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改修工事のあと施工アンカー|施工手順と引張試験による品質管理(一級建築士 施工)

改修工事の施工科目では、耐力壁の増設や設備配管の固定など、既存のコンクリート躯体に新しい部材を後から取り付ける場面が数多く登場します。この「後から取り付ける」ためによく使われるのがあと施工アンカーです。改修・解体工事の全体像については改修・解体工事の基礎で触れていますが、本記事ではその発展編として、あと施工アンカーの種類と施工手順、そして引張試験による品質管理の考え方を、一級建築士(学科・施工)の学習向けに深掘りします。

あと施工アンカーは、新築時からコンクリートに埋め込まれる従来の埋込みアンカーと異なり、すでに硬化したコンクリートに後から穴をあけて固定するという性質上、施工の丁寧さがそのまま強度の信頼性に直結します。だからこそ、施工後に引張試験で実際の性能を確認するという検査の考え方が重要になります。具体的な検査本数・荷重の基準は工事の性質(耐震補強の有無等)や採用する規準によって異なるため、実務では必ず特記仕様書・所轄行政庁・構造設計者の確認を前提としてください。


図で見る(全体像)

あと施工アンカーの金属拡張系・接着系の違いと、削孔・清掃・打込みまたは注入・養生という施工手順、施工後の引張試験による抜取検査の流れを示す模式図


早見まとめ

項目内容・考え方
あと施工アンカーの位置づけすでに硬化したコンクリート等に後から穴をあけて固定する、改修・増設工事で用いられる接合部材
金属拡張アンカー打込み・締付けによりスリーブや芯棒を拡張させ、孔壁との摩擦・支圧で抵抗する方式
接着系アンカー樹脂(接着剤)を孔内に注入・充填し、アンカー筋を接着によって定着させる方式
施工の基本手順削孔(穿孔)→孔内清掃(粉じん除去)→アンカー打込み・樹脂注入→養生(接着系)→引張試験
引張試験の目的施工されたアンカーが所要の引張性能を発揮しているかを、実際に荷重をかけて確認する検査
引張試験の考え方ロット(同一工種・同一アンカー種別・同一施工期間等)ごとに一定割合または一定本数を抜取り、確認荷重まで引張って抜け出し・過大な変位がないことを確認する

具体的な抜取本数・確認荷重の数値は工事内容(一般改修か耐震補強か等)や採用する規準によって幅があるため、必ず特記仕様書・監理指針・構造設計者の指示で確認してください。


金属拡張アンカーと接着系アンカーの違い

あと施工アンカーは、大きく金属拡張アンカー接着系アンカーの2つの方式に分けられます。

金属拡張アンカーは、あらかじめ削孔した孔にアンカー本体を打ち込み、打込みや締付けの力でスリーブや芯棒を拡張させ、孔壁を押し広げる摩擦・支圧によって抵抗する方式です。施工が比較的簡便で、打込み後すぐに次の作業に移りやすい一方、コンクリートが劣化していたりひび割れが生じていたりする箇所では、拡張による抵抗が十分に得られない場合があります。

接着系アンカーは、削孔した孔に樹脂(接着剤)を注入・充填し、そこにアンカー筋を挿入して接着によって定着させる方式です。樹脂が孔内に行き渡ることで、コンクリートとアンカー筋との付着面積を確保しやすく、耐震補強のように大きな引張力・繰り返し力を負担させたい場面で用いられる傾向があります。ただし、樹脂の硬化には一定の養生時間が必要であり、気温などの施工条件によって硬化時間が変わる点にも注意が必要です。

方式定着の仕組み施工上の特徴
金属拡張アンカー打込み・締付けによる孔壁への摩擦・支圧施工が比較的簡便、コンクリートの状態に性能が左右されやすい
接着系アンカー樹脂による孔内への接着付着面積を確保しやすく大きな引張力に対応しやすい、養生時間が必要

どちらの方式を選ぶかは、負担させたい荷重の大きさ・方向、既存コンクリートの状態、工期・気温などの施工条件を踏まえて総合的に判断されるものであり、「耐震補強だから必ず接着系」といった一対一の関係ではない点にも注意しておきたいところです。


施工手順の要点|削孔から養生まで

あと施工アンカーの施工は、おおむね次の流れで進みます。

まず削孔(穿孔)では、設計で定められた孔径・孔の深さで、既存コンクリートに孔をあけます。孔径・深さが不足すると所要の定着長さが確保できず、逆に既存の鉄筋を切断してしまうと構造上の欠陥になるため、事前に配筋探査を行って既存鉄筋の位置を避けて削孔することが重要です。

次に孔内清掃を行います。削孔で発生した粉じんが孔内に残っていると、金属拡張アンカーでは摩擦・支圧が十分に得られず、接着系アンカーでは樹脂とコンクリートの付着を妨げてしまうため、圧縮空気やブラシなどを使って孔内の粉じんを丁寧に除去することが、性能を左右する重要な工程になります。

その後、金属拡張アンカーであれば打込み・締付け、接着系アンカーであれば樹脂の注入とアンカー筋の挿入を行い、接着系の場合はさらに所要の養生時間を確保してから次の作業に進みます。この清掃・養生という一見地味な工程を省略・短縮してしまうことが、実際の施工不良の主な原因になりやすいという点は、施工管理上とくに意識しておきたいポイントです。

手順内容品質管理上のポイント
① 削孔所定の孔径・深さで削孔既存鉄筋の位置を避ける(事前の配筋探査)
② 孔内清掃粉じんの除去圧縮空気・ブラシ等で確実に除去する
③ 打込み/注入金属拡張は打込み・締付け、接着系は樹脂注入とアンカー筋挿入所定の深さ・充填状態を確保する
④ 養生接着系は所要の養生時間を確保気温等の施工条件による硬化時間の変化に留意
⑤ 引張試験抜取りによる性能確認次項で詳述

引張試験による品質管理の考え方

あと施工アンカーは、埋込みアンカーのように「打設時から品質が目視で確認できる」わけではなく、削孔・清掃・打込み(または注入)という一連の施工の丁寧さが、外からは見えにくい形で強度に反映されるという性質があります。そのため、施工後に実際に荷重をかけて性能を確認する引張試験が、品質管理の中心的な手段として位置づけられています。

引張試験は、対象となるアンカー全数を検査するのではなく、同一工種・同一アンカー種別・同一施工期間などでまとめた「ロット」ごとに、一定の割合または一定本数を抜取って行うという考え方が一般的です。抜取ったアンカーに対して、設計上定められた確認荷重まで引張力を加え、アンカーの急激な抜け出しや、コンクリート表面の異常なひび割れが生じないことを確認し、問題がなければそのロット全体を合格として扱う、という流れになります。耐震補強工事のように大きな性能が求められる場合には、確認荷重の設定がより厳しくなる傾向がある点も押さえておくとよいでしょう。

抜取検査という考え方そのものは、他の施工科目の品質管理(コンクリートの受入検査、鉄骨の高力ボルト締付け検査等)とも共通する発想です。全数検査が現実的でない工種において、ロットという単位で母集団の品質を推定するという考え方は、施工科目全体を通じて繰り返し登場するテーマなので、あわせて理解しておくと知識がつながりやすくなります。


まとめ

  • あと施工アンカーは、金属拡張アンカー(打込みによる摩擦・支圧)と接着系アンカー(樹脂による接着)の2方式に大別される
  • 施工手順は削孔(穿孔)→孔内清掃→打込みまたは樹脂注入→養生→引張試験という流れで進む
  • 孔内清掃と養生時間の確保という、一見地味な工程が施工不良を防ぐ実務上の要点になる
  • 引張試験は、ロット(同一工種・同一アンカー種別・同一施工期間等)ごとに抜取って行い、確認荷重に対する抜け出し・異常なひび割れの有無で合否を判定する
  • 抜取検査という考え方は、コンクリートの受入検査や鉄骨の締付け検査など、施工科目の他の品質管理とも共通する発想
  • 具体的な抜取本数・確認荷重の数値は工事内容・規準により幅があるため、実務では特記仕様書・構造設計者の確認が前提

あと施工アンカーは、改修工事において既存躯体と新設部材をつなぐ「見えない要」にあたる部材です。施工手順の一つひとつが何のために行われるかを理解しておくことが、品質管理の考え方を問う出題にも対応する近道になると筆者は考えています。


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