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実施設計消防設備

屋内消火栓設備の計画|1号・易操作性1号・2号の違いと設置基準

結論から言うと、屋内消火栓設備を計画するうえで最初に押さえるべきは、1号・易操作性1号・2号という3つの種類は「同じ設備の見た目違い」ではなく、放水性能と必要な操作人数が異なる別々の仕様であるということです。どの種類を選ぶかによって、警戒できる範囲(消火栓を置く間隔)も、水源に確保すべき水量も、加圧送水装置に求められる能力も変わってきます。

この記事では、実施設計の段階で屋内消火栓設備を検討する設計者・現場担当者に向けて、1号・易操作性1号・2号の放水性能と警戒範囲の違い、水源水量の考え方、加圧送水装置(ポンプ)と非常電源の役割、表示灯・起動装置の基本、そして実務での配置判断のポイントを整理します。具体的な数値は消防法令上の技術基準に基づくものですが、実際の設計では建物の用途・構造・所轄消防署の運用によって取り扱いが変わる部分があるため、最終的な仕様は所轄消防署・消防設備士との協議を前提としてください。

なお、屋内消火栓とスプリンクラー・ガス系消火設備などとの全体的な使い分けについては消火設備の使い分け|屋内消火栓・スプリンクラー・不活性ガス消火の考え方で整理しています。この記事はそのうち屋内消火栓設備そのものの計画に絞って、一段階詳しく掘り下げる位置づけです。


屋内消火栓設備とは何か

屋内消火栓設備は、建物内にいる人(在館者・従業員など)が、火災の初期段階で自らホースを延長し、放水して消し止めるための設備です。スプリンクラー設備のように熱を感知して自動で作動するのではなく、人が発見し、人が操作して初めて機能するという点が大きな特徴になります。

設備としては、水を貯めておく水源、水源の水を圧力をかけて送り出す加圧送水装置(ポンプ)、水を運ぶ配管、そして実際に人が操作する消火栓箱(ホース・ノズル・開閉弁)という要素で構成されています。末端の消火栓箱だけを見て仕様を決めるのではなく、水源からポンプ、配管まで含めた一つのシステムとして容量・能力を整合させる必要がある点は、他の水系消火設備と共通する考え方です。


1号・易操作性1号・2号の違い

屋内消火栓には、放水性能と必要な操作人数によっていくつかの種類があります。代表的な3種類の技術基準(消防庁告示に基づく数値)を整理すると、次のようになります。

種類 ノズル放水量 放水圧力 警戒範囲(水平距離) 操作の目安
1号消火栓 130L/min以上 0.17MPa以上0.7MPa以下 25m以下 ホースの展開・ノズル保持に慣れが必要で、基本的に2人程度での操作が想定される
易操作性1号消火栓 130L/min以上 0.17MPa以上0.7MPa以下 25m以下 保形ホース(折りたたんでも形が崩れにくいホース)採用などにより、1人でも操作しやすい
2号消火栓 60L/min以上 0.25MPa以上0.7MPa以下 15m以下 ホースが軽量で、1人での操作が前提

放水量・放水圧力の数値そのものは1号と易操作性1号で共通しており、違いは「ホースやノズルの構造上、1人でも扱いやすいかどうか」にあります。1号消火栓は放水量が大きい分、ホースが太く重くなりやすく、放水時の反動もあるため、実務上は複数人での操作が前提とされる場面が多くなります。易操作性1号消火栓は、この1号相当の放水性能を維持したまま、保形ホースの採用などによって1人での操作を可能にした仕様です。

このほかに、2号消火栓をベースにしながら1号に近い警戒範囲を確保した広範囲型2号消火栓という仕様もあります。放水量80L/min以上、放水圧力0.17MPa以上0.7MPa以下、警戒範囲は水平距離25m以下とされ、1人操作のしやすさと広い警戒範囲を両立させたい場合の選択肢になります。どの種類が採用可能かは、建物の用途・構造、消火の対象となる可燃物の量によって条件が定められているため、計画の初期段階で確認しておくべき事項です。


水源水量の考え方

屋内消火栓設備は、火災時に一定時間放水を継続できるだけの水を、あらかじめ水源に確保しておく必要があります。水源水量は、設置する消火栓の個数(同一階での設置個数が最も多い階を基準とし、2個を超える場合は2個として計算)に、消火栓の種類ごとに定められた単位水量を乗じて算定する考え方が基本です。

種類 単位水量の目安 計算の考え方
1号消火栓・易操作性1号消火栓 2.6m³ 設置個数(最大2)×2.6m³
2号消火栓 1.2m³ 設置個数(最大2)×1.2m³
広範囲型2号消火栓 1.6m³ 設置個数(最大2)×1.6m³

この単位水量は、それぞれの消火栓のノズル放水量に、想定される放水継続時間(おおむね20分程度)を乗じた考え方に基づいています。1号・易操作性1号消火栓は放水量が大きい分、単位水量も2号消火栓の2倍以上になっている点が読み取れます。

実務上のポイントは、水源水量を屋内消火栓設備単独で決めず、同じ水源を共用する他の消火設備(スプリンクラー設備など)がある場合は、それらを合算した水量で水槽容量を検討することです。受水槽や飲料水系統とは別に確保するのが原則であり、消防用水源であることが明確に区分・表示されているかも設計・施工の両面で確認すべき事項になります。


加圧送水装置(ポンプ)と非常電源

水源に必要な水量が確保されていても、それを必要な圧力・流量で末端の消火栓まで送り届けられなければ、屋内消火栓設備は機能しません。この役割を担うのが加圧送水装置、一般にいう消火ポンプです。

加圧送水装置は、消火栓の種類ごとに定められたノズル放水量・放水圧力を、配管の摩擦損失や高低差による圧力損失を見込んだうえで、末端の消火栓まで確実に届けられる能力(吐出量・全揚程)を持つ必要があります。設置階数が多い建物や、消火栓の位置が水源・ポンプから離れている建物では、圧力損失が大きくなるため、ポンプの能力にもその分の余裕を持たせる検討が必要になります。

もう一つ欠かせないのが非常電源です。屋内消火栓設備は火災時に常用電源が停電していても作動できなければならないため、加圧送水装置を含む設備全体に、自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備といった非常電源からの給電が求められます。非常電源には、停電時に有効に設備を作動させられる時間(一般に30分間以上とされる水準)や、常用電源が停止した際に自動的に非常電源へ切り替わる仕組みが求められます。非常用の自家発電設備・蓄電池設備の選び方そのものは予備電源・非常用自家発電設備の計画|発電機・蓄電池・UPSの使い分けで扱っているとおり、負荷設備の種類や必要作動時間を踏まえて選定する事項です。


表示灯・起動装置の考え方

消火栓箱には、消火栓の位置を離れた場所からでも認識できるよう、赤色の表示灯が設けられます。火災時に在館者が「どこに消火栓があるか」を瞬時に判断できることが目的であり、表示灯の視認性・設置位置は、避難動線や什器レイアウトによって隠れてしまわないよう計画段階で確認しておく必要があります。

起動の方式についても、消火栓箱の開閉弁を開ける、あるいは起動ボタンを押すといった操作によって、加圧送水装置が自動的に起動する仕組みが一般的です。操作した人がポンプの起動を意識しなくても放水できる状態になっていることが、初期消火における操作のしやすさに直結します。起動表示灯(ポンプが起動したことを消火栓箱側で確認できる表示)が求められる場合もあり、こうした表示・起動まわりの細かい仕様は、使用する消火栓箱の製品仕様と合わせて確認するのが実務的です。

このほか、消火栓箱の中には非常電話(遠隔でポンプ室・防災センターと連絡を取るための設備)が組み込まれる場合もあります。建物の規模や管理体制によって要否が変わる部分であり、電気設備側では消火栓箱への電源・通信配線をどのルートで引き込むかも合わせて計画しておく必要があります。表示灯・起動装置まわりの配線は、消火ポンプの制御盤や自動火災報知設備の受信機とも関係するため、系統図の段階で電気設備担当と整合させておくと手戻りが少なくなります。


実務での配置判断

屋内消火栓の配置を検討する際の出発点は、建物内のどの地点からも、いずれかの消火栓のホースが届く範囲に入るように、警戒範囲(水平距離)を基準に配置していくという考え方です。1号・易操作性1号消火栓であれば水平距離25m以下、2号消火栓であれば15m以下という範囲を目安に、廊下・居室の位置関係を踏まえて設置箇所を検討します。

実務での判断ポイントとしては、次のような点が挙げられます。

  • 想定される操作者:不特定多数の来館者が利用する店舗・施設では、訓練を受けていない人でも扱いやすい易操作性1号や2号系が選ばれやすい傾向があります。一方、従業員など一定の訓練が期待できる事務所・工場では1号消火栓が採用される場合もあります。
  • 警戒範囲と什器・間仕切りの関係:水平距離はあくまで直線距離ではなく、実際に人が通ってホースを延ばせる経路を踏まえて検討する必要があります。間仕切りや大型什器で経路が迂回する場合は、警戒範囲に届かない死角が生じていないかの確認が欠かせません。
  • 他の消火設備との重複:スプリンクラー設備など自動で作動する消火設備が設置されている部分でも、一定の条件下では屋内消火栓の設置が緩和・省略される場合があります。この扱いは建物の用途・構造・所轄消防署の運用によって異なるため、個別に確認が必要です。
  • 将来の用途変更:事務所から店舗へなど、用途変更によって収容人員や可燃物の量が変わると、必要な消火設備の水準が変わる可能性があります。実施設計の段階では現状の用途を前提にしつつ、想定される用途変更の可能性も踏まえておくと後の手戻りを減らせます。

また、スプリンクラー設備が設置されている部分に、より簡易な散水栓(補助散水栓)を併設する構成が採られることもあります。これは、自動で作動するスプリンクラーを主とした消火の仕組みに、人が使う散水手段を補助的に加えるという位置づけであり、屋内消火栓そのものとは設置目的が異なる点に注意が必要です。どの構成を採るかは、対象室の用途・スプリンクラーの設置範囲との関係を踏まえて個別に検討する事項になります。


よくある誤解

「易操作性1号消火栓を入れておけば全て安心」ではない。 易操作性1号消火栓は1号相当の放水性能を持ちますが、放水量が大きい分、放水時の反動や水圧の取り扱いには一定の注意が必要です。1人操作が可能という表示は「初心者でも安全に使える」ことを保証するものではなく、日頃からの使用方法の周知・訓練が前提になります。

「2号消火栓は性能が劣るから避けるべき」でもない。 2号消火栓・広範囲型2号消火栓は、放水量を抑える代わりに軽量で扱いやすく、不特定多数の人が使う場面での実用性を重視した仕様です。建物の用途・想定される操作者次第では、あえて2号系を選ぶことが合理的な判断になります。

水源水量とポンプの能力は別物。 水源に必要な水量が確保されていても、ポンプの吐出量・全揚程が不足していれば、末端の消火栓で必要な放水圧力を確保できません。両方を独立して確認する必要があります。


まとめ

  • 屋内消火栓には1号・易操作性1号・2号があり、放水量(130L/min・130L/min・60L/min)、放水圧力、警戒範囲(水平距離25m・25m・15m)、必要な操作人数が異なる
  • 易操作性1号消火栓は1号相当の放水性能を維持しつつ、保形ホースなどにより1人操作を可能にした仕様
  • 水源水量は消火栓の種類ごとに定められた単位水量(1号・易操作性1号は2.6m³、2号は1.2m³など)に設置個数(最大2)を乗じて算定する
  • 加圧送水装置(ポンプ)は圧力損失を見込んだ能力が必要で、非常電源からの給電と自動切り替えが求められる
  • 表示灯・起動装置は「消火栓の位置がすぐ分かる」「操作すればポンプが自動起動する」という初期消火のしやすさを支える要素
  • 配置は警戒範囲(水平距離)を基準にしつつ、想定される操作者・什器レイアウト・他の消火設備との関係を踏まえて検討する

屋内消火栓設備の計画は、規格の数値を暗記するだけでなく「実際に火災が起きたとき、誰がどのようにホースを延ばして放水するか」という現場の動きを具体的にイメージしながら詰めると、警戒範囲や操作人数の判断がぶれにくくなります。最終的な仕様・配置は、所轄消防署・消防設備士との協議を前提に決定してください。


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