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EV充電設備の計画|普通充電・急速充電と受電容量の考え方

電気自動車(EV)の普及に伴い、新築・改修を問わず「EV充電設備を設けてほしい」という要望を受ける機会が増えています。しかし、EV充電設備は駐車場の隅に充電器を1台置けば済むという単純な設備ではありません。普通充電と急速充電では求められる電源の種類も容量もまったく異なり、建物全体の受電容量・幹線計画にも波及します。さらに集合住宅・事務所・商業施設では、想定される利用パターンが違うため、計画の考え方そのものを変える必要があります。

この記事では、EV充電設備の計画について、普通充電(コンセント型・壁掛け型、3kW・6kW)と急速充電(CHAdeMO、三相200Vによる高出力充電)の違いを整理したうえで、建物用途ごとの計画の考え方、受電容量・幹線への影響とエネルギーマネジメント(充電制御)、屋外設置の留意点(防水・車止め)、そして補助金制度の存在について解説します。数値・基準は車種やメーカー、所轄自治体・電力会社の取り扱いによって幅があるため、実際の計画では所轄消防署・電力会社・充電設備メーカー・設計者に確認することを前提としてください。


図で見る(全体像)

普通充電と急速充電の構成比較、および集合住宅・施設での充電器の配置と充電制御の考え方を示す模式図


早見まとめ

普通充電と急速充電の主な違いを1枚に整理します。あくまで代表的な仕様の目安であり、実際の機種選定では最新のカタログ値を確認してください。

項目 普通充電 急速充電
電流の種類 交流(AC) 直流(DC)
入力電源 単相200V 三相200V(大出力機種は三相400V級もある)
出力の目安 3kW(単相200V・15A)/6kW(単相200V・30A) 20〜50kW級が主流、90〜150kW級の高出力機種も普及が進む
充電にかかる時間の目安 数時間〜一晩程度(満充電まで) 数十分程度で目安の充電量まで到達
充電規格 普通充電用コネクタ(SAE J1772等) CHAdeMO(国内の代表的な規格)、CCS等
主な設置場所 住宅・集合住宅・事務所・長時間駐車の商業施設 高速道路SA/PA・幹線道路沿い・短時間滞在の商業施設
設備のイメージ コンセント型(既存の200Vコンセントに準じる)/壁掛け型(ケーブル一体型) 専用の充電スタンド(筐体一体型、屋外仕様)

判断の軸としては、普通充電は「長時間駐車する場所で、ゆっくり満たす」設備、急速充電は「短時間の滞在で、必要な分だけ素早く補う」設備という役割の違いを押さえておくと、以降の計画の考え方が整理しやすくなります。


普通充電設備の基礎――コンセント型と壁掛け型

普通充電は交流(AC)を車両側の車載充電器で直流に変換しながら充電する方式で、単相200Vの電源を用いるのが一般的です。出力は主に3kW(単相200V・15A)と6kW(単相200V・30A)の2種類があり、6kWは3kWのおよそ2倍の速さで充電できる計算になります。ただし出力が大きいほど電線・分岐回路の容量も大きくする必要があり、既存建物への後付けでは分電盤からの回路増設が課題になりやすい点に注意が必要です。

設備の形態は、大きく分けて次の2種類があります。

  • コンセント型:屋外用の200Vコンセントを設置し、利用者が車両側の充電ケーブルを持ち込んで使う方式。設備自体は比較的簡易で、コストを抑えやすい
  • 壁掛け型(ウォールボックス型):充電ケーブルが一体になった専用機器を壁面や柱に取り付ける方式。ケーブルの取り回しがしやすく、集合住宅や事務所の来客用駐車場などで採用されることが多い

いずれの方式でも、内線規程や電気設備の技術基準に基づき、充電用の回路は専用回路とし、漏電遮断器を設置することが基本とされています。分岐回路・専用回路の考え方は分電盤計画そのものと直結するため、充電器の設置台数が複数になる場合は、後述する受電容量・幹線への影響とあわせて検討する必要があります。


急速充電設備の基礎――CHAdeMOと高出力化の流れ

急速充電は、車両の外部で交流を直流に変換したうえで、直流のまま車両のバッテリーに送り込む方式です。国内では「CHAdeMO」と呼ばれる規格が代表的で、入力電源には三相200Vを用いる機種が広く普及してきました。出力は20〜50kW級が主流でしたが、近年はバッテリー容量の大きい車種の増加に伴い、90kW級・150kW級といった高出力機種の導入も進んでおり、こうした高出力機種では三相400V級の入力を必要とする場合があります。

急速充電設備を計画する際は、次のような検討事項があります。

検討事項 内容
受電方式 三相200Vで対応できる出力か、三相400V級の高圧受電・変圧器増設が必要な出力かを見極める
設置スペース 充電器本体(筐体)の設置基礎、ケーブルの取り回し、利用者の動線・車路との関係を確保する
稼働率・利用パターン 短時間利用が前提の設備か、複数台を連続稼働させる想定かで必要な電源容量が変わる
保守・点検 高出力機器のため、定期点検・保守契約を前提とした計画が必要

急速充電設備は普通充電に比べて瞬間的に大きな電力を消費するため、1台導入するだけでも建物全体の受電容量に無視できない影響を与えることがあります。特に既存建物への後付けでは、受変電設備の容量に余裕があるかどうかが導入可否を左右する重要な条件になります。


建物用途別の計画の考え方

EV充電設備の計画は、建物の用途によって想定すべき利用パターンが大きく異なります。

集合住宅では、住戸ごとに専用の充電器を割り当てる方式(全戸分を一度に整備する、または将来の増設に備えて配管だけ先行させる方式)と、共用の充電スペースを一部の区画にのみ設ける方式があります。居住者の駐車時間は夜間を中心に長時間にわたることが多いため、普通充電(3kW・6kW)を基本に、複数台を同時に使っても契約電力を超えないよう、後述する充電制御と組み合わせて計画するのが一般的な考え方です。全区画への展開を将来見込む場合は、配管ルート・幹線容量に余裕を持たせる「配管先行」の考え方が採られることもあります。

事務所では、従業員の通勤車両やカーシェア車両を想定し、就業時間帯にまとまって充電が行われる利用パターンになりやすい点が特徴です。事務所ビルはOA機器や空調負荷など既存の電力需要が大きいため、EV充電設備の追加分が受電容量に与える影響を、他の設備計画と合わせて早期に検討する必要があります。

商業施設では、来客の滞在時間によって普通充電と急速充電を使い分ける考え方が基本になります。長時間滞在型の施設(大型店舗の来客用駐車場など)では普通充電を中心に台数を確保し、短時間滞在型の施設(幹線道路沿いのコンビニエンスストア等)では急速充電を少数設置する、といった使い分けが実務でよく見られます。いずれの用途でも、駐車場計画そのものの考え方(車路・駐車マスの寸法や取り合い)については駐車場・車路計画の基礎|勾配・寸法・舗装と設備の取り合いで整理していますので、あわせて参照してください。


受電容量・幹線への影響とエネルギーマネジメント

EV充電設備の計画で最も見落とされやすいのが、受電容量・幹線への影響です。EV充電は1台あたりの消費電力が家庭用エアコン数台分に相当することもあり、複数台を同時に整備・稼働させる場合、建物全体の受電容量(契約電力)や幹線サイズに直接影響します。幹線サイズの検討そのものの考え方は幹線サイズと電圧降下の基礎|負荷電流・こう長・許容電流の考え方で整理していますので、EV充電設備を新たな負荷として幹線計画に組み込む際の参考にしてください。

すべての充電器が同時にフル稼働する前提で受電容量・幹線を計画すると、過大な設備投資につながります。そこで実務では、需要率(すべての機器が同時に使われるとは限らないという考え方)を見込みつつ、次のようなエネルギーマネジメント(充電制御)の仕組みを組み合わせて計画するのが一般的です。

  • デマンド制御:建物全体の使用電力が目標値(契約電力の範囲内)を超えないよう、充電器の出力を自動的に調整する
  • 群管理(複数台の充電制御):複数の充電器をまとめて1つの電力リソースとみなし、利用状況に応じて各充電器への出力配分を最適化する
  • 順次充電・予約充電:集合住宅などで多数の車両が同じ時間帯に充電を希望する場合、順番に充電するスケジュールを組み、ピーク電力の集中を避ける

需要率・不等率の考え方そのものについては需要率・負荷率・不等率の基礎|負荷設備容量と契約電力の考え方で整理していますので、EV充電設備を負荷設備容量に組み込む際の考え方として参照してください。集合住宅のように将来的な充電器の増設が見込まれる建物では、初期段階での過大投資を避けつつ、増設時に幹線を全面的にやり直さずに済むよう、配管・幹線に一定の余裕を持たせておくバランス感覚が求められます。


屋外設置の留意点――防水・車止め

EV充電設備は屋外の駐車場に設置されることが多いため、防水・防塵性能と車両衝突への対策を計画段階で織り込む必要があります。

充電器本体は屋外仕様の防水・防塵構造とされているのが一般的ですが、豪雨時の使い勝手や機器の長期的な劣化を抑える観点から、軒下付近への設置や、簡易な雨よけ屋根を設けることが望ましいとされています。充電器の防水性能はメーカー・機種ごとに保護等級(IP規格等)で示されるため、設置環境(完全屋外か、屋根付きの駐車場かなど)に応じた機種選定が必要です。

車両衝突対策としては、車止めや、鉄製・樹脂製のポールによる衝突防止措置を設けることが、消防関係の運用でも求められる場合があります。あわせて、車椅子使用者が充電器までアクセスできるよう、衝突防止ポールの間隔を十分に確保する(目安として80cm以上)など、バリアフリーの視点も欠かせません。屋外設備全般の腐食・防水対策や引込・構内配電との関係は構内(外構)電気設備の基礎|屋外照明・引込・受電点でも扱っていますので、あわせて確認してください。

急速充電設備は出力が大きく、ケーブル・コネクタも大型になるため、利用者が濡れた路面でケーブルを扱う場面を想定した滑り止め舗装や、夜間利用を想定した照明計画もあわせて検討しておくとよいでしょう。


補助金制度の存在

EV充電設備の導入にあたっては、国の補助金制度が用意されている場合があります。代表的なものに、経済産業省を主管とし、一般社団法人次世代自動車振興センターが執行団体となっている「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てん設備等導入促進補助金」(いわゆるCEV補助金の充電設備版)があります。この制度は、住宅(戸建て・集合住宅)や事業所への充電設備導入について、設備費・工事費の一部を補助する枠組みです。

ただし、補助金の対象条件・補助率・上限額・受付期間は年度ごとに改定されることが多く、集合住宅と事業所とで申請区分や受付時期が分かれている場合もあります。この記事の執筆時点の情報をそのまま数値として引用することは避け、実際の申請にあたっては必ず次世代自動車振興センターの公式サイトや、充電設備メーカー・施工業者を通じて最新の公募要領を確認してください。自治体によっては、国の補助金に上乗せする形で独自の補助制度を設けている場合もあるため、所轄自治体への確認もあわせて行うことをおすすめします。


実務チェックリスト

EV充電設備を計画する際に確認しておきたい項目を整理すると、次のとおりです。

  • 普通充電(3kW・6kW)と急速充電のどちらを、どの程度の台数導入するか、建物用途・利用パターンに照らして整理したか
  • コンセント型・壁掛け型など充電器の設置形態を、利用者の動線・駐車場計画とあわせて検討したか
  • 充電回路は専用回路とし、漏電遮断器を設置する計画になっているか
  • 急速充電を導入する場合、三相200Vで対応できるか、三相400V級の受電・変圧器増設が必要かを確認したか
  • 複数台導入時に、建物全体の受電容量・幹線容量への影響を試算したか
  • デマンド制御・群管理・順次充電など、エネルギーマネジメントの仕組みを組み込む必要があるか検討したか
  • 将来的な充電器の増設を見込み、配管ルート・幹線容量に余裕を持たせる「配管先行」を検討したか
  • 屋外設置の防水性能(保護等級)・雨よけ・車止め等の衝突防止対策を確認したか
  • 車椅子使用者を含めた充電器までのアクセス(通路幅等)を確保したか
  • 補助金制度の活用を検討する場合、最新の公募要領・受付期間を執行団体・所轄自治体に確認したか

これらは建物の規模・用途・想定される利用者によって優先度が変わるため、計画初期の段階で関係者間の認識をそろえるためのたたき台として使うのが実務的です。


よくある質問

Q. 普通充電の3kWと6kWは、どちらを選べばよいですか。

A. 一律の正解はなく、利用者の駐車時間と車両のバッテリー容量から判断します。夜間を中心に長時間駐車できる住宅・集合住宅であれば3kWでも実用上足りることが多い一方、日中の短い駐車時間で一定量を充電したい事務所・商業施設では6kWのほうが実態に合うことがあります。複数台を導入する集合住宅では、1台あたりの出力を大きくするより、後述する充電制御で全体のバランスを取る考え方も検討されます。

Q. 急速充電器は、どんな建物でも設置できますか。

A. 急速充電器は瞬間的な消費電力が大きいため、既存の受変電設備の容量に余裕があるかどうかが導入可否を左右します。容量に余裕がない建物では、変圧器の増設や高圧受電契約の見直しが必要になる場合があり、大掛かりな改修になることがあります。導入を検討する段階で、電力会社・電気設備の設計者に容量確認を依頼することをおすすめします。

Q. 集合住宅で全戸分のEV充電設備を一度に整備する必要はありますか。

A. 必ずしも一度に整備する必要はありません。現時点での導入希望戸数に応じた台数から始め、将来の増設に備えて配管ルートや幹線容量に余裕を持たせておく「配管先行」の考え方を採る事例も多くあります。ただし、竣工後に配管が確保されていないと、増設時に舗装や共用部の掘り返しといった大掛かりな工事が必要になることがあるため、計画段階での将来見込みの共有が重要です。

Q. 補助金は必ず利用できますか。

A. 補助金制度は年度ごとに予算・対象条件・受付期間が変わり、申請期間が短く設定されている場合もあります。利用できるかどうかは申請時点の公募要領次第であり、この記事の内容だけで判断せず、執行団体(次世代自動車振興センター等)や所轄自治体、充電設備メーカー・施工業者に必ず最新情報を確認してください。


まとめ

  • EV充電設備は「普通充電(単相200V・3kWまたは6kW、コンセント型/壁掛け型)」と「急速充電(CHAdeMO等、三相200V以上、20〜150kW級)」で電源も出力もまったく異なる
  • 集合住宅は長時間駐車を前提に普通充電+充電制御、事務所は就業時間帯の集中利用、商業施設は滞在時間に応じて普通充電・急速充電を使い分けるのが基本的な考え方
  • 複数台導入時は建物全体の受電容量・幹線への影響を試算し、デマンド制御・群管理・順次充電といったエネルギーマネジメントで契約電力の超過を防ぐ
  • 屋外設置では防水性能(保護等級)と車止め等の衝突防止対策、車椅子使用者を含めたアクセス確保が必要
  • 国の補助金制度(CEV補助金の充電設備版等)は存在するが、対象・補助率・受付期間は年度で変わるため、執行団体・所轄自治体への確認を前提に検討する

EV充電設備の計画は、充電器そのものの選定だけでなく、建物全体の受電容量・幹線計画、駐車場の動線計画、そして将来の増設余地までを見通して進める必要がある領域です。数値の目安はあくまで一般的な傾向であり、具体的な機種選定・容量計算・補助金の適用可否は、必ず所轄消防署・電力会社・充電設備メーカー・設計者に確認しながら進めてください。


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