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敷地造成・擁壁の基礎|切土・盛土・擁壁の種類と建築設備の取り合い

平坦な敷地であれば意識する機会が少ないものの、傾斜地や高低差のある敷地では、建物の設計・設備の計画に入る前に敷地そのものをどう造成するかという土木的な検討が先に立ちます。切土・盛土の計画、擁壁の種類選定、そして造成後の地盤が建築設備にどう影響するかは、設備設計者にとっても無関係ではありません。埋設配管のルートが擁壁の裏込め土を横切ったり、浄化槽や受水槽の基礎が盛土部分にかかったりすると、後年の不同沈下や漏水事故につながることがあるためです。

この記事では、切土・盛土の基本的な考え方、宅地造成及び特定盛土等規制法(通称:盛土規制法)で規制対象となる工事の基準、擁壁の種類と構造上の要点、そして造成地盤と建築設備との取り合いを、設備設計者の視点から整理します。外構全体の排水計画は外構計画と敷地排水の基礎、埋設配管の深さ・離隔は埋設配管の基礎であわせて扱っているため、本記事はそれらの前提となる「敷地の成り立ち」に焦点を当てます。


図で見る(全体像)

切土・盛土と地山の関係、擁壁断面の水抜き穴・透水層・埋設管離隔の模式図


早見まとめ|切土・盛土・擁壁の基本用語

用語 意味
切土(きりど) もとの地盤を掘削して低くすること。掘削面の下は締まった原地盤(支持力が期待しやすい)
盛土(もりど) もとの地盤の上に土を盛って高くすること。盛った部分は締固めの程度により支持力・沈下傾向が変わる
がけ 地表面が水平面に対しおおむね30度を超える角度をなす土地(硬岩盤を除く)
擁壁 切土・盛土によって生じた高低差(がけ)を土圧に耐えて支える構造物
宅地造成等工事規制区域 都道府県知事等が指定する、宅地造成に伴う災害の発生するおそれが大きい区域。区域内での一定の工事には許可が必要

これらの用語の定義・基準は法令上の表現をかみ砕いたものであり、実際の許可・確認申請の要否は個別の敷地条件・所轄行政庁の判断によって変わります。具体の計画では必ず所轄の都道府県・市町村の建築・宅地造成担当窓口に確認してください。


切土・盛土の基本:地盤の性質がまったく違う

敷地造成の第一歩は、既存の地盤を基準にして、どの部分を掘り下げ(切土)、どの部分を盛り上げるか(盛土)を決めることです。同じ「平らな敷地」でも、切土でつくった地盤と盛土でつくった地盤とでは、地盤としての性質がまったく異なります。

  • 切土地盤:もとの地山(原地盤)がそのまま露出するため、一般に締まっていて支持力が期待しやすい地盤です。ただし切土によって地下水の湧出面が露出したり、風化しやすい地層が表面に出たりすると、法面(のりめん)の崩壊リスクが生じることがあります。
  • 盛土地盤:外部から運んだ土を層状に敷き均して締め固めてつくる地盤です。締固めが不十分だと、供用開始後に自重や建物荷重によって沈下(圧密沈下)が進行することがあり、切土地盤に比べて不同沈下のリスクが相対的に高いとされます。

一つの敷地の中に切土部分と盛土部分が混在する「切盛境(きりもりざかい)」がある場合、その境界をまたいで建物や基礎、埋設配管を計画すると、地盤の性質の違いによって不同沈下や配管の変形が生じやすくなります。建物本体の基礎計画はもちろん、浄化槽・受水槽の基礎や、埋設配管のルートを検討する際にも、その位置が切土側か盛土側か、あるいは切盛境をまたいでいないかを、造成計画図・地盤調査結果とあわせて確認しておくことが実務上重要です。基礎と地盤の一般的な考え方は基礎と地盤の基礎(一級建築士 構造)もあわせて参照してください。


盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)の基礎知識

かつて「宅地造成等規制法」と呼ばれていた法律は、2021年の熱海市での土石流災害を契機とした法改正を経て、「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称:盛土規制法)として2023年5月26日に施行されました。従来は宅地の造成にのみ着目していた規制を、農地・森林も含めた土地の用途にかかわらず、危険な盛土等を全国一律の基準で規制する枠組みに改めた点が大きな特徴です。区域指定(宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域)は都道府県・政令市・中核市などが基礎調査を経て順次公示しており、地域によって運用開始時期が異なります。

区域内で「宅地造成等」に該当する工事を行う場合、都道府県知事等の許可を受ける必要があります。どのような工事が規制対象になるかは、次の基準が代表的な目安として広く参照されています。

工事の内容 規制対象となる目安の基準
切土のみ 高さ2mを超えるがけを生じるもの
盛土のみ 高さ1mを超えるがけを生じるもの
切土と盛土を同時に行う場合 高さ2mを超えるがけを生じるもの
面積要件 切土・盛土をする土地の面積の合計が500㎡を超えるもの(高さの要件を満たさない場合でも対象になりうる)

これらの数値は宅地造成等工事規制区域での代表的な基準です。もう一方の特定盛土等規制区域では許可が必要になる規模の基準が異なるため、両区域で同じ基準と思い込まず、計画地がどちらの区域かとあわせて確認が必要です。また、区域の指定状況や自治体ごとの運用細則によって取扱いも異なる場合があります。設備設計の実務でこの基準を意識すべき場面としては、外構工事や増築に伴う造成、浄化槽・受水槽設置のための掘削・盛土などが挙げられます。規制対象に該当するかどうかの最終判断は、必ず所轄の都道府県・市町村の宅地造成担当窓口に確認してください。


擁壁の種類と選び方

擁壁は、切土・盛土によって生じたがけの土圧を支え、崩壊を防ぐための構造物です。材料・構造形式によっていくつかの種類に分かれ、高さや敷地条件によって適した形式が変わります。

擁壁の種類 構造の特徴 適用場面の目安
重力式擁壁 無筋コンクリートや石積みなど、擁壁自体の自重で土圧に抵抗する 比較的低い高さ(目安として2〜3m程度以下)で採用されやすい
片持ち梁式擁壁(L型・逆T型擁壁) 鉄筋コンクリート造。底版の上に載る土の重量も利用して抵抗する 中程度の高さまで幅広く採用される代表的な形式
控え壁式擁壁 片持ち梁式に控え壁(リブ)を設けて壁の変形を抑える 高さが大きくなる場合に採用される
補強土壁(テールアルメ等) 盛土内に帯状の補強材を敷き込み、盛土自体に壁としての抵抗力を持たせる 大規模な盛土・高い擁壁で採用されることがある
ブロック積み擁壁 間知(けんち)ブロック等を積み上げる 高さが低い場合に限られ、無筋・練積みの場合は高さ制限が厳しい傾向

擁壁の高さが2mを超える場合、建築基準法88条・施行令138条により「工作物」として扱われ、建築確認申請が必要になります(この場合、令142条によりコンクリートブロック造は原則として認められず、鉄筋コンクリート造・石造など腐食しない材料による構造が求められます)。ここでいう「高さ」の算定方法(地盤の高低差とするか、土圧を受ける高さとするかなど)は特定行政庁によって取扱いが異なることがあるため、計画地を所管する建築主事・指定確認検査機関に事前相談することが実務上のポイントです。

水抜き穴の基準

擁壁の裏面(盛土側・切土側の地山と接する面)には、地下水位の上昇による水圧の増加を防ぐため、水抜き穴を設けるのが基本です。宅地造成等規制法施行令(現・盛土規制法施行令)では、擁壁の水抜き穴について、壁面の面積3㎡以内ごとに少なくとも1個、内径7.5cm以上のものを設けることとされており、水抜き穴の周囲には透水層(砂利等)を設けて背面排水を確保することが求められます。水抜き穴が詰まったり、背面排水が不十分だったりすると、擁壁の背面に水圧が蓄積し、擁壁の変位・崩壊につながるおそれがあるため、定期的な点検・清掃も維持管理上重要です。


造成地盤と建築設備の取り合い

敷地造成が終わった後の地盤は、設備設計・施工のさまざまな場面で影響してきます。設備設計者が特に意識しておきたい取り合いを整理します。

  • 埋設配管と擁壁・法面の離隔:擁壁の背面(裏込め土)を配管が横切ると、埋戻し土の締固め不良や、擁壁の変位に伴う配管の変形リスクがあります。給水管・排水管・ガス管・電線管のルートは、可能な限り擁壁の直背面を避け、やむを得ず近接する場合は擁壁の設計者(構造担当)と協議のうえ、離隔や埋設深さを個別に検討します。埋設配管全般の深さ・離隔の考え方は埋設配管の基礎を参照してください。
  • 浄化槽・受水槽の基礎と盛土地盤:浄化槽や受水槽は自重に加えて満水時の水重量が大きく、盛土地盤の上に設置すると不同沈下のリスクが高まります。盛土部への設置が避けられない場合は、地盤改良(転圧管理の徹底、砕石置換、柱状改良等)や、基礎スラブの補強を含めて検討する必要があります。
  • 屋外給排水管・排水桝と造成計画の勾配:造成後の敷地勾配は、屋外排水の流れ方向を左右します。造成計画で決まる高低差・勾配と、屋外給排水設備の桝配置・勾配計画がずれると、逆勾配や排水不良の原因になるため、造成計画図と給排水設備図を重ねて整合を確認します。敷地内の給排水引込・桝の考え方は屋外給排水設備の基礎を参照してください。
  • 雨水排水・浸透施設と盛土:雨水の浸透施設(浸透桝・浸透トレンチ等)は、締固めが不十分な盛土地盤や、透水性の低い切盛境の直下では期待した浸透能力が発揮できないことがあります。浸透施設の設置位置は、切土・盛土の区分と地盤の透水性を踏まえて計画する必要があります。敷地の雨水処理の考え方は雨水排水・浸透・流出抑制の基礎を参照してください。
  • 外構電気設備の基礎と造成レベル:屋外照明のポール基礎や引込柱の基礎は、最終的な造成後地盤レベル(グランドライン)を基準に計画します。造成計画が確定する前に電気設備の基礎レベルを決めてしまうと、後の造成変更で基礎の掘り直しが必要になることがあるため、造成計画の確定状況を確認しながら設計を進めることが実務上のポイントです。

実務チェックリスト

  • 敷地内に切土・盛土が混在する場合、切盛境の位置を造成計画図で確認したか
  • 浄化槽・受水槽等の重量設備の基礎が盛土部にかかっていないか、かかる場合は地盤改良の要否を検討したか
  • 計画地が宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域に指定されているか、所轄窓口に確認したか
  • 擁壁の高さが2mを超える場合、建築確認申請(工作物)の要否と手続きを設計工程に織り込んだか
  • 擁壁の水抜き穴・背面排水の計画が、擁壁の構造図で確認できているか
  • 埋設配管のルートが擁壁の裏込め土・法面を横切らない計画になっているか
  • 造成後の敷地勾配と、屋外給排水・雨水排水の勾配計画に整合が取れているか
  • 外構電気設備・引込柱の基礎レベルを、確定した造成計画レベルに基づいて設計しているか

よくある質問

擁壁の高さが2m以下なら確認申請は一切不要か?

高さ2m以下の擁壁は、建築基準法上の工作物としての確認申請は原則不要とされることが多いですが、宅地造成等工事規制区域内であれば別途、盛土規制法に基づく許可が必要になる場合があります。また、がけ条例など自治体独自の規制がかかる場合もあるため、「2m以下だから何も手続きが要らない」と即断せず、所轄行政庁に確認することをおすすめします。

既存のブロック積み擁壁が老朽化している場合、そのまま設備配管を近接させてよいか?

既存擁壁の健全性が不明な状態で近くに配管を埋設したり、掘削工事を行ったりすることは避けるべきです。ひび割れ・はらみ・水抜き穴からの土砂流出などの劣化兆候がないかを事前に確認し、必要に応じて擁壁の調査・補強を先行させたうえで、設備計画を進めることが安全な進め方です。

造成計画が未確定の段階で、埋設配管の設計を進めてもよいか?

最終的な地盤レベル・勾配が確定していない段階で埋設配管の深さ・勾配を確定させると、造成計画が変更された際に設計をやり直すことになりがちです。造成計画(グランドライン・切盛境・擁壁位置)が固まった時点で設備図との整合を確認するという順序を、設計工程に組み込んでおくと手戻りを減らせます。

傾斜地の敷地では、必ず擁壁を設ける必要があるのか?

傾斜地であっても、法面の勾配を緩やかに抑えて土羽(どは)のままで安定させる方法もあり、必ずしも擁壁が必須というわけではありません。ただし、敷地面積を有効に使いたい場合や、法面の勾配を敷地内に収めきれない場合には、擁壁を設けて高低差を短い水平距離で処理する必要が出てきます。どちらを選ぶかは、敷地の広さ・地盤条件・コストを踏まえた造成計画側の判断になります。


まとめ

  • 切土地盤と盛土地盤は支持力・沈下傾向が異なり、両者が混在する切盛境の位置を把握することが設備計画上も重要
  • 盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)は2023年5月26日に施行され、切土2m超・盛土1m超・面積500㎡超などが規制対象工事の代表的な基準として広く参照されている
  • 擁壁には重力式・片持ち梁式(L型)・控え壁式・補強土壁・ブロック積みなどの種類があり、高さと敷地条件に応じて選定される
  • 擁壁の高さが2mを超えると建築基準法上の工作物として確認申請が必要になり、水抜き穴は壁面3㎡以内ごとに内径7.5cm以上を設けるのが基本
  • 埋設配管・浄化槽基礎・雨水浸透施設・外構電気設備の基礎は、いずれも造成後の地盤条件(切土か盛土か、確定した造成レベルか)と整合させて計画する必要がある
  • 規制の該当有無・許可の要否・確認申請の要否は、いずれも所轄行政庁への確認を前提とする

敷地造成・擁壁は土木・構造分野の検討事項ではありますが、その結果できあがる地盤の性質が、埋設配管・浄化槽・受水槽基礎・外構設備の設計条件を大きく左右します。造成計画が確定する前の早い段階から、造成計画図・地盤調査結果を設備設計者自身も確認する習慣を持つことが、手戻りのない計画につながります。


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