電気通信主任技術者とは?伝送交換・線路の違いと仕事内容
電気通信主任技術者という資格名を初めて見たとき、「電気」の資格なのか「通信」の資格なのか、名前だけではピンとこない人も多いのではないでしょうか。筆者は伝送交換主任技術者と線路主任技術者の両方を保有していますが、受験する前は自分も同じように資格の位置づけがよく分かっていませんでした。
この資格は、電話会社やデータセンター事業者などの「電気通信事業者」が、自社の通信設備を安全に工事・維持・運用するために選任する技術者の資格です。電気設備でいう電気主任技術者の通信版とイメージすると近いですが、対象とする設備や選任のルールには通信分野特有の事情があります。
この記事では、電気通信主任技術者が電気通信事業法上どう位置づけられているか、伝送交換主任技術者と線路主任技術者は何が違うのか、そして試験の概要や建築設備の仕事との接点までを、資格保有者としての実感を交えながら整理します。総合的な学習の進め方や工事担任者との関係については、当サイトのハブ記事「電気通信主任技術者・工事担任者 学習ガイド」もあわせて参照してください。
早見まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法 | 電気通信事業法第45条 |
| 資格の目的 | 事業用電気通信設備の工事・維持・運用を監督させるために事業者が選任する技術者資格 |
| 区分 | 伝送交換主任技術者/線路主任技術者 |
| 選任義務者 | 技術基準適合維持義務を負う電気通信事業者(小規模設備等は総務省令で選任不要の場合あり) |
| 実施団体 | 日本データ通信協会 電気通信国家試験センター |
| 試験科目 | 3科目(電気通信システム/設備及び設備管理/法規) |
| 試験頻度 | 定期試験で年2回(7月ごろ・1月ごろ) |
科目数や免除の詳細は制度改正で変わることがあるため、出願前は必ず日本データ通信協会(dekyo.or.jp)の最新の受験案内で確認してください。
電気通信主任技術者とは|電気通信事業法における位置づけ
電気通信主任技術者は、電気通信事業法第45条を根拠とする資格です。同条では、電気通信事業者は事業用電気通信設備の工事・維持・運用に関する事項を監督させるため、電気通信主任技術者資格者証の交付を受けている者のうちから電気通信主任技術者を選任しなければならないと定められています。ただし、その事業用電気通信設備が小規模である場合など、総務省令で定める一定の場合はこの限りではないという除外規定も置かれています。
つまりこの資格は、通信インフラを利用する一般の利用者に向けたものではなく、通信インフラを提供する側の電気通信事業者が、自社設備の技術的な安全性・信頼性を担保するために置く「社内の監督者」としての資格だといえます。電気工作物における電気主任技術者が発電所や変電所、大規模需要家の電気設備を監督する立場であるのと同じように、電気通信主任技術者は通信局舎やデータセンターの通信設備を監督する立場にある、と考えると位置づけがつかみやすいと思います。
選任された電気通信主任技術者は、設備の技術基準適合性を維持するための工事計画のチェックや、維持・運用における技術的な監督、事故発生時の対応方針の判断といった役割を担います。実際の工事や配線作業そのものを行う資格ではなく、それらの工事・維持・運用が技術基準に適合しているかを監督する立場の資格である点は、工事担任者との大きな違いです。
伝送交換主任技術者と線路主任技術者の違い
電気通信主任技術者は、対象とする設備によって伝送交換主任技術者と線路主任技術者の2区分に分かれています。日本データ通信協会の受験案内によると、試験科目はどちらも①電気通信システム、②設備及び設備管理、③法規の3科目という構成は共通していますが、②の内容が区分によって「伝送交換設備及び設備管理」と「線路設備及び設備管理」に分かれます。
| 区分 | 対象とする設備のイメージ | 試験科目②の名称 |
|---|---|---|
| 伝送交換主任技術者 | 交換機・伝送装置・サーバ設備など「通信を成立させる装置側」の設備 | 伝送交換設備及び設備管理 |
| 線路主任技術者 | ケーブル・管路・電柱・光ファイバーなど「通信を運ぶ線路側」の設備 | 線路設備及び設備管理 |
もう少し実務のイメージに寄せると、伝送交換主任技術者は交換局やデータセンターの中にある装置・ネットワーク機器をどう安全に運用するかという視点の資格、線路主任技術者は建物と建物、あるいは電柱から建物までをどうケーブルでつなぐかという視点の資格だと筆者は捉えています。両方を保有していると、通信インフラを「装置」と「線路」の両面から見られるようになり、建築設備の現場で通信事業者側の視点を踏まえた相談ができる場面が増えたという実感があります。
どちらを先に取るべきかは、自分が装置寄りの業務に関わりが深いか、線路寄りの業務に関わりが深いかで決めるのが自然です。伝送交換・線路のどちらか一方だけを取れば十分というわけではなく、扱う設備の中心がどちらに近いかで選ぶのが実務的な判断基準になります。
選任義務のある事業者|どんな会社に必要な資格か
電気通信主任技術者の選任義務は、事業用電気通信設備について技術基準適合維持義務を負う電気通信事業者に課されています。総務省の案内によると、原則として事業用電気通信設備を直接に管理する事業場ごと、または業務区域が一の都道府県を超える事業者では設備を設置する都道府県ごとに、選任が必要とされています。対象となるのは、電話会社や大手通信キャリアだけでなく、自社で通信インフラを構築・運用するデータセンター事業者やISP(インターネットサービスプロバイダ)なども含まれます。
一方で、設備の規模が小さい場合や、他の事業者の設備を借りて事業を行っている場合など、総務省令で定める一定の条件を満たすときは選任義務が免除されることもあります。実際に選任が必要かどうかは事業者の設備構成によって変わるため、この記事では「通信事業者は一律に選任が必要」と単純化せず、原則と除外規定の両方がある制度だという理解にとどめておきます。個別のケースについては、総務省や日本データ通信協会の公式情報、あるいは専門家への確認が前提になります。
選任された電気通信主任技術者は、選任した事業者が総務大臣に届け出る仕組みになっており、資格者証を持っているだけで自動的に選任されたことになるわけではありません。資格はあくまで「選任される資格を持つ」ことの証明であり、実際に監督者として職務に就くには事業者側の選任という手続きが必要になる点も、工事担任者のように資格そのものが工事の可否に直結する資格との違いだと筆者は理解しています。
試験の概要|科目構成・実施団体・頻度
電気通信主任技術者試験の実施団体は日本データ通信協会 電気通信国家試験センターです。この団体は工事担任者試験も併せて実施しており、電気通信分野の国家試験を一手に担う組織だといえます。
試験は定期試験方式で、年2回(例年7月ごろと1月ごろ)実施されます。かつては①電気通信システム、②専門的能力、③設備及び設備管理、④法規の4科目構成でしたが、令和3年度第1回試験からネットワークのIP化・ソフトウェア化の進展を背景に②専門的能力が③設備及び設備管理に統合され、現在は3科目構成になっています。試験時間は「設備及び設備管理」が150分、「電気通信システム」と「法規」がそれぞれ80分です。
| 試験科目 | 内容の目安 | 試験時間 |
|---|---|---|
| 電気通信システム | 伝送交換・線路共通の基礎的な技術体系 | 80分 |
| 伝送交換(または線路)設備及び設備管理 | 区分ごとの専門設備・ソフトウェア管理・サーバ設備等 | 150分 |
| 法規 | 電気通信事業法をはじめとする関係法令 | 80分 |
工事担任者(総合通信・第一級アナログ通信・第一級デジタル通信のいずれか)を保有していると、電気通信システムの科目が免除される制度もあります。免除の対象科目や条件は年度によって見直されることがあるため、受験を検討する際は必ず日本データ通信協会の最新の受験案内で確認してください。この免除制度と、工事担任者から電気通信主任技術者へ進む学習の順番については、前述のハブ記事で詳しく整理しています。
よくある誤解
- 「電気通信主任技術者があれば通信工事の作業もできる」わけではない:この資格は電気通信事業者側の設備の工事・維持・運用を監督する立場の資格であり、端末設備を回線に接続する工事そのものを行うための資格は工事担任者です。監督者としての資格と、実際に接続工事を行うための資格は別物である点は、初めてこの分野に触れる人が混同しやすいポイントだと筆者は感じています。
- 「伝送交換と線路のどちらか一方で全部カバーできる」わけではない:両区分は試験科目②の対象設備が異なるため、装置側・線路側の両方を扱う立場になる場合は、両方の資格を保有しておく方が実務上の説明力が上がります。筆者自身、線路側の知識だけでは装置側の話に踏み込みづらい場面を経験しており、両方を取得した理由のひとつです。
- 「電気主任技術者を持っていれば電気通信主任技術者も同じような資格」ではない:電気主任技術者は電気事業法に基づき発電・送配電設備などの電気工作物を対象とする資格、電気通信主任技術者は電気通信事業法に基づき通信設備を対象とする資格で、根拠法も監督対象も別物です。名称が似ているため関連づけて覚えている人もいますが、制度としては完全に独立した資格である点は押さえておくとよいと思います。
建築設備の仕事との接点|弱電・通信設備でどう活きるか
建築設備の仕事、特に弱電・情報通信設備の設計や施工管理に携わっていると、電気通信主任技術者の視点が役立つ場面があります。オフィスビルやデータセンターでは、竣工後に通信設備の運用体制を検討する段階で、電気通信主任技術者の選任要否が論点になることがあるためです。設計・施工の早い段階からこうした運用要件を意識しておけると、MDF・IDFや通信機械室のスペース確保、ケーブルルートの計画がスムーズになると筆者は感じています。
また、通信キャリアやデータセンター事業者とやり取りをする場面では、相手側にどのような立場の技術者が関わっているかを理解していると、要求事項の背景がつかみやすくなります。建築設備士として建物全体の設計をまとめる立場と、電気通信主任技術者として通信事業者側の制度を理解している立場を両方持っていると、弱電設備の打ち合わせで一歩踏み込んだ提案がしやすくなるというのが、筆者自身の実感です。弱電設備全体の分類やLAN配線計画の基礎については、当サイトの関連記事もあわせて参考にしてください。
ただし、電気通信主任技術者はあくまで電気通信事業者側の設備を監督するための資格であり、建築主や設計事務所が直接この資格を必要とする場面は限られます。建築設備の実務では、この資格を「通信事業者側の制度・視点を理解するための知識」として活かす位置づけになることが多い、という前提は押さえておくとよいと思います。
弱電設備を担当する立場からもう一つ付け加えると、建物内のMDF・IDFから先、つまり電柱や電話局までの引き込み区間は通信事業者側の線路設備にあたり、線路主任技術者が監督する領域と重なってきます。建物側の設計者・施工管理者としては、この引き込み区間で通信事業者とどう役割分担するか(どこまでが建築側の工事で、どこからが通信事業者側の工事か)を早い段階で整理しておくと、後工程での手戻りを防ぎやすくなります。この境界線の考え方は、弱電設備の計画段階で意識しておくと役立つポイントだと筆者は感じています。
まとめ
- 電気通信主任技術者は電気通信事業法第45条に基づき、電気通信事業者が事業用電気通信設備の工事・維持・運用を監督させるために選任する資格
- 対象設備によって伝送交換主任技術者(装置側)と線路主任技術者(線路側)の2区分に分かれる
- 選任義務は技術基準適合維持義務を負う電気通信事業者にあるが、小規模設備等は総務省令で除外される場合もある
- 試験は日本データ通信協会 電気通信国家試験センターが実施し、年2回の定期試験(電気通信システム/設備及び設備管理/法規の3科目)
- 令和3年度から旧「専門的能力」科目が「設備及び設備管理」に統合され、4科目から3科目構成に変わった
- 建築設備、特に弱電・情報通信設備の仕事とは、通信事業者側の制度理解という形で接点がある
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