VAV・CAVの基礎|変風量方式の仕組みと計画の注意点
同じ空調システムでも、部屋ごとの負荷に応じて送る風の量そのものを変える方式と、風量は変えずに温度だけを調整する方式があります。前者がVAV(Variable Air Volume、変風量方式)、後者がCAV(Constant Air Volume、定風量方式)で、この2つをどう使い分けるかは、空調システム全体の省エネ性能や制御の複雑さを左右する、基本設計の段階で決めておくべき判断のひとつです。
この記事では、CAVとVAVそれぞれの基本原理から、VAVユニットの代表的な種類(絞り式・バイパス式・誘引式)、VAVを採用するときに設計上とくに注意したい点(最小風量と換気量確保の両立、給気温度制御との関係、ファン変速と静圧制御、ゾーニングと混合ロス)、逆にCAVが向いている用途、そして省エネ効果をどう捉えるべきかまでを、基本設計の実務目線で整理します。ダクト自体の設計や静圧の考え方についてはダクト設備の基礎|低速・高速ダクト、アスペクト比と静圧の考え方、風量の元になる空調負荷の求め方については空調負荷計算の基礎|負荷の内訳・顕熱と潜熱・機器容量の決め方であわせて扱っています。
なお、この記事で挙げる数値・許容差は一般的な考え方の目安です。実際の設計値・制御パラメータは建物用途や設計基準、所轄機関の指導によって異なるため、最終的な判断は設計者・特記仕様書の内容にもとづいて行ってください。
早見まとめ:CAVとVAVの違い
| 項目 | CAV(定風量方式) | VAV(変風量方式) |
|---|---|---|
| 風量の扱い | 常に一定の風量を送る | 室の負荷に応じて風量を増減させる |
| 負荷への対応方法 | 給気温度や再熱を変えて対応することが多い | 給気温度はおおむね一定に保ち、風量を変えて対応する |
| 制御機器 | 一定開度のダンパー、または簡易な発停制御 | VAVユニット(風量調整弁)+制御用センサー |
| 送風機側の制御 | 基本的に一定速で運転(発停制御はあり得る) | インバータによる回転数制御(静圧制御)と組み合わせることが多い |
| 適した用途の傾向 | 外気処理系統、クリーンルーム、厨房排気など風量の安定が優先される系統 | 事務室・会議室など、部屋ごと・時間帯ごとに負荷差が大きい系統 |
| 計画上の留意点 | 負荷変動が大きい室ではエネルギー効率が下がりやすい | 最小風量の設定、ゾーニング、制御の複雑さへの配慮が必要 |
CAVとVAVの基本原理
空調システムが室内の熱負荷に対応する方法は、大きく分けて「風量を変える」か「温度を変える」かの2つがあります。CAVは後者の考え方に立つ方式で、送風機からダクトへ送る風量を一定に保ったまま、空調機の冷温水コイルの出口温度や再熱ヒーターの出力を調整することで、負荷の変動に対応します。仕組みが単純で制御機器も少なく済むため、古くから広く使われてきた方式です。
一方のVAVは、給気温度をおおむね一定に保ったまま、各室・各系統に送る風量そのものを負荷に応じて絞ったり開いたりすることで対応する方式です。負荷が小さい時間帯には風量を絞ることができるため、送風機の動力を削減できる可能性があるのがVAVの大きな利点とされています。この「風量を絞れば送風機の動力も下げられる」という関係が、VAVが省エネ方式として位置づけられている理由です。
どちらの方式にも共通して言えるのは、方式そのものの優劣を一律に決められるものではなく、建物の用途、室ごとの負荷変動の大きさ、求められる制御の精度によって向き不向きがあるという点です。事務室のように在室人数や日射の当たり方が室ごとに大きく異なる建物ではVAVが検討されやすく、逆に風量そのものの安定が求められる系統ではCAVが選ばれる傾向にあります。この使い分けの考え方は、後段の「CAVが向く用途」であらためて整理します。
VAVユニットの種類:絞り式・バイパス式・誘引式
VAV方式を実現するには、ダクトの途中に風量を調整する機器(VAVユニット)を組み込む必要があります。VAVユニットにはいくつかの方式があり、代表的なものが絞り式・バイパス式・誘引式です。
| 方式 | 基本の仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| 絞り式 | ダクト内の風量調整弁(ダンパー)の開度を、風量センサーや温度信号にもとづいて自動で変え、通過風量そのものを絞り込む | 送風機側の動力削減につながりやすく、現在のVAVシステムの主流とされる方式 |
| バイパス式 | 室に必要な風量を超えた分を、還気ダクト側へバイパスさせて逃がす | 送風機自体の風量は変わらないため、送風機側の省エネ効果は絞り式に比べて小さい |
| 誘引式(インダクション型) | 一次風(空調機からの調和空気)を高速で吹き出し、その負圧で室内・天井内の二次空気を誘引して混合する | 高速ダクト方式と組み合わせて使われてきた歴史的な方式で、近年の新築案件での採用は少ない |
絞り式は、部屋側の風量そのものを絞り込む方式であり、送風機の回転数制御(後述するファン変速)と組み合わせることで、送風機の動力を実際に減らせるという特徴があります。現在計画されるVAVシステムの多くは、この絞り式を基本としています。
バイパス式は、VAVユニットの下流側で必要な風量を超えた分を、還気側へ逃がす仕組みです。各室への送風量は負荷に応じて変わりますが、送風機が送り出す風量そのものはあまり変わらないため、送風機の動力削減という観点でのメリットは限定的です。既存建物の改修などで、送風機の制御を変えずに各室の風量だけを調整したい場合に検討されることがある方式です。
誘引式は、高速ダクトで送られた一次風の勢いを利用して室内や天井内の空気を引き込み、混合してから吹き出す仕組みです。高速ダクトを前提とするため騒音や圧力損失の面で不利になりやすく、近年の新築計画で選ばれる場面は少なくなっていますが、既存建物の改修や更新の場面で目にすることがある方式として押さえておく必要があります。
設計の勘所:最小風量と換気量確保の両立
VAV方式を計画するうえで、実務上もっとも見落としてはいけないのが、風量を絞りすぎることで換気量が不足する事態です。VAVユニットは負荷が下がれば風量を絞り込みますが、その風量には室内の必要換気量に相当する外気が含まれています。風量を無制限に絞ってしまうと、負荷が小さい時間帯ほど換気が不足するという、本来の目的とは逆の結果を招きかねません。
このため、VAVユニットには必ず「最小風量」の設定値を持たせ、負荷がどれだけ小さくても、その値を下回らないように制御するのが基本的な考え方です。最小風量は、建築物衛生法(いわゆるビル管理法)で求められる必要換気量(在室者1人あたり概ね20〜30m³/h程度が目安とされる)を確保できる水準を下回らないように設定することが前提になります。具体的な必要換気量・最小風量の数値は、室用途・在室人数密度・法令・設計基準によって変わるため、実際の設定値は設計者・関連法令の確認のうえで決める必要があります。
換気量の確保は、風量計算の出発点である空調負荷計算とも関わってきます。室ごとの必要外気量や在室人数の想定については空調負荷計算の基礎|負荷の内訳・顕熱と潜熱・機器容量の決め方であわせて扱っていますので、参照してください。なお、系統によっては、VAVで絞る対象を「室内循環空気」に限定し、外気だけは別系統(外気処理空調機)で常時一定量を確保するという計画(後述するCAVとの組み合わせ)も広く使われています。
設計の勘所:給気温度制御・ファン変速(インバータ)と静圧制御
VAVは風量を変えることで負荷に対応する方式ですが、風量だけに頼り切ると、最小風量まで絞った状態でもまだ負荷が小さい、あるいは逆に最大風量まで開いても負荷に追いつかないという場面が出てきます。このため、実際のVAVシステムの多くは、風量制御に加えて給気温度のリセット制御(外気温度や負荷状況に応じて給気温度の設定値そのものを緩めたり絞ったりする制御)を組み合わせ、風量と温度の両方で負荷に対応する形が一般的です。給気温度制御をあわせて持たせておくことで、最小風量付近で風量制御だけに頼ると起きやすい、室の温度が下がりすぎる・上がりすぎるといった不具合を避けやすくなります。
送風機側では、VAVユニットが風量を絞るほどダクト系統全体の抵抗が変わっていくため、送風機の回転数をダンパーの開閉状況にあわせて変える「静圧制御」が組み合わされるのが実務上の基本です。ダクト内に設けた静圧センサーの値を一定範囲に保つように、インバータで送風機の回転数を自動的に下げていくことで、風量を絞った分だけ送風機の動力そのものを削減できます。VAVユニットの絞り込みだけを行い、送風機の回転数を一定のままにしてしまうと、送風機はダンパーの抵抗に逆らって空気を送り続けることになり、風量を絞った意味のわりに動力削減の効果が小さくなってしまいます。VAVによる省エネ効果を実際に得るには、風量制御・給気温度制御・送風機のインバータ制御を一体として設計することが欠かせません。自動制御・BEMSによるこうした連動制御の全体像については、自動制御・BEMSの基礎|中央監視との違いとエネルギー管理で扱っています。
設計の勘所:ゾーニングと混合ロス回避
VAVシステムを計画するうえで、もうひとつ重要なのがゾーニング(系統の分け方)です。1台の空調機・1系統のダクトに、負荷の傾向が大きく異なる室を混在させてしまうと、ある室では冷房が必要で、隣の室では暖房(あるいは冷房を弱めたい)が必要という状態が同時に起きることがあります。この状態を、給気温度をどちらか一方に合わせて対応しようとすると、一方の室では風量を最大まで開いても足りず、他方の室では最小風量まで絞っても効きすぎるといった、無理のある運転を強いることになりかねません。
このような負荷傾向のばらつきは、日射の当たり方が異なる方位別のゾーン(南面・北面・東西面)や、内部発熱の大きい室と少ない室が混在する場合に典型的に起こります。実務では、方位や用途、内部発熱の傾向が近い室ごとに系統をまとめる(ゾーニングする)ことで、1系統内での負荷のばらつきを小さくし、無理な運転や、再熱による混合ロス(一度冷やした空気を温め直す、あるいはその逆を行うことで生じるエネルギーのむだ)を避けやすくする計画が基本とされています。ゾーニングの精度を上げるほど制御は安定しますが、その分だけ空調機・VAVユニットの台数や系統数が増え、イニシャルコストや天井裏スペースへの影響も大きくなるため、負荷特性の把握とコスト・スペースのバランスを踏まえて計画することが実務上のポイントです。
CAVが向く用途:外気処理・クリーンルーム・厨房排気など
VAVが省エネの観点で優れた面を持つ一方で、風量そのものの安定を優先すべき系統では、あえてCAVを採用するという判断も広く行われています。
| 用途 | CAVが向く理由 |
|---|---|
| 外気処理系統(専用の外気処理空調機) | 必要換気量を常に確保する必要があり、風量を絞る運転がそもそもなじまない |
| クリーンルーム | 室内の清浄度や室間の圧力差(陽圧・陰圧)を保つために、給気・排気の風量バランスを一定に保つ必要がある |
| 厨房排気 | フードからの排気風量が不足すると、油煙・熱気・燃焼排ガスの捕集に支障が出るため、安全面から風量の安定が優先される |
| 手術室・感染症対応室など、室圧管理が求められる室 | 給排気のわずかな風量差で室圧が変わるため、風量を変動させる制御となじみにくい |
これらの系統に共通するのは、「負荷に応じて風量を変える」という考え方よりも、「必要な風量を常に確保する」という考え方が優先されるという点です。VAVは負荷追従による省エネという利点を持ちますが、風量そのものの安定性が最優先される系統にVAVを持ち込むと、かえって制御が複雑になったり、必要な性能を維持できなくなったりするおそれがあります。同じ建物の中でも、事務室系統はVAV、外気処理系統やクリーンルームはCAVというように、系統ごとに適した方式を使い分けるのが実務での基本的な考え方です。
省エネ効果の考え方:搬送動力の3乗則と過度な期待への注意
VAVが省エネ方式として語られる際によく引き合いに出されるのが、送風機の動力と回転数(ひいては風量)の関係を表す相似則です。送風機の圧力は回転数のおよそ2乗に比例し、軸動力は回転数のおよそ3乗に比例するという関係があり、これを俗に「3乗則」と呼びます。この関係にもとづけば、インバータで送風機の回転数を20%落とすだけで、動力はおよそ半分近くまで下がる計算になり、ダンパーで風量だけを絞る制御に比べてはるかに大きな省エネ効果が期待できます。
ただし、この3乗則はダクト系統の抵抗特性(システム曲線)が一定であることを前提とした理論値であり、実際のVAVシステムでは、VAVユニットの開閉によって系統全体の抵抗そのものが変化するため、理論値どおりの削減率が常に得られるわけではありません。また、最小風量の確保が優先される時間帯や、給気温度制御・再熱による補正が入る場面では、風量を絞りきれない、あるいは絞った分だけ別のエネルギーを使うという状況も生じます。VAVの省エネ効果は、建物の年間を通じた負荷変動のパターン(部分負荷で運転している時間がどれだけ長いか)に大きく左右されるため、「VAVにすれば一律に大きく省エネできる」と単純化して期待しすぎず、建物の運用実態を踏まえて評価することが実務上のポイントです。
システムを導入したあとは、設計どおりに風量制御・静圧制御が機能しているかを、竣工前の試運転調整で確認する工程が欠かせません。最小風量・最大風量の設定値が正しく機能しているか、送風機の静圧制御がVAVユニットの開閉と連動しているかといった確認は、空調設備の試運転調整(TAB)の基礎|風量・水量バランスと検収で扱っている内容と直結します。設計段階で意図した省エネ効果を実際に得られるかどうかは、この試運転調整の段階できちんと検証しておくことが前提になります。
まとめ
- CAVは風量を一定に保ち温度で負荷に対応する方式、VAVは給気温度をほぼ一定に保ち風量を変えて対応する方式で、負荷変動の大きさによって向き不向きが分かれる
- VAVユニットには絞り式・バイパス式・誘引式があり、送風機側の省エネ効果を得やすいのは絞り式で、現在の主流とされる
- VAVでは最小風量の設定が重要で、必要換気量を下回らない水準に維持することが換気不足を防ぐ前提になる
- VAVの省エネ効果を実際に得るには、風量制御だけでなく、給気温度のリセット制御と送風機のインバータによる静圧制御を一体で設計する必要がある
- 負荷傾向の異なる室を同一系統に混在させると混合ロスや無理な運転につながるため、方位・内部発熱の傾向でゾーニングすることが実務上のポイントになる
- 外気処理・クリーンルーム・厨房排気・室圧管理が必要な室など、風量の安定が優先される系統ではCAVが選ばれる
- 省エネ効果は3乗則による理論値どおりに単純化できるものではなく、建物の負荷変動パターンや試運転調整での検証を踏まえて評価する必要がある
CAVとVAVの選定は、単に「省エネならVAV」と割り切れるものではなく、系統ごとに求められる性能(省エネ性を優先するか、風量の安定性を優先するか)を見極めたうえで使い分ける判断だと筆者は考えています。VAVを採用する場合も、風量制御単体で完結させず、換気量の確保、給気温度制御、送風機のインバータ制御、ゾーニングまでを一体で計画することが、設計意図どおりの性能を引き出す近道になります。
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