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実施設計管工事(空調・給排水)

配管・ダクトの断熱保温の基礎|保温材の種類とJIS A 9501の考え方

空調配管やダクトの図面には「保温」という言葉がよく出てきますが、これは単に配管を覆う仕上げ材ではなく、防露・省エネ・凍結防止・人体接触の防止という複数の目的を1つの工事でまとめて満たす、実務上重要な工程です。保温の考え方を理解しないまま材料だけを指定すると、竣工後に結露や熱損失のトラブルにつながりやすくなります。

この記事では、保温がどんな目的で行われるのか、代表的な保温材の種類とその選び方、そしてJIS A 9501「保温保冷工事施工標準」がこの工事の中でどう位置づけられているかを整理します。配管の熱伸縮対策は膨張タンクと配管の熱伸縮対策の基礎、配管の腐食対策は配管の腐食と防食の基礎であわせて扱っていますので、参照してください。


図で見る(全体像)

防露・省エネ・凍結防止・火傷防止という保温の4つの目的、繊維系と発泡プラスチック系という保温材の分類、配管の支持金物貫通部・継目・フランジまわりで断熱欠損が起きやすいことを示す模式図


早見まとめ

項目考え方の要点
保温の主な目的防露(結露防止)・省エネ(熱損失の抑制)・凍結防止・人体接触時の火傷防止という4つに整理できる
冷水系統の位置づけ冷水配管・冷風ダクトは表面温度が露点温度を下回りやすく、防露が主目的になる
温水・蒸気系統の位置づけ温水配管・蒸気配管は熱損失の抑制(省エネ)が主目的になり、あわせて人体接触時の火傷防止も求められる
代表的な保温材繊維系(グラスウール・ロックウール)と発泡プラスチック系(ポリスチレンフォーム・ポリウレタンフォーム等)に大別される
根拠規格JIS A 9501「保温保冷工事施工標準」が、保温保冷材料の種類・使用方法・設計方法・施工要領を定める
断熱欠損に注意する箇所配管支持金物の貫通部、継目、フランジ・バルブまわりなど、保温材が途切れやすい箇所

※保温厚さの具体的な数値は、配管径・保温材の種類・使用条件(温度・設置環境)によって個別に計算・選定する必要があります。この記事では考え方の枠組みを整理し、具体的な厚さの決定はJIS A 9501や保温材メーカーの技術資料に基づいて設計者・施工者が判断することを前提としています。


なぜ保温が必要なのか:4つの目的を分けて理解する

保温工事は「配管を保護する仕上げ」として一括りに扱われがちですが、実際には系統ごとに異なる目的で行われています。

  • 防露(結露防止):冷水配管や冷風ダクトの表面温度が周囲空気の露点温度を下回ると、表面に結露が生じます。天井内での結露は、下地の腐食やシミ、天井材の劣化につながるため、冷水系統ではこの防露が保温の主目的になります
  • 省エネ(熱損失の抑制):温水配管・蒸気配管では、保温をしないと配管表面から周囲へ熱が逃げ続け、熱源設備の負荷が増えてしまいます。建築物省エネ法が求める省エネ性能の確保という観点でも、配管・ダクトの保温は欠かせない要素です
  • 凍結防止:屋外に露出する配管や、外気に近い機械室内の配管は、冬季に凍結して破裂するリスクがあります。保温材に加えて、必要に応じて電気ヒーターによる凍結防止対策を組み合わせることもあります
  • 人体接触時の火傷防止:蒸気配管や高温の温水配管は、保温をしないと表面温度が高くなり、人が触れた際に火傷のリスクがあります。人の手が届きやすい範囲では、この視点も保温厚さの検討材料になります

同じ「保温」という工事でも、系統によってどの目的が主眼になるかが異なる、という点をまず押さえておくと、以降の保温材選定・厚さ検討の考え方がつながりやすくなります。


保温材の種類と選び方の考え方

保温材は、大きく繊維系と発泡プラスチック系に分けられます。

分類主な材料特徴
繊維系グラスウール・ロックウール不燃性に優れ、比較的安価。吸湿すると断熱性能が落ちやすいため、防湿層の施工品質が重要になる
発泡プラスチック系ポリスチレンフォーム・ポリウレタンフォーム等吸湿しにくく防露性能に優れる一方、耐火性能は繊維系に劣る場合があり、使用箇所の防火規制を踏まえた選定が必要

冷水配管のように防露が主目的の系統では、吸湿による性能低下が結露リスクに直結しやすいため、発泡プラスチック系が選ばれる場面が多いと筆者は理解しています。一方、蒸気配管のように高温・不燃性能が重視される系統では、繊維系の保温材が使われる場面が中心になります。用途に応じて材料を使い分ける、という基本の考え方を押さえておくことが実務上大切です。


JIS A 9501「保温保冷工事施工標準」の位置づけ

保温工事の設計・施工の拠りどころとなるのが、JIS A 9501「保温保冷工事施工標準」です。この規格は、空気調和や給排水衛生設備を含む幅広い分野を対象に、保温保冷材料・副資材の種類、使用方法、設計方法、施工要領を定めています。保温厚さそのものは、配管内を流れる流体の温度と、周囲の環境温度(屋内空調部分・屋内非空調部分・屋外部分など、場所によって異なる想定条件を用いる)をもとにした伝熱計算によって決まる仕組みになっており、一律の数値表だけで決められるものではありません。

そのため実務では、JIS A 9501が示す計算の枠組みを踏まえたうえで、保温材メーカーが提供する選定表や技術資料を参照しながら、配管径・使用条件ごとに必要な保温厚さを決定するのが一般的な進め方になります。


施工上の留意点:断熱欠損が起きやすい箇所

保温材そのものの性能がどれほど高くても、施工の過程で断熱が途切れる「断熱欠損(ヒートブリッジ)」が生じると、その部分だけ結露や熱損失が起きやすくなります。特に注意が必要とされるのが、配管を支持する金物の貫通部、保温材どうしの継目、フランジ・バルブ・弁類まわりです。これらの箇所は保温材を巻きにくく、施工者の技量によって仕上がりの差が出やすい部分でもあります。

冷水配管など防露が主目的の系統では、保温材の外側に防湿層(ポリエチレンフィルム等)を設け、水蒸気が保温材の内部に侵入しないようにすることも重要です。屋外に露出する部分では、保温材を風雨から保護するための保護外装(アルミニウムラッキング等)もあわせて検討されます。


実務での判断・よくある誤解

「保温さえすれば結露は起きない」というのは誤解です。 保温材そのものの厚さが十分でも、支持金物の貫通部や継目に断熱欠損があれば、その一点から結露が始まり、やがて広範囲に広がることがあります。設計段階では保温厚さの計算に目が向きがちですが、実際の結露トラブルの多くは、こうした施工上の欠損部から発生すると筆者は理解しています。図面上の仕様検討だけでなく、施工段階での納まり確認まで含めて計画することが望ましいといえます。


まとめ

  • 保温工事は防露・省エネ・凍結防止・火傷防止という複数の目的を持ち、系統によって主眼が異なる
  • 保温材は繊維系(グラスウール・ロックウール)と発泡プラスチック系(ポリスチレンフォーム等)に大別され、防露重視か不燃性重視かで使い分ける
  • JIS A 9501「保温保冷工事施工標準」が保温保冷材料・設計方法・施工要領を定める規格として位置づけられる
  • 保温厚さは配管の使用温度と周囲環境の条件をもとに計算されるもので、一律の数値で決まるものではない
  • 支持金物貫通部・継目・フランジまわりは断熱欠損が起きやすく、結露トラブルの多くはこうした箇所から発生する
  • 冷水系統では防湿層の施工品質、屋外露出部では保護外装の検討もあわせて必要になる

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