときだけ機器の動きを止める役割を持っています。

耐震ストッパの検討で実務上のポイントになるのが、ストッパと機器のあいだのすきま(クリアランス)です。すきまが大きすぎると、機器が動き出してから止まるまでの衝撃が大きくなり、逆に小さすぎると平常時の微振動までストッパに当たってしまい、防振効果を損ないます。過去の地震被害の分析では、防振基礎に設ける耐震ストッパのすきまを1cm程度以下に抑えることが望ましいという考え方が示されており、あわせてストッパ自体をアンカーボルトで構造体に堅固に固定することが前提になります。防振ゴム・防振架台による振動対策の基本的な考え方は設備機器の防振・騒音対策の基礎で解説しているので、防振設計とセットで確認するとよいと思います。

なお、受水槽・高置水槽の転倒防止措置や緊急遮断弁は、機器の固定という点では本記事の内容と地続きですが、断水・停電時の機能維持というBCPの視点が強い項目のため、給排水設備のBCPと耐震対応で扱っています。


配管・ダクト・電気配線の耐震支持

機器本体だけでなく、そこにつながる横引き配管・立て配管・ダクト・電気配線(ケーブルラック等)にも、それぞれ耐震支持が求められます。配管類は機器に比べて柔軟性があるため、支持材に求める強度は機器より小さく設定される一方、支持の「間隔」や「向き」が重要になるのが特徴です。

代表的な考え方として、横引き配管では上層階・屋上・塔屋で標準的な支持間隔よりも短い間隔で振れ止めを兼ねた耐震支持を設け、中間階では一定の距離ごとに耐震クラスに応じた支持を配置し、地階・1階では比較的軽い仕様で足りるとされています。ダクトや電気配線についても、一定の距離ごとに1箇所は耐震クラスに応じた支持材(形鋼で組んだものと、引張り材で組んだものの2系統)を設ける考え方が示されています。ただし、口径・断面が小さい配管や、つり材の長さが短いものなど、地震時の慣性力自体が小さいとみなせる場合には、この耐震支持の対象から除外される規定もあります。

支持金物の系統 対応する耐震クラスの目安 部材構成の特徴
引張り・圧縮・曲げに対応する形鋼系 クラスS・Aに対応 引張り力・圧縮力・曲げモーメントのそれぞれに対応する部材を組み合わせて構成
引張り材のみで構成する系統 クラスBに対応 圧縮力を自重による引張り力と相殺させる考え方で構成

立て配管については、地震時に建物に生じる層間変位(各階のあいだのわずかなずれ)によって配管に強制的な変形が生じることが問題になるため、支持・固定の間隔は配管の柔軟性や継手の種類(溶接・ねじ接合など)を踏まえて決める必要があります。系統全体でバランスよく支持点を配置し、特定の箇所に力が集中しないようにする視点は、機器・配管いずれの耐震支持にも共通する考え方です。


変位を吸収する部分:エキスパンションジョイントと貫通部

建物が構造的に分かれている継ぎ目(エキスパンションジョイント)をまたいで配管・ダクトを通す場合は、両側の建物が地震時に別々に揺れることを前提に、十分な可とう性を持つ継手(可とう継手・フレキシブル継手)を挟み込んで変位を吸収する必要があります。剛体のまま継ぎ目をまたいでしまうと、両側の建物の相対変位がそのまま配管への強制変形として作用し、破断や継手の外れにつながりやすくなります。同様に、屋外から建物内へ引き込む配管の導入部も、地盤と建物本体の揺れ方の違いを吸収できるよう、可とう性のある接続とするのが基本です。

また、配管・ダクトが防火区画や梁・壁を貫通する箇所では、地震時の変位を吸収する余裕(クリアランス)を確保しつつ、区画としての耐火性能を損なわないように処理する必要があります。耐震のための可とう性の確保と、防火区画としての遮断性能の確保は、時に相反する要求になりやすいため、貫通部の仕様は耐震・防火の両方の観点から、所轄消防署・設計者と確認しながら決めることが実務上のポイントです。

免震構造を採用する建物では、建物本体の揺れそのものを小さく抑える発想になるため、エキスパンションジョイント部の可とう性に求められる変位量の考え方も通常の耐震構造とは異なってきます。免震・制振構造そのものの基本は免震・制振構造と建物の振動の基礎で整理しているので、構造計画の段階から設備側の変位吸収と整合させておくとよいと思います。


天井吊り機器の耐震支持

軽量の空調機器や照明器具などを天井から吊る場合、吊りボルト自体の強度に加えて、地震時に横方向へ揺れることを抑える振れ止め(斜め材・ブレース)が必要になります。吊りボルトだけで垂直に吊っている状態は、水平方向の揺れに対してほとんど抵抗できないため、一定間隔ごとに斜め材を設けて振れを抑制するのが基本の考え方です。

なお、天井そのものについても、高さや面積が一定規模を超える吊り天井(特定天井)では、建築基準法令に基づく技術基準により、斜め部材による振れ止めや、天井面と壁とのあいだのクリアランス確保などが求められています。天井裏に設備機器やダクト・配管が輻輳する場合、設備側の吊り材・振れ止めと、天井そのものの耐震対策とが互いに干渉しないよう、天井の構造形式を踏まえて計画段階から調整しておくことが望ましいと考えられます。


施工・検査で確認すべきポイント

耐震支持は設計段階で仕様を決めるだけでなく、施工・検査の段階で「設計どおりに施工されているか」を確認することが同じくらい重要です。実務でよく確認される項目には、次のようなものがあります。

  • アンカーボルトの本数・径・埋込み長さが図面どおりか、辺あき寸法が確保されているか
  • アンカーボルトの締付けが適切に行われているか(設置後の増し締めを含む)
  • 耐震ストッパのすきまが仕様どおりに調整されているか、ストッパ自体が堅固に固定されているか
  • 配管・ダクト・電気配線の耐震支持金物が、指定された間隔・種別どおりに設置されているか
  • エキスパンションジョイント部・貫通部の可とう継手が、変位を吸収できる向き・余長で納まっているか
  • 天井吊り機器の振れ止めが、天井本体の下地・構造耐力上主要な部分に適切に緊結されているか

これらは竣工時の完成検査だけでなく、施工の各段階(配管敷設時・機器据付時など)でこまめに確認しておくことで、後工程での手直しを避けやすくなります。特にアンカーボルトは、コンクリート打設後の増し締めや、施工時の振動で緩みが生じていないかを、引渡し前にあらためて確認しておく価値のある項目です。


まとめ

  • 設備の耐震支持は、「どれだけの地震力を想定するか(耐震クラス・設計用水平震度)」と「どう固定するか(アンカーボルト・支持金物・耐震ストッパ)」という2つの判断の組み合わせでできている
  • 耐震クラスS・A・Bは、施設の重要度と機器の重要度を掛け合わせて判断する区分で、防振支持の機器は原則としてクラスを一段階引き上げて考える
  • 設計用水平震度は上層階ほど大きくなる。これは建物の揺れが上層階に向かうほど増幅されやすいことを反映している
  • アンカーボルトは引抜き力とせん断力の両方を検討し、防振支持機器では耐震ストッパのすきまの調整も欠かせない
  • 配管・ダクト・電気配線には、耐震クラス・設置階に応じた支持間隔と支持金物の考え方があり、エキスパンションジョイント部や貫通部では可とう性による変位吸収が必要になる
  • 天井吊り機器の振れ止めと、特定天井としての天井本体の耐震対策は別の話だが、互いに干渉しないよう計画段階から調整しておく必要がある

耐震支持の設計は、数値そのものを覚えることよりも「なぜこの機器・この階でこの支持が必要なのか」という考え方の骨格を理解しておくことが実務では役に立ちます。具体的な震度や倍率、支持間隔の数値は指針の改定や個別プロジェクトの条件によって変わり得るため、実際の設計・施工では必ず最新版の指針・関連法令、所轄行政庁、構造設計者に確認しながら進めてください。


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