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幹線サイズと電圧降下の基礎|負荷電流・こう長・許容電流の考え方

幹線のサイズ(電線の太さ)は、なんとなく余裕を持たせて太くしておけばよい、というものではありません。細すぎれば発熱や電圧降下で機器が正常に動かなくなり、太すぎればコストや施工性の面で無駄が生じます。実施設計の段階で幹線サイズを詰めていく作業は、大きく分けて「電線に流れる電流を安全に流せるか(許容電流)」と「電線の先で電圧がどれだけ下がるか(電圧降下)」という2つの判断の積み重ねでできています。

この記事では、分電盤とブレーカーの基礎中央監視設備と幹線設備の計画で扱った幹線の役割を踏まえ、実施設計の段階で幹線サイズを検討するときの考え方を、負荷電流の求め方・許容電流によるサイズ選定・電圧降下の考え方という3つの軸で整理します。あわせて、幹線の保護協調(過電流保護)や需要率との関係にも触れます。

数値の細かい算定式や許容値は建物の用途・供給方式・所轄消防署や電力会社との協議内容によって扱いが変わるため、この記事では考え方の骨格を示すにとどめます。実際の設計では内線規程(JEAC8001)や電気設備の技術基準など関連規格に照らして確認することが前提になります。


幹線の役割をおさらいする

幹線とは、受変電設備(電力会社から届いた電気を建物内で使える電圧に変換する設備)から、各階の分電盤・動力盤まで電気を運ぶための太い電路のことです。建物の血管にあたる部分であり、途中で容量不足や電圧降下が起きると、その先にあるフロア全体の設備に影響が及びます。

幹線のサイズ選定は、建築計画で決まったEPS(電気シャフト)のルートや長さ、各階の負荷計画がある程度固まった実施設計の段階で本格的に詰めていく作業です。ここで決めた電線サイズは、ケーブルラックの本数やEPSの断面、分電盤・動力盤の仕様にも波及するため、後戻りのコストが大きい検討項目のひとつです。


幹線サイズを決める2つの判断

幹線の太さを選ぶときの判断は、大きく次の2つに分けられます。

判断項目 確認する内容 サイズが不足したときの影響
許容電流 電線に流れる負荷電流を、その電線が安全に流し続けられるか 電線の発熱が大きくなり、絶縁劣化や火災のおそれ
電圧降下 電線の先(負荷側)で、電圧がどれだけ下がるか 照明のちらつき、モーターの始動不良、機器の誤動作

許容電流は電線そのものの安全性(発熱・絶縁の保護)に関わる制約で、電圧降下は電線の先につながる機器が正常に動作できるかという性能上の制約です。この2つの条件をどちらも満たすように電線サイズを決め、通常は電圧降下側の条件のほうが許容電流側の条件より厳しくなり、サイズを左右する要因になりやすいとされています。実務では両方を計算し、より太いサイズを要求するほうを採用するのが基本的な流れです。


負荷電流の求め方

幹線サイズの検討は、まずその幹線が受け持つ負荷の電流を求めるところから始まります。負荷電流は、接続される照明・コンセント・空調機・ポンプなどの機器の定格容量(消費電力)と、電圧・力率・相数(単相か三相か)から算定します。

このとき注意したいのは、建物全体の設備容量をそのまま合計するのではなく、後述する需要率を考慮して、実際に同時に使われる電力の見込みを反映させる点です。すべての機器が同時にフル稼働する前提で幹線を太くしすぎると、コストと施工性の面で不利になります。一方で需要率を見込みすぎて細くしすぎると、将来の増設余地がなくなってしまいます。このバランスを取ることが、幹線サイズ検討の実務上のポイントです。


電線の許容電流とサイズ選定

負荷電流が求まったら、その電流を安全に流せる電線の太さ(導体の断面積)を選びます。電線の許容電流は、導体の材質(銅・アルミ)や太さだけでなく、次のような施工条件によっても変わります。

影響する条件 内容
布設方法 ケーブルラックに単独で敷設するか、多条(複数本まとめて)敷設するか
周囲温度 EPSや天井内など、周囲の温度が高い場所ほど許容電流は下がる方向に補正される
電線の種類 ケーブルの種類(一般的な電力ケーブルか、バスダクトかなど)によって許容電流の考え方が異なる
保護装置との整合 電線の許容電流が、その電線を保護する遮断器・ヒューズの定格電流以上になっているか

複数本のケーブルをまとめてラックに敷設する多条布設では、ケーブル同士が熱を持ち合うため、単独で敷設する場合よりも許容電流が低く補正されるのが一般的な考え方です。EPS内に幹線ケーブルと弱電線がまとめて収納されるケースでは、この補正を見落とさないよう注意が必要です。

電線サイズの最終的な選定では、こうした許容電流の条件と、次に説明する電圧降下の条件の両方を満たす太さを選び、市販されている規格サイズ(断面積の刻み)に当てはめて決定します。


電圧降下の考え方(こう長と電流に比例する)

電圧降下とは、電線に電流が流れることで生じる電線自体の抵抗(インピーダンス)により、電源側と負荷側とで電圧に差が生じる現象です。簡易的には、電圧降下の大きさは「電線のこう長(電線路の長さ)」と「流れる電流」に比例し、電線の断面積が大きいほど(太いほど)小さくなる関係にあります。

つまり、同じ負荷電流であっても、受変電設備から遠い階や離れた棟に電気を送る幹線ほど、こう長が長くなる分だけ電圧降下は大きくなりやすくなります。高層階や敷地の奥まった位置にある建物へ幹線を伸ばす計画では、この電圧降下を抑えるために電線を太くする、あるいは経路の途中に変圧器を設けて電圧降下を分割する、といった対策が検討されます。

電圧降下が過大になると、照明のちらつきや暗さ、モーター負荷の始動トルク不足、制御機器の誤動作といった不具合につながるおそれがあります。そのため、幹線サイズの検討では、許容電流を満たすだけでなく、末端の負荷で電圧がどこまで下がるかを見込んで太さを決めることが欠かせません。


電圧降下の許容値の目安

低圧配線における電圧降下の許容値は、内線規程(JEAC8001)で目安が示されています。一般的には、幹線・分岐回路のそれぞれについて標準電圧の2%以下とすることが基本とされ、電気使用場所内に設置した変圧器から供給する幹線に限り、3%以下までとする扱いが認められています。

また、電源からの電線こう長が一定の距離(内線規程では60mが目安とされています)を超えて長くなる場合は、こう長に応じて許容値を段階的に緩和する考え方も内線規程に示されています。長いこう長で一律に2%を守ろうとすると、電線が過度に太くなり現実的でなくなるためです。

条件 電圧降下の許容値の目安
一般的な幹線・分岐回路 標準電圧の2%以下
電気使用場所内の変圧器から供給する幹線 標準電圧の3%以下(勧告値)
こう長が長い幹線 こう長に応じて許容値を緩和する規定あり

これらはあくまで内線規程上の目安であり、実際の許容値の適用や緩和の可否は、供給方式(自家用変電設備の有無など)や電力会社との協議、建物ごとの事情によって判断が変わります。具体的な数値の当てはめは、内線規程の該当項目や設計者・電気工事士との確認を前提に進めることが望まれます。

電圧降下の簡易計算は、こう長・負荷電流・電線の断面積が分かれば概算できます。当サイトの電圧降下計算ツールでは、これらの数値を入力して電圧降下の目安を確認できるようにしています。


幹線の保護協調(過電流保護)

幹線は、電圧降下や許容電流を満たすように太さを選ぶだけでなく、過負荷や短絡(ショート)が起きたときに電線や機器を守る保護の仕組みもあわせて計画する必要があります。国土交通省の『建築設備設計基準』でも、電路は過負荷及び短絡により電線や機器の損傷または火災のおそれがないよう保護できるものとする、という考え方が示されています。

幹線の保護は、通常、幹線の始点(分電盤・動力盤の主幹部分など)に設置した遮断器やヒューズが担います。この保護装置の定格電流は、幹線の許容電流以下に設定するのが基本の考え方です。逆に保護装置の定格電流が電線の許容電流を上回っていると、電線が発熱しても保護装置が動作せず、電線を守れなくなってしまいます。

さらに、幹線から分岐して各分電盤・動力盤につながる分岐回路の保護装置とも整合を取る必要があります。上位側(幹線側)の保護装置と下位側(分岐側)の保護装置が、事故が起きたときに適切な順序で動作するように選定されている状態を保護協調と呼びます。下位側で処理できるはずの事故で上位側の幹線用の遮断器まで動作してしまうと、フロア全体が停電するなど影響範囲が不必要に広がってしまうため、保護協調の確認は幹線計画の重要な検討項目のひとつです。


需要率との関係

需要率とは、接続されているすべての機器の定格容量の合計(設備容量)に対して、実際に同時に使われる最大の電力(最大需要電力)がどのくらいの割合になるかを示す考え方です。すべての機器が常にフル稼働することは実際にはまれで、多くの建物では需要率を見込んで幹線や変圧器の容量を設備容量よりも小さく計画します。

需要率の見込み方は、建物の用途や使い方によって大きく変わります。事務所ビルであれば就業時間帯に多くの機器が同時に稼働しやすい一方、住宅や宿泊施設では各住戸・各室の使用時間帯にばらつきがあるため、複数の需要をまとめた際の需要率(不等率を考慮した合成需要)は下がりやすい傾向があります。この需要率の設定を誤ると、幹線や変圧器の容量が実態と合わなくなり、過大投資または将来の容量不足のどちらかにつながってしまいます。

幹線サイズの検討では、需要率を見込んだ後の負荷電流をもとに許容電流・電圧降下の条件を確認するのが基本の流れです。需要率の設定根拠(用途別の実績値や設計指針など)は、施主・設計者との間であらかじめすり合わせておくことが望まれます。


実務での判断(よくある誤解)

幹線サイズの検討でよくある誤解のひとつが、「太くしておけば安心」という考え方です。たしかに太い電線は許容電流・電圧降下の両面で余裕が生まれますが、電線が太くなるほどケーブルラックの本数やEPSの断面、端子部の施工性、コストにも影響が及びます。将来の増設余地は別枠(スペースの確保)で見込み、幹線そのものは計算根拠に基づいた適正なサイズで計画するという考え方が実務では一般的です。

もうひとつの誤解は、電圧降下の計算をこう長の短い幹線では省略してよい、というものです。こう長が短くても負荷電流が大きい幹線(動力設備向けの太い幹線など)では、電圧降下が無視できない大きさになることがあります。こう長・負荷電流のどちらか一方だけで判断せず、両方を掛け合わせた電圧降下の計算を都度確認することが望まれます。

当サイトの配線サイズ×配管 選定ツールでは、負荷電流や布設条件から電線サイズの目安を確認できます。実際の設計では、ここで紹介した考え方をもとに、内線規程や電気設備の技術基準などの該当項目、所轄の電力会社・消防署との協議内容とあわせて最終的なサイズを決定することになります。


まとめ

  • 幹線サイズは「許容電流(電線の安全性)」と「電圧降下(負荷側の性能)」という2つの条件を両方満たすように決める
  • 負荷電流は接続機器の容量から求めるが、需要率を見込んだ実態に近い電流で検討するのが基本
  • 電線の許容電流は、布設方法(単独・多条)や周囲温度によって補正される
  • 電圧降下はこう長と電流に比例し、内線規程では幹線・分岐回路とも標準電圧の2%以下(変圧器直下の幹線は3%以下)が目安とされ、こう長が長い場合は緩和規定もある
  • 幹線の始点に設置する保護装置は、電線の許容電流以下の定格電流とし、分岐側の保護装置との保護協調を確認する
  • 太くしすぎず・細くしすぎず、需要率を踏まえた計算根拠に基づいて適正なサイズを選ぶことが実務の基本

幹線サイズと電圧降下の検討は、地味に見えて建物の使い勝手や将来の増設余地に直結する土台部分です。実施設計の段階で、負荷電流・許容電流・電圧降下・保護協調というひとつながりの流れを丁寧に確認しておくことが、竣工後のトラブルを防ぐことにつながります。


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