構内(外構)電気設備の基礎|屋外照明・引込・受電点
建物の電気設備というと、キュービクルや分電盤、照明・コンセントなど建物内部の設備をイメージしやすいですが、敷地の入口から建物の受電点までの区間、そして駐車場・通路・植栽帯といった外構部分にも、電気設備は数多く存在します。引込設備、構内の配電経路、屋外照明、屋外コンセントなどがそれにあたり、これらをまとめて構内電気設備(外構電気設備)と呼びます。
構内電気設備は建物本体の設備に比べて設計・施工段階での注目度が下がりやすい一方、電力会社との責任分界点に近い部分であること、屋外という過酷な環境で長期間使用されることから、計画・施工の考え方を押さえておく重要性は決して低くありません。この記事では、受電点・引込設備の基礎から、構内配電の方式、屋外照明・屋外コンセントの計画、屋外設備特有の接地・避雷の考え方、そして竣工後の現場でよく相談を受ける「もらい錆」「異種金属接触腐食」という腐食トラブルまでを整理します。受変電設備そのものの構成については 受変電設備の基礎|キュービクルの構成と単線結線図の読み方 で詳しく解説していますので、あわせて参照してください。
構内電気設備の範囲と受電点
構内電気設備がどこからどこまでを指すのかは、電力会社との「受電点(責任分界点)」を基準に考えると整理しやすくなります。受電点より上流(電力会社側)の設備は電力会社の管理範囲であり、受電点より下流(需要家側)が、その建物の所有者・管理者が維持管理する範囲になります。
低圧で受電する小規模な建物であれば、電力量計付近が実質的な受電点となり、そこから建物内の分電盤までの経路は比較的シンプルです。一方、高圧で受電する規模の建物では、区分開閉器(気中負荷開閉器など)付近が受電点の目安となり、そこから敷地内のキュービクルまでの引込・構内配電の区間が、まさにこの記事で扱う構内電気設備にあたります。
構内電気設備が担う役割を整理すると、次の3つに分けられます。
- 引込み:電力会社の配電線から敷地内へ電気を引き込む
- 構内配電:敷地内で電気を必要な場所(建物、外構の照明・コンセントなど)へ分配する
- 屋外設備の供給:屋外照明、屋外コンセント、その他外構の電気設備に電力を供給する
受電点や高圧引込の位置は、電気事業者との協議で決まる部分が大きく、計画の初期段階から電力会社への確認が欠かせません。この記事で扱う内容も、最終的には所轄の電力会社・電気主任技術者・設計者との確認を前提とした一般的な考え方として読んでください。
引込み設備-引込柱・引込開閉器盤・キャビネット
構内への電力引込みは、電気事業者と協議のうえ、引込み位置・引込み方法を選定するのが基本の進め方です。敷地の形状や既存の配電線の位置によって、引込みの取り方はケースごとに変わります。
引込み設備でよく登場する要素を整理すると、次のとおりです。
| 設備 | 役割・補足 |
|---|---|
| 引込柱 | 敷地内に独立して設ける柱で、電力会社側の配電線から電気を受け、そこから構内配電へつなぐ起点となる。建物本体から離れた場所に受電設備を置きたい場合や、道路からの引込み距離が長い敷地で使われることが多い |
| 引込開閉器盤 | 引込柱や建物外壁に取り付ける開閉器を収めた盤。停電作業時や事故時に、引込み経路を安全に開閉するための設備 |
| 屋外キャビネット | 集合住宅や店舗など、複数の需要場所に電力を分配する際に用いる屋外設置形の収納箱。電力量計や分岐開閉器をまとめて収める |
これらの設備は屋外に露出して設置されることが多く、後述する防水性・耐候性・腐食対策が特に重要になります。引込柱・引込開閉器盤・キャビネットのいずれも、点検・操作のためのスペースを前面に確保し、車両の接触や積雪・浸水の影響を受けにくい位置に配置することが実務上の基本になります。
構内配電-地中埋設と架空、ハンドホール・マンホール
引込んだ電気を敷地内で分配する構内配電(構内線路)は、地中に埋設する方式を原則としつつ、敷地条件によって掘削が難しい場合には架空線路とするのが一般的な考え方です。地中線路は景観面・安全面で有利な一方、埋設深さや管路の選定に注意が必要で、架空線路は施工性で有利な一方、線路の高さや他の工作物との離隔に配慮が必要になります。
地中に電線を埋設する方法には、大きく分けて「管路式」と「直接埋設式」の2つがあります。
| 方式 | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| 管路式 | 保護管(硬質ビニル管や波付硬質合成樹脂管など)をあらかじめ埋設し、その中にケーブルを通線する | ケーブルの入れ替え・増設がしやすい。管路自体の埋設工事と通線工事を分けて計画できる |
| 直接埋設式 | ケーブルを砂等で保護しながら、そのまま土中に埋め込む | 管路式に比べて施工が簡易な場合があるが、後日の増設・修繕時に掘削範囲が広がりやすい |
埋設の深さについては、電気設備の技術基準の解釈において、車両その他の重量物による圧力を受けるおそれがある場所では深く、それ以外の場所ではやや浅い基準が設けられており、実際の設計ではケーブルの種類や保護管の有無、使用する場所の条件を踏まえて、電気主任技術者・設計者が個別に確認しながら深さを決めていく必要があります。駐車場や車路の下を通す経路では特に注意が必要です。
構内配電の経路上には、ケーブルの接続・分岐・点検を行うためのハンドホールやマンホールを適切な箇所に設けます。設置位置は、将来の増築・改修による経路変更に支障が出ないよう、あらかじめ余裕をもって計画しておくことが望まれます。また、ハンドホール・マンホールの蓋は車両の走行荷重や歩行荷重に耐える強度のものを選定し、設置後は雨水の流入・滞留にも配慮が必要です。
屋外照明の計画-街路灯・外構灯・防犯灯と自動点滅器・タイマ制御
外灯は、夜間の通行の安全確保と防犯上の観点から、有効な箇所に配置することが基本的な考え方です。敷地内の屋外照明には、用途によって次のような種類があります。
- 街路灯・園路灯:敷地内の通路・駐車場の歩行者の安全確保を目的とした照明
- 外構灯(アプローチ灯・門灯など):建物のエントランス周りの意匠性・視認性を高める照明
- 防犯灯:暗がりを解消し、犯罪の抑止や不審者の早期発見を目的とした照明。設置・維持管理を自治体や自治会が担うケースもあり、敷地内の照明計画とは別枠で検討されることもある
屋外照明の点滅制御には、人が手動でスイッチ操作する方式のほか、周囲の明るさをセンサーで検知して自動的に点灯・消灯する「自動点滅器」、あらかじめ設定した時刻に点滅させる「タイマ(タイムスイッチ)」がよく使われます。自動点滅器は日没・日の出のタイミングで自動的に切り替わるため、季節によって日照時間が変わっても点灯・消灯のタイミングが実際の明るさに追従しやすいという利点があります。一方でタイマは、決まった時間に一斉点灯・消灯させたい場合や、深夜のみ間引き点灯とするなど時間帯による制御を組み合わせたい場合に向いています。実務では自動点滅器とタイマを併用し、「暗くなったら点灯、かつ深夜は一部消灯」といった制御を行うケースもあります。
屋外照明の器具選定では、防水性・耐候性に加えて、まぶしさ(グレア)を抑えた配光、周辺への光害(不要な方向への漏れ光)を抑える器具形状も検討のポイントになります。照明計画全体の考え方(必要照度・省エネ制御など)は 照明設備の計画|必要照度・昼光利用・省エネ照明制御の考え方 で整理していますので、屋内外を通じた照明計画の全体像を確認したい場合はあわせて参照してください。
屋外コンセント・防水コンセントの設置
外構部分では、清掃用の電動工具の使用、イベント時の仮設電源、庭園灯・イルミネーションの電源確保などを目的に、屋外コンセントを計画することがあります。屋外に設置するコンセントは、雨水の吹き込みに耐える防雨形の構造とし、使用しないときは扉やカバーで開口部を保護できるものを選定するのが基本です。
屋外コンセントの計画で押さえておきたい実務上のポイントを整理すると、次のとおりです。
| 検討項目 | 主なポイント |
|---|---|
| 防水性能 | 屋外の風雨にさらされる位置か、庇の下など比較的保護された位置かで、必要な防水等級が変わる |
| 保護方式 | 屋外・水回りに近いコンセント回路には、感電防止のための漏電遮断器の設置を検討する |
| 設置高さ | 積雪・冠水のおそれがある地域では、地面からの設置高さに余裕を持たせる |
| 用途表示 | 清掃用・イベント用など用途がはっきりしている場合は、誤接続防止のため表示を行う |
具体的な保護方式・遮断器の仕様は、使用電圧や回路構成によって適用される基準が変わるため、電気工事士・電気主任技術者・設計者と確認しながら決めていくのが確実です。
屋外設備の接地と避雷
屋外に設置する電気設備は、金属製の外箱・キャビネット・ボックスに人が触れる機会が多く、異常時の感電を防ぐための接地が特に重要になります。電気設備には、異常時の電位上昇や高電圧の侵入等による人及び機材の損傷を防止するために、必要に応じて適切な方法で接地を行うことが基本的な考え方であり、屋外の引込開閉器盤・キャビネット・照明柱の金属部分についても、この考え方に沿って接地を確保します。
避雷設備については、建築基準法上、高さ20メートルを超える建築物の部分を雷撃から保護するように設けることが定められています。敷地内に独立して設ける外灯柱や引込柱は、単体では高さ20メートルに達しないことがほとんどのため、その柱自体が避雷設備の設置義務の対象になるとは限りません。ただし、建物本体に外部雷保護システムが設けられている場合は、構内の金属製設備との電位差による事故を防ぐための等電位ボンディングや、雷サージから電子機器を保護するための保護装置(SPD)の設置を検討することがあります。避雷設備の要否・仕様は建物の高さ・用途・立地条件によって個別に判断が必要な領域であり、確定的な判断は所轄の確認申請機関・設計者との確認が前提になります。
現場運用段階の注意-もらい錆と異種金属接触腐食
構内電気設備は屋外に長期間さらされる設備であるため、竣工後しばらく経ってから「錆びているように見える」という相談を受けることがあります。ここでよく見られるのが、もらい錆と異種金属接触腐食という、原因の異なる2つの現象です。
もらい錆とは、ステンレス製の屋外機器(キャビネット・分電盤の外箱・ハンドホールの金物など)の表面に、周囲の鉄粉が付着することで発生する錆です。ステンレス自体が腐食しているわけではなく、工事中の鉄骨の溶断・研磨で飛び散った鉄粉や、近隣の他工事の粉塵がステンレス表面に付着し、それが空気中の水分で酸化して赤茶色の錆に見えるのが典型的なパターンです。付着した鉄粉は、ステンレス表面を守っている薄い酸化被膜(不動態被膜)の働きを乱す原因にもなるため、見た目の問題だけでなく放置すると点状の腐食(点錆)に進行することもあります。竣工前後の他業種の工事による鉄粉の飛散を避ける養生や、竣工後の早い段階での清掃が、もらい錆を防ぐ実務上のポイントです。
**異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)**は、性質の異なる2種類以上の金属が電気的に接触し、そこに雨水・結露などの電解質が存在する条件がそろったときに発生する腐食です。金属にはイオン化傾向という、水中で溶け出しやすさの目安となる性質の違いがあり、イオン化傾向が大きい金属ほど、接触した別の金属との間で電位差ができたときに、優先的に腐食が進みやすくなります。屋外の構内電気設備では、アルミ製の外箱にステンレス製のビスを使う組み合わせや、異なる金属同士の配管・金物の接続部などで起こりやすく、接触部分から進行する腐食は外観からは気づきにくいという特徴があります。対策としては、絶縁ワッシャーや絶縁スリーブで異種金属同士を直接接触させない縁切りを行う、できるだけ電位差の小さい金属の組み合わせを選ぶ、接続部に防食塗装や防水処理を施すといった方法があります。
いずれも屋外設備の維持管理でよく相談される現象であり、見た目が似ていても原因と対策がまったく異なります。錆のように見える箇所を見つけたときは、自己判断で削り落としたり交換したりする前に、原因がもらい錆なのか、母材そのものの腐食なのか、異種金属接触による腐食なのかを見極めることが、無駄な補修を避けるうえで重要です。
まとめ
- 構内電気設備は、電力会社との受電点から建物・外構までの引込み、構内配電、屋外照明・屋外コンセントなどをまとめた範囲を指す
- 引込設備には引込柱・引込開閉器盤・屋外キャビネットがあり、いずれも点検スペースと屋外環境への耐性を考慮して配置する
- 構内配電は地中埋設が原則で、管路式と直接埋設式の使い分け、埋設深さの確保、ハンドホール・マンホールの計画が重要になる
- 屋外照明は街路灯・外構灯・防犯灯などの用途に応じて選定し、自動点滅器やタイマによる点滅制御を組み合わせるのが一般的
- 屋外コンセントは防水性能・保護方式・設置高さを踏まえて計画し、屋外設備全体には適切な接地を確保する
- もらい錆は鉄粉付着による見た目の錆、異種金属接触腐食は電位差による実際の腐食であり、原因を見極めたうえで対策することが大切
構内電気設備は、建物本体の設備に比べて目立ちにくい存在ですが、電力会社との接点であり、屋外という厳しい環境で長期間使われ続ける設備でもあります。計画段階での引込み位置・配電経路の検討と、竣工後の現場での腐食トラブルの見極めの両方を押さえておくことが、長く安心して使える構内電気設備につながります。
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