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浄化槽の基礎|合併処理浄化槽の仕組みと維持管理

浄化槽の計画は、大きく分けて「汚水をどう処理する仕組みにするか」という設計側の判断と、「設置後どう機能を維持していくか」という管理側の判断の、2つを同時に考える必要がある分野です。下水道が整備されていない地域では、住宅や小規模な建物の生活排水処理を浄化槽が一手に引き受けることになるため、処理の仕組みを正しく理解しないまま設計・維持管理を進めると、放流先の水質を悪化させる原因になりかねません。

この記事では、現在新設が義務づけられている合併処理浄化槽の処理の流れ、単独処理浄化槽との違いと転換の考え方、処理対象人員(人槽)の算定の考え方、放流水質の基準、ブロワ(送風機)の役割、浄化槽法に基づく保守点検・清掃・法定検査、そして下水道未整備地域における浄化槽の位置づけまでを整理します。排水設備全体の計画については排水通気設備の計画、給水設備との関係については給水設備の計画もあわせて参考にしてください。


浄化槽とは何か、下水道との役割分担

浄化槽は、トイレの汚水や台所・浴室・洗濯機などからの生活雑排水を、微生物の働きを利用して処理し、河川や水路などの公共用水域へ放流できる水質まで浄化するための設備です。生活排水を処理する仕組みには、大きく分けて「集合処理」と「個別処理」という2つの考え方があります。

下水道や農業集落排水施設のように、地域内の多数の建物からの排水を管路でまとめて1か所の処理場に集めて処理する方式が集合処理です。これに対して浄化槽は、建物の敷地内(または近接する場所)に設置し、その建物から出る排水をその場で処理してから放流する個別処理にあたります。

地形がなだらかで家屋が密集している地域では、管路を効率よく敷設できる集合処理(下水道)が向いている一方、山間部や家屋が散在する地域、あるいは下水道の整備がまだ及んでいない地域では、管路の敷設コストが割高になりやすいため、個別処理である浄化槽が現実的な選択肢になります。どちらの方式を採用するかは、市町村が策定する生活排水処理の全体計画の中で地域ごとに位置づけられているのが一般的で、浄化槽を計画する際は、まずその敷地がどちらの処理区域に該当するかを所轄自治体(下水道担当部局・生活環境担当部局)に確認することが実務の出発点になります。


単独処理浄化槽と合併処理浄化槽の違い

浄化槽には、処理する排水の範囲によって「単独処理浄化槽」と「合併処理浄化槽」という2つの区分があります。

区分 処理する排水の範囲 現在の扱い
単独処理浄化槽 トイレの汚水のみを処理し、台所・浴室などの生活雑排水は未処理のまま放流する 新設は認められていない(既存のものが残っている段階)
合併処理浄化槽 トイレの汚水と生活雑排水をまとめて処理する 現在新設できる浄化槽はこの方式のみ

単独処理浄化槽は、トイレの汚水だけを処理する構造のため、生活雑排水はほとんど処理されないまま側溝や水路に流れ込み、周辺の水質悪化の原因になりやすいという課題がありました。この課題を受けて浄化槽法が改正され、平成13年(2001年)4月以降、単独処理浄化槽の新設は認められなくなり、現在新たに設置できる浄化槽は合併処理浄化槽に一本化されています。

既に設置されている単独処理浄化槽については、直ちに使用が禁止されるわけではありませんが、生活雑排水を未処理のまま放流し続ける状態は望ましくないため、浄化槽法上は所有者に合併処理浄化槽への転換の努力義務が課されています。実務では、多くの自治体が単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換工事に対して補助金制度を設けており、改修や建て替えのタイミングで転換を検討するケースが多く見られます。この記事の以降の内容は、現在標準となっている合併処理浄化槽を前提に解説します。


合併処理浄化槽の処理の流れ

合併処理浄化槽は、複数の槽(処理段階)を汚水が順番に通過することで、含まれる汚れを段階的に取り除いていく仕組みです。小規模な住宅用の浄化槽で広く採用されている代表的な処理方式(嫌気ろ床接触ばっ気方式)を例に、処理の流れを整理します。

処理段階 主な働き
流入・スクリーン 汚水中の大きな固形物を取り除いてから槽内に流入させる
嫌気ろ床槽 酸素を嫌う嫌気性微生物が、ろ材(接触材)の表面に付着した状態で汚水中の有機物を分解し、あわせて浮遊物をろ過的に捕捉する。多くは2室構成で同様の処理を繰り返す
接触ばっ気槽 ブロワから送られる空気により酸素を好む好気性微生物を活性化させ、嫌気処理では分解しきれなかった有機物をさらに分解する
沈殿槽 有機物を分解しながら増殖した微生物の塊(汚泥)を沈殿させ、上澄みのきれいな水と分離する
消毒槽 沈殿槽からの上澄み水を消毒剤で消毒し、放流可能な状態にする
放流 側溝・水路など、あらかじめ定められた放流先へ排出する

このように、合併処理浄化槽の基本的な考え方は「嫌気性微生物による1次的な分解」と「好気性微生物による2次的な分解」を組み合わせ、最後に消毒してから放流するという段階的な処理です。処理方式には嫌気ろ床接触ばっ気方式のほかにも、槽の構成や微生物の担持方法が異なるいくつかの方式があり、建物の規模や処理対象人員、設置スペースの条件に応じてメーカー・機種が選定されます。具体的な処理方式・仕様の選定は、建築基準法関連法令や製品の性能評価基準に基づいて行われるため、設計にあたっては最新の基準・認定情報を設計者・メーカーに確認することが前提になります。


ブロワ(送風機)の役割

合併処理浄化槽の稼働を支える機械設備の中で、特に重要な役割を担うのがブロワ(送風機)です。ブロワは接触ばっ気槽などに空気を送り込み、槽内の好気性微生物が呼吸するために必要な酸素を継続的に供給する装置です。

好気性微生物は酸素がなければ活動を維持できないため、ブロワが停止すると槽内の酸素供給が絶たれ、微生物の働きが低下し、浄化槽としての処理機能そのものが損なわれるおそれがあります。このため、ブロワは浄化槽の中でも「止まってはならない機械」という位置づけで扱われ、日常点検では稼働音・振動の異常や、送気の状態を確認することが基本になります。

実務での判断としては、ブロワは消耗部品を含む機械であり、一定の年数で交換が必要になる前提で維持管理計画を立てることが重要です。異音や送気量の低下といった予兆が出た段階で早めに保守点検業者に相談し、突発的な停止による処理機能の低下を防ぐという考え方が実務上のポイントになります。


処理対象人員(人槽)の算定の考え方

浄化槽の規模は「人槽」という単位、すなわち何人分の生活排水を処理できる能力かという「処理対象人員」で表されます。処理対象人員は、実際にその建物を使う人数をそのまま当てはめるのではなく、建築物の用途ごとに定められた算定基準に基づいて算出するのが基本の考え方です。

処理対象人員の算定には、建築物の用途別に「延べ面積あたり」「便器数あたり」「客席数あたり」といった、それぞれの用途に応じた単位が用いられます。たとえば住宅であれば延べ面積に応じて、事務所や店舗であれば延べ面積や在館人員に応じて、旅館やホテルであれば客室数や延べ面積に応じて、というように用途ごとに異なる考え方で算定されます。1つの建物の中に複数の用途が混在する場合は、それぞれの用途ごとに算定した人員を合算するのが原則です。

この算定基準は日本産業規格(JIS)で定められており、浄化槽メーカーの選定資料や自治体の指導要領でも広く参照されています。実務では、建物の用途・規模が確定した段階でこの基準に照らして処理対象人員を算定し、それに見合った処理能力(人槽)の浄化槽を選定するという順序で計画を進めます。用途や面積の想定が変わると必要な人槽も変わるため、計画変更の際は処理対象人員の再算定を忘れずに行うことが実務上の注意点です。


放流水質の考え方

浄化槽で処理された水は、最終的に側溝・水路などの公共用水域へ放流されます。この放流水がどの程度きれいであるべきかという基準が、放流水質の考え方です。代表的な指標として広く使われているのがBOD(生物化学的酸素要求量)で、水中の有機物量を示す数値として扱われます。

合併処理浄化槽は、単独処理浄化槽と比べて高い処理性能が求められており、生活雑排水も含めて処理したうえで一定水準以下のBODで放流することが前提になっています。一方、単独処理浄化槽はトイレの汚水のみを対象とする分、求められる処理性能の水準も合併処理浄化槽より緩やかに設定されています。このように、合併処理浄化槽への転換が求められてきた背景には、処理対象範囲の違いに加えて、放流水質そのものの水準の違いがあります。

具体的なBODの基準値・除去率は浄化槽の構造や規模によって扱いが異なるため、この記事では数値そのものには踏み込みません。実際の設計・維持管理においては、建築基準法関連法令や浄化槽の構造基準、所轄自治体の指導基準に基づく最新の数値を、設計者・浄化槽管理士に確認することが確実です。


浄化槽法に基づく維持管理:保守点検・清掃・法定検査

浄化槽は、設置して終わりの設備ではなく、微生物による生物処理を継続的に機能させ続けるための日常管理が不可欠な設備です。浄化槽法では、浄化槽の所有者(浄化槽管理者)に対して、大きく分けて「保守点検」「清掃」「法定検査」という3種類の維持管理を行う義務を課しています。

維持管理の種類 主な内容 担い手
保守点検 装置・機器の調整や修理、消毒剤の補充、汚泥のたまり具合やろ材の目詰まりの確認など、日常的に機能を維持するための点検・作業 浄化槽管理士などの専門技術者(登録業者に委託するのが一般的)
清掃 槽内にたまった汚泥やスカム(浮きかす)を引き出し、装置を洗浄する作業 許可を受けた浄化槽清掃業者
法定検査 保守点検・清掃が適正に行われ、浄化槽の機能が正常に維持されているかを、都道府県知事が指定した検査機関が確認する検査 指定検査機関

法定検査はさらに2種類に分かれており、浄化槽を新たに使用開始してから一定期間内に行う検査(浄化槽法7条に基づく検査)と、その後毎年1回受ける検査(浄化槽法11条に基づく検査)があります。7条検査は、設置工事が適正に行われ、浄化槽が正常に機能し始めているかを早期に確認する位置づけの検査で、11条検査は、その後継続的に保守点検・清掃が行われ、機能が維持されているかを定期的に確認する位置づけの検査です。

保守点検・清掃は「浄化槽そのものを日常的に維持管理する行為」であり、法定検査は「その維持管理が適正に行われているかを第三者機関が確認する行為」という違いがあります。この2つは役割が異なるため、どちらか一方だけを行えばよいというものではなく、いずれも浄化槽管理者の義務として並行して行う必要があります。


実務での判断:設計段階で配慮しておきたい点

浄化槽は設置してからの維持管理が長く続く設備であるため、設計段階から次のような点に配慮しておくと、竣工後の管理がスムーズになります。

  • 保守点検・清掃車両のアクセス: 清掃時には汚泥の引き抜きにバキューム車が使用されるため、車両が浄化槽の設置場所まで近接できる動線・スペースを計画段階で確保しておく必要があります。
  • マンホール(点検口)の配置: 各槽の点検・清掃ができるよう、マンホールを適切な位置に配置し、上部に物を置かれたり車両の通行荷重がかかったりしない計画とすることが重要です。
  • ブロワの設置場所: ブロワは稼働音を発するため、住宅の居室や隣地境界からの離隔、防音・防振への配慮が実務上のポイントになります。停止時にすぐ気づけるよう、居住者が日常的に稼働音を確認しやすい配置とする考え方もあります。
  • 放流先の確認: 放流先の水路・側溝の管理者(自治体・水利組合など)への事前協議や、放流承諾の要否を計画の早い段階で確認しておくことが必要です。

よくある誤解

浄化槽については、次のような誤解が見られることがあります。

  • 「浄化槽を設置すれば、あとは何もしなくてよい」という誤解: 浄化槽は微生物の働きで処理する生物処理設備であるため、ブロワの稼働状況や汚泥のたまり具合を放置すると処理機能が低下します。保守点検・清掃・法定検査を継続的に行って初めて本来の性能が維持されます。
  • 「単独処理浄化槽も合併処理浄化槽も中身は同じ」という誤解: 単独処理浄化槽はトイレの汚水しか処理しないため、生活雑排水の処理という点で合併処理浄化槽と根本的に構造・性能が異なります。
  • 「浄化槽は下水道より劣った処理方法」という誤解: 浄化槽と下水道は、地域の地形や家屋の分布状況に応じて使い分けられる処理方式であり、優劣ではなく適材適所の考え方で選択されるものです。適切に維持管理された合併処理浄化槽は、下水道と同等の水準の処理性能を発揮することを前提に制度が組み立てられています。

まとめ

  • 浄化槽は下水道が整備されていない地域などで生活排水を敷地内で処理する個別処理方式の設備で、下水道(集合処理)とは地域特性に応じた役割分担の関係にある
  • 現在新設できる浄化槽は合併処理浄化槽のみで、トイレの汚水しか処理しない単独処理浄化槽は新設が認められておらず、既存分は転換の努力義務がある
  • 合併処理浄化槽は、嫌気性微生物による分解・好気性微生物による分解・沈殿・消毒という段階を経て放流する仕組みが基本
  • ブロワ(送風機)は好気性微生物への酸素供給を担う中核設備で、停止すると処理機能そのものが損なわれるため日常点検・計画的な交換が重要
  • 処理対象人員(人槽)は建築物の用途別の算定基準に基づいて算出し、それに見合った浄化槽を選定する
  • 浄化槽法に基づく保守点検・清掃・法定検査(7条検査・11条検査)は役割が異なり、いずれも浄化槽管理者の義務として並行して行う必要がある

浄化槽は、設計段階の処理方式・人槽の選定だけでなく、竣工後の日常的な維持管理が機能を左右する設備です。放流水質や具体的な数値基準、地域ごとの処理区域の扱いは所轄自治体・浄化槽管理士・設計者によって最新の基準を確認しながら進めることが、安定した処理機能を長く保つための基本になります。


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