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基本設計管工事(空調・給排水)

加湿・除湿設備の基礎|加湿方式の使い分けと冬の加湿不足の考え方

空調設備というと、まず温度を思い浮かべがちですが、建物の室内環境を語るうえでは湿度も同じくらい重要な要素です。加湿・除湿設備は、室内の相対湿度を基準の範囲に収めるための設備であり、冬は乾燥しすぎを防ぎ、夏や梅雨時は湿りすぎを防ぐという、季節によって正反対の役割を担います。

この記事では、まず建築物衛生法が定める湿度の基準を確認したうえで、加湿方式(蒸気式・気化式・水噴霧式)それぞれの特徴と使い分け、冬の事務所ビルで加湿不足が起きやすい理由、そして除湿の方式(冷却除湿・デシカント除湿)までを実務目線で整理します。湿度・温度を含む空気の状態量の読み方については湿り空気線図の読み方、過加湿・低温面が招く結露については結露の基礎、加湿・除湿の熱負荷への織り込み方については空調負荷計算の基礎もあわせて確認すると理解がつながりやすくなります。


図で見る(全体像)

加湿方式3種(蒸気式・気化式・水噴霧式)の仕組みの比較と、冬に低温外気を暖めると相対湿度が下がり加湿が必要になる仕組みを示す模式図


なぜ湿度を管理するのか:建築物衛生法の基準

事務所ビルや店舗などの一定規模以上の建物(特定建築物)は、建築物衛生法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)に基づき、室内の空気環境を基準の範囲に維持することが求められています。この基準の中に、湿度に関する数値も含まれています。

項目 基準値
相対湿度 40%以上70%以下
温度 18℃以上28℃以下
二酸化炭素(CO2) 1,000ppm以下
一酸化炭素(CO) 6ppm以下

温度の下限は2022年4月の改正で17℃から18℃へ、一酸化炭素の基準も10ppmから6ppmへと引き上げ・強化されています。改正の経緯や最新の基準値は改正が入ることもあるため、実務では厚生労働省・所轄保健所の最新資料で必ず確認することが前提になります。

これらの項目のうち、実務上とくに注意が必要なのが相対湿度です。特定建築物の空気環境測定(年6回、おおむね2か月に1回実施)の結果を見ると、相対湿度は基準に適合しない割合が他の項目に比べて高い傾向が続いており、とくに冬季に下限の40%を下回るケースが目立つとされています。つまり、温度は比較的コントロールしやすい一方で、湿度は「基準を満たし続けることが難しい項目」であるという認識を持っておく必要があります。


加湿方式の比較:蒸気式・気化式・水噴霧式

加湿の方式は、大きく「蒸気式」「気化式」「水噴霧式」の3つに整理できます。それぞれ加湿の原理が異なるため、衛生面・制御性・エネルギー消費の傾向も変わってきます。

方式 加湿の原理 衛生面の傾向 制御性 エネルギー消費
蒸気式 水を加熱してつくった蒸気を空気中に放出する 加熱により雑菌の繁殖を抑えやすく、衛生的とされる 蒸気量の調整で応答性が高く、制御しやすい 水の加熱に電気・蒸気などの熱源が必要でエネルギー消費は大きめ
気化式 水を含ませたエレメント(加湿材)に空気を通し、自然蒸発させる 水滴を飛ばさないため細菌の飛散リスクは相対的に低いが、エレメントの汚れ・水あかの管理が必要 空気の状態(温度・風量)に依存する部分があり、蒸気式ほど即応性は高くない ヒーターを使わない分、消費エネルギーは小さい傾向
水噴霧式 水を微細な粒子にして空気中へ直接噴霧する(超音波式・高圧スプレー式など) 水そのものを飛散させるため、水質・雑菌管理を怠るとレジオネラ属菌などのリスクが相対的に高くなりやすい 噴霧量の調整で比較的速い応答が可能 蒸気式に比べて熱源が不要な分、エネルギー消費は抑えやすい

蒸気式:衛生面を優先したいときの基本選択

蒸気式は、水を沸騰させる、あるいは電極・ヒーターで加熱してつくった蒸気を、ダクトや加湿器から直接放出する方式です。加熱の過程で水中の微生物が死滅しやすいため、衛生面を重視する事務所・病院・データセンターなどで採用されることが多い方式です。制御の面でも、蒸気量を絞ったり増やしたりする応答が比較的素早く、目標湿度への追従性が高いという特徴があります。一方で、水を加熱するためのエネルギーが継続的に必要になる点はデメリットとして意識しておく必要があります。

気化式:省エネを優先したいときの選択

気化式は、濡らした加湿材(エレメント)に空気を通過させ、水分を自然に蒸発させて加湿する方式です。ヒーターを使わずに空気の持つ熱で蒸発させるため、消費エネルギーを抑えやすいのが最大の利点です。また、空気が吸収できる以上には加湿されにくいという性質があるため、過加湿になりにくく、加湿しすぎによる結露のリスクを抑えやすい面もあります。反面、外気温・風量など空気側の条件によって加湿能力が左右されやすく、極端に乾燥・低温な外気条件では期待した加湿量が出にくいことがある点には注意が必要です。エレメント表面に水あか・カビが付着しやすいため、定期的な清掃・交換が欠かせません。

水噴霧式:即効性はあるが水質管理が要になる方式

水噴霧式は、超音波振動や高圧のノズルによって水を微細な粒子にし、空気中へ直接噴霧する方式です。加湿の応答性が高く、大空間でも比較的短時間で加湿できる点が利点です。一方で、水そのものを霧状にして室内へ放出する仕組み上、原水や噴霧装置内部の水質管理が不十分だと、ミネラル分の白い粉(白華現象)が発生したり、レジオネラ属菌などの微生物が室内に飛散したりするリスクが高まります。採用する場合は、原水の水質・タンク内の清掃頻度・レジオネラ対策を、他の方式以上に厳格に管理する前提で計画する必要があります。

いずれの方式も一長一短があり、「衛生面を最優先するなら蒸気式」「省エネと過加湿防止を優先するなら気化式」「即効性・大加湿量を優先しつつ水質管理を徹底できるなら水噴霧式」というように、建物の用途・求められる衛生水準・維持管理体制に応じて選ぶのが実務の考え方です。


冬の事務所で加湿不足が起きる理由

事務所ビルの冬季の空気環境測定で、相対湿度が基準の40%を下回る不適合がよく見られる背景には、いくつかの要因が重なっています。

  1. 外気の絶対湿度がもともと低い:冬の外気は気温が低く、含むことができる水蒸気量(絶対湿度)自体が少ない空気です。この外気を換気のために取り入れると、室内の水蒸気量を薄める方向に働きます。
  2. 暖房で温度を上げるほど相対湿度は下がる:絶対湿度が変わらないまま空気の温度だけを上げると、その温度での飽和水蒸気量が増えるため、相対湿度は下がります。暖房が効いた室内ほど、体感的には暖かくても相対湿度は下がりやすいという関係があります。
  3. 加湿装置の能力・容量が外気導入量に見合っていない:加湿量は、導入する外気量・室内外の絶対湿度差から必要量を見積もりますが、改修や増築で外気導入量が増えた建物では、既存の加湿装置の能力が実態に追いついていないことがあります。
  4. 過加湿・結露を警戒して加湿量を絞る運用:過度に加湿すると、窓や外壁など低温になりやすい部位で結露を招くおそれがあるため、管理者側が加湿量を控えめに運用しているケースもあります。

つまり冬の加湿不足は、装置の性能不足だけでなく、外気導入量・暖房負荷・結露リスクという複数の要因が絡み合って起きる現象です。改修の相談を受けた際には、加湿器そのものの能力だけでなく、外気導入量や暖房の設定温度、窓まわりの断熱性能まで含めて確認することが実務上のポイントになります。加湿量の考え方は、室内外の絶対湿度差と換気量から必要蒸発量を概算するのが基本ですが、具体的な計算式・係数は空調負荷計算とあわせて検討する事項であるため、詳細は設計図書・機器メーカーの資料で確認してください。


除湿の方式:冷却除湿とデシカント除湿

夏季や梅雨時のように、室内が湿りすぎる場合には除湿が必要になります。除湿の方式は大きく「冷却除湿」と「デシカント除湿(吸着式除湿)」の2つに分けられます。

方式 除湿の原理 得意な場面 注意点
冷却除湿 空気を露点温度以下まで冷却し、水蒸気を結露させて取り除く(一般的な冷房・空調機のコイルによる除湿) 一般空調で温度も同時に下げたい場面 湿度だけを大きく下げようとすると温度も下がりすぎ、その分を再加熱(再熱)する必要が生じてエネルギーロスが大きくなりやすい
デシカント除湿 シリカゲル・ゼオライトなどの吸着材(デシカント材)に水蒸気を吸着させ、加熱して吸着材を再生する 温度をあまり下げずに湿度だけを下げたい場面、外気の湿度負荷が大きい季節 吸着材の再生に加熱源が必要になり、システムとしての構成・コストは冷却除湿より複雑になりやすい

冷却除湿は、一般的な冷房用の空調機がそのまま担っていることが多い、身近な除湿方式です。空調機の冷却コイル表面の温度が、通過する空気の露点温度より低くなると、水蒸気がコイル表面で結露し、ドレン水として排出されます。仕組みとしては湿り空気線図の読み方で説明した「冷却減湿」と同じ現象です。ただし、湿度だけを優先して大きく下げようとすると、空気の温度も一緒に下がりすぎてしまい、室内に送る前に再加熱(再熱)する必要が出てくるため、エネルギー効率の面では不利になりやすいという弱点があります。

デシカント除湿は、吸着材に水蒸気を物理的・化学的に吸着させることで、空気の温度をあまり下げずに湿度だけを下げられる方式です。吸着材は使い続けると水分を吸いきれなくなるため、加熱して水分を追い出す「再生」という工程が必要になり、この再生に使う熱源(電気ヒーター、排熱、太陽熱など)をどう確保するかが計画上のポイントになります。梅雨時のように外気の湿度負荷が高い時期でも安定した除湿性能を発揮しやすいため、資料保管室やクリーンルームなど、湿度管理を厳しく求められる用途で採用されることがあります。


加湿・除湿装置の維持管理と結露リスク

加湿・除湿の設備は、設置して終わりではなく、日常の維持管理が性能と衛生の両面を左右します。とくに加湿装置は水を扱う設備であるため、原水の水質管理と定期的な清掃が重要です。実務では、加湿装置に使用する水は水道法の水質基準に適合する水を用いること、使用開始前や使用期間中に定期的な点検・清掃を行うことが基本とされています。点検・清掃の具体的な頻度は建築物衛生法の関連規則や所轄保健所の指導によって定められている事項であるため、正確な間隔・手順は最新の法令・所轄官署の資料で確認することが前提になります。

一方で、加湿しすぎ(過加湿)は結露のリスクを高める要因にもなります。室内の絶対湿度を上げるほど露点温度も上がるため、窓や外壁など断熱の弱い部位の表面温度が露点温度を下回りやすくなり、結露が発生しやすくなります。結露の仕組みと防止対策については結露の基礎で詳しく整理していますので、加湿計画とあわせて確認しておくと理解が深まります。加湿と結露は「湿度を上げたいが、上げすぎると結露を招く」というトレードオフの関係にあるため、目標湿度は基準の下限(40%)を確保することを主眼に置き、上限(70%)や結露リスクを超えないよう、外気条件・断熱性能とセットで検討することが実務のバランスの取り方になります。


実務チェックリスト

  • 対象建物が特定建築物に該当するか、相対湿度40〜70%の基準が適用対象か確認したか
  • 加湿方式(蒸気式・気化式・水噴霧式)を、求められる衛生水準・省エネ性・維持管理体制から選定しているか
  • 冬季の加湿不足を検討する際、外気導入量・暖房設定温度・窓まわりの断熱性能まで含めて確認しているか
  • 加湿装置の原水の水質、点検・清掃の頻度を最新の法令・所轄保健所の指導内容で確認しているか
  • 水噴霧式を採用する場合、レジオネラ対策(水質管理・清掃)の体制を他方式以上に厳格に計画しているか
  • 除湿方式(冷却除湿・デシカント除湿)を、要求される温度と湿度のバランス、再熱・再生に必要なエネルギーを踏まえて選定しているか
  • 過加湿による結露リスクを、目標湿度・断熱性能とあわせて確認しているか

よくある質問

家庭用の加湿器と、ビルの加湿設備は仕組みが違いますか

基本的な原理(蒸気式・気化式・超音波式など)は共通していますが、ビルの加湿設備は空調機やダクトに組み込まれ、建物全体・フロア単位の風量に対応する規模で計画される点が異なります。また、特定建築物では建築物衛生法に基づく維持管理(水質・清掃)の対象になる点も、家庭用の加湿器との大きな違いです。

加湿しすぎるとどんな問題がありますか

相対湿度が基準の上限(70%)を超えると、結露やカビの発生リスクが高まるほか、水噴霧式のように水を扱う方式では雑菌の繁殖リスクも高まります。加湿は「不足を補う」ことが目的であり、目標湿度を大きく超えるような過加湿は避けるべき運用です。

除湿は冷房をすれば自動的にできるのではないですか

一般的な冷房(冷却除湿)でも湿度はある程度下がりますが、温度と湿度を同時に下げる仕組みのため、湿度だけを積極的に下げたい場合には温度が下がりすぎることがあります。その場合は再加熱(再熱)が必要になりエネルギーロスが生じるため、温度をあまり下げずに湿度だけを下げたい用途では、デシカント除湿などの別方式が検討されます。

加湿・除湿の必要な能力はどう決めればよいですか

必要な加湿量・除湿量は、導入する外気の量と、室内外の絶対湿度差から水分の過不足量を見積もり、空調負荷計算の一部として検討するのが基本です。具体的な計算方法・安全率の取り方は建物用途や設計基準によって異なるため、詳細は設計図書・機器メーカーの資料、必要に応じて設計者への確認が前提になります。


まとめ

  • 加湿・除湿設備は、室内の相対湿度を建築物衛生法の基準(40%以上70%以下)に収めるための設備であり、湿度は空気環境項目の中でも基準に適合しにくい項目とされている
  • 加湿方式には蒸気式・気化式・水噴霧式があり、衛生面を優先するなら蒸気式、省エネと過加湿防止を優先するなら気化式、即効性を優先しつつ水質管理を徹底できるなら水噴霧式という使い分けが基本になる
  • 冬の事務所で加湿不足が起きるのは、外気の絶対湿度の低さ、暖房による相対湿度の低下、加湿装置の能力不足、結露を警戒した加湿量の抑制といった要因が重なるためである
  • 除湿には冷却除湿とデシカント除湿があり、冷却除湿は温度と湿度を同時に下げる一般的な方式、デシカント除湿は温度をあまり下げずに湿度だけを下げたい場面で有利になる
  • 加湿装置は水を扱う設備であるため、原水の水質管理と定期的な清掃が衛生面の要になり、過加湿は結露リスクを高める点にも注意が必要である

加湿・除湿は、温度に比べて後回しにされがちな設備ですが、建築物衛生法の基準に組み込まれている以上、事務所ビルの維持管理では避けて通れない項目です。方式ごとの得意・不得意を理解したうえで、外気条件・暖房負荷・結露リスクとのバランスを見ながら計画することが、実務でも試験でも応用の利く考え方だと筆者は考えています。


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