バスダクトと大容量幹線の基礎|採用判断・敷設方法・ケーブル幹線との使い分け
大容量の幹線を計画するとき、電線(ケーブル)を何本も束ねて敷設するか、それともバスダクト(バスウェイ)と呼ばれる金属製の導体ダクトに切り替えるかは、基本設計の早い段階で判断しておきたい検討事項です。この判断は、単に電流を流せるかどうかだけでなく、EPS(電気シャフト)の断面計画、将来の増設余地、防火区画の貫通処理、工事費とも密接に関わってきます。
この記事では、バスダクトとは何かという基礎から、ケーブル幹線との違い、バスダクトの種類、敷設・支持の考え方、防火区画を貫通する際の扱い、保守点検の留意点までを、基本設計の段階で押さえておきたい判断材料として整理します。具体的な定格電流や支持間隔の数値は製品・条件によって幅があるため、この記事では考え方の骨格と目安を示すにとどめ、最終的な選定は電気設計者・電気主任技術者・メーカー・所轄消防署との確認を前提としています。
早見まとめ
| 項目 | 考え方・目安 |
|---|---|
| バスダクトとは | 銅・アルミの帯状導体を金属ダクト内に絶縁保持した幹線材料。JIS C 8364に規定 |
| 主な種類 | フィーダ(分岐なし)・プラグイン(プラグ受口で分岐)・タップ付き。接続にはエルボ・オフセット・ティー・クロス・レジューサーがある |
| ケーブルとの違い | バスダクトは大容量幹線・電圧降下が小さい・分岐増設が容易・耐火性が高い。ケーブルは中小容量幹線に向き取り回しが柔軟 |
| 採用判断の目安 | 幹線電流が数百A規模を超える大容量幹線や、将来の分岐増設が見込まれる幹線でバスダクトが検討されやすい |
| 支持間隔 | 造営材に取り付ける場合、水平は3m以下、取扱者以外が立ち入らない場所での垂直取り付けは6m以下が目安(電気設備技術基準の解釈) |
| 接地 | 使用電圧300V以下はD種接地工事、300Vを超える場合はC種接地工事が基本 |
| 防火区画貫通 | 建築基準法施行令129条の2の5に基づき、国土交通大臣認定の防火区画貫通処理工法(専用キット等)を用いるのが実務上の基本 |
| 保守点検 | 接続部(プラグイン部・接続バー)の増締めトルク確認、絶縁抵抗測定、赤外線サーモグラフィによる異常発熱の確認 |
バスダクトとは何か
バスダクトとは、銅またはアルミ製の帯状(バー状)の導体を、絶縁物を介して金属製のダクト(外装ケース)の中に収めた幹線材料のことです。国内ではJIS C 8364「バスダクト」に構造・性能・試験方法が規定されており、受変電設備の低圧側から各階の分電盤・動力盤まで電気を送る大容量幹線として、事務所ビル・商業施設・工場などで広く使われています。
ケーブルが「1本の電線の中に導体と絶縁物がまとまった線状の材料」であるのに対し、バスダクトは「導体そのものを箱型のダクトに収めた、面状・帯状の構造物」というイメージに近い材料です。この構造上の違いが、後述する電流容量・電圧降下・分岐のしやすさといった特性の差につながっています。
バスダクトは受変電設備の二次側(低圧側)から幹線として立ち上げ、各階のEPSを垂直に貫きながら、階ごとにプラグインユニットで分岐して分電盤・動力盤へ電気を送る、という使われ方が典型的です。高層ビルの垂直幹線や、工場のように大電流の動力負荷が集中する建物との相性がよいとされています。
バスダクトの種類と構成部材
バスダクトは、分岐機能の有無によって大きく次のように分類されます。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| フィーダバスダクト | 分岐機能を持たない、幹線を一区間つなぐためのバスダクト |
| プラグインバスダクト | 側面にプラグ受口(差込口)を設け、プラグイン器具(分岐装置)を差し込むことで途中から分岐できるバスダクト |
| タップ付きバスダクト | あらかじめタップ(分岐口)を設けた構造のバスダクト |
フィーダバスダクトは受変電設備から電気室・主要な幹線経路までをつなぐ区間、プラグインバスダクトは各階を貫きながら階ごとに分岐する垂直幹線区間、というように使い分けるのが典型的な計画です。
バスダクト同士の接続や方向転換には、エルボ(任意の角度に曲げる)、オフセット(段差を設ける)、ティー(三方向に分岐する)、クロス(四方向に接続する)、レジューサー(定格電流の異なるバスダクト同士を接続する)といった構成部材が用意されており、これらを組み合わせて建物内の経路に合わせたルートを構成します。
ケーブル幹線との比較
ケーブル幹線とバスダクトは、どちらも受変電設備から各階へ電気を送る幹線として使われますが、特性には次のような傾向の違いがあります。
| 比較項目 | ケーブル幹線 | バスダクト |
|---|---|---|
| 許容電流・容量 | 電線1本あたりの許容電流には限りがあり、大容量になるほど多条布設(複数本並列)が必要になる | 導体断面が大きく、1系統で数百A〜数千Aクラスの大容量に対応しやすい |
| 電圧降下 | こう長・電流に比例して電圧降下が生じ、大電流・長こう長では電線が太くなりやすい | 導体間の距離が小さくリアクタンスが低いため、電圧降下を抑えやすい傾向がある |
| 敷設スペース | ケーブルラックに複数本を並べるため、多条布設ではラック本数・EPS断面を圧迫しやすい | 同じ電流容量であれば、断面積あたりの実装効率がよく、EPSの断面を抑えやすい傾向がある |
| 増設・分岐のしやすさ | 分岐にはケーブル敷設のやり直しや端末処理が必要になりやすい | プラグインバスダクトであれば、稼働中の系統を止めずに分岐ユニットを追加しやすい |
| 初期コスト | 材料単価は比較的安いが、大容量になると多条布設分の付属品・工数がかさむ | 材料単価はケーブルより高めだが、大容量帯では総合的な工事費で優位になりやすいとされる |
| 耐火性・防災上の特性 | ケーブルの被覆材が燃焼・発煙経路になり得るため、多条布設区画では防火区画貫通処理や延焼対策の考慮が必要 | 内部が導体・絶縁物で構成され煙道になりにくいとされるが、貫通部の防火措置は別途必要 |
| 施工性・取り回し | 経路が複雑な区間や小容量の分岐配線には柔軟に対応しやすい | 直線的な垂直幹線には適するが、狭小・複雑な経路には不向きな場合がある |
この表からもわかるとおり、バスダクトが優位になりやすいのは「大容量」「電圧降下を抑えたい」「将来の分岐増設を見込みたい」という条件が重なる幹線です。一方、中小容量の幹線や、経路が複雑で取り回しの自由度が必要な区間ではケーブルのほうが扱いやすい場面が多くなります。
採用判断の目安
バスダクトとケーブル幹線のどちらを採用するかは、電流容量だけで機械的に決まるものではなく、建物の用途・幹線ルートの形状・将来計画を総合して判断します。目安となる観点を整理すると次のとおりです。
| 判断軸 | バスダクトが検討されやすい条件 | ケーブル幹線が検討されやすい条件 |
|---|---|---|
| 幹線電流 | 大容量幹線(目安として数百A規模を超える系統) | 中小容量の幹線・分岐回路 |
| 経路の形状 | 直線的な垂直幹線(各階を真っすぐ貫くEPS) | 経路が曲がりくねる・分散する配線 |
| 増設計画 | テナント区画の変更やレイアウト変更で分岐追加が見込まれる建物 | 竣工後の分岐構成がほぼ固定される建物 |
| 建物用途 | 事務所ビルの垂直幹線、工場・データセンターの大電流動力系統 | 住宅、小規模な事務所・店舗 |
| 予算・工期 | 大容量帯では総合コストで有利になりやすい | 小容量帯では初期コストを抑えやすい |
実際の設計では、この目安をたたき台にしつつ、電気設計者が負荷容量・需要率・こう長・EPS断面の制約をもとに具体的な検討を行い、最終的にバスダクトメーカーの選定・見積りとあわせて判断する流れになります。
敷設と支持の考え方
バスダクトを建物内に敷設する際は、電気設備技術基準の解釈で示されている支持間隔の考え方が基本になります。造営材(壁・スラブ等)に取り付ける場合、水平方向は支持点の間隔を3m以下とし、取扱者以外が立ち入らない場所に垂直に取り付ける場合は6m以下とするのが目安とされています。バスダクト相互の接続部は堅牢かつ電気的に確実に接続し、ダクトの端部は閉塞する(開放したままにしない)ことも基本的な要件です。
接地についても、使用電圧が300V以下の場合はD種接地工事、300Vを超える場合はC種接地工事を施すのが基本の考え方です。バスダクト自体の金属外装が接地対象になるため、経路の要所で確実に接地線を接続する計画が必要です。
垂直方向にEPSを貫く区間では、階ごとにプラグインユニットを取り付けるスペース、点検・増締め作業のための離隔、将来の分岐増設に備えた予備の受口を見込んでおくと、竣工後の改修がしやすくなります。EPSの断面計画は電気室・EPSの計画で扱った考え方とあわせて検討するとよいでしょう。
防火区画を貫通する際の考え方
バスダクトが各階の床(スラブ)や壁の防火区画を貫通する場合、建築基準法施行令129条の2の5に基づき、貫通部の防火措置が必要になります。この規定では、給水管・配電管その他の管等が防火区画等を貫通する部分について、おおむね次のような考え方が示されています。
- 貫通する部分とその両側一定範囲を不燃材料で造る
- 管の外径が国土交通大臣の定める数値未満である
- 火災時に一定時間、防火区画の反対側に火炎を出す損傷を生じないものとして国土交通大臣の認定を受けた工法とする
バスダクトのように断面が大きく不燃材料のみでの措置が難しい部材については、実務上は3つ目の「国土交通大臣認定を受けた防火区画貫通処理工法」を用いるのが基本的な対応になります。バスダクトメーカーや防災部材メーカーからは、床・壁それぞれの防火区画貫通に対応した専用の防火措置キット(大臣認定工法品)が用意されており、これを規定どおりに施工することで区画の遮炎性能を確保します。
貫通処理の具体的な工法・認定番号・施工手順は製品ごとに異なり、区画の種類(1時間耐火・2時間耐火など)によって要求される性能も変わるため、実際の設計・施工では所轄消防署・建築確認機関への確認と、認定工法の施工要領書に沿った施工が前提になります。
保守点検の留意点
バスダクトは構造上、ケーブルに比べて接続部の状態管理が保守点検の中心になります。特にプラグインバスダクトでは、分岐ユニットの差込接続部にゆるみが生じると接触抵抗が増加し、局所的な発熱や絶縁劣化につながるおそれがあるため、次のような点検項目が実務上重視されます。
- 接続部(フランジ・プラグイン接続部)の締め付けボルトのゆるみ・増締めトルクの確認
- 絶縁抵抗測定による絶縁劣化の有無の確認
- 赤外線サーモグラフィ等による、通電状態での異常発熱箇所の早期発見
- ダクト外装・端部閉塞材の損傷、粉じん・水分の侵入がないかの目視確認
- 接地線の接続状態の確認
バスダクトは一度施工すると経路の変更がしにくい設備であるため、日常点検よりも定期的な絶縁測定・赤外線点検といった予防保全の側面が重要になります。点検周期や測定基準は建物の用途・使用環境・電気主任技術者の保安規程によって異なるため、個別の点検計画は電気主任技術者・保守業者との協議のもとで定めることが前提です。
実務での判断(よくある誤解)
バスダクトについてよくある誤解のひとつが、「バスダクトにすれば幹線の検討が単純になる」というものです。実際には、バスダクトを採用しても負荷電流の算定・需要率の見込み・電圧降下の確認といった基本的な検討項目はケーブル幹線と変わりません。バスダクトは電流容量や電圧降下の面で有利になりやすいだけで、幹線サイズ(定格電流)の選定プロセス自体を省略できるわけではない点には注意が必要です。負荷電流や電圧降下の基本的な考え方は幹線サイズと電圧降下の基礎を参照してください。
もうひとつの誤解は、「バスダクトなら防火区画貫通の措置が不要」という思い込みです。バスダクトは内部が導体で構成され煙道になりにくいという特性はあるものの、防火区画を貫通する以上、建築基準法施行令の規定に基づく防火措置は別途必要です。区画貫通処理を後回しにすると、竣工検査の段階で手戻りになりかねないため、経路計画の早い段階で貫通位置と使用する認定工法を決めておくことが望まれます。
まとめ
- バスダクトは銅・アルミの帯状導体を金属ダクトに収めた幹線材料で、JIS C 8364に規定されている
- 種類はフィーダ(分岐なし)・プラグイン(分岐可)・タップ付きに大別され、エルボ・ティー等の部材で経路を構成する
- ケーブル幹線と比べ、大容量・電圧降下の小ささ・分岐増設のしやすさで優位になりやすいが、経路の自由度や小容量帯のコストではケーブルが有利な場合もある
- 採用判断は電流容量だけでなく、経路形状・将来の増設計画・建物用途を総合して行う
- 支持間隔(水平3m以下・垂直6m以下が目安)や接地区分など、電気設備技術基準の解釈に沿った敷設が基本
- 防火区画を貫通する箇所は、建築基準法施行令129条の2の5に基づく国土交通大臣認定の防火区画貫通処理工法を用いるのが実務上の基本
- 保守点検は接続部の増締め・絶縁抵抗測定・赤外線点検といった予防保全が中心になる
バスダクトとケーブル幹線のどちらを選ぶかは、電流容量の大小だけで決まる単純な二択ではなく、経路の形状・将来の増設余地・防火区画の扱いまで含めた総合判断です。基本設計の段階でこれらの論点を電気設計者と共有しておくことが、実施設計以降の手戻りを防ぐことにつながります。
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