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実施設計弱電・通信

構内情報通信網(LAN)設備の計画|配線方式・OAフロア・情報コンセント

結論から言うと、構内情報通信網(LAN)設備は、電気設備の中でも「弱電」に分類される設備でありながら、いまやオフィス・商業施設・住宅を問わず、電気やガスと同じくらい建物の使い勝手を左右するインフラになっています。基本設計の段階でおおまかな系統や情報コンセントの必要数を押さえたら、実施設計ではケーブルの種類・配線ルート・機器室のスペース・情報コンセントの実配置まで、具体的な仕様と数量に落とし込んでいく作業が必要になります。

この記事は、これから建築設備を学ぶ人や、実施設計の段階でLAN設備の仕様を詰める立場になった設計者・施工管理担当者を想定して、配線方式の基礎、カテゴリ別の伝送速度と距離の関係、水平配線とバックボーン(幹線)配線の考え方、MDF・IDF・EPSの計画、OAフロアと情報コンセントの配置、PoE給電と無線LANとの併用の考え方を整理します。弱電設備全体の位置づけについては弱電設備とは何か、電気設備の幹線・EPSの考え方については中央監視設備と幹線設備の計画もあわせて参照してください。

LAN設備は情報システム部門やネットワーク業者が主導することも多く、建築側の設計者が細部まで決めるとは限りません。ただし、配管・配線ルート・機器室のスペース・電源の確保といった「建物側で用意しておくべき条件」は建築設備の計画に含まれるため、実施設計の段階でこの前提を押さえておくことが重要です。


構内LAN設備とは何か

構内情報通信網(LAN、Local Area Network)設備とは、建物やキャンパスの敷地内で、パソコン・サーバー・複合機・監視カメラ・無線LANアクセスポイントなどの機器を相互に接続し、データをやり取りするための配線・機器一式のことです。電話設備やインターホン、防犯カメラの配線などと合わせて「弱電設備」に分類され、大きな電力を扱う「強電」(電灯・動力・幹線設備など)とは区別して計画されます。

LAN設備は、電気配線のように「電力を届ける」ことが目的ではなく、「情報を正確かつ高速にやり取りする」ことが目的です。そのため、ケーブルの種類選定や配線ルートの取り回しでは、伝送距離や電磁的なノイズの影響といった、強電設備とは異なる視点での検討が必要になります。


配線方式の基礎:UTPケーブルと光ファイバー

構内LAN設備の配線には、大きく分けて銅線を使う「UTPケーブル」と、光を使う「光ファイバーケーブル」の2種類があります。

配線方式 特徴 主な用途
UTPケーブル(メタルケーブル) 銅線のペアをより合わせた構造。施工・接続が比較的容易でコストも抑えやすい フロア内の水平配線、情報コンセントまでの接続
光ファイバーケーブル 光信号でデータを送るため、電磁ノイズの影響を受けにくく長距離・大容量伝送に強い 建物間・階間を結ぶバックボーン(幹線)配線、長距離になる系統

UTPケーブルには、後述するようにケーブル1本あたりの伝送距離に上限があり、この上限を超える区間や、階をまたいで長い距離を結ぶ区間では光ファイバーケーブルが使われるのが一般的な考え方です。また光ファイバーは電気的なノイズを拾わないため、強電設備の幹線やモーター機器の近くを通す必要がある場合にも有利になります。

一方で光ファイバーは、UTPケーブルに比べて機器(メディアコンバーターなど)や施工の面でコストがかかりやすいため、すべての区間を光ファイバー化するのではなく、「距離が伸びる幹線部分は光ファイバー、フロア内の情報コンセントまでの短い区間はUTPケーブル」という役割分担で計画するのが実務上の基本です。


カテゴリ(Cat5e/6/6A)と伝送速度・距離

UTPケーブルには「カテゴリ」と呼ばれる規格の区分があり、カテゴリごとに対応できる伝送速度とその速度を保証できる距離の目安が異なります。実施設計では、建物の用途や将来の利用想定に応じて、どのカテゴリのケーブルを採用するかを決める必要があります。

カテゴリ 100m条件下での対応の目安 実務上の位置づけ
Cat5e 1000BASE-T(1Gbps)に対応 一般的なオフィス・住宅の情報コンセントで長く使われてきた標準的な選択肢
Cat6 1000BASE-Tは100mで対応。10GBASE-T(10Gbps)は環境やノイズの影響を受けやすく、対応距離は数十m程度にとどまることが多い 将来の高速化をある程度見込みつつコストを抑えたい場合の選択肢
Cat6A 10GBASE-Tを100mフルの距離で対応 高速・大容量の通信を安定して見込む建物、将来の増速余地を重視する場合の選択肢

このほかにも上位のカテゴリは存在しますが、一般的な建物のLAN設備で採用が検討されるのは主にCat5e・Cat6・Cat6Aの3区分です。ケーブルのカテゴリを上げるほど対応できる速度は上がりますが、ケーブル自体や関連機器のコストも上がるため、建物の用途・想定される通信量・更新周期を踏まえて選定することが実務上のポイントになります。

また、LANの配線規格では「水平配線(フロア内の配線)は90m以内、そこに接続するパッチコードなどを含めた総延長(チャネル)は100m以内」という考え方が国際的な構造化配線の標準としてよく用いられています。この100mという数字は、UTPケーブルで信号を安定して伝送できる距離の上限に由来するもので、実施設計で情報コンセントの位置とMDF・IDFの位置関係を検討する際の重要な制約条件になります。


水平配線とバックボーン配線、MDF・IDFの計画

構内LAN設備の配線は、大きく「水平配線」と「バックボーン(幹線)配線」の2つの階層に分けて計画されます。

  • 水平配線: 各フロアの情報コンセントから、そのフロアの通信機器室(IDF)までを結ぶ配線。UTPケーブルが使われることが多く、前述の100mの制約が直接関わってくる区間
  • バックボーン配線: 建物の中心となる通信機器室(MDF)と、各フロアのIDFを結ぶ配線、あるいは建物間を結ぶ配線。距離が長くなりやすいため光ファイバーが使われることが多い区間

MDF(Main Distribution Frame、主配線盤)は建物全体のLAN配線の中心となる機器室で、外部の通信回線(インターネット回線など)を建物内に引き込む窓口にもなります。IDF(Intermediate Distribution Frame、中間配線盤)は各フロアやエリアごとに設ける中継の機器室で、そのフロア内の水平配線をまとめてMDFへとつなぐ役割を持ちます。

MDF・IDFは、強電の幹線設備で使われるEPS(電気シャフト)と同じ建物内の縦シャフトに設けられることが多く、実施設計の段階ではEPSのスペース配分を強電・弱電の両方でどう分け合うかを調整する必要があります。EPSの計画については中央監視設備と幹線設備の計画でも触れているとおり、将来の増設分を見込んだ余裕あるスペース確保が重要になりますが、これはLAN設備側から見ても同様です。フロアごとの情報コンセント数が将来増える可能性がある場合は、IDFのラックスペースや配管の空きにも余裕を持たせておくことが望まれます。


OAフロアと情報コンセントの配置計画

オフィスビルなど、レイアウト変更が頻繁に想定される建物では、床を二重構造にして配線スペースを確保する「OAフロア(フリーアクセスフロア、二重床)」が採用されることが多くあります。OAフロアは、コンクリートスラブの上に脚(支持ボルト)で高さを持たせたパネルを敷き詰めた構造で、パネルの下にできた空間にLANケーブルや電源ケーブルを自由に通せるのが特徴です。

OAフロアの主なメリットは、レイアウト変更のたびに床や壁を壊して配線をやり直す必要がなく、パネルを外して配線を追加・移設できる点にあります。一方で、床の高さが上がることによる階高への影響や、パネルの荷重条件(什器やOA機器の重量に耐えられるか)といった建築側との調整事項もあるため、実施設計の早い段階で建築計画側とすり合わせておく必要があります。

情報コンセントの配置については、次のような視点で検討が進められます。

検討項目 内容
設置数量 座席数・レイアウト密度に応じて、机まわりに必要な口数を想定する
配置間隔 OAフロアの場合はフロアコンセントとして自由度が高いが、壁付けの場合は机の配置に制約されやすい
用途の混在 データ用・電話用・無線LANアクセスポイント用など、用途ごとに口数を分けて計画することが多い
将来対応 レイアウト変更や座席増に備え、配管・配線ルートに空き容量を確保しておく

情報コンセントは、竣工後にレイアウト変更のたびに追加・移設が発生しやすい設備です。OAフロアを採用する場合はある程度柔軟に対応できますが、そうでない場合は、実施設計の段階で想定される座席配置に対して余裕を持った数量・配置を計画しておくことが、竣工後の使い勝手に直結します。


PoE給電と無線LANとの併用の考え方

近年のLAN設備では、LANケーブルを通じて通信と同時に電力を供給する「PoE(Power over Ethernet)」という仕組みが広く使われるようになっています。無線LANアクセスポイントやIP電話、監視カメラなど、電源コンセントを別途用意しにくい場所に設置する機器の給電に活用されます。

PoEにはいくつかの規格があり、規格によって供給できる電力の上限が異なります。給電側(スイッチなど)で出力できる電力と、ケーブルでの損失を差し引いた受電側(機器側)で実際に使える電力には差があるため、機器の消費電力に対してどの規格が必要かを確認したうえで選定することが実務上のポイントです。複数の機器を1台のスイッチから給電する場合は、スイッチ全体の給電容量(電源ユニットの上限)も合わせて確認する必要があります。

無線LANとの併用については、有線LANの情報コンセントをすべて廃止して無線化するのではなく、両者を役割分担させる考え方が一般的です。固定席のパソコンやプリンターなど安定した通信速度が求められる機器は有線LANで接続し、来客用の端末やモバイル機器、フリーアドレス席などは無線LANでカバーする、という組み合わせがよく採用されます。無線LANアクセスポイントの設置数・配置は、建物の電波の届きにくさ(壁・什器の影響)や同時接続数を踏まえて検討する必要があり、この検討自体もLAN設備計画の一部として実施設計に含まれます。


実務での判断とよくある誤解

実施設計の段階でLAN設備を検討する際、次のような誤解や見落としがしばしば見られます。

  • 「配線は情報システム業者の仕事だから建築側は関係ない」という誤解: 配管ルート、EPS・MDF・IDFのスペース、OAフロアの採用可否、情報コンセントの電源確保などは建築設備の計画に含まれる事項であり、後工程の情報システム業者の仕事とは切り分けて、早期に建築側で条件を用意しておく必要があります。
  • 「上位カテゴリを選べば安心」という単純化: カテゴリを上げれば速度の余地は増えますが、コストも上がるため、建物の用途や更新周期に見合わない過剰な仕様になっていないかも合わせて検討することが望まれます。
  • 「PoEは電源工事の代わりになる」という誤解: PoEはあくまでLANケーブル1本あたりの供給電力に上限があるため、消費電力の大きい機器や多数の機器をまとめて給電する場合は、電源設備側の計画と合わせて検討する必要があります。

これらはいずれも、所轄の情報システム部門やネットワーク業者、建築設計者との間で、早い段階から役割分担と条件をすり合わせておくことで防げる誤解です。


まとめ

  • 構内LAN設備は弱電設備の一種で、情報を正確・高速にやり取りするための配線・機器一式を指す
  • UTPケーブルはフロア内の水平配線、光ファイバーは距離が伸びるバックボーン配線という役割分担が基本
  • カテゴリ(Cat5e/Cat6/Cat6A)ごとに対応できる速度と距離の目安が異なり、100mという水平配線の制約が選定の前提になる
  • MDF・IDFはEPSと同じ縦シャフトに設けられることが多く、強電設備とのスペース調整が実施設計の重要事項
  • OAフロアの採用可否と情報コンセントの数量・配置は、竣工後のレイアウト変更のしやすさを左右する
  • PoE給電と無線LANの併用は、機器の消費電力や電波環境を踏まえて役割分担を決めることが実務上のポイント

構内LAN設備は、竣工後の建物の使い勝手や将来の増設のしやすさに直結する一方、建築側の設計者が細部まで主導するとは限らない設備でもあります。だからこそ実施設計の段階で、配管ルート・機器室スペース・電源条件といった「建物側で用意すべき前提」を、所轄の情報システム部門や設計者との確認を前提としながら早めに固めておくことが、後工程の手戻りを防ぐことにつながります。


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