地中熱利用システムの基礎|地中熱ヒートポンプの仕組みとクローズドループ・オープンループの違い
太陽光発電や太陽熱利用と並んで、再生可能エネルギーを使う熱源方式としてたびたび名前が挙がるのが「地中熱」です。太陽光・太陽熱が天候や昼夜で出力が大きく変わるのに対し、地中の温度は季節や天候にほとんど左右されず年間を通じて安定しているという特徴があり、この安定した温度差を利用して冷暖房・給湯の効率を高めるのが地中熱ヒートポンプの発想です。
一方で、地中に熱交換器や井戸を設ける工事が必要になることから、初期コストや適用条件の見極めが導入判断の鍵になる設備でもあります。この記事では、地中熱利用システムの基本的な仕組み、クローズドループ・オープンループという2つの方式の違い、他の熱源方式との位置づけ、導入時に確認しておきたい留意点を整理します。
図で見る(全体像)
早見まとめ
| 項目 | 考え方の要点 |
|---|---|
| 地中熱とは | 地表付近の温度変化に左右されにくい、地中の安定した温度差を利用する熱エネルギー |
| 地中の温度傾向 | 地下5m程度より深い部分では、日本の多くの地域で季節を通じて概ね一定の温度で安定する傾向がある |
| クローズドループ | 地中熱交換器(垂直型・水平型・杭方式)内に不凍液等を循環させ、地中と熱をやり取りする方式 |
| オープンループ | 井戸から揚水した地下水そのものをヒートポンプで熱交換する方式。地下水規制のある地域では適用が難しい |
| 主な用途 | 冷暖房・給湯・融雪など。空気熱源ヒートポンプに比べ外気温の影響を受けにくいとされる |
| 導入時の留意点 | ボーリング・掘削コスト、地下水関係法令・条例、熱交換能力を確認するための事前調査 |
※上表は一般的な考え方の目安です。地中の温度・地質は地域・敷地により異なるため、具体的な採熱量・システム構成は事前調査と専門技術者の検討に基づいて決定してください。
地中熱とは何か
地表付近の気温は、夏と冬、昼と夜で大きく変動しますが、地下にある程度の深さまで潜ると、その変動幅は小さくなっていきます。地中熱とは、この「地表に比べて年間の温度変化が小さい地中の熱」を利用するエネルギーの総称です。夏は外気より地中の方が低温、冬は外気より地中の方が高温という関係になりやすいため、この温度差を熱源側の起点として使うと、空気を熱源にする場合よりも少ないエネルギーで冷暖房・給湯の熱をつくれる場面があるという考え方が、地中熱利用の基本的な発想です。
なお、地中熱は数十〜百数十メートル程度までの浅い地盤の熱を対象とするのに対し、温泉などで扱われる地熱は、より深部のマグマ由来の高温な熱源を対象とする点で異なります。地中熱利用は特別な地質条件を必要とせず、全国の幅広い地域で検討できる点が特徴です。
地中熱ヒートポンプの仕組み
地中熱ヒートポンプは、地中との間で熱をやり取りする「地中熱交換器」または「井戸」と、その熱を冷暖房・給湯に使える温度まで昇温・降温する「ヒートポンプ」を組み合わせたシステムです。ヒートポンプ自体の原理は、熱源設備計画の基礎で扱う一般的な熱源機器と同じですが、地中熱ヒートポンプでは、外気ではなく地中の安定した温度を熱源・排熱先として使う点が異なります。
地中とのやり取り方には、大きく分けて「クローズドループ方式」と「オープンループ方式」の2つがあります。
クローズドループ方式:地中熱交換器で熱をやり取りする
クローズドループ方式は、地中に埋設した熱交換器(配管)の中に不凍液または水を循環させ、地中との間で熱をやり取りしたうえで、その熱をヒートポンプで必要な温度に変換する方式です。地中熱交換器には、ボーリング孔を利用する垂直型(ボアホール方式)、建物の基礎杭や採熱専用の杭を利用する杭方式、地表に近い浅い深度に配管を埋める水平型などがあります。
クローズドループ方式は地下水を汲み上げるわけではないため、地下水に関する規制の影響を受けにくく、メンテナンスの負担も比較的小さいとされています。そのため住宅から中規模建築物まで、幅広い規模で採用しやすい方式だと筆者は捉えています。
オープンループ方式:地下水の熱を直接利用する
オープンループ方式は、井戸から揚水した地下水そのものをヒートポンプで熱交換させ、熱交換後の地下水は同じ帯水層に戻す、あるいは別の方法で処理する方式です。地下水を直接利用するため、井戸1本あたりで得られる採熱量がクローズドループより大きくなりやすく、経済性に優れるとされる一方、井戸やスクリーン部分に目詰まりが生じることがあり、定期的なメンテナンスが必要になります。
また、地盤沈下防止などの観点から地下水の揚水が規制されている地域では、この方式の適用が難しくなります。地下水位や水質、揚水規制の有無は敷地条件によって大きく異なるため、導入検討の早い段階で自治体への確認や地下水調査が必要になる点も、クローズドループ方式との大きな違いです。
他の熱源方式との位置づけ
地中熱ヒートポンプは、地域冷暖房(DHC)と受入設備の基礎や太陽熱利用給湯の基礎と同じく、建物単体で燃焼を伴う熱源を持たずに済む選択肢の一つですが、それぞれ前提となる条件が異なります。DHCは供給区域内であることが前提、太陽熱利用は屋根面積と日射条件が前提となるのに対し、地中熱は掘削・埋設できる敷地があれば地域を問わず検討できる点が特徴です。一方で、掘削工事という初期投資が必要になる点は、蓄熱システムの基礎で扱う蓄熱槽の設置とも似た、計画初期段階での判断が求められる要素だと筆者は考えています。
導入時に確認しておきたい留意点
地中熱利用システムの導入を検討する際は、まず敷地の地質・地下水条件を把握するための事前調査(熱応答試験など)が必要になります。地中の熱伝導率や地下水の流動状況によって得られる採熱量が変わるため、机上の想定だけでシステム規模を決めることは避け、事前調査に基づいて計画することが実務上の基本です。
あわせて、掘削工事のコストと、その後の運用によるランニングコスト削減効果を長期的な視点で比較することも欠かせません。初期コストが相対的に大きくなりやすい設備であるため、建物の使用年数やエネルギーコストの見通しを踏まえた投資回収の検討が前提になります。
まとめ
- 地中熱は、地表に比べて年間の温度変化が小さい地中の熱を利用するエネルギーで、温泉などの地熱とは対象とする深度・熱源が異なる
- 地中熱ヒートポンプは、地中熱交換器または井戸とヒートポンプを組み合わせ、地中の安定した温度を熱源・排熱先として利用する
- クローズドループ方式は地中熱交換器(垂直型・杭方式・水平型)に不凍液等を循環させる方式で、地下水規制の影響を受けにくい
- オープンループ方式は地下水を直接利用する方式で採熱量に優れる一方、目詰まり対策や地下水の揚水規制の確認が必要
- 地中熱は敷地があれば地域を問わず検討できる点が、DHCや太陽熱利用など他の再生可能エネルギー熱源との違い
- 導入検討では熱応答試験などの事前調査と、掘削コストを踏まえた長期的な投資回収の見通しが欠かせない
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