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接地(アース)設備の基礎|A種・B種・C種・D種接地の考え方

電気設備の図面や仕様書には、必ずといっていいほど「接地」あるいは「アース」という言葉が出てきます。分電盤の中の緑色(または緑/黄)の電線、機器の外箱から伸びる細い電線、キュービクルの脇に打たれた接地極——どれも同じ「接地」という仕組みの一部ですが、実はその目的は一つではありません。感電を防ぐための接地もあれば、機器そのものを守るための接地、雷やノイズの影響を抑えるための接地もあり、それぞれ求められる性能や工事の種別が異なります。

この記事では、接地が担っている役割を整理したうえで、電気設備技術基準の解釈(電技解釈)が定めるA種・B種・C種・D種という4種類の接地工事について、対象設備と接地抵抗値の考え方、接地線の太さの考え方をまとめます。さらに、等電位ボンディングという概念、避雷設備・通信設備の接地との関係、共用接地と独立接地の違いについても触れます。建物の電気設備を新たに担当することになった設備担当者・電気工事士、そして建物のオーナー・管理者として接地と付き合う方に向けて、実務目線で整理しました。


接地が担う3つの目的

「接地」とひとくくりに呼ばれるものには、目的の異なる複数の役割が含まれています。まずこの整理をしておくと、なぜ接地工事が種類分けされているのかが理解しやすくなります。

目的 何を守るか 具体例
感電防止 機器の金属製外箱が漏電した際に、人が触れても危険な電位が生じないようにする
機器・設備の保護 機器・電路 高低圧混触や地絡事故が起きた際に、異常電圧や過電流から機器・電路を守る
雷・ノイズ対策 電子機器・通信機器 雷サージや電磁ノイズによる誤動作・機器故障を防ぎ、余分な電流を安全に大地へ逃がす

このうち感電防止と機器保護は、電技解釈が定めるA種〜D種の接地工事として制度化されています。一方、雷対策の接地は雷保護設備の一部として、また通信・情報機器のノイズ対策の接地は等電位ボンディングという考え方として、それぞれ別の章で整理される領域です。ただし、これらの接地は建物の中で完全に独立しているわけではなく、最終的には大地という共通の基準点につながっているため、相互の関係を意識しておく必要があります。


A種・B種・C種・D種接地工事とは

電技解釈第17条では、接地工事を対象電圧・対象設備に応じてA種・B種・C種・D種の4種類に区分し、それぞれに求める接地抵抗値と接地線の太さを定めています。まずは対象の考え方を整理します。

種別 主な対象
A種接地工事 高圧・特別高圧の電気機器の鉄台・金属製外箱等(非充電部)、避雷器など
B種接地工事 高圧・特別高圧と低圧を結ぶ変圧器の低圧側の中性点、または一端子(混触時の低圧側保護が目的)
C種接地工事 300Vを超える低圧の電気機器の鉄台・金属製外箱等(非充電部)
D種接地工事 300V以下の低圧の電気機器の鉄台・金属製外箱等(非充電部)

A種・B種は高圧側に関わる接地、C種・D種は低圧側の機器の金属部分に施す接地というのが大まかな整理です。実務で最も目にする機会が多いのはD種接地工事で、コンセント回路の金属製外箱や、200V以下の一般的な低圧機器の接地がこれにあたります。300Vを超える低圧機器(一部の動力機器など)ではC種接地工事が必要になる、という違いを押さえておくと図面や仕様書の読み解きがスムーズになります。


接地抵抗値の考え方

電技解釈第17条では、種別ごとに求められる接地抵抗値の考え方が定められています。数値そのものは条文・関連告示で規定されているため、実際の設計・施工では必ず最新の電技解釈・告示の原文を確認する必要がありますが、一般的に整理されている考え方は次のとおりです。

種別 接地抵抗値の考え方
A種接地工事 10Ω以下
B種接地工事 変圧器の高低圧混触時に低圧側電路の対地電圧が異常に上昇しないよう、1線地絡電流の値をもとに計算式で求める(電路の構成・地絡電流の大きさによって変わる)
C種接地工事 10Ω以下(低圧電路に地絡が生じた際に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設する場合は500Ω以下に緩和)
D種接地工事 100Ω以下(同様に0.5秒以内に自動遮断する装置を施設する場合は500Ω以下に緩和)

C種・D種で「地絡遮断装置があれば緩和される」という考え方が共通していることが分かります。これは、接地抵抗そのものを極端に下げるのではなく、漏電が起きた際に短時間で電路を遮断する仕組み(漏電遮断器など)と組み合わせることで、人体への危険を実用上許容できる範囲に抑えるという発想に基づいています。実際の建物では、分電盤に漏電遮断器を設けたうえでD種接地を施工するのが一般的な構成です。

B種接地工事の抵抗値は、他の3種と違って固定値ではなく、変圧器の系統構成や高圧側の地絡電流の大きさによって計算される点が特徴です。この計算は電気主任技術者や設計者が個別に行う専門的な領域になるため、本記事では「固定値ではなく計算で求める」という考え方の違いがあることを押さえておけば十分です。

数値の細部(緩和条件の適用可否や具体的な計算式)は改正で見直されることもあるため、実際の設計・施工にあたっては必ず最新の電技解釈・告示、および所轄の電気主任技術者・設計者に確認したうえで進めてください。


接地線の太さの考え方

接地抵抗値だけでなく、接地に使う電線(接地線)の太さにも種別ごとの目安が定められています。接地線が細すぎると、地絡電流が流れた際に発熱・焼損してしまい、接地としての役割を果たせなくなるためです。

一般的に知られている目安としては、A種・B種接地工事は太めの軟銅線(直径2.6mm〜4.0mm相当)、C種・D種接地工事はそれより細い軟銅線(直径1.6mm相当)が使われる、という序列になっています。高圧側に近い接地ほど、事故時に流れうる電流が大きくなる可能性があるため、太い電線が求められると理解しておくと覚えやすくなります。

ただし、接地線の太さは電線の種類(単心・より線)や施工条件によって具体的な数値が変わるため、実際の選定では電技解釈の該当条文と、対象設備側の仕様(変圧器容量・分岐回路の遮断器容量など)を照らし合わせて決める必要があります。特にB種接地工事の接地線は、変圧器の容量や高圧側の地絡電流の想定値によって太さが変わるため、他の3種のように一律の目安だけで判断できない点に注意が必要です。


等電位ボンディングという考え方

接地の話で近年よく出てくるのが「等電位ボンディング」という概念です。等電位ボンディングとは、建物内にある導電性の部分(配管・鉄骨・機器の金属部分・各種接地線など)を電気的に接続し、それぞれの間に生じうる電位差をできるだけ小さくする考え方です。

なぜ電位差を小さくする必要があるのかというと、雷サージや地絡事故が起きた際、接地された部分の対地電位が瞬間的に大きく変動することがあるためです。もし建物内の金属部分がバラバラに接地されていて、それぞれの対地電位が異なるタイミングで異なる大きさに変動すると、金属部分の間に大きな電位差が生じ、そこを電流が飛び越えて流れる(フラッシュオーバー)ことで、機器の絶縁破壊や火災につながるおそれがあります。等電位ボンディングは、こうした金属部分同士をあらかじめ電気的に接続しておくことで、電位差そのものを生じにくくする発想です。

特に、情報通信機器やコンピューター機器が多い建物では、電源系統の接地だけでなく、通信機器のフレームや配管、建築の鉄骨といった金属部分まで含めた等電位ボンディングの計画が重要になります。この考え方は、次の章で触れる避雷設備の接地とも密接に関わっています。


避雷設備・通信設備の接地との関係

雷保護設備における接地(避雷設備の接地)は、外部雷保護の一部として、直撃雷の電流を安全に大地へ逃がすための重要な要素です。避雷設備の接地は、電技解釈上はA種接地工事として扱われますが、避雷設備特有の事情として「大電流を瞬間的に大地へ逃がす」という役割があるため、通常の機器保護の接地とは求められる性能の考え方がやや異なります。雷保護設備の外部雷保護・内部雷保護の全体像や、SPD(サージ防護デバイス)による内部雷保護の考え方については、雷保護設備の基礎|外部雷保護と内部雷保護、SPDの考え方 で詳しく整理していますので、あわせて参照してください。

通信設備・情報機器の接地についても、ノイズの影響を受けやすいという特性上、電源系統の接地とは別に検討されることがあります。かつては通信機器専用の接地を電源系統の接地と完全に切り離す「独立接地」の考え方が根強くありましたが、現在では次の章で触れる共用接地の考え方が主流になっており、独立接地よりもむしろ全体を適切にボンディングしたうえで一つの接地系にまとめる方が、電位差によるトラブルを防ぎやすいとされています。


共用接地と独立接地

接地の系統をどう構成するかという観点では、「共用接地」と「独立接地」という2つの考え方があります。

方式 考え方 特徴
共用接地 複数の設備・機器の接地を、共通の接地極(または接地線)にまとめて接続する 建物内の電位差が生じにくく、現在の主流の考え方。良好な接地抵抗値を確保できる接地極を複数の用途で共用する
独立接地 設備・機器ごとに個別の接地極を設け、それぞれ切り離した状態で接地する かつてはノイズ対策として採用されたが、接地極同士の距離が近いと逆に電位差が生じやすくなるなどの課題があり、現在は積極的には推奨されていない

独立接地は「他の設備の影響を受けたくない」という発想から生まれた考え方ですが、実際には建物内の複数の接地極の間で対地電位に差が生じると、その電位差自体が雷サージやノイズの原因になりうることが分かってきました。このため、現在の実務では、各接地極同士を相互に接続してボンディングし、建物全体を実質的に一つの接地系として扱う「共用接地・連接接地」の考え方が広く採られています。ただし、避雷設備の接地のように高いエネルギーを扱う接地系統と、通信機器のように微弱な信号を扱う接地系統をどこまで共用するかは建物の用途・規模によって判断が分かれる部分でもあるため、具体的な構成は電気主任技術者・設計者との協議が前提になります。


実務での判断・よくある誤解

接地に関する実務でつまずきやすいポイントをいくつか整理します。

  • 「接地抵抗値さえ低ければよい」ではない: 接地抵抗値の数値だけを追い求めるのではなく、地絡遮断装置との組み合わせ、接地線の太さ、ボンディングの状態まで含めて全体で安全性を確保するという発想が重要です。
  • 接地抵抗値は経年で変化する: 接地極周辺の土壌の状態(含水率・気温など)や、接地極自体の腐食によって、接地抵抗値は施工時から変化します。定期的な接地抵抗の測定・維持管理が必要です。
  • 独立接地が「安全」とは限らない: 前述のとおり、接地極を分けること自体がノイズ対策として万能というわけではありません。むしろ電位差の発生源になりうるため、現在は共用・ボンディングを基本に考えるのが実務上のポイントです。
  • 緩和条件は自己判断で適用しない: C種・D種接地工事の抵抗値緩和(地絡遮断装置設置による500Ω以下への緩和)は、遮断装置の性能・設置条件が満たされて初めて適用できる考え方です。数値だけを見て安易に緩和条件を適用しないよう注意が必要です。

具体的な接地抵抗値・接地線サイズの適用や、緩和条件の可否については、必ず最新の電技解釈・関連告示の原文、および所轄の電気主任技術者・設計者に確認したうえで進めてください。


まとめ

  • 接地には「感電防止」「機器・設備の保護」「雷・ノイズ対策」という異なる目的があり、それぞれ求められる考え方が異なる
  • 電技解釈は接地工事をA種・B種・C種・D種に区分し、対象電圧・対象設備ごとに接地抵抗値と接地線の太さの考え方を定めている
  • A種・C種・D種は概ね固定的な抵抗値の考え方があり、C種・D種は地絡遮断装置との組み合わせで緩和される。B種は1線地絡電流をもとに計算で求める
  • 接地線の太さも種別ごとに目安があり、高圧側に近い接地ほど太い電線が求められる傾向がある
  • 等電位ボンディングは、建物内の導電性部分の電位差を小さくすることでフラッシュオーバーや絶縁破壊を防ぐ考え方で、雷保護・通信設備の接地とも密接に関わる
  • 現在の実務では、接地極を切り離す独立接地よりも、ボンディングしてまとめる共用接地・連接接地の考え方が主流になっている

接地は、電気設備の中でも地味に見えて、感電・機器故障・雷害という複数のリスクを同時に扱う横断的な仕組みです。種別ごとの数値を丸暗記するよりも、「何を、何から守るための接地なのか」という目的から考え方を組み立てられるようになると、図面や仕様書に出てくる接地の記述の意味が見えやすくなります。具体的な設計・施工にあたっては、必ず最新の法令・電技解釈と、電気主任技術者・設計者との確認を前提に進めてください。


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