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航空障害灯・昼間障害標識の基礎|設置義務と免除の考え方

高層の建築物や煙突・鉄塔などを計画するとき、意匠・構造の検討がある程度進んだ段階になって初めて「この高さだと航空障害灯が要るのでは」という話が持ち上がることがあります。航空障害灯・昼間障害標識は建築基準法ではなく航空法の体系に基づく設備であるため、建築設計の実務者にとっては馴染みが薄く、検討の着手が遅れがちな項目のひとつです。

この記事では、航空障害灯の設置義務がどのような高さで生じるのか、灯器の種類(低光度・中光度・高光度)と点灯色の使い分け、設置位置の考え方、昼間障害標識が必要になる場合、周囲の状況によって設置が免除されるケースの考え方、電源・予備電源の信頼性、届出から維持管理までの流れを、電気設備の実務目線で整理します。予備電源の基礎は予備電源・非常用自家発電設備の計画、屋上設備の受電系統は受変電設備の基礎|単線結線図で見る電気の流れと主要機器もあわせてご覧ください。


早見まとめ

航空障害灯・昼間障害標識の検討で、まず押さえておきたい考え方を1枚にまとめました。具体的な光度値・設置位置・免除の可否は、対象物件の高さ・形状・周辺の状況によって個別に判断されるため、最終的には所轄の地方航空局・空港事務所への確認が前提です。

項目 考え方の目安
設置義務が生じる高さ 地表または水面からおおむね60m以上になる建築物・工作物(航空法上の考え方)
部分的に60mを超える場合 ペントハウス・塔屋・非常用エレベーター機械室など、建物の一部でも60m以上になれば対象になり得る
灯器の種類 低光度/中光度赤色/中光度白色/高光度の4区分(光度・点灯色・点滅の有無が異なる)
昼間障害標識が必要になる場合 煙突・鉄塔など、見た目の輪郭が細く昼間の視認が難しい形状の高い物件
免除の考え方 周囲に同程度以上の高さの物件が既にある場合など、一定の条件下で所轄の承認により設置を省略・軽減できる場合がある
電源 常時点灯・不点灯の監視が前提となるため、一般の照明設備以上に電源の信頼性が求められる
届出 設置後、遅滞なく地方航空局への届出が必要(航空法令上の義務)

航空障害灯とは何か|航空法が求める理由

航空障害灯は、夜間や視界不良時に飛行する航空機に対して、地上の高い建築物・工作物の存在を視覚的に知らせるための灯火設備です。建築基準法が主に「建物の中にいる人・周辺の市街地を守る」ための規定を定めているのに対して、航空障害灯は航空法の体系に基づき、「上空を飛ぶ航空機の安全な航行を守る」という異なる目的から求められる設備です。この出発点の違いを理解しておくと、なぜ建築の実務に馴染みが薄いのかが見えてきます。

航空法では、地表または水面からの高さがおおむね60mを超える物件について、航空機からの視認性を確保する目的で航空障害灯の設置を義務づける考え方が取られています。ここでいう「高さ」は建物本体の意匠上の最高高さだけでなく、屋上に設置される塔屋・ペントハウス・アンテナ・避雷針・クレーンなど、建物に付属する各種の突出物の高さも含めて判断される点に注意が必要です。設計の主要な高さが60m未満であっても、屋上の付属物を含めると60mを超えるケースは実務上珍しくなく、意匠・構造だけでなく屋上に何を載せるかが固まった段階で、改めて航空障害灯の要否を確認することが望ましい進め方になります。


灯器の種類|低光度・中光度・高光度の使い分け

航空障害灯には、光度(明るさ)と点灯色・点滅の有無によって、大きく次の区分があります。

種類 点灯色・点灯方式 主な性格
低光度航空障害灯 赤色の不動光(点滅しない) 比較的低い高さの物件に用いられる、最も基本的な区分
中光度赤色航空障害灯 赤色の明滅光 中程度の高さの物件で、低光度より視認性を高めたい場合に用いられる
中光度白色航空障害灯 白色の閃光 昼間・薄明時でも視認しやすいよう、白色の閃光で存在を示す
高光度航空障害灯 白色の閃光 超高層の物件など、より遠方からの視認性が求められる場合に用いられる区分(赤色の高光度は存在しない)

低光度・中光度赤色の航空障害灯は夜間を中心とした点灯運用が基本とされる一方、中光度白色・高光度の航空障害灯は閃光によって昼夜を問わず視認性を確保する性格を持つため、原則として常時点灯とされる考え方が取られています(国土交通大臣が認めた場合の例外あり)。どの区分を、建物のどの高さ・どの範囲に採用するかは、対象物件の高さ区分に応じて基準が定められており、周辺に飛行場があるかどうかなど個別の状況によっても変わるため、具体的な光度値・設置基数の決定は、設計の早い段階で所轄の地方航空局・空港事務所に相談しながら進めるのが実務上安全です。


設置位置の考え方

航空障害灯は「とりあえず屋上に1つ」で済むものではなく、物件の高さ・形状に応じて設置位置を検討する必要があります。実務で意識しておきたい考え方は次のとおりです。

  • 最上部への設置:物件の最も高い位置(屋上四隅や頂部)に設置し、上空からの視認性を確保する
  • 物件が高くなるほど、中間の高さにも追加設置:一定以上の高さになる超高層の建築物・鉄塔等では、頂部だけでなく一定の高さ間隔ごとに中間の灯火を追加する考え方が取られる
  • 形状に応じた見え方の検討:塔状の細長い工作物(煙突・鉄塔・アンテナ柱など)と、面的な広がりを持つ高層建築物とでは、必要な灯数・配置の考え方が異なる
  • 周辺の既存物件との位置関係:近接する既存の高い物件がある場合、その灯火配置との整合も含めて検討されることがある

中間高さへの追加設置が必要になるかどうかや、具体的な設置間隔は物件の高さ区分によって定められる考え方があるため、「頂部だけでよいか、中間にも必要か」は、対象物件の高さが固まった段階で早めに確認しておくことが、後工程での設計変更を避けるポイントになります。


昼間障害標識が必要になる場合

航空障害灯が主に夜間・視界不良時の視認性を確保するための灯火であるのに対し、昼間障害標識は、晴天の昼間であっても航空機から視認しにくい形状の高い物件に対して求められる、色による標識です。対象になりやすいのは、煙突や鉄塔のように輪郭が細く、空を背景にすると視認しづらい構造物です。

昼間障害標識の代表的な方法には、次のようなものがあります。

方法 概要
塗色による標識 物件の外面を、赤(オレンジ系の色)と白を交互に帯状に塗り分ける方法。帯の幅・段数は物件の高さに応じて定められる考え方がある
旗による標識 支線など塗色による標識が難しい部材に、目立つ色の旗を取り付ける方法

面的な広がりを持つ一般的な高層建築物では、外壁の意匠計画上、塗色による昼間障害標識を求められることは多くなく、細い塔状の工作物(煙突・鉄塔・アンテナ柱等)で特に論点になりやすいという傾向がありますが、対象になるかどうかは物件の形状・高さ・視認性によって個別に判断されるため、意匠計画の初期段階で所轄への確認を挟んでおくと後の手戻りを防ぎやすくなります。


設置免除の考え方|国土交通大臣の承認

航空障害灯・昼間障害標識は、高さの条件を満たせば一律に設置しなければならないわけではなく、周囲の状況によっては、所轄の承認を得たうえで設置を省略・軽減できる場合があるという免除の考え方が用意されています。

免除が検討され得る典型的な状況としては、次のようなケースが挙げられます。

  • 対象物件の周囲に、既に同程度以上の高さの建築物・工作物があり、航空機からの視認性が実質的に確保されていると考えられる場合
  • 対象物件が、既存の高い物件の陰に隠れる位置関係にあり、独立して視認させる必要性が低いと考えられる場合
  • 特殊な立地条件により、航空機の航行経路上、視認確保の必要性が乏しいと判断される場合

免除は自己判断で「設置しなくてよい」と決められるものではなく、国土交通大臣(実務上は所轄の地方航空局)への申請と承認の手続きを経て初めて認められるものです。都心部の既存市街地に高層建築物を計画する場合、周辺に同等以上の高さのビルが既に立ち並んでいるケースは珍しくないため、免除の可能性を含めて早い段階で所轄に相談することは、コスト・意匠の両面で有効な検討になり得ます。ただし、免除の可否は個々の立地・周辺状況に強く左右されるため、「近くに高いビルがあるから確実に免除される」とは限らない点には注意が必要です。


電源・予備電源と信頼性

航空障害灯は、航空機の安全な航行に関わる保安上の設備であるという性格上、一般の建築設備照明以上に「消えない・止まらない」ことへの要求水準が高い設備です。計画段階では、次のような観点を押さえておく必要があります。

  • 停電時にも点灯を維持できるか:常時点灯が求められる区分の航空障害灯では、商用電源が失われた場合の予備電源の要否・方式を検討する必要がある
  • 系統の独立性:一般の照明回路と共用せず、専用回路として計画することで、他の負荷側のトラブルの影響を受けにくくする
  • 不点灯の監視:球切れや故障によって灯火が消えてしまった状態を早期に検知できる仕組み(監視盤への表示、遠隔監視など)を組み込むかどうか

停電時の予備電源については、航空障害灯単体で発電機を新設するのではなく、建物全体の非常用自家発電設備・保安負荷系統に組み込んで計画されることが一般的です。保安負荷としての位置づけや、非常電源との関係の考え方は予備電源・非常用自家発電設備の計画|発電機・蓄電池・UPSの使い分けを参照してください。航空障害灯に予備電源が具体的にどこまで求められるかは、対象物件の高さ区分・灯器の種類によって考え方が変わるため、電気設計の初期段階で所轄への確認を含めて詰めておく必要があります。


届出・完成検査・維持管理

航空障害灯・昼間障害標識は、設置して終わりではなく、設置後の手続きと、供用開始後の維持管理まで含めて計画する必要があります。

設置前後の手続き

航空障害灯・昼間障害標識を設置しようとする者は、航空法令の定めに基づき、設置後遅滞なく地方航空局長への届出を行う必要があります。高さ・灯器の種類・設置位置などを含めた届出内容が、実際の設計・施工と整合していることが前提になるため、実施設計の段階で灯器の型式・設置位置を確定し、竣工に合わせて届出の準備を進めるのが実務上の流れです。

維持管理

供用開始後は、灯火が常に正常に機能する状態を維持する義務が課されます。実務上、次のような維持管理の視点が必要になります。

項目 維持管理の視点
不点灯の監視 球切れ・故障による消灯を早期に把握できる仕組み(自動監視・定期巡回)を用意する
球切れ対応 消灯を検知してから復旧までの対応手順・体制をあらかじめ決めておく
LED化 従来の白熱電球・放電灯に代えてLED光源を採用することで、寿命の延伸・消費電力の低減・故障頻度の低下が期待できる
定期的な点検 灯器本体だけでなく、電源系統・配線・監視機能を含めた定期点検を計画する

近年は光源のLED化が進み、球切れの頻度そのものを抑える方向に設備が更新されてきていますが、不点灯が生じた場合の対応体制(誰が、どのくらいの時間内に対応するか)を維持管理計画に明記しておくことは、光源の種類によらず重要です。航空機の安全に関わる設備であるという性格上、「気づいたら数日消えていた」という状態を避ける仕組みづくりが、設計段階からの継続的な論点になります。


実務での判断|早い段階で確認すべきこと

航空障害灯・昼間障害標識の検討で実務上つまずきやすいのは、「意匠・構造の検討が固まってから、高さや屋上の突出物の扱いが変わり、設置要否の判断がやり直しになる」というケースです。これを避けるために、意識しておきたい進め方を挙げます。

  • 建物本体の最高高さだけでなく、塔屋・ペントハウス・アンテナ・避雷針など屋上に載る全ての突出物を含めた「最終的な最高到達高さ」を早い段階で確定させる
  • 60mに近い、あるいは超える可能性がある計画では、意匠・構造の検討と並行して所轄の地方航空局・空港事務所への事前相談を進める
  • 周囲に既存の高い建築物がある場合は、免除の可能性についても合わせて相談する
  • 電気設計側では、予備電源・監視の要否を非常用電源系統全体の計画に組み込んで検討する
  • 届出のタイミング(設置後遅滞なく)を意識し、実施設計〜施工〜竣工のスケジュールに組み込んでおく

よくある誤解

「うちのビルは60m未満だから関係ない」と思っていたら、屋上の鉄塔・アンテナで超えていた

建物本体の高さだけで判断してしまい、後から屋上設備の高さを含めると基準を超えていたと分かるケースは実務でよく見られます。屋上に何を設置するかが固まる前に、余裕を持って高さの見込みを確認しておくことが望ましい進め方です。

「免除申請すれば必ず設置しなくてよい」というわけではない

免除は周囲の状況などを踏まえた個別の承認によるものであり、申請すれば自動的に認められるものではありません。過度に期待して計画を進めず、承認が得られなかった場合の設計も並行して想定しておくことが安全です。

「消防設備の非常電源と同じように考えればよい」というわけでもない

航空障害灯は消防法上の非常電源の対象設備そのものではなく、航空法令上の要求です。求められる電源の信頼性の水準や考え方は、対象物件・灯器の種類によって異なるため、消防設備の非常電源の考え方をそのまま流用せず、個別に確認する必要があります。


まとめ

  • 航空障害灯は、地表からおおむね60m以上になる建築物・工作物に設置が求められる、航空法令に基づく設備で、建築基準法とは異なる体系である
  • 建物本体だけでなく、塔屋・ペントハウス・アンテナなど屋上の突出物を含めた高さで判断される点に注意が必要
  • 灯器には低光度・中光度赤色・中光度白色・高光度の区分があり、点灯色・点滅の有無・常時点灯かどうかが異なる
  • 煙突・鉄塔など昼間の視認が難しい細長い形状の物件では、塗色や旗による昼間障害標識が求められる場合がある
  • 周囲に同程度以上の高さの物件がある場合など、一定の条件下で所轄の承認により設置の免除・軽減が認められることがあるが、確実ではない
  • 常時点灯・不点灯の早期検知が求められる設備であるため、専用回路・予備電源・監視の仕組みを非常用電源系統全体の計画に組み込む必要がある
  • 設置後は地方航空局への届出が必要で、供用開始後も球切れ対応・LED化を含めた維持管理体制が求められる

航空障害灯・昼間障害標識は、建築設計の実務者にとって検討の着手が遅れがちな項目ですが、屋上の突出物を含めた最終高さが固まる前の早い段階で所轄への確認を挟んでおくことで、後工程での設計変更や届出の遅れを防ぎやすくなります。具体的な光度値・設置数・免除の可否は個別の物件条件で変わるため、所轄の地方航空局・空港事務所との協議を前提に計画を進めることが実務上のポイントです。


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