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ケーブルラック・電線管等の配線ルート計画の基礎|幹線の保護方式の使い分け

電気室の変圧器から各階の分電盤まで電気を送る幹線は、ケーブルをただ引き回せばよいわけではなく、ケーブルをどのような部材で保護しながら、どのルートで通すかという計画が必要になります。同じ幹線でも、天井裏を通すのか、床下を通すのか、屋外を通すのかによって選ぶべき部材はまったく変わってきますし、電流容量や施工性、将来の増設のしやすさによっても最適な方式が変わります。

この記事では、幹線の配線ルートを構成する代表的な部材として、電線管、金属ダクト、ケーブルラック、そして床下配線に使われるフロアダクト・セルラダクトを取り上げ、それぞれの特徴と使い分けの考え方を整理します。大容量幹線に使われるバスダクトについてはバスダクト・大容量幹線の基礎、OAフロア内のコンセント配線についてはコンセント・OAフロア配線設備の計画の基礎で詳しく扱っていますので、この記事では幹線・弱電幹線の「通り道」そのものの選び方に絞って整理します。


図で見る(全体像)

電気室から各階へ向かう幹線ルートにおける、電線管・金属ダクト・ケーブルラックという天井裏配線の使い分けと、床下のフロアダクト・セルラダクト・フリーアクセスフロアの位置づけを示す模式図


早見まとめ

項目考え方の要点
電線管1〜数本程度のケーブルを金属管・合成樹脂管で保護する方式。屋内外を問わず使え、高圧幹線の保護にも用いられる
金属ダクト多数のケーブルをまとめて収める箱形の部材。電線管より収容量が多いが、ラックほどの開放性はない
ケーブルラックはしご形・トレー形の棚にケーブルを並べて敷設する方式。多量のケーブルを扱う電気室・EPS・共用廊下上部などで多用される
フロアダクト・セルラダクトコンクリート床内・デッキプレートの溝を配線経路として使う床下配線方式
選定の視点収容ケーブル数、増設の見込み、施工性、耐火・防火区画貫通の扱い、意匠上の見え方で総合的に判断する

配線ルート計画が必要になる理由

電気設備の設計では、変圧器の容量や配電盤の構成といった「上流側」の計画に目が向きがちですが、実際にケーブルをどう通すかという「配線ルート」の計画も、建物の使い勝手やコストに大きく影響します。ケーブルは裸のまま天井裏や壁の中を這わせるわけにはいかず、機械的な損傷や熱、湿気から保護しながら、必要な場所まで導く部材が必要です。

この保護の役割を担うのが、電線管・金属ダクト・ケーブルラックといった配線材料です。国土交通省の建築設備設計基準でも、高圧幹線は原則として電線管で保護し、低圧幹線は電線管・金属ダクト・ケーブルラックのいずれかで保護するという考え方が示されています。どの部材を選ぶかによって、天井裏に必要なスペース、施工の手間、将来ケーブルを増設する際の自由度が変わってくるため、実施設計の早い段階で幹線ルートの断面構成を検討しておくことが望ましいと筆者は考えています。


電線管:少数のケーブルを保護する基本の方式

電線管は、鋼製またはPF管・CD管などの合成樹脂製の管の中にケーブルを通して保護する、もっとも基本的な配線方式です。1系統あたりに通すケーブルの本数が少ない場合や、壁の中・スラブ内に埋め込む場合、屋外で地中埋設する場合など、幅広い場面で使われます。

高圧幹線は、事故時の影響が大きいことから、原則として電線管による保護が求められる傾向にあります。低圧の分岐回路や制御配線でも、露出配管や隠ぺい配管として電線管が使われる場面は多く、電気設備のもっとも基本的な保護方式と言えます。ただし、収容できるケーブルの本数には限りがあるため、多数のケーブルをまとめて通したい幹線ルートでは、後述する金属ダクトやケーブルラックの方が施工性に優れます。


金属ダクトとケーブルラック:多量のケーブルをまとめて通す方式

金属ダクトは、ふた付きの箱形の部材の中に複数のケーブルをまとめて収める方式です。電線管より収容できるケーブルの本数が多く、分岐や引き出しがしやすいという特徴があります。電気室内や、幹線が集中する垂直シャフト(EPS)まわりなど、比較的限られた区間で多くのケーブルをまとめる場合に使われます。

ケーブルラックは、はしご形やトレー形の棚状の部材にケーブルを並べて乗せていく方式です。ふたで密閉しない開放的な構造のため、放熱性に優れ、ケーブルの点検・増設がしやすいという利点があります。電気室から各階のEPSへ向かう幹線ルートや、共用廊下・機械室の天井裏など、多量のケーブルを長い距離にわたって敷設する場面で広く採用されています。

材質は、屋内の乾燥した場所では鋼板に電気亜鉛めっきを施したものが使われることが多く、屋外や湿気の多い場所では、溶融亜鉛めっき(どぶ漬け)を施した仕様や、ステンレス製の仕様が選ばれる傾向があります。切断・加工後にめっきする溶融亜鉛めっき仕様は、切り口や曲げ部にも亜鉛が回り込むため、屋外・多湿環境での耐食性に優れるとされています。設置環境の腐食条件に応じて仕様を選定することが実務上のポイントです。

部材収容できる量の目安向いている場所
電線管少数本(1系統あたり数本程度)壁内・スラブ埋込、屋外地中埋設、分岐回路
金属ダクト電線管より多い電気室内、EPS周り、限られた区間の集約配線
ケーブルラック多量(長距離の幹線敷設に対応)電気室〜各階EPS、共用廊下・機械室の天井裏

床下配線の考え方:フロアダクト・セルラダクトとの関係

天井裏だけでなく、床下も配線ルートとして計画されることがあります。代表的な方式がフロアダクト方式セルラダクト方式です。

フロアダクト方式は、コンクリートスラブを打設する前に、金属製のダクトをあらかじめ床内に埋め込んでおく方式です。事務所の執務エリアなど、床面に一定間隔でコンセントを立ち上げたい場合に使われてきましたが、レイアウト変更への追従性では、床を二重構造にして配線空間を確保するフリーアクセスフロア(OAフロア)方式に比べると自由度が低いという傾向があります。

セルラダクト方式は、デッキプレート(床の構造材)の溝そのものを配線経路として利用する方式です。構造部材を配線経路として兼用するため部材点数を抑えられますが、単独では使われず、フロアダクトや電線管と組み合わせて用いられるのが一般的です。

近年の事務所ビルでは、レイアウト変更のたびに床を壊さずに済むフリーアクセスフロア方式が主流になっており、フロアダクト・セルラダクトは、フリーアクセスフロアを採用しない部分や、特定用途の床下配線として限定的に使われる傾向にあります。OAフロアの高さ選定や分岐回路の考え方はコンセント・OAフロア配線設備の計画の基礎で扱っています。


選定の考え方と実務での判断

配線ルートの部材選定では、単純に「収容できる量が多いから」という理由だけで決めるのではなく、複数の視点を組み合わせて判断する必要があります。

  • 収容ケーブル数と将来の増設余地:竣工時点でぎりぎりの本数に合わせてしまうと、増設時にルート自体をやり直す必要が出てくるため、ある程度の余裕を見込んでサイズを決めるのが実務の基本です。
  • 防火区画・耐火区画の貫通処理:ケーブルラックや電線管が防火区画を貫通する箇所は、区画の耐火性能を損なわないよう、貫通部を認定工法で耐火処理する必要があります。
  • 意匠上の見え方:天井を見せる仕上げ(スケルトン天井など)の場合、ケーブルラックの見え方が意匠計画に影響することがあり、配線ルートの高さ・向きを意匠設計側と早期に調整しておく必要があります。
  • 点検・メンテナンス性:ケーブルラックは開放的な構造のぶん点検しやすい一方、ほこりが溜まりやすい場所では金属ダクトのようなふた付き部材が選ばれることもあります。

これらの判断は、電気設備単独で完結するものではなく、天井裏に共存する空調ダクトや配管、スプリンクラー配管などとの取り合いも踏まえて検討する必要があります。電気室・EPSの計画そのものについては電気室・EPSの計画、弱電配線とEPSの関係については弱電配線・EPSの基礎もあわせて参照してください。


施工・維持管理段階での注意点

配線ルートの計画は、設計図面上でルートを決めて終わりではなく、施工・維持管理の段階でも継続的な配慮が必要です。

ケーブルラックは、支持間隔をあけすぎるとケーブルの自重でたわみが生じ、長期的にはケーブル被覆への負担につながります。支持点の間隔は、ラックの仕様・積載するケーブルの重量に応じて適切に設定し、特に垂直シャフト(EPS)内を立ち上がるルートでは、ケーブルが自重で下方にずり落ちないよう、要所で固定・支持することが実務上のポイントです。

また、増設のたびに新しいケーブルを追加していくと、当初の計画以上にラック内が密集してしまうことがあります。竣工時点で将来の増設分を見込んだ余裕(充填率に余裕を持たせること)を確保しておくと、増設工事のたびにルートを新設する手間を減らせます。屋外に露出するケーブルラック・電線管は、紫外線や雨水にさらされ続けるため、竣工後も定期的な錆・劣化の確認を維持管理計画に組み込んでおくことが望ましいと筆者は考えています。

実務チェックリスト

確認項目内容
高圧幹線の保護方式原則として電線管による保護になっているか確認する
低圧幹線の保護方式電線管・金属ダクト・ケーブルラックのいずれを採用するか、収容量と施工性から判断する
増設余地の確保竣工時点でラック・ダクトの充填率に余裕を見込んでいるか
防火区画の貫通処理ケーブルラック・電線管が防火区画を貫通する箇所を認定工法で処理しているか
環境条件に応じた仕様選定屋外・多湿環境では溶融亜鉛めっき仕様等、腐食条件に応じた仕様になっているか
意匠との整合天井を見せる仕上げの場合、ラックの見え方を意匠設計側と共有しているか

よくある質問

ケーブルラックと金属ダクトはどちらを優先して選ぶべきですか

一律にどちらが優れているというものではなく、収容するケーブルの本数・区間の長さ・点検のしやすさで判断します。長距離にわたって多量のケーブルをまとめて敷設する幹線ルートではケーブルラックが選ばれやすく、電気室内など限られた区間でケーブルを集約したい場合は金属ダクトが検討されます。実際の選定は、電流容量計算に基づくケーブルサイズ・本数が確定した段階で、電気設備の設計者が総合的に判断する事項です。

弱電ケーブルと強電ケーブルは同じラックに乗せてよいですか

弱電系統のケーブルは、強電系統からの誘導障害(ノイズの影響)を受けやすいため、同じラックに混在させる場合は、ラック内での離隔やセパレータの設置など、誘導対策を考慮した計画が必要です。弱電配線ルートの考え方については弱電配線・EPSの基礎で詳しく扱っています。


まとめ

  • 幹線の配線ルートは、電線管・金属ダクト・ケーブルラックという保護部材の組み合わせで計画される
  • 高圧幹線は原則として電線管、低圧幹線は電線管・金属ダクト・ケーブルラックのいずれかで保護するのが基本的な考え方
  • ケーブルラックは開放的な構造で放熱性・点検性に優れ、電気室〜EPS間など多量のケーブルを長距離敷設する幹線ルートで多用される
  • 床下配線にはフロアダクト・セルラダクト方式があるが、近年はレイアウト変更に強いフリーアクセスフロア方式が主流になりつつある
  • 部材選定では収容量だけでなく、将来の増設余地、防火区画の貫通処理、意匠上の見え方、点検性まで含めて総合的に判断する

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