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基本設計管工事(空調・給排水)

水景設備の基礎|噴水・修景池の循環ろ過と水質・電気安全の考え方

商業施設のエントランスやホテルのロビー、公開空地の広場などに設けられる噴水や修景池は、意匠的な見どころとして計画されることが多い一方、設備としては給排水・電気・機械(ポンプ・ろ過装置)が一体となった、維持管理に手間のかかるシステムです。水を貯め、循環させ、人が近づいたり触れたりする場所に水と電気を同居させるという性質上、水質管理・給排水計画・電気安全の3つの視点をそろえて計画しないと、竣工後にトラブルや維持費の増大を招きやすい設備でもあります。

この記事では、水景設備の種類と基本構成、循環ろ過と藻類・水質の管理、エアロゾルを発生させる水景特有のレジオネラ対策の考え方、補給水の逆流防止と排水計画、水中照明・水中ポンプの感電対策、そして維持管理段階での実務的な判断までを整理します。水景設備には、給湯やプールのように具体的な数値基準が法令上明記されている分野とは異なり、設計者・管理者の裁量に委ねられている部分が多くあります。数値・基準は代表的な目安にとどめ、実際の設計・維持管理では所轄行政・設計者・専門業者との確認を前提としてください。


図で見る(全体像)

水景設備の循環ろ過の基本構成、噴水・ミストと修景池・壁泉のエアロゾルリスクの違い、補給水の逆流防止と水中照明・水中ポンプの感電対策を示す模式図

早見まとめ

水景設備を検討する際に押さえておきたい考え方を1枚に整理します。確信の持てない数値は「要確認」として原則の考え方のみを示しています。

項目 内容の目安
水景設備の種類 噴水(ジェット吹き上げ型)・壁泉・修景池・流れ(カスケード)・ミスト(人工霧)など。水しぶきの発生量が大きいほど飛散・衛生面の配慮が増える
基本構成 水槽(貯水槽・池)+循環ポンプ+ろ過装置+補給水(上水)+オーバーフロー排水+水中照明等
水質管理 循環ろ過(砂ろ過等)による濁り・藻類の除去と、塩素・紫外線等による殺菌消毒の組み合わせが基本
エアロゾル発生型のリスク 厚労省のレジオネラ症予防指針は入浴設備・冷却塔・給湯・加湿器の4分野に具体的な清掃頻度を定めるが、装飾用噴水等を名指しした規定はない。ただし同指針の包括条項により、エアロゾルを発生させる設備として同様の注意が必要とされる
補給水の逆流防止 上水を池・水槽へ補給する箇所は、給水設備一般のクロスコネクション防止原則に沿って吐水口空間の確保やバキュームブレーカ等の検討が必要(水景設備固有の明文基準ではなく一般原則の準用)
排水計画 水抜き・オーバーフローの放流先(雨水系統か汚水系統か)は自治体の下水道条例・所轄部局に確認する事項
電気安全 水中照明・水中ポンプは感電対策として接地・高感度形漏電遮断器の設置が実務上の基本。人が水に触れる親水施設ではより慎重な計画が必要
維持管理 清掃頻度、冬期の凍結対策(水抜き・停止)、風による飛散対策(風向センサーによる噴高制御)、断水・渇水時の停止判断が実務上の論点

水景設備の種類と基本構成

水景設備とひとくちに言っても、意匠上の見え方によっていくつかの種類に分かれます。

  • 噴水: ノズルから水を吹き上げるジェット型が代表的で、単一の吹き上げから、複数のノズルを組み合わせて模様を作るものまで規模はさまざまです
  • 壁泉: 壁面や造形物の上から水を流し落とすタイプで、吹き上げに比べて水しぶきの発生は少ない傾向があります
  • 修景池: 水を湛えた池そのものを景観要素とするもので、噴水や流れと組み合わされることも多くあります
  • 流れ・カスケード: 段差をつけて水を流し落とし、水音や水面の動きを見せる形式です
  • ミスト(人工霧): 微細な水滴を噴霧して涼感・演出効果を得るもので、水景の中でもっとも細かいエアロゾルを発生させる形式です

意匠上の見え方は異なっても、設備としての基本構成はおおむね共通しています。水を湛える水槽(貯水槽・池)を中心に、水を循環させる循環ポンプ、濁りや浮遊物を取り除くろ過装置、蒸発・飛散・排水で失われた分を補う補給水(上水系統からの給水)、水位が上がりすぎた際に排出するオーバーフロー排水、そして夜間の演出等に用いる水中照明が組み合わさって1つのシステムを構成します。噴水・ミストのように水しぶきの発生が大きい形式ほど、蒸発・飛散による水の損失が大きくなり、補給水の量やエアロゾルへの配慮も比例して大きくなる、という関係を押さえておくと計画の見通しが立てやすくなります。


水質管理|循環ろ過と藻類対策

水景設備の水は、プールのように人が全身を浸すことは想定していないものの、屋外・屋内を問わず日光や外気にさらされ続けるため、放置すれば藻類の発生や水の濁りが進みます。景観としての見え方が主目的である水景設備にとって、水が濁ったり緑色に変色したりすることは、機能そのものが失われることに直結する弱点です。

この水質を維持する基本的な仕組みが循環ろ過です。水槽内の水を循環ポンプで吸い上げ、砂ろ過などのろ過装置を通して濁り・浮遊物を取り除いたうえで水槽に戻すという流れを繰り返し、水の透明度を保ちます。ろ過だけでは藻類やぬめりの発生を抑えきれないため、多くの水景設備では塩素系薬剤による殺菌消毒や、薬剤の使用を抑えたい場所では紫外線(UV)殺菌装置を組み合わせて藻類の発生を抑制します。

屋外の修景池では、落ち葉やほこりの流入、藻類の光合成による水の変色が避けられないため、ろ過・消毒に加えて定期的な水槽内の清掃も水質維持のセットとして計画しておく必要があります。循環ポンプの選定・能力の考え方は水景設備に限らず給排水・空調設備全般に共通する部分があり、ポンプ・送風機の基礎で特性曲線やインバータ制御の考え方を整理していますので、あわせて参照してください。

なお、同じ「循環ろ過」を行う設備でも、プールの循環浴槽水については厚生労働省の衛生基準により残留塩素濃度や循環ろ過能力の目安が具体的な数値で示されています。一方、装飾用噴水や修景池には、これに相当する法定の水質・ろ過能力の基準は見当たらず、多くの部分が設計者・管理者の判断に委ねられているのが実態です。数値基準がない分、意匠性を優先して水質管理をおろそかにしないよう、計画段階で目標とする水質・清掃頻度をあらかじめ決めておくことが実務上望ましいと筆者は考えています。


エアロゾルとレジオネラ対策

水景設備の中でも、噴水のように水しぶきを空気中に飛ばす形式や、ミストのように微細な霧を発生させる形式は、循環している水がそのままエアロゾル(空気中に浮遊する微細な水滴)として人の呼吸域に届く可能性がある点で、修景池のように水面が静穏な形式とは異なる衛生上の注意が必要になります。

冷却塔や循環式浴槽の水系で増殖・飛散することが知られるレジオネラ属菌は、循環水を長時間滞留させ、かつエアロゾルとして飛散させる環境で感染リスクが高まるとされています。厚生労働省の「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」(平成15年厚生労働省告示第264号)は、入浴設備・冷却塔・給湯設備・加湿器の4分野についてはそれぞれ具体的な清掃・点検頻度を定めていますが、装飾用噴水や人工滝といった水景設備を名指しした規定は置かれていません。ただし同指針には、この4分野以外であってもエアロゾルを発生させる機器・設備について適切な衛生上の措置を講ずるべきとする包括的な条項があり、噴水・ミストのように水しぶきを発生させる水景設備は、この包括条項の趣旨に照らして同様の注意が必要な対象と位置づけて考えるのが実務上の姿勢です。中央式給湯における温度管理でのレジオネラ対策の考え方は中央式給湯・循環配管の基礎で整理していますが、水景設備の場合は給湯のような高温維持による対策は成立しないため、循環水の入れ替え頻度・ろ過性能・消毒(塩素・紫外線)の徹底が対策の中心になるという違いがあります。

具体的な清掃頻度・水質基準の数値は、噴水の規模・用途・利用者層(不特定多数が近づく商業施設か、限定的な範囲かなど)によって変わり、かつ関連指針・条例の改定もあり得るため、この記事では一律の数値を示すことは避けます。噴水・ミストのようにエアロゾルを発生させる水景設備を計画する際は、水質管理の頻度・体制について、設計段階から所轄保健所・専門業者と相談しておくことが実務上の基本です。逆に、水面が静穏で飛沫の発生がほとんどない修景池・壁泉であれば、エアロゾルの観点でのリスクは相対的に小さくなりますが、藻類・水質管理そのものは別途必要になります。


給排水計画|補給水の逆流防止と排水処理

水景設備は蒸発・飛散・オーバーフローによって水が失われ続けるため、上水系統から水槽への補給水を継続的に供給する仕組みが必要です。ここで注意すべきなのが、上水系統と水景設備の水槽とのクロスコネクション(誤接続・逆流)防止です。

給水設備一般と同様に、補給水の吐水口は水槽のあふれ縁(オーバーフローする高さ)から一定の空気の隙間を確保する吐水口空間を基本とし、構造上どうしても吐水口を水没させざるを得ない箇所にはバキュームブレーカ等の逆流防止器具を用いるという考え方が適用されます。水景設備の水は循環・滞留する過程で藻類や薬剤(塩素等)を含むため、万が一この水が上水系統側へ逆流してしまうと衛生上の重大な問題になります。吐水口空間・バキュームブレーカの基本的な考え方は給水設備の計画で整理していますので、あわせて確認してください。

排水側では、水槽の水抜き(清掃時の全量排水)と、日常的なオーバーフロー排水をどこへ流すかが計画上の論点になります。水景設備の水は塩素等の薬剤を含んでいることがあるため、雨水系統・汚水系統のどちらに接続するかは、放流先の下水道条例や自治体の指導によって扱いが異なります。屋外に設ける修景池・噴水では、周辺の敷地排水計画そのものとの取り合いも生じるため、外構計画と敷地排水の基礎で整理した敷地排水の考え方とあわせて、水景設備の排水を計画段階で位置づけておくことが実務上のポイントです。放流先の判断は自治体ごとに異なるため、必ず所轄部局に事前相談することをおすすめします。


電気安全|水中照明・水中ポンプの感電対策

水景設備には、夜間の演出用に水中照明を組み込んだり、循環ポンプそのものを水中ポンプとして水槽内に設置したりする例が多くあります。水と電気が同居する設備であるため、感電・漏電への対策は計画上欠かせない要素です。

実務上の基本的な考え方としては、水中で使用する照明・ポンプ等の電気機器は防水性能(保護等級・IP等級)を満たした製品を選定したうえで、接地(アース)を確実に行い、回路には高感度形漏電遮断器を設置するという組み合わせが一般的です。漏電遮断器は、機器の絶縁劣化や水の浸入によって漏電が発生した際に、人体への感電被害が及ぶ前に回路を遮断する役割を担います。

特に、修景池や流れのように人が直接水に触れたり足を入れたりできる親水施設では、感電リスクへの配慮がより重要になります。子どもが水中の照明器具に触れる、金属部に触れたまま水に足を入れるといった状況を想定し、機器の据付位置・保護カバーの有無・漏電遮断器の作動確認までを含めて計画する必要があります。電気設備の詳細な保護等級・配線方法は電気設備技術基準・内線規程等に基づき電気設計者が定める事項であり、この記事では「水中で使う電気機器には防水性能・接地・高感度形漏電遮断器の組み合わせが基本」という考え方を押さえておくにとどめます。


維持管理と実務での判断

水景設備は、竣工後の維持管理の負担が意匠上の魅力に見合っているかどうかを、計画段階から見込んでおく必要がある設備です。

  • 清掃頻度: ろ過装置の逆洗・水槽内の清掃・藻類除去は、屋外設置か屋内設置か、周辺の落ち葉・粉じんの量によって必要頻度が変わります。運用が始まってから清掃負担の大きさに気づくケースも少なくないため、計画段階で維持管理体制(自主管理か専門業者委託か)まで想定しておくことが望まれます
  • 冬期の凍結対策: 寒冷地・寒冷期には、水槽内や配管内の水が凍結して機器や配管を破損させるおそれがあるため、冬期は水を抜いて運転を停止する、あるいは凍結深度より深い位置に配管を埋設するといった対策が必要になります
  • 風による飛散対策: 屋外の噴水では、強風時に水しぶきが周囲の歩行者や店舗に飛散するトラブルが起こり得ます。風向・風速を検知するセンサーで噴き上げの高さを自動的に抑制する制御を組み込む例もあり、規模の大きい噴水では計画段階で検討しておきたい項目です
  • 断水・渇水時の停止判断: 地域的な断水や渇水による給水制限が発生した際、景観用途である水景設備への補給水は生活用水に比べて優先度が低いと判断されることが一般的です。渇水時にどのタイミングで運転を停止するかの判断基準を、あらかじめ施設管理者側で決めておくと混乱を避けられます

商業施設・ホテルでの採用と、止まった噴水のリスク

商業施設・ホテル・公開空地などで噴水や修景池が採用される背景には、エントランス周りの意匠的な訴求力や、公開空地における緑化・修景の要件を満たす目的があります。一方で、水景設備は前述のとおり循環ろ過・水質管理・電気設備・冬期対策と、維持管理の手間とコストが継続的に発生する設備でもあります。

竣工後にありがちな失敗の一つが、維持管理の負担が想定より大きく、運転を止めたまま放置されてしまうケースです。水を抜いて止まったままの噴水や、藻類で濁った修景池は、意匠上の見どころであったはずの場所が逆に景観を損なう要素になってしまい、施設全体の印象を下げるリスクがあります。計画段階で「誰が」「どの頻度で」維持管理を行うのか、維持費をどの程度見込むのかを施主・管理者側と共有しておくことが、水景設備を計画する設計者にとって実務上重要な視点だと筆者は考えています。


まとめ

  • 水景設備は噴水・壁泉・修景池・流れ・ミスト等に分かれ、水槽・循環ポンプ・ろ過装置・補給水・オーバーフロー排水・水中照明が基本構成
  • 水質管理は循環ろ過(砂ろ過等)と塩素・紫外線等による殺菌消毒の組み合わせが基本で、藻類・濁りの抑制が目的
  • 厚労省のレジオネラ症予防指針は装飾用噴水を名指ししていないが、エアロゾル発生設備に関する包括条項の趣旨から、噴水・ミストは冷却塔・循環式浴槽に準じた維持管理上の注意が必要と考えるのが実務上の姿勢
  • 補給水の逆流防止は給水設備一般と同様に吐水口空間・バキュームブレーカが基本の考え方で、排水(水抜き・オーバーフロー)の放流先は自治体への確認が前提
  • 水中照明・水中ポンプは防水性能・接地・高感度形漏電遮断器の組み合わせで感電対策を行い、親水施設ではより慎重な計画が必要
  • 清掃頻度・冬期凍結対策・風による飛散対策・断水時の停止判断は、計画段階から維持管理側の視点で見込んでおくべき事項
  • 止まった噴水・濁った修景池は景観上のリスクになり得るため、維持管理体制と費用を施主・管理者とあらかじめ共有しておくことが実務上重要

水景設備は、意匠と設備が密接に結びついた分野であり、循環ろ過・給排水・電気安全のいずれか一つが欠けても、安全性や景観の維持が難しくなります。具体的な水質基準・清掃頻度・電気設備の仕様は、施設の規模・用途・所轄行政の指導によって変わるため、計画・維持管理の各段階で設計者・専門業者・所轄保健所等に確認しながら進めることをおすすめします。


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