パッケージ型消火設備の基礎|適用条件と屋内消火栓との使い分け
パッケージ型消火設備は、水源・ポンプ・非常電源を持たない「箱」だけで消火を完結させる設備という点が、屋内消火栓設備やスプリンクラー設備と大きく異なります。ノズル・ホース・消火剤の入った容器を一つの格納箱に収めた製品で、既存の建物や中小規模の建物に、比較的容易に設置できる消火設備として位置づけられています。
この記事では、実施設計・基本設計の段階でパッケージ型消火設備を検討する設計者・現場担当者に向けて、屋内消火栓設備の代替として使えるI型・II型の適用条件、パッケージ型自動消火設備がスプリンクラー設備の代替として使える条件、特定共同住宅等における別枠の考え方、そして水源・ポンプ・非常電源が不要になることのメリットと限界を整理します。この設備はいずれも消防法施行令第32条の規定(いわゆる特例基準)を適用して認められるものであり、最終的な適否は所轄消防署の判断が前提になる点を踏まえて読み進めてください。
なお、消火設備全体の中でパッケージ型消火設備がどう位置づけられるかは消火設備の使い分け|屋内消火栓・スプリンクラー・不活性ガス消火の考え方で、屋内消火栓設備そのものの計画は屋内消火栓設備の計画|1号・易操作性1号・2号の違いと設置基準で扱っています。この記事はそれらを踏まえたうえで、「屋内消火栓やスプリンクラーの代わりに、箱型の設備で済ませられないか」という判断に絞って掘り下げる位置づけです。
早見まとめ
パッケージ型消火設備・パッケージ型自動消火設備の位置づけを、代替対象・区分・適用条件の3点で凝縮すると次のようになります。数値は消防庁予防課長通知(消防予第182号)にもとづく代表値であり、実際の適否は所轄消防署との協議事項です。
| 項目 | パッケージ型消火設備(I型・II型) | パッケージ型自動消火設備 |
|---|---|---|
| 代替する設備 | 屋内消火栓設備・補助散水栓 | スプリンクラー設備 |
| 作動方式 | 人が操作してホースで放射 | 熱・燃焼生成物を感知して自動放射 |
| 主な構成 | ノズル・ホース・消火剤貯蔵容器・起動装置を一つの格納箱に収納 | 感知部・放出口・消火剤貯蔵容器等・受信装置を格納箱に収納 |
| 水源・ポンプ・非常電源 | 不要(格納箱内の消火剤で完結) | 不要(格納箱内の消火剤で完結) |
| 根拠 | 消防法施行令第32条の特例(消防予第182号) | 消防法施行令第32条の特例(消防予第182号) |
| 区分 | 適用できる階数・面積の目安(概ね) |
|---|---|
| I型(屋内消火栓の代替) | 耐火建築物:地階を除く階数6以下・延べ面積3,000㎡以下/非耐火建築物:地階を除く階数3以下・延べ面積2,000㎡以下 |
| II型(屋内消火栓の代替) | 耐火建築物:地階を除く階数4以下・延べ面積1,500㎡以下/非耐火建築物:地階を除く階数2以下・延べ面積1,000㎡以下 |
| パッケージ型自動消火設備(スプリンクラー代替) | 令別表第1(5)項・(6)項等に該当する用途の部分で、延べ面積概ね1万㎡以下 |
この表はあくまで代表的な目安です。適用できる防火対象物の用途区分や、地階・無窓階など設置が制限される場所の扱いは細かく定められているため、次の各章で条件を分けて確認していきます。
パッケージ型消火設備とは何か
パッケージ型消火設備は、人がホースを延長し、ノズルから消火剤(消火用の水を含む)を放射して消火を行う設備です。ノズル・ホース・ホースリール(またはホース架)・消火剤貯蔵容器・起動装置・加圧用ガス容器などが、一つの格納箱にまとめて収納されています。
屋内消火栓設備との最大の違いは、放水のための水を「その場の容器」でまかなうという点です。屋内消火栓設備は建物内の水源から配管とポンプを通じて水を送りますが、パッケージ型消火設備は格納箱の中にあらかじめ充填された消火剤(水・強化液・機械泡など)を、内蔵の加圧用ガスで押し出して放射します。この構造の違いが、後述する「水源・ポンプ・非常電源が不要になる」というメリットの根拠になっています。
パッケージ型消火設備は性能に応じてI型とII型に区分されており、ホースの長さ・放射時間・放射率などの技術基準が型ごとに定められています。I型のほうが放射性能・警戒範囲ともに大きく、II型はより小規模な建物向けという位置づけです。
屋内消火栓の代替として使える条件
パッケージ型消火設備を屋内消火栓設備の代替設備として設置できるのは、消防法施行令に定める屋内消火栓の設置義務がかかる防火対象物のうち、次のような階数・延べ面積の範囲に収まるものです。
| 区分 | 建築物の種類 | 地階を除く階数 | 延べ面積 |
|---|---|---|---|
| I型 | 耐火建築物 | 6以下 | 概ね3,000㎡以下 |
| I型 | 耐火建築物以外 | 3以下 | 概ね2,000㎡以下 |
| II型 | 耐火建築物 | 4以下 | 概ね1,500㎡以下 |
| II型 | 耐火建築物以外 | 2以下 | 概ね1,000㎡以下 |
設置方法にも、水平距離と防護面積という2つの基準があります。防火対象物の階ごとに、その階のどの場所からも1つのホース接続口までの水平距離が、I型は20m以下・II型は15m以下となるように配置します。また、1つのパッケージ型消火設備が受け持てる防護面積は、I型が概ね850㎡以下、II型が概ね500㎡以下です。この2つの基準を同時に満たすように、格納箱の設置台数と配置を検討する流れになります。
このほか、地階・無窓階・火災時に煙が著しく充満するおそれのある場所には設置できないこと、使用温度がおおむね40度以下で温度変化の少ない場所に設けること、直射日光や雨水を避けることも設置条件として定められています。消火剤の凍結・劣化を避けるうえでも、設置場所の環境条件は屋内消火栓設備以上に注意が必要な部分です。
なお、消防法施行規則で補助散水栓の設置が認められる部分については、パッケージ型消火設備(I型・II型)を同じ条件で設置することで、補助散水栓や屋内消火栓設備の代替として扱われる場合もあります。補助散水栓自体の位置づけは、スプリンクラー設備と組み合わせて使われる簡易な散水手段であり、独立した屋内消火栓とは目的が異なる点は押さえておく必要があります。
パッケージ型自動消火設備とは:スプリンクラーの代替という位置づけ
パッケージ型自動消火設備は、火災によって生じる熱や燃焼生成物を感知部が感知し、自動的に消火剤を放射する固定式の消火設備です。感知部・放出口・放出導管のほか、消火剤貯蔵容器等・受信装置・作動装置・加圧用ガス容器などが一つの格納箱に収納されている点は、パッケージ型消火設備と共通する発想です。
大きな違いは、人の操作を介さず、感知から放射まで自動で完結することです。この自動性ゆえに、パッケージ型自動消火設備はスプリンクラー設備の代替として位置づけられています。放出口の取付け面(天井など)から床面までの高さは、I型で2.4m以下・II型で2.5m以下が基準とされており、これを超える高さの空間で使う場合には、別途消火試験によって性能が確認できた高さまで設置が認められる扱いになります。
適用できる防火対象物についても、パッケージ型消火設備とは異なる条件が定められています。スプリンクラー設備の設置義務がかかる防火対象物のうち、令別表第1の(5)項・(6)項に該当する用途(共同住宅の一部を除く住宅系・福祉施設や病院など)、またはこれらの用途に供される部分であって、延べ面積が概ね1万㎡以下のものが対象です。屋内消火栓の代替(I型・II型)と比べると、対象となる用途の範囲は限定的で、かつ扱える延べ面積は大きくなっている点が特徴です。
特定共同住宅等における緩和の考え方
共同住宅(マンション・アパートなど)には、通常の消防用設備等の基準とは別に、特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(総務省令第40号)という独立した枠組みが存在します。この省令は、二方向避難の可否や開放型廊下・階段の有無など、建物固有の避難のしやすさ・延焼の広がりにくさを評価したうえで、共同住宅用スプリンクラー設備・共同住宅用自動火災報知設備・住戸用自動火災報知設備といった、共同住宅向けに簡略化された設備の使用を認める制度です。
ここで注意したいのは、この省令40号の枠組みと、この記事で扱っているパッケージ型消火設備・パッケージ型自動消火設備の特例(施行令第32条)は、根拠となる制度が別物だということです。省令40号は「建物の性能に応じて、あらかじめ用意された代替設備の組み合わせを適用する」制度であるのに対し、パッケージ型消火設備・自動消火設備は「個別の建物ごとに施行令第32条の特例を適用して認めてもらう」制度という違いがあります。実務上、パッケージ型自動消火設備は、省令40号が定める共同住宅用スプリンクラー設備の代替としては認められない扱いが一般的とされており、共同住宅でスプリンクラー設備相当の性能を省略・緩和したい場合は、まず省令40号側の適用要件(二方向避難型・開放型など)を満たせるかどうかを検討するのが実務の順序になります。
このあたりの制度の使い分けは自治体・所轄消防署による運用差が出やすい分野でもあるため、共同住宅・小規模福祉施設等でパッケージ型消火設備の採用を検討する場合は、早い段階で所轄消防署に個別相談することを前提にしてください。
メリットと限界:水源・ポンプ・非常電源が不要になる構成
パッケージ型消火設備・パッケージ型自動消火設備の最大のメリットは、屋内消火栓設備やスプリンクラー設備のように水源・加圧送水装置(ポンプ)・非常電源をシステムとして構築する必要がないことです。格納箱そのものに消火剤と加圧用ガスが内蔵されているため、水槽の設置スペース、ポンプ室、非常用発電設備からの配線ルートといった、水系消火設備を支える裏側の設備を省略できます。既存建物への後付けや、増築部分への部分的な設置がしやすいのは、この構成上の特徴によるものです。
一方で、限界も明確です。
- 貯蔵できる消火剤の量に上限があるため、放射時間はI型で2分以上・II型で1分30秒以上、パッケージ型自動消火設備で1分以上とされており、屋内消火栓設備のように長時間の連続放水を前提にした設計にはなっていません。
- 1台あたりの防護面積・警戒範囲が屋内消火栓設備より小さいため、対象となる建物が一定規模を超えると台数が増え、必ずしも経済的とは限りません。
- 設置できる防火対象物の用途・階数・延べ面積に上限があるため、大規模・高層の建物や、対象外の用途にはそもそも使えません。
- 消火剤や加圧用ガス容器を個別に格納箱内で保持するため、設置数が多いほど、個々の格納箱の点検・消火剤の交換管理が必要になり、集中管理された水源・ポンプ方式とは異なる維持管理の手間が生じます。
このように、パッケージ型消火設備は「屋内消火栓設備を単純に小型化したもの」ではなく、水源・ポンプという裏方の設備を持たない代わりに、規模と用途の面で明確な適用範囲が定められた設備だと理解しておくと、採否の判断がぶれにくくなります。
維持点検の考え方
パッケージ型消火設備・パッケージ型自動消火設備は、消防用設備等として設置後も定期点検の対象になります。実務上のポイントは次のとおりです。
- 設置工事は、当該設備の構造・性能・工事方法に精通した甲種消防設備士(第一類・第二類・第三類のいずれか)が行うことが前提とされています。
- 点検も同様に、当該設備に精通した消防設備士(第一類・第二類・第三類)または第一種消防設備点検資格者が行う扱いです。
- 格納箱内の消火剤貯蔵容器・加圧用ガス容器は、消火器に準じた規格に適合するものが使われており、外観の腐食・損傷、圧力の状態、消火剤の劣化・凍結の有無などを定期的に確認する必要があります。
- パッケージ型消火設備・パッケージ型自動消火設備はいずれも、消防法上の検定対象機械器具等(日本消防検定協会が検定を行う品目)には含まれず、日本消防設備安全センター等の登録認定機関による性能認定の表示が付されている製品を選定・活用するのが実務的な目安です。
水系の消火設備とは異なり、配管や水源といった「見えにくい部分」の劣化を心配する必要がない反面、格納箱そのものが唯一の消火手段であるため、1台ごとの状態確認の重要度はむしろ高くなります。点検周期・報告の要否は建物の用途・規模によって異なるため、他の消防用設備等と合わせて所轄消防署・消防設備士に確認しておくことが実務上の基本になります。
よくある誤解
「パッケージ型なら屋内消火栓より簡単だから、どんな建物にも使える」わけではない。 I型・II型ともに、耐火建築物か否か、階数、延べ面積によって適用の可否が明確に分かれています。対象外の建物では、通常どおり屋内消火栓設備やスプリンクラー設備を計画する必要があります。
「パッケージ型自動消火設備を入れれば共同住宅のスプリンクラーを省略できる」とは限らない。 前述のとおり、共同住宅には総務省令第40号という別枠の制度があり、パッケージ型自動消火設備は共同住宅用スプリンクラー設備の代替としては一般に認められない扱いです。共同住宅での緩和を検討する場合は、まず省令40号側の要件を確認する必要があります。
「水源・ポンプが要らない=メンテナンスフリー」ではない。 水系設備の維持管理の手間が減る一方で、格納箱ごとの消火剤・容器の点検という別の維持管理が発生します。
まとめ
- パッケージ型消火設備は、水源・ポンプを使わず、格納箱内の消火剤を人が操作して放射する設備で、消防法施行令第32条の特例により屋内消火栓設備の代替として認められる
- I型・II型は放射性能・警戒範囲(水平距離I型20m以下・II型15m以下)・防護面積(I型概ね850㎡以下・II型概ね500㎡以下)が異なり、適用できる建物の耐火性・階数・延べ面積の条件も型ごとに異なる
- パッケージ型自動消火設備は感知から放射まで自動で完結し、スプリンクラー設備の代替として、令別表第1(5)項・(6)項等の用途で延べ面積概ね1万㎡以下の部分に適用できる
- 共同住宅には総務省令第40号という別枠の緩和制度があり、パッケージ型自動消火設備は共同住宅用スプリンクラー設備の代替としては一般に認められない
- メリットは水源・ポンプ・非常電源が不要になることだが、放射時間・防護面積に上限があり、大規模建物には向かない
- 点検は甲種消防設備士・消防設備士等が行い、格納箱単位での消火剤・容器の状態確認が維持管理の中心になる
パッケージ型消火設備の採否は、「屋内消火栓を簡単な設備に置き換える」という発想だけでなく、建物の規模・用途がそもそも適用範囲に収まっているか、共同住宅であれば省令40号側の制度とどちらが適切かという比較の視点で検討するのが実務的です。最終的な適用の可否は、いずれも所轄消防署との協議・確認が前提になります。
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